『風に身をまかせ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「毎年夏休み、戻ってきてね!」
最後に君はそう言って僕を見送ってくれた。
小学生の僕らにとって生まれた時からずっと一緒だった友達と別れるのは辛かったがもう中学生なのでそんなこと言ってられない。
そして、僕はその地を後にした。
東京に行ってからは何もかも新鮮で全てが素晴らしく感じた。
学校でできた友人と毎日のように遊び、時間がどんどんと過ぎていった。
夏休み、僕はあの場所へ行かなかった。
その次の年も、またその次も。
いつしかそんな約束なんて忘れてしまった。
そして月日が経ち、僕は高校を卒業した。
中学高校を共にした仲間との別れ。
きっと、数日後にはまた遊んでいるだろうがそれでも思い出が次々と溢れてきて泣けてきた。
そんな時、ふと、彼女の存在を思い出した。
夏休みに帰ると言って帰った年は一度もない。
「...久しぶりに帰るか。」
『次は〇〇〜〇〇〜』
いつの間にか目的地に着いていたようだ。
なんとも言えない気持ちとともにホームに降り立つ。
桜が咲き乱れる綺麗な山々が見えた。
「かえって、これた...」
懐かしい景色に鼻の奥がツンとする。
いけない、感動するのは会ってからにしないと。
そして住んでいた町に向かい、彼女の家を訪ねた。
表札も外見もそのまま。
「よし。」
ピーンポーン
訪問が終わり、帰り道。
彼は帰る前に昔よく遊んでいた河原に来て散歩をしていた。
冷たい風が頬を撫でる。
「あら、流星くん?どうしたの..?」
彼女の母親は驚いたようにこちらを見つめその後悲しそうに顔を歪めた。
「早ければねぇ、でも嬉しいわ。帰ってきてくれて。」
話を聞くと彼女は重い病気にかかってなくなってしまったそうだ。
彼は酷く後悔した。
なぜ、なぜもっと早く帰ることができなかった。
なぜ、彼女が死んでしまうのだ。
なぜ、なぜ......
気づいたら彼の下半身は川の中に入っていた。
桜が流れてゆく。
風が吹く。
暖かい風。
慰めてくれるかのような優しい風であった。
頬を生暖かいものが伝う。
「ごめんな、すぐそっちに行くよ。」
🌕
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日差しの加減で翡翠色に見える髪は、ほんのりと香油が香った。甘さの少ないシダーの香り。彼女の髪を指で梳いて、背中に流していく。
本当に可愛くて。でも芯は強い。
彼女は自らの細い脚で、この荒波の中必死に立ち続けていた。その姿に惚れ惚れした。ひょっとしたら僕らを鼓舞する戦女神なのかもしれない。
やがて、なぁに?と、目覚めたのかろれつの回らない唇が問うてくる。
こんなに甘えてくれるなんて思わなかったけど。
風に身を任せ
今日は風が気持ちいい日だ。
花から移り変わったばかりの、まだ元気のいい若葉をそよそよと風が揺らしている。
虫が落ちてきそうで若干怯えつつ、木漏れ日の温かさと、その隙間を抜ける爽快感のせいで木の下を通るのはやめられない。
虫嫌いなのに、こういうのどかなのが好きなのだ。自分でも難儀なものだと思う。
結局虫は落ちてこず、無事に帰宅することができた。
ほっと一息つきながら、ほんのり焼けた肌が若干ヒリヒリするのを感じる。そろそろ日焼け止めが必要かもしれない。
昔は5月ならまだ涼しかったのに、なんて誰に言うでもなくぼやきながら冷たい麦茶を飲めば、火照った体が丁度良く冷やされた。
部屋に引き下がって、いつも通り漫画を開いた。今日は帰り道に買ってきたばかりの新刊だ。
少し暑かった。けれど、クーラーを付けるほどかと聞かれればそうでもない。
なので、窓を開けた。途端に夕立の気配を孕んだ風が部屋に吹き込んで、籠もっていた、湿度の高いじっとりした空気が一瞬で塗り替えられた。
白いレースカーテンがふわりとはためいて、西日の光で空気を舞っている埃がキラキラと光っている。
ちょっと綺麗だったので、まだ掃除はいいか、と己への良い言い訳を見つけられた。
大本命、漫画を読もうとベッドに沈み込んだ。学校へ行っている間に母さんが干しておいてくれたようだ。陽だまりの匂いがして、普段より分厚い布団が体を包み込んだ。
小鳥の鳴き声と、少し陰った西日の光を風が運んでくる。
この後夕立が降るらしいから、少し水気も含んでいた。
新刊は期待を上回る展開で、次巻の更新が待ちきれない。
なんてことのない、あまりにのどかな金曜日の夕暮れだった。
ベッドサイドに置いた漫画のページが、風にさらわれてぱらぱらとひとりでに開いていく。
さぁ、と降り出した夕立の音を聞いて慌てて窓を閉めると、漫画はぱたりと閉じてしまった。
自分も本のページのように、自由に風に身を任せてみたいな、と淡く思いながら、窓の向こうで降り続く雨の音をぼんやり聞いていた。
明日は土曜日。風を感じたくなったから、自転車でどこかへ出かけようかと計画を立てだした。
テーマ:風に身をまかせ
風に身をまかせて飛ぶ
ふわりと足が地面を離れる
ぐわんと下に落ちる感覚がする
手を広げる
手に空気を感じる
バサリ。という音がした。
『風に身をまかせ』
買い物をすませた帰り道。
駅周辺を歩いていたとき、突如としてビル風が吹き荒ぶ。
彼女の纏う、繊細なレースをあしらった淡い藤色のロングスカートが、風に身をまかせて勢いよく空気を孕んだ。
「わっ」
おてんばな春の陽気は、彼女の反射神経すら弄ぶ。
風とともに軽やかに踊るスカートは、彼女の太ももをあらわにした。
その白い肌に刻まれた赤い痕が目に入り、息をのむ。
あとわずかで不可侵領域に差しかかるかというところで、スカートは優雅に舞を終えた。
おとなしくなったスカートに、彼女はホッと安堵したように肩をおろす。
両手でスカートを整え直した彼女が、ここで俺の視線に気がついた。
「えっち」
頬を赤らめて恥じらいつつも、彼女のじっとりとした視線に返す言葉が見つからない。
「……すみません」
俺は両手を上げて素直に降参した。
「……見た?」
「残念ながら、キスマークまででした」
バカ正直に伝えると、彼女の顔がさらに紅潮する。
「はあ!? なんてところに勝手につけてくれやがったんだよ!?」
「勝手じゃないです。ちゃんと許可は取りました」
「ウソだっ!?」
「ウソではないです」
許可は取っている。
彼女がうなずくことしかできなくなるまで体力をこそぎ落として、意識と理性を蕩したあとで、だ。
こうでもしないと許してくれない彼女が悪い。
万が一、彼女にバレてしまっては対策を立てられてしまうため、俺は早急にキスマークから話を逸らした。
「というか下着でそんな恥じらうことあるんですね? いつもスッポンポンで部屋の中を闊歩してるのに」
「ちがっ、だって、外と家じゃ違うじゃんっ」
ギュッと、彼女が恥じらいながら俺の腕に縋りついて距離を詰めた。
「そ、それに……ね?」
急にしおらしく見上げてくる彼女に、胸がときめく。
「今日は、その、かわいいの……着てて、まだ内緒にしたくて……」
は?
今、とてつもないでかい爆弾を落とされた気がして喉が鳴った。
「もうっ! 往来でこんなこと言わせないでっ!!」
一瞬、甘やかな雰囲気が流れ始めるが、ここが外であることを思い出した彼女が、照れ散らかしてキャンキャンと喚き始めた。
「俺のせいですか!?」
勝手にベラベラ喋ったのはそっちなのにっ!!??
もはや内緒の意味あるのかすら謎である。
出先でなかったらひん剥いてやるところだった。
むしろ出先であることが悔やまれる。
俺が露骨にテンションを上げるからか。
結婚して以降、彼女はかわいい誘惑をぶら下げてくるようになった。
ますます手のひらで転がされている。
「帰ったら覚悟してくださいよっ!?」
「……おリボンのカラフルパスタ作ってくれるって、れーじくんが言った」
ここにきて、まさかのご飯である。
輸入食品店で色つきのファルファッレを見つけて、ふたりではしゃいで衝動買いしたのだ。
買おうと言い出したのも、作ると言い出したのも俺である。
彼女の胃袋はもうすっかりパスタになっていた。
今さらなかったことにはできそうにない。
「そうでしたっ!!!!」
据え膳はしばらくお預けになるという事実に悶々とするのだった。
風に身をまかせ
夢を見ている時。
毎日毎日明晰夢を見ているわけではないから、本当かどうかは分からないけれど。
いつも、同じ風が吹いている気がする。
どれだけ悲しい夢でも、辛い夢でも、苦い夢でも、楽しい夢でも。
自分自身がそれを夢だと認識した瞬間、その風が吹き始める。
具体的に言うと、毎日同じわけではない。
辛い夢の時は痛いくらい強く風が吹くし、楽しい夢や心地好い夢の時はイイ感じのそよ風が吹く。
それでも同じだと言い切れるのは、匂いが同じだから。
どんな匂いかと言われると、言語化は難しいのだけれど、ふと気付いたら、ソレだと分かる。
花の香りが強くて、あれは多分、金木犀。
優しくて辛い甘さの中に、焼けたような匂いもある気がする。
なんだろう、お日様の匂いっていうのが最適かもしれない。
そのくらい、抽象的な匂い。
人によって捉え方が変わるソレに、名前を付けるのはとても難しい。
その風に吹かれている時は、とても自由な気がする。
現実じゃないとわかっているから、何も考えず気侭に行動できる。
だから私は、あの風が好き。
自分を後押ししてくれるような、包み込んでくれるような、あの風が好き。
全てを委ねると破滅してしまうことはわかっているけれど。
夢の中でくらい、いいでしょう?
〖風に身を任せて〗
飛んでいく桜の花びら
舞っていくたんぽぽの綿毛
屋根まで昇るしゃぼんだま
ひらりひらりと、ゆっくりと
ふわりふわりと目先に浮かぶ
そんな姿を眺めていると
なぜだか私も浮いたような
軽い気持ちになれるのです
桜の花びらが見えなくなるまで
綿毛が地面に腰を下ろすまで
しゃぼんだまが弾けて消えるまで
飛んで行った行方を目で追っかけて
「風に身を任せて着く瞬間」を
最後まで見届けてやっと満足する
風に身を任せる側からしたら
風は運命を定める「魔法の絨毯」
魔法の絨毯は絶対素敵な場所へ
連れて行ってくれるはずですから
「ちゃんと旅ができるのか」なんて
心配はしなくても良さそうですね。
絨毯、行先は教えてくれないようで。
「着いてからのお楽しみ」を掲げて
今日もどこかへゆくのでしょう
面白いことも、嫌なことも。全部全部忘れてしまおう。
そんな日にはバイクに乗る。私の体を風が通る度になんだか感情まで持って行ってくれるような気がするから。
君は言う。そんなのは良くないよって。
でも、私はそうしなければ生きていけないの。
出ないといつの間にか溢れて、ひとりぼっちになってしまうから。だから私は風に頼るの。だから私は心の中で泣いてるの。
5月
きみどり色の葉っぱが
風に揺れる
春に芽吹いた葉は
みな柔らかく
同じ色なのが
不思議
ひときわ強い風に
身をまかせ
一斉に
深くお辞儀をする
お久しぶりです、沈溺つろです。
皆様、新生活はいかがお過ごしでしょうか。
本日は、約1ヶ月と2週間ぶりに物語を書きます。
それでは本編です。行ってらっしゃい。
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「え…!見て!四つ葉のクローバー!」
少し虫に食われている四つ葉のクローバーを持っている詩音(しおん)。
きらきらと光る花の指輪がとても綺麗で、少し見惚れてしまう。
「ねぇ…聞いてる?」
「えっ、あぁ、すごいね」
「花澄(かすみ)反応薄くない?」
「いや…指輪綺麗だなって…」
「そっちかい(笑)…この指輪いる?てか、私が付けるより花澄の方が似合ってるし」
詩音は指輪を外し、私に差し出してきた。
「いる?ってどういうこと?そんな高そうな指輪私もらえないよ(笑)」
「いいからいいから!」
そう言い、詩音は私の手に花の指輪を付けた。
「ほら、似合ってるじゃん!可愛いよ!」
「そうかなぁ…でもありがとう、大切にするね」
「うん!」
はじけるような笑顔で返事をする詩音を見たのは、その日が最後だった。
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10月16日。街中の花屋の前で紫苑の花を見たとき、この会話を思い出した。一滴の雫が私の頬を濡らした。
「明後日が詩音がいなくなってから1年か〜…早いなぁ…」
2022年、10月18日。部活帰りに1人で歩いていた詩音は、交通事故で亡くなった。飲酒をした運転手に轢かれてしまった。即死だった。
もう思い出したくないのに、紫苑の花を見ると詩音のことを思い出してしまう。
詩音は私が高校1年生の時に出会った大切な友達。
友達がいなくて、移動教室もずっと1人だった私に話しかけてくれた。
初めて話した時のことを、昨日のことのように覚えている。
お互いの名前が「花に関する名前だね」だなんて、毒にも薬にもならないような、そんなくだらないことを話したことも全部覚えてる。
「ありがとうございました、またお越しくださいませ」
涙を拭いた私は、花屋で紫苑の花を買った。
毎年このくらいの時期に紫苑の花を買う。
一緒にいるみたいな感覚になって少し落ち着くからだ。少し気味が悪いと思われそうだけど、それぐらい詩音は私にとって、すごく大切な友達だった。
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「1年前くらいの私、花屋の前でこんなこと思ってたなぁ…」
2023年、10月18日。私は今、学校の屋上にいる。
3時間目の数学IIの授業を抜け出して、こっそりとここへ来た。
セキュリティが超がばがばな自称進学校。
「鍵空いてたの普通にやばかったな…まぁでも、もうここにも来なくなるし、いいか」
左手の親指についている花の指輪を光らせながら、フェンスを攀じ登る。
「詩音がいなくなってから2年経ったよ。早いね〜…私、詩音が隣にいてくれた学校生活、楽しかったよ。ありがとうね、今会いに行くからね」
私はあの日と同じように涙を拭き、そう言った。
そして、いつも詩音がいた右を見た。
両手で顔を抑え、見えないようにしている詩音がそこにはいた。
「詩音…?詩音っ…!!」
すると、詩音はかすれた声で「花澄」と言った。
「待ってね、今行くから」と言う私に、「だめだよ、来ちゃだめ」と返す詩音。
「なんで、私詩音に会いたいよ、お願い」
泣きそうになっている声で、詩音の手を取った。
左目は潰れ、鼻は削れて骨が見えている。
血だらけになった頬と唇。
赤黒い血に染められた見苦しい見た目の詩音と、
私の指輪が太陽に照らされている。
「だって…花澄には生きててほしいから」
そんな言葉を言う詩音の右目からは涙が出ている。
肺が潰れているのか、声はかすれたまま。
「それでも、私は…そっちに行きたい」
「……そっか…じゃあ、待ってるね」
次、私が瞬きをしたとき、詩音の姿はなかった。
私は足を伸ばし、震える手でフェンスを押した。
自分の怖い顔が見えないように両手で押さえる、そういう詩音の優しさが、私はすごく好きだった。
胸ポケットに入っていた鮮やかな四つ葉のクローバーが、ポケットから出てきて、風に揺られひらひらと
舞っている。付けていた指輪は外れ、前髪は10月の
冷たい風で崩れた。
2023年、10月18日。午前10時56分。
コンクリートの地面には花の指輪が落ちていた。
テーマ「風に身をまかせ」
作品名「再会」
風に身を任せ、進んだ先に居たのは
猫だった。
それも、産まれてから数カ月ほど経つであろう子猫だ。
可愛らしいまん丸お目々
黒茶色の毛が彩りと散らされた小さいな身体
なぁーんと鳴く弱々しいようなそれでも信念の通った声
これは、運命的な出会いと言っていいのかもしれない。
親猫の姿は、残念なことに見えない。
まるで、この子だけここへ置いて行かれたように
何もない建物の隙間にポツンと座っていた。
どうしたことか。
この子を連れていきたい。
でも、
もし親猫がいたら?
もし脱走している猫だったら?
そんなことが頭を過る。
悩みに悩んでいると
子猫はまた、なぁーんと鳴いた。
その一声で
全てが決まった。
よし、飼おう。
責任持って必ず、立派な家猫にしてやる!
そう決意してから
数年後
今では、この家のボス猫になった。
可愛らしいかった声は
野太くなったが、まぁ、可愛いのに変わりない。
身体付きもだいぶ、大きくなった。
寝ようとすると、
顔に乗っかるものだから、息が出来づ
何回死にかけたか…
まぁ、可愛いから許すけど
で、なんだってこんな話をしたかって?
まぁ、そうだな
ただ、なんとなくさ。
君も疲れだ時とか
空を見上げてみたり
辺りをキョロキョロしながら冒険してみたり
あぁ、もちろん不審者と間違われないようにね
あとは…そうだな〜
あ!それこそ
僕みたいに風に身を任せて進むのもいいかも
まあ、無理せず
気のままに
自由なんて難しいけどさ
それでも、苦しい中で自由に近いものを見つけるのも大切だよ
他人事だから、別に頑張ってとは言わない。
頑張るは少しでいい。
それじゃ、そろそろ帰らないと。
うちのボス猫がお腹空かせて待ってるから。
健闘を祈るよ
:風に身を任せて
風に身を任せて生きていた。
昨日は昨日の風が吹いた、今日は今日の風が吹いた。
明日の風のことなど考えていなかった。
朝・昼・晩、朝・昼・晩。
繰り返される時間割、平日通って土日は休み。
なにをした、かにをした。
連絡帳すらまともに書かなかったあの頃。
褒められたことより叱られたこと。
与えられたものより取り上げられたもの。
振り返ってみても、いい性格をしている。
気付いたころには、生きていた。
朝・昼・晩、朝・昼・晩。
義務から権利へ、権利から義務へ。
衣・食・住、衣・食・住。
風に乗って運ばれてはこない。
昨日の風は、今日の風だ。
今日の風は、明日の風だ。
風に身を任せて生きていく。
風に身を任せて、目的もなにも決めないで考えないで歩いてみたい。けど、風がどの方向から吹いてるかなんてわからないかも知れないし、そもそも風に身を任せようとしても風が弱ければ進めないって考えたらどうでもよくなってきちゃった。
風に身をまかせ
風に吹かれて
どこかへ飛んで行きたい
ここではないどこか遠くへ
このまま身をまかせ
どこか知らない場所へ
そう思うのは
いつも
どこからでも
見守る大空が
そこにあることを
今 やっと知ったんだ
満員の電車に乗って、吊り革を握る。額にうっすらと汗が滲む。今日は、急に暑くなった。生ぬるい空気の中、風だけが上からきている。
電車は、何駅か飛ばして一気に進んでいく。窓をぼんやりと見ながら、今日あったことを思う。ゴトン、ゴトンという一定のリズムに揺られながら、なんだか思いもゆらゆらする。
夕方の電車は、空気が重い。たくさんの人の思いが立ち込めているようだ。ようやく駅に着くと、一気に空気が動いた。降りる流れに乗って、外に出る。
さぁーっと風が全身に当たった。ふぁーっと思う。広い公園でもなんでもない、人がたくさんいる駅の風が、とても心地よかった。
外に出ると、一層風が強くなった。色々な思いをきれいに吹き飛ばしてくれるような気がして、風に身をまかせて歩いた。
「風に身をまかせ」
ぬるい湿気を孕んだ空気が、肌にまとわりつくような夜だった。
網戸越しに響くセミの声に急かされるようにして、僕は家を出た。
駐輪場で自転車を引き出し、サドルに跨る。歩くのもいいが、今はもう少し、自分から風を迎えに行きたい気分だった。街灯の下に群がる虫たちを横目に、ゆっくりとペダルを漕ぎ出す。停滞していた夜の空気が動き出し、シャツの隙間を涼やかに通り抜けていった。
外に出たのは、特に理由があったわけではない。悩みがあるわけでも、空腹なわけでもない。ただ、部屋の天井を見つめているよりも、動いている空気の中にいたかったのだ。
住宅街の細い路地を抜け、大通りに出たところで足に少し力を入れる。歩きよりも速く、車よりも遅い絶妙な速度。向かってくる風に身をゆだねていると、体感温度が下がり、思考がじんわりと透明になっていく。
夜風で体温のぬるさを切り離した頃、目についたコンビニに自転車を停めた。何を買うかも決めずに、自動ドアをくぐる。明るすぎる店内で、特に欲しくもないアイスのパッケージをぼんやりと眺めた。結局、喉を潤すためだけに紙パックのカフェオレを一つ買い、店を出る。
帰り道、ふと見上げると大きな月が浮かんでいた。建物の影から抜けて、月光に照らされた道をゆく。
「明日もまた、暑くなるな」
そんな当たり前のことを思いながら、少しだけ軽くなった気分で、再び夜風の中へペダルを漕ぎ出した。
「ところで」
「ところで?」
「なんとなく最近のお題に軽い話題になるような傾向が?」
「世相を感じさせないように?」
「不用意に政治のネタにされないようにかな?」
「あー、なんとなくそれはありそう」
「このお題でも特定の政治的批判する人はするだろうけど」
「あー」
「まあ、創作は創作で好きにすれば良いんだけど」
「政治ネタもありだと思うけど、批判的なのばかりなのもねー」
「ところで」
「ところで?」
「思ったのは風に身をまかすのもそよ風と嵐では違うかなって」
「それはそう」
「飛ばされてしまう」
「……それはないんじゃ?」
「あーん?」
「あっ!」
お題『風に身をまかせ』
心の底から吹き上がってくる
風があるんだ
いつもは忘れている
あなたとの日々が
時々、不意に目の前をよぎり
昨日のことのように
息を吹き返す
それは二人が自転車で駆け抜けた
新緑の並木道だったり
ふざけながら食べた
かき氷のツンとした甘さだったり
驚くような懐かしさと
ひとかけらの後悔で
胸が締め付けられる
今はもう
何も書いていない日記が
パラパラとめくれてゆく
何かを叫びたい
でも届くことはない
心の底から渦巻くように
湧き上がる風
それは
二度と巡り合うことのない
あなたとの時間
心渦巻くサウダージ
わたしは時々、その風に
晒される
(テーマ 風に身をまかせ)
風に 身を任せて
土手に ただ座っていると
身体が 透明になっていく
ような 気がする
みている 美しいものが
そうではない かもしれないこと
みている 美しくないものが
そうではない かもしれないこと
自分が 透明になって
みているものと 一体になったら
どう 感じるのかな?
ぜ~んぶ 同じになって
味わってみたいな
風に身を任せて
ボクは 今日も ここで 目を瞑る
『風に身をまかせ』
ゆらゆらと
暖かな風に身を任せ
さらさらと
流れる小川に身を任せ
逆らうことなく過ごしている
頭上の太陽に目を瞑り
ただ流される感覚を
全身で感じ取る
まぶたが重い
緩やかな刺激がただ心地よい
ゆらゆらと
さらさらと
のたりのたりと一日を終える
そうだ
このまま眠ってしまおう
夢の中では
柔らかな雲の上で
また夢を見ているだろう