「涙の塩分濃度は一説によると生物が誕生した頃の海と同じらしいよ」
恋人にフラれて悲しんでいる私を前に、憎たらしいほどの笑顔で幼馴染は言った。
「…、慰めてるつもり?」
「いいや?」
「アンタね…茶化したいだけならどっか行きなさいよ」
「行かないよ」
膝を抱える私の隣に幼馴染が座る。泣き腫らした私の顔を臆面もなく覗き込んできた。昔と変わらない真っ直ぐな瞳が私を貫く。
「綺麗な君の目から原始の海を拝める大チャンスだ。涙が止まるまで傍にいるよ」
「…は?」
「ありゃ?止まっちゃった」
平然とする幼馴染の言葉に私の顔は禁断の果実のように真っ赤になるのだった。
5/22/2023, 9:29:04 AM