大人になる前に死にたかった私へ。
死にたい気持ちを抱えたまま大人になってしまいました。
貴方が抱いていた不安も、悩みも、苦しみも、表面上の変化はあれど根本的なものは変わっていません。相変わらず「死にたい」と口にしながら生きています。
命を断つことも何度も考えましたが、その後の周りへの迷惑を考えると行動に移すことはできていません。死ぬ瞬間は一瞬なのに何とも面倒くさいことです。
あの頃の私、生きる理由のない私。
結局理由なんて見つからないまま今日も私は生きています。
自分の人生に未練などないので出来るだけ早く死にたいものです。
未来の私より
あぁ、でも…大好きだった物語の最後を読めないのは少しだけ残念かな。
「涙の塩分濃度は一説によると生物が誕生した頃の海と同じらしいよ」
恋人にフラれて悲しんでいる私を前に、憎たらしいほどの笑顔で幼馴染は言った。
「…、慰めてるつもり?」
「いいや?」
「アンタね…茶化したいだけならどっか行きなさいよ」
「行かないよ」
膝を抱える私の隣に幼馴染が座る。泣き腫らした私の顔を臆面もなく覗き込んできた。昔と変わらない真っ直ぐな瞳が私を貫く。
「綺麗な君の目から原始の海を拝める大チャンスだ。涙が止まるまで傍にいるよ」
「…は?」
「ありゃ?止まっちゃった」
平然とする幼馴染の言葉に私の顔は禁断の果実のように真っ赤になるのだった。
真夜中にふと泣きたくなることがある。太陽のある昼間なら平気なのことが、暗闇になると恐怖として襲いかかってくる。
怖い。寂しい。苦しい。死にたい。
寂寥感から来る涙を止める術は見つからず私はただ朝が来るのを待つ。
人生は選択の連続である。
右か左、どちらかしか選べないなどよくある話だ。
私は今朝1つの大きな決断をした。
そしてその結果が目の前にある。
結論から言えば私の選択は間違っていた。
やり直せるならば朝の自分に戻りたいがそれはできない。
じわりと滲む視界にぐっと唇を噛む。
後悔しても時間は返ってこない。
私は覚悟を決めて手を伸ばした。
湿った感触が肌に触れる。
「………。洗濯全部やり直しだぁ…」
降水確率50%に賭けた自分が悪かった。
「すきだよ!」
「わたしもすき!」
幼馴染の女の子。幼い頃から僕らは両思いだった。
僕が好きと言えば君も好きと返してくれて、君が好きと言えば僕も好きと返した。
「世界で1番大好きだよ!」
「ふふっ、私も大好きよ」
大きくなってからも僕らの愛は変わらなくて。お互いの両親や友人に見守られながら愛し合っていた。
大人になったら結婚するんだって、白詰草の指輪を交換して笑った。
「好きだよ」
「…」
「ねぇ…大好きだよ…」
それなのに君はある日突然冷たくなってしまった。何度好きと伝えても言葉が返ってこなかった。
「可哀想に交通事故だったんですって…」
「男の子だけ助かって女の子の方は…」
「あんなにお似合いだったのにねぇ…」
周りの声が煩くて、君を抱き上げて煙が薫る部屋から抜け出した。幸せでいっぱいだった君の身体は、僕が両手で抱えられるくらい小さくなってしまった。
「あのね、君に伝えたいことがあったんだ」
あの日渡せなかった本物の指輪を君の上に乗せる。金属と金属がぶつかる音が小さく響いた。
「僕と結婚してください」
君の返事は返ってこない。
「好き」
「大好き」
「愛してる」
いつも聞こえる君の声がしない。
両目から涙がこぼれ落ちた。
「…っ!ずっとずっと大好きだよ…っ!!」
止まらない涙ともに君への愛の言葉を吐き出す。
声が枯れるまで叫んでも、君の答えは最後まで返ってこなかった。