作家志望の高校生

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今日は風が気持ちいい日だ。
花から移り変わったばかりの、まだ元気のいい若葉をそよそよと風が揺らしている。
虫が落ちてきそうで若干怯えつつ、木漏れ日の温かさと、その隙間を抜ける爽快感のせいで木の下を通るのはやめられない。
虫嫌いなのに、こういうのどかなのが好きなのだ。自分でも難儀なものだと思う。
結局虫は落ちてこず、無事に帰宅することができた。
ほっと一息つきながら、ほんのり焼けた肌が若干ヒリヒリするのを感じる。そろそろ日焼け止めが必要かもしれない。
昔は5月ならまだ涼しかったのに、なんて誰に言うでもなくぼやきながら冷たい麦茶を飲めば、火照った体が丁度良く冷やされた。
部屋に引き下がって、いつも通り漫画を開いた。今日は帰り道に買ってきたばかりの新刊だ。
少し暑かった。けれど、クーラーを付けるほどかと聞かれればそうでもない。
なので、窓を開けた。途端に夕立の気配を孕んだ風が部屋に吹き込んで、籠もっていた、湿度の高いじっとりした空気が一瞬で塗り替えられた。
白いレースカーテンがふわりとはためいて、西日の光で空気を舞っている埃がキラキラと光っている。
ちょっと綺麗だったので、まだ掃除はいいか、と己への良い言い訳を見つけられた。
大本命、漫画を読もうとベッドに沈み込んだ。学校へ行っている間に母さんが干しておいてくれたようだ。陽だまりの匂いがして、普段より分厚い布団が体を包み込んだ。
小鳥の鳴き声と、少し陰った西日の光を風が運んでくる。
この後夕立が降るらしいから、少し水気も含んでいた。
新刊は期待を上回る展開で、次巻の更新が待ちきれない。
なんてことのない、あまりにのどかな金曜日の夕暮れだった。
ベッドサイドに置いた漫画のページが、風にさらわれてぱらぱらとひとりでに開いていく。
さぁ、と降り出した夕立の音を聞いて慌てて窓を閉めると、漫画はぱたりと閉じてしまった。
自分も本のページのように、自由に風に身を任せてみたいな、と淡く思いながら、窓の向こうで降り続く雨の音をぼんやり聞いていた。
明日は土曜日。風を感じたくなったから、自転車でどこかへ出かけようかと計画を立てだした。

テーマ:風に身をまかせ

5/15/2026, 8:44:31 AM