『やわらかな光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
カーテン越しの柔らかな光に、目が覚める。
起きなければと頭では考えるものの、未だ微睡んでいるらしい体は、もう少し眠っていたいと訴える。
今日は、学校は休みではなかっただろうか。他に何か予定はあっただろうか。
考えて、思いつかず。
それならば、と。
朝の柔く暖かな光を避けるように、窓に背を向けて。
「ちょっと、そのまま二度寝しようとしないでよ」
咎める声と、引き剥がされる掛け布団に、眠りに落ちかけていた意識が急速に覚醒した。
「あーちゃん?」
確かめるように呼べば、布団を剥がした親友は苦笑したようだった。
何故、と昨日の記憶を思い返しながら、深く呼吸をする。
柔らかな光とは裏腹に、朝の鋭く冷えた空気が肺を満たし、混乱する思考を少しだけ冷静にさせた。
部屋を見回す。ベッドと机とクローゼット。端によけられているローテーブルは、今自分が寝ている布団がある場所に置かれていたものだろうか。
「いい加減、目を覚まして。さっさと起きなよ。今日は朝から一緒に出かける約束でしょ?」
約束。
その一言で思い出す。
出かけたい所があった。やりたい事もあった。
今までは親友の体の事を理由に言えなかったたくさんを、連休を機に吐き出したのだった。
「ほら起きて。母さんが朝ご飯、作ってくれてるよ」
「それを早く言って!すぐ準備するから」
親友の言葉に慌てて飛び起きる。
急なお泊まりを、快く迎え入れてくれたのだ。
もう遅いかもしれないが、準備の手伝いくらいは行いたい。
「手伝いとか、気にしないで。初めて友達を連れてきたから、何か張り切ってるんだ」
着替えている横で、使っていた布団をたたんでくれていた親友が、くすりと笑う。
「今まで学校の話とかした事なかったし、発作の事もあって家にいるよりも病院や寺の方にいるのが多かったから。だから嬉しかったみたい。さっき見てきたけど、何かすごい豪華なご飯になりそう。それに、きっと色々質問攻めにあうだろうから、急がなくてもいいと思うよ」
「でも、ただでさえちゃんと連絡しないで押しかけちゃったし。その上で、何でもかんでもしてもらうのって悪い気がする」
「律儀。益々母さんが張り切るじゃん」
口では呆れながらも、その表情はとても楽しげだ。
「あまり張り切らせると、後で大変になるよ。どんどんご飯は豪華になるだろうし。定期的にお泊まり会が発生する、とかありそう」
「何それ。楽しそうじゃん。でも、今度は私の家に泊まりに来てよ。お母さんが会いたいってさ」
「泊まりじゃなくてもよくない。それ」
確かに、と笑う。
泊まりでなくてもいい。ただ遊ぶだけでも、約束をするというのはとても嬉しい事だ。
夏休みが来る前までは、考える事も出来なかった。
「これ使って。洗面台の場所は分かるでしょ」
「大丈夫。ありがと」
着替えの終わったタイミングで、タオルを投げ渡される。軽く礼を言って、洗面台へと向かおうと足を踏み出したその時に、軽い電子音が鳴った。
どうやらスマホにメッセージが届いたらしい。
「紺のスマホじゃない?」
「ほんとだ。誰からだろ」
タオルを片手にスマホを取れば、待ち受け画面には先日親友の件で知り合った少女の名前。
ロックを外す。メッセージアプリを立ち上げた。
――帰ってきた。
ただ一言。
そして、一枚の写真が添付されていた。
「誰から?」
「ん。友達?」
「何故に疑問形」
親友にこのメッセージを見せるかどうか、少しだけ悩む。
彼女にとって、送り主と縁はない。
忘れていくだけの過去になった写真に写る人物を、今の彼女に見せる意味はあるのだろうか。
「連絡先は交換したけど、状況報告しかお互いしてないし。だから友達というか、何というか」
「状況報告?何でそんな事してんの」
「色々あるんだよ…それより、帰ってきたんだってさ」
誰が、と困惑する親友に写真を見せる。
訝しげな目が写真を見て、驚きに見開かれ。
泣きそうな、嬉しそうな、寂しそうな。
たくさんの感情を乗せて、柔らかく微笑んだ。
「そっか。よかった」
「会いに行ってみる?」
「さよならをしたし、覚えてないだろうから、会わない。きっと泣くから、困らせるよ」
「さよならをしたなら、今度は初めましてをしたらいいじゃん」
終わりにしたのなら、また一から始めればいい。
さよならをしたら、二度と会ってはいけないなんて、そんな決まりはないのだから。
「会って、今度は普通の友達になればいいよ。皆でさ、旅行とか行ったら、絶対に楽しいはず」
「…心の準備が出来たら、ね」
「じゃあ、早く準備してね…っと。私も早く準備しないと」
顔を洗いに行く途中だった事に気づき、スマホを置いて急いで洗面台へと向かう。
柔らかな夕陽が注ぐ教室。
満面の笑みを浮かべた少女と、その隣で戸惑いながらも微笑む少女。
画面を開いたままのスマホの中で、二人。
再び出会えた奇跡を喜んでいた。
20241017 『柔らかな光』
#72 やわらかな光
[光の三原色]
ポリ袋の中に、絵の具と水を入れる。
そのポリ袋同士をつないで
1枚の壁を作るように、吊り下げる。
完成した作品を日の光に当てると、
カラフルでやわらかい光で満たされる。
その瞬間、あたかも世界を独り占めにして
作品に閉じ込めてしまったかのような感覚に
なる。
それくらい光の三原色が魅せる
ドラマチックな光景が美しくて仕方なかった。
このまま時が止まってしまうのではないか、
と思って畏れまで抱いてしまった。
やわらかな光
やわらかな光に包まれて
昼寝をする
休日の贅沢
カーテンに反射する、やわらかな光。
その光の絵を、もうずっと描いている。
僕は、「外」というものを知らない。
物心ついた頃にはこの病室にいたから。
僕のいる重症棟には、長く入院する人はほとんどいない。
そもそも歩ける子が少ないし、同じ病室の子も、昨日は元気に笑っていたのに、目覚めたらもう帰ってこなかった、なんてことも少なくない。
僕はなんでここにいるんだろう。
なんでここから出ることも、もういないみんなのところにも行けないんだろう。
最近は1人部屋に移されて、もうすることなんてなくなってしまった。
だから僕は、光の絵を描いた。
1人の時でも、光を見てるだけで、見えない誰かと何かをしている気になれたから。
美しい、やわらかな光。
ずっと見ていたいよ。
光が消えると、苦しくて、なんでかわからないけど、夜が怖くて、自分で描いた光の絵を抱いて眠った。
ある日、光をかいていると、病室に、知らない人たちが入ってきた。
なんだろう。
これが病室にいたあの子が言っていた、「ミレンメンカイ」というものだろうか。
でもおかしい。
その「ミレンメンカイ」っていうのには、知っている人しか来ないはずなのに。
怖くて何も言えないでいると、知らない人が口を開いた。
宗佑。
かわいそうにね。
あんな病気にかかったから、あんなかわいそうな死に方したんだよね。
早く生まれ変わってね。
何を言っているんだろう、この人たちは。
でも。
なんでかの声を聞いたことが、
この人を知っている気が、
視界がぐるりと揺れる。
なんだこれ。
流れてくるこの風景はなんなんだ。
気持ち悪い。
ぐるぐるした頭を押さえているうちに、知らない人はいなくなった。
もう、夜になっていた。
それなのに、光が見えた。
揺れる光。
手を伸ばして振れると、コマ送りの、でも懐かしい風景がゆっくりと流れ込んだ。
なんとなく見ていたくて、最後まで頭の中で知らない風景を見ていると、声が聞こえた。
宗佑。
思い出して。
私だよ。
百合?
知らないはずの、名前が溢れる。
その時。
やわらかな光が、1人の少女に変わった。
今まで見ていた知らない風景が、一瞬で自分のものに変わる。
ああ。
なんで忘れていたんだろう。
泣き出す僕を宥めながら、彼女は全てを話してくれた。
僕が記憶を失う病気にかかって死んだこと。
ここが死んだ子供が未練を残して怨霊化しないために死を自覚させる施設だということ。
一緒に病室で死んだ彼女が、記憶を無くして生まれ変われないでいる僕のために、光のふりをしてそばにいてくれたこと。
全てを聞いて、自分が嫌になる。
彼女を愛したかった。
生まれ変わったら、好きという感情を失うのが怖い。
そんな僕に彼女は
大丈夫だよ。
生まれ変わったらまた次愛してね。
また次があるのなら、僕は彼女を愛したい。
愛してたいな。
待ちくたびれて薄れた彼女の手を取りながら、
僕らは、向こう側へ歩き出した。
【やわらかな光】
世界が全部この温かくて心地よい空間で満ち満ちていればもっと息がしやすいのに
残酷にも光があるってことは影がある
私が照らされてる時は絶対誰かが影にいて、その逆も然りの世の中なんだよね
それなのに私は、どうか私をその光で守ってと叫ばずにいられない
ずっと冷たいジメジメしたところにいるのはあまりにも苦しいから
誰も私を刺激しないで刺さないで脅かさないで
ぬくぬくとゆうゆうと居させて
なんて傲慢だったら誰も助けてくれなくなるのかなあ
それでも私は幻まであるあの光を諦めずにはいられない
いっそその光の束で優しく優しく私の首をぐるぐる巻きにして
気付かぬうちに天まで引っ張られていたらどれだけ幸せなのだろう
中学校三年間はまるにとって闇だ。空白の三年間。中学二年の体育大会まるは走ろうとしたが足が動かない。しかし必死に頑張った。母は間近で見ていてくれた。。
あれから20年経った。
あの時の私と言う存在にまるは感謝をする。頑張らなくて良い。
大丈夫。皆と同じで無くて良い。
完璧は必要ない。
人には頑張れない時期がある。
苦しいときは幸せに近づける通過点だと。
ケセラセラだと。
今私は穏やかな毎日に感謝している。
「窓からそそぐ」
朝起きて、窓を開けた。窓からそそぐ光は優しく、私を包み込んだ。
そして、ふっと浮くような不思議な感覚に包まれた。
それから、何があったのかは知らない。私は、雲の上の家にいた。家の窓から、外を覗き込んだ。
家は何一つ変わっていない。いや、一つだけ変わっていた。玄関に、「外には出るな」と張り紙がしてあった。
でも、出るなと言われると、出たくなってしまうものだ。外に一歩踏み出した。
私は、もっと警戒しなければならなかったのだろう。私は、雲の上から落ちてしまった。
私は、「もう外には出ないから、落とさないで」そう願った。
その瞬間、またふっと浮くような不思議な感覚に包まれた。そして、家にいた。
家の窓から、外を見た。すると、あたたかい光が差し込み、また不思議な感覚に包まれた。
何かが変わった気がした。何だろう?そうだ。普通の家に戻ったんだ。外に出ても、何も起こらない。窓から外を見ても、何も起こらない。あの、不思議で暖かな光は何だったのだろう。
私は、現実に戻った。現実が、一番嬉しかった。
「やわらかな光」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
─────────────────────────────
「やわらかな光」
……朝だ。朝が来た。
当たり前なのか、そうでないのかも分からないが、あの世にも朝って来るんだね。
「お父さん、おはよう。」……まだ寝ているのか。
「⬛︎⬛︎ちゃん、おはよ!」小さい子は早起きだね。
「おはよう、⬜︎⬜︎。」
「朝だねー。まさかここで一晩過ごすことになるとは。……あ、そういえばボク達の見張りの彼はどこに行ったんだろう?見かけないけれど。」
『ここですよ。』げっ、植物から声がする!
『特殊な空間からあなた達を見張っています。』
「全く、キミもボクみたいなことをするんだね!」
「ま、今のところ問題は起こしていないから安心してくれたまえよ。ボクにしては珍しく、大人しい振る舞いをしているだろう?」
『……そうですね。喧嘩は見逃しておりませんが。』
「ケンカなんて些細なことさ!第一、ボク自身はああいうの言われ慣れているからね。ただ、兄が心配になっただけで。」
「んー?」「ん?なんでもないよ?」「そかー!」
『何かあればまたご相談ください。』
「ばばーい!ちゃんとあしゃごはん、たべてね!」
「ありがとう!それじゃあ失礼!」
通話(?)はここで終わったみたいだ。
「……。ふたりとも早いね。まだ早朝だよ?もう少し寝ていてもいいと思うけど……。」「おとーしゃん!おはよ!」「起きなきゃダメかなぁ……?」「お!き!てー!」「……はい。」
「あしゃごはんだよー!」「……そうだね、作らなきゃだね。」
「ボクも手伝うよ!」「ボクも、おてちゅだい!するー!」
「ふたりともありがとう。」
昨日の鋭い眼差しとは打って変わって、父の目にはやわらかい光が灯っていた。
……懐かしいな。こんなに安心したのはいつぶりだろう。
思えば、兄がいなくなった後から父はずっと、どこか焦ったような、不安そうな顔ばかりしていた。
でも、ようやくこの顔が、安心したいつものお父さんが見られた。ボクは、いやボク達は幸せ者だね。
本当に、会えてよかったよ。
お父さん、ありがとう───「寝てる!!!」
「しかも⬜︎⬜︎まで二度寝を?!!」
仕方ない。朝ごはんはボクが作ろう。
……こういう親孝行も、いいよね?
『やわらかな光』
ほのかに白く光る真珠を幾つか、それとカミツレの花のエキス、緑柱石の欠片、獣蝋の削り粉、匂い消しに金木犀の花粉。
薬鍋をぐるぐるかき混ぜながら窓の外に浮かぶ月を見る。
今日は1年で一番大きな満月が昇る日だ。
北方ではすでにジャック・フロストが山を下りてきたとか。
今頃はきっと少年の姿で冷えた空気を振り撒いているのだろう。年の暮れには青年の姿、春先には老いた姿となり、最後は雪解け水として消えてゆく彼を想う。
さあ、仕上げにとっておきのものを注がなくては。
火から薬鍋を下ろして、窓辺に置く。
この熱が冷める前に、1年で一番大きな満月のやわらかな光を鍋の中へ。
上手くできたら、彼にも分けてやろう。
もしも気に入って彼が居座ったら、寒波が続いてしまうけど。
光に溢れた世界など、昔は知る由もないものだった。
魔物であり、おまけに日光に致命的に弱い。吸血鬼である自分にとって、昼間の活動などあり得ない。
人間と、人の為す世に興味を惹かれ、一族から離反したその後も、夜の闇に紛れて生きることが当たり前で。
キラキラとした輝きなどとは一生無縁だと思っていた。
けれども、生き永らえる中で時代は進み。
光を避けて引きこもった生活でも、あらゆる情報が手に入る世となった。
絵画や写真に留まらず、テレビにパソコン、スマートフォン。
それまでは知識だけで目にしたことのなかった昼間の世界を、文明の利器のお陰でたくさん知ることになったのだ。
今も事務所に設置された大型テレビの画面では、日が昇り始めた朝焼けの様子が映し出されている。
暗い街並みに、少しずつ柔らかな日の光が当たってゆき、暗がりの中で静かに動き始めていた人々が徐々に暴かれる。一日の始まりを予感させる、リアルタイムの静かな風景だ。
生身では体験出来ない美しい情景に、ソファーに寝そべったまま、思わずぼーっと見惚れてしまっていた。
僕がくつろぐこの事務所の中に、光が差し込むことはない。
全ての部屋に、相棒が用意してくれた遮光カーテンが二重に仕込まれていて、万が一も無いように、完璧な根城にしてくれているからだ。
抜かりの無いパートナーで有り難いことだ。
いざとなれば僕の方が強いのに、そんなに至れり尽くせりで過保護に守られたら、ちょっとした好奇心が疼いてしまう。
分厚いカーテンで隔てた窓の向こうには、テレビに映るのと同じような、朝焼けに染まる街が広がっている。
日の出から間もない今の時間ならまだ日も高くなく、薄ぼんやりと照らし出されたビルが建ち並んで居るはずだ。
この目でそれを、見てみたい。
少しくらいなら、カーテンの隙間からちらりと眺めても良いだろうか。
ソファーからのそりと起き上がって、近くの窓際へと歩み寄る。
わくわくと、芽生えた好奇心に突き動かされ、閉じたカーテンの端に手を伸ばした。
けれども。
「何、してるんだ!」
僕とカーテンの間に割り込むようにして。背後からだだだっと駆け込む音と共に、相棒の彼が僕の前に滑り込んだ。
走った勢いに流されて、窓辺のカーテンがゆらりと重たく揺れる。
目くれ上がった向こうには、お望み通りに事務所の窓。
しかしながら、その先に見えたのは外の景色ではなく。ご丁寧に雨戸まで閉じて遮断された無機質な窓があっただけだった。
何だ。そっか。そういえば、そうだったっけ。普段自分が開け閉めをしないのですっかり忘れていた。
僕のために、想像以上に万全な守りを固めた相棒に、天晴れと称賛を送りたい。
いやあ、凄いやこれ。用心深い性格なのは知っていたけれど、ここまでしてくれてたなら完璧じゃん。
「おい。何がっかりしてやがる」
窓とカーテンをしげしげと見詰めていたら、至近距離で彼に睨まれた。
その額には怒りの青筋が浮かんでいる。
あ、不味い。感心する気持ちの影に隠れて、外を見られなくて残念がっている心まで見透かされていたようだ。
彼の努力に背いて、軽率にもカーテンを暴こうとした僕が悪いのは決定的。
反省の念はあったけれど、怒られるのはちょっと怖い。
怒りの直撃を免れようと、せめてもの足掻きで、彼の前からじりじりと後ずさった。
へらりと笑って、彼を拝むようにして頭を下げる。
「ごめんごめん! いやあ、テレビの風景があんまりにも綺麗だったからさ。ひょっとして、この事務所から見える朝の景色も、あんな風に綺麗なのかな~って知りたくなっちゃって。馬鹿だよね、本当ごめん!」
一息に謝って、ちらりと彼の様子を伺った。
てっきり、すぐさま罵られると覚悟していたのに、意外にも彼は黙ったままで。
しばらくの間、苦虫を噛み潰したような顔で僕を睨み続けたかと思うと、急にふっと脱力して、頭を抱えてへたりこんだ。
「え! 嘘、大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ。ふざけんなよマジで。本当、この馬鹿!」
びっくりしてこちらもしゃがみこんだら、目線が合ったところからじろりと再び睨まれた。
その眼力にたじろいで、助け起こそうと伸ばした手が宙を惑う。おお、怖い!
びくつく僕に彼は呆れると、今度は力一杯ため息を吐いてそっぽを向かれてしまった。
そうして力無く僕を小突くと、悪態とともに吐き捨てるようにして呟いた。
「おまえ、強いくせに、肝心なところで何でこう阿呆なんだよ。俺、嫌だぜ。うっかり灰になったおまえ見付けるのなんか」
「ご、ごめん!」
静かな彼の言葉にドキリとした。
思いの外、僕の体質のことで心配をかけさせていたのか。
そりゃそうか。そうでなかったら、毎日カーテンに雨戸にと手間をかけてくれるはずがない。
無愛想のようで優しい性格なのは承知していたのに、その性格に甘えすぎていたことに気付かされた。
「本当に、ごめんなさい」
申し訳無い気持ちでいっぱいになり、姿勢を正して、そのまま這いつくばるようにして頭を下げた。
「おいおい、そこまでしろなんて言ってねえのに」
土下座のスタイルになった僕にぎょっとして、慌てた彼が僕を起こしにかかる。「馬鹿だなあ」と言って笑う彼に、もう怒っている気配はない。
もっと叱ってくれて当然なのに、お人好しな彼も甘い。
「ううう。これからはもっと気を付けます」
「どーだか。その言葉に騙されて、散々ヒヤヒヤさせられてきてるからなあ」
「う! 返す言葉もございません」
縮こまる僕が可笑しいのか、ついに彼は吹き出した。
「あ~腹減った。朝飯食べようと起きてきただけなのに、とんだ馬鹿のせいでぺこぺこだ」
立ち上がった彼が振り返り、にやりと笑って付け足した。
「何か作ってくれるよな? 相棒」
いたずらっ子のような表情に、釣られて僕も笑い返す。
「まっかせて! とびっきり美味しい朝御飯作っちゃうから。ふわふわオムレツ、期待してて!」
勢いをつけて立ち上がり、そのままキッチンへ勇み駆け込めば、後ろから「でっかいのよろしく~」と彼の声が追い被さった。
その声に応えるように、エプロンのリボンをぎゅっと縛って気合いを入れる。
いつも迷惑をかけて、ごめんね。
朝から面倒をかけたお詫びを込めて、誠心誠意作るから。
今度こそ楽しい朝の始まりを。
外の景色に負けない、穏やかな時間を。
君と一緒にやり直そう。
こんな馬鹿な僕だけど、これからもどうぞよろしくね。
(2024/10/16 title:059 やわらかな光)
やわらかな光。
「やわらかな春の光を浴びて、私たちは卒業します」
という文言を、卒業式で聞いたことがある気がする。
もちろん保護者目線での話ではなく、卒業生の一員として、である。
「卒業生の言葉」というやつだったか?
正式名称は忘れた。
だが、卒業式での華形の一部であることは覚えている。卒業証書授与式のあと、卒業生起立! をしてから、何やら予め決められた文言を宣誓する。
ただし、すでに過去の記憶は褪色しており、肝心の「どこの卒業式」に該当するのか、定かでない。
小学六年生か、中学三年生か、高校三年生か……。
高校ではなかったと思われる。
だって、高校の卒業式では、予行演習などというモノは一切なかった。ぶっつけ本番。そのへんのいい加減さが大人になりつつある年齢の中途であるといえる。
だから、あの文言を聞いたのは、小中のどちらか一方だ。
聞いたことがある、と、どこか第三者目線の語り口から察せられる通り、僕は聞いたことがあるだけのモブに過ぎない。
(全員)と書かれているセリフだけを読む構成員である。
しかし、あれの中にあるセリフ決めは、無作為なのだろうか。ちょっとだけ気になる。やはり演劇部が選ばれる可能性が高いのだろうか。
あるいは、肺活量の凄まじい生徒が選ばれるのか?
それにしては、声の小さい生徒がちらほらといたような、いないような。
一人舞台みたいなものだから、喋ることのできる英雄の選定には、何かしら法則性があるのだろう。
その辺に対して、まあ、どうでも良いと思ってしまって、結局冒頭部分だけ覚えてしまっているわけだが。
この言葉は、祇園精舎の鐘の音、みたいなもので、僕の頭はいつまでも覚えているつもりだろう。
こんなアプリに書いたのだから、そろそろ忘れてもいい頃合いだ。
しかし、卒業証書をきっぱり捨てられず取っておくように、「やわらかな春の光」という表現もまた、時間経過とともに味わい深くなるな、と。
(下書きとして一時保存)
20271016.NO.80「やわらかな光」
《やわらかい光》
ここ最近、あまりに気忙しい。
大量の書類を読み、内容が適正であればサインをし、各所に回す。
差し戻しであれば、修正指示を書面にまとめる。
場合によってはそれが議題になり、討論が行われる。
そして時折、旧皇帝派からの妨害により混乱を巻き起こされることもある。
僕は、毎日それを繰り返している。
慣れているだろうと言われればそれまでだが、やはり心が閉塞的になることもある。
そんな時に訪れる、急激な孤独感。
僕は幼い時に親を亡くし、残った兄姉に疎まれて育った。
それでも兄姉に認められるために頑張ってきたが、それが叶わぬままに兄姉は国に処刑された。
僕を守り育ててくれた乳母…正体を隠した実の母も、僕を庇って兄姉に殺された。
僕は、人には恵まれたと思う。
正義感から国にも疎まれ他国に左遷されたが、そこではたくさんの良き人達に巡り会えた。
邪神討伐を経て知り合えた仲間達も、今でも親しく交流している。
が、それでもふとした時に眼の前が暗くなる。
自分は一人なのではないか。
心に、どんよりとした雲が掛かる。
今も机に肘を立て、組んだ両の手に頭を支えて暗闇に耐える。
ふぅ…。
胸に吸い込んだ息を、思わず一気に吐き出した。
その分、次の吸気は自然と大きくなる。
その吸気の中に、ふわりと暖かく芳しい香りが加わった。
驚きふと顔を上げると、眼の前には湯気を上げたティーカップを持った彼女が立っていた。
「あの、そろそろ一休みした方がいいかと思ったので…。」
そう言って、彼女は僕の机にソーサーに乗ったティーカップをそっと置いた。
先ほどの暖かく芳しい香りの正体は、この紅茶だった。
鼻を擽る香り高い湯気が、少し心に隙間を作る。
「手間を掛けさせて、すみません。自分で淹れたのに…。」
そうだ。自分のことは自分でするべきだ。
周りに、気を使わせてしまった。
心の隙間から漏れ出してしまった、自分の闇。
その漏れた物に、僕自身気付いていなかった。
ぼんやりと暗くなる思考。机の紅茶に落ちる、僕の視線。
するとその上から、彼女のそっと柔らかい声が聞こえた。
「…いつもと逆ですね。謝らなくていいですよ。」
ハッとして、彼女の顔を見る。
彼女は慈しむような表情で、少し寂しげな瞳を僕に向けていた。
「貴方は責任感が強いから、全部自分で何とかしようとしてしまう。こんなほんの小さな、お茶を淹れるくらいの事まで。」
彼女は紅茶のソーサーに指を当て、スッと縁をなぞりながら言った。
「周りには意外と、何かを助けてくれる人がいるものですよ。ほんの小さな事でいいですから、貴方の抱えるものを誰かに預けてみてください。」
誰かに、預ける。
それは、怖くはないのか。
厭われは、しないのか。
そんな無意識の不安が、頭を過る。
頑張らねば、励まねば。
幼少よりの意識が、強く心を支配する。
「大丈夫です。少なくとも、私はそれを嫌だとは思いませんから。貴方が預けてくれるものならば、喜んで引き受けますから。」
だって、貴方は絶対に私に無茶な願い事をしないでしょう?
暖かな紅茶の湯気の向こうで、ふわりと暖かな微笑みの彼女が僕にそう告げた。
自分を傷付けることはないと、僕に大きな信頼を寄せてくれている彼女の優しさ。
小さなことでも何かを預けられる安心感を、僕は与えられた。
ほろり、ほろりと解けていく、僕の心。
解けた心の大きな隙間から、僕の心の闇を晴らすやわらかな光。
「…はい。ありがとうございます。」
かつて僕を疎んだ、この祖国。
家族も皆、喪った。
それでも、ここにいても今の僕は一人じゃない。
それは、どんなに心強いことか。
「いいえ。いつも紅茶はストレートですよね。それじゃあ…。」
そう言って離れようとする彼女に、僕は咄嗟に答えた。
「あ、今回は砂糖を入れてもらえますか。一つ。」
シュガーポットを見てお願いすると、彼女が嬉しそうに頷いた。
「珍しいですね。じゃあ、一つ。」
小さな角砂糖を一つ、彼女が僕の紅茶に入れる。
綺麗な赤い波紋が、白い器の中に広がる。
彼女はその赤い波紋をそっとスプーンでかき回し、すっと僕に差し出した。
「はい、どうぞ。」
僕は彼女に礼を言い、受け取った紅茶を口に含んだ。
口内に広がる馥郁たる香りとほんのりとやわらかい甘さに、自然と顔が緩む。
うん、美味しい。
今日の気分は、この優しい甘味だ。
好きな人を例えるならば、なんだろう。この世の全ての美しい言葉を集めたってこの人は形容できないけれど、ひとつ選ぶなら。それはきっと『月』だ。夜闇に喘ぐ人々をやわらかな光で明るく照らしてくれる。そういう人だもの。
そんなことを考えながら隣で眠る好きな人を見る。彼女の寝顔は世界で一番静かで厳かで神聖で、祈り慈しむべき絵画のように感じた。
声が聞きたい。触れてほしい。そう思った瞬間、わたしの頭は使い物にならなくなった。否、もとからそうなのかもしれない。
起きてほしい。起きて、わたしに触れて、やわらかく笑ってよ。莫迦みたいに彼女のことしか考えられない。この世のものとは思えないほど美しい彼女を前に、彼女を渇望してやまない自分の欲深さに頭を掻き毟るほどに絶望した。わかっている。眠りについた彼女を起こすなんて、なんて罪深いのだろう。浅ましいのだろう。それでも。
「……ごめんね、耐えられないの。耐えられなかったの。あなたがいないことに」
本当に、苦しかった。彼女を喪ってからの日々は、どうしようもない地獄が肚の底に住み着いて息ができなかった。あの子がいない世界はこんなにも暗闇に包まれていることに、あの優しいやわらかな光が二度と手に入らないことに、深く絶望した。
土の中から掘り返した冷たい彼女の体を抱きながら、いつか彼女が語ってくれた話を思い出す。昔の人は月の満ち欠けに「死と再生」の連続性を見出していたらしい。新月は死、満月は魂の再生のシンボルとしていたとか。
「生き返らせるには最適な天気だな。あなたは許してくれないだろうけどね……それでもいいよ」
どんなに怒られても恨まれても、あなたがいない世界よりずっといいんだ。
今日は一番大きな満月。やわらかな光が満ちてる。
お題/やわらかな光
『やわらかな光』
日曜の朝、目覚めて最初に目にするのは貴方の光る影。
チープな贋作の絵画を集めて、一枚づつ白い壁に並べていったね。
ベッドの上で貴方と二人、微睡みながら眺める時間が一番好き。
レースのカーテンから差し込むやわらかな光に照らされて白く映る貴方の影はかげろうのよう。
淡く溶け込むように消えてしまわないように、爪を立ててギュッと腕にしがみついた。
閉じた眼にかかる柔らかい光が、小憎たらしい。
眠りに沈んでいた意識が浮上する。
意識はまだ半分以上微睡んでいるから、このまま寝返りを打って二度寝を決め込みたい。
しかし、過去の経験からして、二度寝をすれば確実に遅刻する。
目覚まし時計を複数用意しても、スヌーズ機能を何個セットしても起床出来なかった。
こうなったら最終手段として、カーテンの裾を幾らか短くして、そのすぐ下にカーテンを枕側にして就寝するようにした。
そうすると、朝日が昇るとカーテンの下から陽光が差し込み、直接に顔に……閉じた眼に直接当たるのだ。
正直眩しいし、夏などの季節によっては大分早い時間に目覚めてしまうこともある。
しかし、遅刻を免れるためには、二度寝の誘惑を振り切るしかないのだ。
私は起き上がり、溜め息を吐いた。
「あーあー、床が……」
遅刻しなくなったのはいいが、直射日光が当たる床部分が焼けてしまっているのだ。
今度は床を焼かないようにように布団を敷きっぱなしにするか、ラグなどを購入するか考えなくてはいかないな
◎やわらかな光
昼間に地上を照らす眩しい太陽は
暖かさと恵みをもたらす時もあれば、
時折私たちを焼き焦がす。
夜中に見上げる月は
暖かさを地上に伝えることは出来ないが
焼けてしまった者達に
そっと寄り添い包み込む。
月と太陽は互いを補うように
夜と昼に輝いている。
今日は
頑張ったー!
帰り道は
今日も
暗い。
でも
いつもと同じ
街灯の光が
優しく
感じる。
昨日までは
気持ちが張り詰めて
周りが
よく
見えてなかったのかな。
#やわらかな光
『やわらかな光』
ああ‥イライラする。あまりにも理不尽な出来事に、自分の気持ちがちっとも収まらない。
今日に限らず時々同じ様な事が起こるのだけれど、根本的な解決方法が無く、いつも自分で自分を労うしかない。
このまま家に居ても気が紛れない。時計を見ると夜中の1時。だが外の空気が吸いたい。私はスマホだけ持って玄関を出ると、怒りに任せて歩き出した。
家並を抜け、田んぼ道をどんどん行く。灯りはスマホの小さなライトだけ。暫く何の音も無く、暗い中に身を置く内に徐々に冷静になってきた。
見上げるとと、空にはやわらかな光の月。
そろそろ家に帰ろうか。
【化け物との触れ合い方】
1理解し合えると思ってはいけない
翻訳された言語ですら未だ不確実な部分があり、確実性は五分五分で曖昧とすら言える。
2立ち向かってはいけない
勝ち負けに固執する個体も多く、勝ちを得るまで凶暴性は停止しない。
3壊れて良い物だけを与える
自他の境界線が曖昧な為、目に付く物は端から破壊される可能性がある。
以上を踏まえ、
事故や怪我の無いようお願い致します。
【柔らかい生き物との触れ合い方】
※非常に繊細な生き物の為、その飼育環境には特に注意を払ってください
1殺伐とした心は捨てなさい
鋭い観察眼をお持ちです。
お手を煩わせる事の無き様、自らを律してから入室しなさい。
2触れる際には必ず許可を得なさい
稀有な存在です。何よりも敬いなさい。
3常に意思の疎通を図りなさい
非常に愛情深く高度な理解力をお持ちです。
言葉を交わす事が出来る、その存在にどれだけ救われるか常に感謝を伝えなさい
※うっかり緩んだ涙腺に備品を使う事を許可します。
ハンカチは数ある品の中から私達の為にと心を砕いて選んでいただいた物を用意しています。
しっかり使いなさい。ほのかに甘い香りがします。握り締めなさい。
【屈強の境界線の作り方】
1 化け物と意思疎通するな
「状態異常:脳内お花畑」という実に皮肉ったスキルを発動。
子供が描いたような花畑をイメージ。
童心に帰りましょう。
2 大事な物は記憶せよ
万が一にも破壊、破損、紛失、喪失、処分等に遭ったとしても記憶は半永久的と言える保管機能の為上手く利用すべし。
3 極太マッキー(黒)を買え
ぶっとい境界線を引け。
何処まで踏み込むのか、誰の何を踏み込ませないのか決めろ。
人の為に極太線を越えるなら、自他に与えるリスクだけでなく影響も忘れるな。
全て自己責任で挑め。
※但しその行いには心から敬意を表す。
例え不利益な影響が有ったとしても、自らの為に自らの意思と確定し線を越え決断した事は、誇りに思わなくてはいけない。
それは非常に稀有で、勇気と呼ばれる物だ。
些細な事と謙遜も卑下もすべきでは無い。
境界線を越えるということは、それだけ汗水垂らす様な行動なのだ。
大変な苦労をした筈だ。
ご褒美を選ぶと良い。
ケーキか紅茶か好きな物を何かひとつ。
ハンカチは、【柔らかいひと】の部屋に有る。
行きなさい。
きっと話を聞いて褒めてくださる筈だ。