カガミ

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「すきだよ!」
「わたしもすき!」

幼馴染の女の子。幼い頃から僕らは両思いだった。
僕が好きと言えば君も好きと返してくれて、君が好きと言えば僕も好きと返した。

「世界で1番大好きだよ!」
「ふふっ、私も大好きよ」

大きくなってからも僕らの愛は変わらなくて。お互いの両親や友人に見守られながら愛し合っていた。
大人になったら結婚するんだって、白詰草の指輪を交換して笑った。

「好きだよ」
「…」
「ねぇ…大好きだよ…」

それなのに君はある日突然冷たくなってしまった。何度好きと伝えても言葉が返ってこなかった。

「可哀想に交通事故だったんですって…」
「男の子だけ助かって女の子の方は…」
「あんなにお似合いだったのにねぇ…」

周りの声が煩くて、君を抱き上げて煙が薫る部屋から抜け出した。幸せでいっぱいだった君の身体は、僕が両手で抱えられるくらい小さくなってしまった。

「あのね、君に伝えたいことがあったんだ」
あの日渡せなかった本物の指輪を君の上に乗せる。金属と金属がぶつかる音が小さく響いた。
「僕と結婚してください」
君の返事は返ってこない。

「好き」
「大好き」
「愛してる」
いつも聞こえる君の声がしない。
両目から涙がこぼれ落ちた。

「…っ!ずっとずっと大好きだよ…っ!!」
止まらない涙ともに君への愛の言葉を吐き出す。
声が枯れるまで叫んでも、君の答えは最後まで返ってこなかった。

5/12/2023, 9:15:20 AM