『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
子供は風の子
冷たい風の吹く日でも元気に外で駆け回る子供という意味。つまり、風と友達…のようなニュアンスなのだろうか。
ならばなぜ、風は私たちを乗せてくれないのだろう。風に乗ってどこか遠くへ行きたいと願っても、風は何をしてくれないどころか、時折私たちの行方を阻む。
もしも風に乗れたなら。私のこの深く沈み荒んだ心も、少しは高い場所に、浮かび上がれるのだろうか。
ー紙一重ー
時々、分からなくなる時がある
本音を言わないことが思いやりなのか
言葉を飲み込むことが優しさなのか
心の耳を塞ぎながら話を聞くのが寄り添うことなのか
相手の気持ちと自分の気持ち、
優先すべきはどちらなのか
きっと誰にも見えない涙を流しながら
相手と向き合っている
どうか気づいてあげてほしい
その優しさの裏に隠れている限界の心に
お題『風に乗って』
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穏やかな春の陽気。涼し気な風。ふかふかの芝生。湿度も……うん、高くなくてカラッとしている。ここ数ヶ月で1番の天気だ。
私は家の近くの丘にやって来て、ひとり満足気に頷く。
「よし」
私はほんの少し勢いをつけて芝生に倒れ込んだ。思ったほどクッション性は無かったが、それでも芝生は私を受け止めてくれる。
仰向けに転がると、私はそっと目を瞑る。太陽は眩しすぎず、全身にほんのりと熱を与えてくれる。
「あぁ、良い天気だ」
あまりにも穏やかな時間が流れる。心地良さのあまり、私はいつの間にか微睡んでいた。
夢の中で私は、空に浮かんでいた。空を飛ぶのではなく、浮かぶ。自分の意思で動くことはなく、ふわふわと空に浮かぶ。
私の横を鳥たちが忙しなく飛び、地上を見ると人々があくせく働いている。
でも、私は空に浮かぶ。ふわりふわふわ、ふわふわり。私は風に乗って、ゆっくりと穏やかに動いていく。どこを目指す訳でもなく、風に乗って、どこまでも、どこまでも。
大きな大きな海の真上まで来たところで、幸せな微睡みから、ゆっくりと意識が浮上してくる。そっと瞼を開くと、太陽の優しい光が目に入る。
体をゆっくりと起こし、持ってきていた魔法瓶から温かいスープを注ぎ、一口飲む。
「明日からも、がんばろう」
どこまでだっていけると信じてた幼心
いつから?いつから
「現実」を見るようになったのは
待っていてもヒーローはこない
この手から魔法はうみだせない
目に見えるものは信じられなくなる恐怖心
びゅう…と、通り過ぎた
振り返って目を伏せの嘲笑
前を向いて駆け出す微笑
時代(かぜ)にのって今日も
落胆とほんの少しの大志を胸に
#風に乗って
いつものように空を眺めていた
雲が綺麗な日だった
空を滑るように二羽の鳥が飛んでいた
時々二羽が交差したりして
仲良さそうに見えた
なんとなくぼんやり眺めていた
飽きもせずに
正直なところ羨ましかった
仲が良さそうなのも
自由に飛び回っていることも
ルールや時間に縛られて
人付き合いにくたびれて
社会で無難に過ごせるように
自分で自分を縛りつけているから
雁字搦めで解くのにも
解き方がわからないぐらいに
いつかはあの鳥のように
大空を自由に飛びたい
風に乗ってどこまでも遠くまで
お題: 風に乗って
【風に乗って】
風に乗って、どこまでも飛んでいける。
手放した風船の後を追う。
なんだか、少しうらやましい。
そう思っても、私は重すぎて飛べやしない。
マイ・テリトリー
金網をくぐった先が私の居場所だ
空気がひんやりしていて、雑音が遮断されている
昨日の雨水の流れる音がトンネル内に反響している
ここなら、汚れた電波が飛び交っていない
立ち入り禁止の場所に、私ひとり
危険はない、私有地でもない、高速道路の下
昼間でも薄暗いトンネルに、雨水と私
体育座りをして、壁によりかかる
誰も私を探さない
日が暮れるまで、ここにいよう
何もしたくないから、何もしない
まるで墓の中にいるみたいだ
死んだら墓の中に誰かが私をいれてくれるはず
少なくとも、ここにいれば爆弾が飛んできても大丈夫そうだ
ここは私の領域。
#風に乗って
美しきかな。
崖の上から見える水飛沫はいい。テレビとかドラマとかでしか見た事なかったから。
ふわりと体が宙に浮く。水面へ落ちたつもりだったが、岩が目の前に迫る。上手くはいかないものだ。
……美しきかな、美しきかな。我が体に流れている赤き血は、こんなにも綺麗だったのか。
死んだ人は風になる。空の果てへも、海の上へも、深い森の中へも、どこにだって自由に行けるようになる。それを与太話だと、まさかそんなことあるわけないって鼻で笑ったこともあったっけ。
しかしいま、私はそよ風だった。
春のそよ風は魂を運ぶゆるやかなくだり坂である。
「どうかな、私の背中は」
私の腹の下ではいろんな頭がうごめいていた。私の背に乗るあの子と同じ名前を樹を見て、酒を飲み、笑っている。たまにそういう騒ぎの横を通っていく。あの子と仲の良い誰かがいれば少しは楽しいかと、親切心からだった。
あの子は何も言わない。魂ってそういうものらしい。
「それじゃあ、そろそろ下に行こうか」
私もすでにいろんなことが曖昧だった。人間だった頃はなにひとつ思い出せない。
このあいだ、もしくは先日、いや、昨日? 一時間前? なんとなく、昔は風になることを馬鹿にしていたなァと、考えた事実を覚えていた。それだけで前述のとおり、斜に構えた人間だったと自覚している。
ではどうして寡黙な魂の名前を知っているのだろうね。私の産んだ子供だったかもしれない。それとも気の置けない友人だったかしら。
「なんにせよ、ちゃあんと運んであげるとも」
魂は震えたように感じた。私の腹の中で笑っているようにも思えた。
ひとしきり動き回って満足したので春の風は魂を天まで運んでやった。
地下深く、土の合間、つぶての脇、そういうものの奥に天がある。風はくだってくだって、底の奥。
もし君が生まれ変わって私の子、風の子供になったならもう一度一緒に飛び回れるかしら。
背中に乗ることがそんなに好きなのか、魂はまた暖かく震えていた。
風を切り
全力で漕ぐ
二本足
乗せた君の手
掴む背の熱
照れた顔を『風に乗って』冷まさなきゃ
風に乗って移動できたらどんなに便利だろう。
都会で行列に並んで美味しいものを食べて
歴史的な建築物を見ながらお散歩をして
海を渡って異国でお洒落しちゃうのもいいかも
楽しい気持ちで心がいっぱいになったとき、河原に座る私の後ろから強い風が吹き抜けた。
もし、移動中に突然嵐が吹いたらどうしよう。望まないところまで飛んで行ってしまって、ここにはもう帰ってこれないかもしれない。
お母さんが作る温かいご飯
友達とする何気ない会話
憧れのあの人の後ろ姿
大好きな自分の日々が風に乗ってしまったら2度と経験できないかもしれない。そう思うと心臓がズキズキと痛んだ。頭を左右に強く振って考えを打ち消し、芝生の上に寝転がる。
先程とは違う心地よい風が私の頰を撫でた。空を飛ぶ小鳥の鳴き声が耳に届く。私はそっと瞼を閉じた。
風に乗るのはまた今度にしよう。
訪れる眠気に従い、私はゆっくりと夢の中へ落ちていった。
夢の中で私は今と変わらない平和な日常を過ごすのだった。
風に乗れるものは
海を渡って、どこへいくのか
異国の砂漠を抜けて
世界の先端をも超えて
宇宙の入り口から
誰にも解らないところまで
そんなに遠くへ行ったとして
君は君でいられるのか
僕のことを覚えていられるのか
もっと手前でいいんじゃないのか
房総半島の海岸はきれいだ
ひとけのない砂浜には
あらゆるものが落ちている
君のよく知っているものも
初めて見るものも
宇宙の欠片だってあるかもしれない
それでも君は遠くを目指す
君は風に乗れる者だから
例え僕のことを忘れてしまっても
風が吹いたら行ってしまう
テーマ《風に乗って》
・声が届く
・気持ちが届く
・愛が届く
・やることが上手く行く
風にのって
風にのって何かが運ばれていく。それは声か、思いか、風船か。
あるいは悪意か、噂か、誤解か、あの人の無事を報告する知らせか。
今日も空気と一緒に何かが私のもとへたどり着く
自分の手のひらくらいの大きさの小鳥
小さい子供がフゥと飛ばすシャボン玉
木々の隙間を通る風の音
頬を優しく撫でる風
ほんの小さな力なのに、
それは本当に温かく、時には冷たく、私たちを包み込む。
今、私の体はありえないくらいに軽く、誰も私の存在に気づかない。
あれほど望んだことなのに、いざ叶うと何かぽっかりと穴が空いた気分だ。
それに、どこからか聞こえてくるすすり泣く声が
私の頭の中に木霊する。
今更、“ ごめん ”と言っても、その声は届かない。
私の声は風に溶け込み、誰にも届くことなく散っていく。
私の涙は伝うことなく消えていく
まるで、シャボン玉が弾けるように。
近くに桜の木なんてないのに、
ベランダに花びらが一枚、飛んできたことがある。
なんとも言えず風流で、いい気持ちになった。
どこのポイ捨てだったか知らないが、
駄菓子の空袋が飛んできた時とは
正反対の気分だった。
※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン
ぱちん、ぱち。
赤の破片が舞ってすぐに消えてゆく。頬に触れる仄かな暖かさがじんわりと滲んで染み込むようだった。懐かしい木材に似た香りが燻って、鼻腔を焦がしてゆく。
次々と踊る真っ赤な粉は、その姿を見せたかと思うと、瞬きをしている間に闇夜の中へと溶けていった。
ぱち、ぱぱぱ。
耳に届くのは軽快な彩りの音だった。弾けてはすぐ聞こえなくなる、ほんのミクロが爆発する声は、耳をすまさなければ木の枝と枝が触れ合う音にかき消されてしまいそうだった。
ふう、と空気の流れに押されたたくさんの手と手は、ぐるりとその場で激しく踊り、飛び散るように光を失って落ちてゆく。
流麗なあわいの火の粉の舞と、麓の石炭の山の輝きがふわっと強まったかと思えば、吸い込まれるようにして落ち着いた色に変わってゆく。
ぼんやりと瞼を開いたマクワの目に映る、温かいひかりだった。いつの間にか座ったままうたた寝をしていて、そうして目を覚ました。暗闇の中のキャンプのテントも、光に照らされて鮮やかなブルーを示していた。
片手に持ったままの、さっき相棒に持ってもらったモーモーミルクのマグカップはすでに人肌の方が温度がある。
マクワはそれを一気に飲み干して、自分の折りたたみ椅子に付いていたテーブルにのせた。それからまだぐうぐうと眠ったままの相棒に寄せて、座ったまま椅子を抱えると、頬を温める熱はさらに強まった。
ぱ、ぱぱ、ぱちん。ぱちん。
新鮮な酸素を食べた炎が、喜びの声をあげて火の粉を舞い上げる。すぐに真っ白の灰になり、夜空の中へと滲んでゆく。
優しく猛々しいバディのいのちが今マクワの隣にあって、絶えず煌めき続けている証左だった。
どこまでも、どこまでも飛んで行けるといい。なるべく遠くの空の下まで。
いわの輝きはひとの心も照らし出すことを、誰よりも知っていた。
けれど。
ぱちん、ぱちん、ぱちん。
どうかこの灯火が、ずっと隣にあり続けますように。ぼくが磨く、素晴らしい輝きが、たくさんの人に届けられるように。
マクワはふう、と大きく息を吹き、火の粉が揺れ踊る姿を目に焼き付けて、再び目を閉じるのだった。
《風に乗って》
風に乗って微かに声が聞こえてくる。
懐かしい旋律は高校の頃に見たアニメ映画の主題歌。
時おり音程を外すその歌声に、思わず笑みがこぼれる。
歌詞は覚えていなかったから、こっそりハミングで合わせて口ずさむ。
外で洗濯物を干す妻には、きっと部屋の中にいる私の声は聞こえないだろう。
歌いながら脳裏に蘇るのは、スクリーンの鮮やかな光景。
そして、初めてのデートに緊張して手に汗をかいていた若かりし頃の自分。
隣に座る彼女をチラチラと横目で盗み見るばかりで、映画の内容はろくに頭に入ってこなかった。
「今日のお昼はオムライスにしようと思うんだけど」
「いいね、ちょうど食べたいと思ってたんだ」
あの初デートの日、映画の後に食べた昼食もオムライスだった。
そんなことを今もしっかり覚えている自分に笑いが込み上げてくる。
しかし、あの歌を口ずさんでいた妻が昼食のメニューをこれにしてくれたことが嬉しいのも事実で。
それがたまたまなのか、自分と同じくあの日を思い出してのことなのかは分からないけれど。
今夜は久しぶりに2人であの映画を見たいといったら、妻はなんて言うだろうか。
笑顔になってくれることを祈りながら、その日の午後、私はしまい込んだDVDのケースを引っ張り出したのだった。
風に乗って、あなたの香りが飛んでくる。
その風は君の髪をなびかせる。
恋は風に乗って、想いを届ける。それは香りだったり、手紙だったりするだろう。形は様々だ。
君が死んだと、風の便りに聞いた。病死だそうだ。
君は海が好きだった。だから、骨は遺言通り海に撒かれたらしい。
私の涙も、いずれは海に流れ君と一緒になる。ああ、それは望ましい。そんな幸せはない。
だけど、その前に。君の骨が、その粉が。風に乗って、私の元へ飛んで来ないかと、帰っては来ないかと、海を越え、私は空を見上げた。
風にのって届けられのは、吐き気をもよおす便所の匂いでした
in 市民体育館