風に乗って移動できたらどんなに便利だろう。
都会で行列に並んで美味しいものを食べて
歴史的な建築物を見ながらお散歩をして
海を渡って異国でお洒落しちゃうのもいいかも
楽しい気持ちで心がいっぱいになったとき、河原に座る私の後ろから強い風が吹き抜けた。
もし、移動中に突然嵐が吹いたらどうしよう。望まないところまで飛んで行ってしまって、ここにはもう帰ってこれないかもしれない。
お母さんが作る温かいご飯
友達とする何気ない会話
憧れのあの人の後ろ姿
大好きな自分の日々が風に乗ってしまったら2度と経験できないかもしれない。そう思うと心臓がズキズキと痛んだ。頭を左右に強く振って考えを打ち消し、芝生の上に寝転がる。
先程とは違う心地よい風が私の頰を撫でた。空を飛ぶ小鳥の鳴き声が耳に届く。私はそっと瞼を閉じた。
風に乗るのはまた今度にしよう。
訪れる眠気に従い、私はゆっくりと夢の中へ落ちていった。
夢の中で私は今と変わらない平和な日常を過ごすのだった。
4/30/2023, 9:32:16 AM