『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雫、ドロップ、ビー玉、ラムネ。
綺麗なものを集めたい。
透き通っていて、キラリとひかるもの。
雫がきらめく貴方の目元にそっと親指をおき雫が溢れないようにすっと拭き取る
普段からは想像できないほど弱った貴方
ずっとずっと我慢してたんだね。
貴方が沢山笑うのは、涙をぐっとこらえるためだったんだね。私、酷いや。好きな人をこんなに泣かせちゃった、最期は、二人共笑顔でお別れしようと決めてたのに、
あぁ、看護師さんたちが慌ててる、
私、終わりそうなんだね
でも、良いよ最期に貴方の顔見れたから…
そんなに泣かないでよ、笑えなくなるじゃん
大丈夫だよ。貴方は、強いから。私以外の人と幸せになってね。
もしも、貴方が泣いてたら神様でも何でもぶっ飛ばして転生でもしてあなたのこと助けるからね。その時は、おかえりって言ってね
じゃあ、逝ってくるね、
【雫】
熱い雫が頬を濡らす。
辛いわけでも、悲しいわけでもない。
なんの意味などなく、ただ涙が溢れてくるのだ。
人間そんな時もある。
ただそれが世界が自分にとって優しいものだからなのか、
はたまた、世界が自身にとって優しくないからなのか、
きっと色々な考えが渦巻いている。
それでもワタシは世界がワタシにとって優しいものであると思いたいのだ
雫
「みてー! 何にもなーい!」
少女の元気いっぱいの声が響く。その声につられてそちらを向けば、見慣れた景色とは大きくかけ離れていた。
一ヶ月、いやもっと経っているだろうか。日にちの記憶は曖昧だが、相当な時間が経っていることだけはわかっていた。
何日も、何日も降り続いた雨は水位が増した川のように建物を沈ませる。十階ほどあったこの建物もほとんど浸水してしまって、十階部分と屋上だけが水上から飛び出ているようになっている。
この辺り一帯は背の高いビルはあまりないから、見晴らしのよすぎる景色になってしまった。
久々に晴れた空に懐かしさを感じているとベランダに置かれたバラの花びらに溜まった雫がゆっくりとこぼれ落ちる。
水面が円を描くように揺れて広がり、やがて消えていく。
「これからどうしようねぇ?」
そんなことをのんきに考えながら、果てまで続く水平線を見ていた。
貴女が笑って色々な話を私の隣でする、それがどれだけ幸せなのか私はその時まだ知らなかった。貴女が居なくなってから貴女が隣にいる、笑っていることの幸せに気が付いた。棺桶のなかに居るひどく肌を白く塗られた貴女を見たとき。私の瞳から雫が落ちた。
こぼれ落ちる。
知識経験記憶までも。
数分前のことは分からない。
数年前のことも分からない。
幼少期のことならなんとなく。
あなたはわたしの大切な人。
あなたから見たわたしは幼なじみ。
#雫
麻袋のなかで蛇がとぐろを巻いていた。玄関を出て道路までの窮屈な庭に、母が所狭しと植物を植えている。通り道を塞ぐように根っこに土がたっぷりついた草達が並々に入ったそれを足で跨ごうとしたところで、目があった気がした。ズザズザズザザザ‥‥‥ゆったりと麻袋の擦れる音がする。奥へと入り込んでいくその尻尾の先をじっと見やる。何年か前に畦道で蛇の交尾を見た。絡み合いながら体の半分は宙に浮いていて、その筋肉に驚愕したのだった。道路際の花壇の、水やりしたあとの草花の葉先から雫が滴る。気付けば靴が濡れていて、なんとなく、蛇が靴を這っていくところを想像してみる。蛇に滅多に出くわさないものだから、あの袋を突付いて蛇が飛び出すところを見てみたい心がそうさせた。
僅かな希望を
天に祈るよう
見上げた空
あの日の朝を
思い出すよう
庭に咲く
紫陽花の葉から
流れる落ちる雫
もう
泣かないで
辛くないよ
苦しくないから
どこにいても
一人にしないから
そう言って
大切なあなたを
抱きしめたい
ピアノの鍵盤をひとつ、ふたつと叩くように、雨はゆっくりと降り始めた。降ってきたねと呟いて、あなたはふたつ並んだカップにお茶を注ぐ。ティーポットを掴む指は細く長く、適度に節の立って美しい。
携帯の画面に目を落とすふりをしながら、その優美な手をシーツに縫いつけることを考える。やがて注ぎ口からぽたりぽたりと滴る琥珀色。目の前に置かれたカップから香り高い湯気が立ち昇る。
「今、何か変なことを考えていなかった?」
あなたは意外に勘がいい。
「変なことってなあに?」
アタシはすっとぼけてニヤリと笑い、カップに口をつけた。口中に広がる芳しさを楽しみながら、ゆっくりと飲み下す。何を考えていたかって?そうね、例えば。これからあなたの頬を濡らす涙について。それとも上気した肌を伝う汗について。これからゆっくり教えてあげる、アタシのお姫様。
窓硝子を淫らに這う雨が、とろとろと官能をなぞる。ピアノの鍵盤を叩くように、アタシの指はあなたを奏でるだろう。あなたのこぼす雫は地面に染みこむ雨のように、アタシの耳を濡らすだろう。
雫
夕暮れの帰り道、だったと思う。重い鞄を肩に提げながら、今しがた角で別れた彼奴を振り返った。其処には、じっと此方を見つめる姿があった。微笑むような少し寂し気な瞳が、何かを傳えようとしている。それが永い時間に思われたけれど、其の儘踵を返して、行ってしまった。
其れから何度も、その道を通る度に、あの姿を探して仕舞う。時が経ち、もう逢わないと想いつつ。あの瞳から零れた雫を想出しながら。
息白く風切る君のまつげに六花
(冬の朝。自転車で登校してくる君の睫毛はいつも凍ってきらきら輝いている)
テーマ:雫
あ、雫が落ちた。
私の頬から、雫が落ちた。
どうして泣いているんだろう。どうしてこんなに悲しいんだろう。
雫は答えない。
雫はそのまま、私の手を叩いた。
まだ暖かい。
まだ暖かい。
『雫』
雫
君の涙は雫のようだった。
たった一滴だけれど,精一杯の気持ちが
詰まった雫。
あれ以来,僕たちの関係は少し変わった。
たった一滴の君の雫が僕の汚れを洗い流してくれたのかもしれない。
血が止まったものの,足元がふらつく。
家族にも,学校側にも秘密で登校している。
だって,どちらも僕の味方ではいてくれない
だろうから。
雫
節約節約してる自分は思う
料理番組等の卵をといたあと
フライパン等に流し入れる
その時、最後の一滴まで入れないの?
節約生活してる自分は思う
煮物や炒めものの残り汁
それをリメイク料理に使わないの?
雫の題目で綺麗な印象に結びつかない自分は
綺麗じゃないからか?😁
/雫
しりとりのめぐる輪のなかに
ひたり、と 沈黙が落ち
耳の底に氷がひとかけ溶けた気がして
誰かが「幽霊だ」などと叫ぶので
ちりぢりになってしまう
ずん、と地がひびき
人びとは足を止め不安に見かわす
列車は止まり 踏切は鳴り続け
それら全てをうつして
壊れた水道の口から一滴がふくらむ
くちびるに落ちる雨粒は
広い天から
どうやって私を目がけ
墜落(おち)てきたのだろうと
いつも思うが
思いつくことはどれも空虚で
せめてうたを紡ぐこの唇だけは、と
天から落たもので湿(しめ)して濡らして
今日もこればかりの
しずくうた。
水に滴った雫は我々には一滴
拡大すると何滴も何滴も分裂している
なんだか花火みたいだ
空に咲く花火と水面に咲く花水
これだと呼び方がはなみずになっちゃうなぁ ずびびび
お題:雫
雫
落ちるその先に貴方の影を見た
僕を透かすような貴方の瞳を
見つめることは叶わない
しずくときくと、
綺麗な感じがする。
窓を打ちつける雨よりも
かなりおとなしいしずくの音。
音もなく滑り下りる。
静かに地面を濡らし、ときに頬をつたう。
夏の夜には露で濡れた野草が電灯に照らされ、
ホタルと見間違えるほどのきらめきを持つ。
しずくに知らず知らずに癒やされている。
しずくみたいなそんな人になれたらいいな。
#007 『画家の告白』
ややFT/微ホラー
田舎暮らしに憧れて越して三月目、近くに高名な画家が住んでいると聞いて、会いに行くことにした。もっと早くに知りたかったとぼやいたら、せっかくのスローライフが台無しだと妻は言う。
「仕事人間に戻られちゃたまんないわ」
もっともな言い分かと主張を引っ込め、森を訪ねる許可をもらった。
村外れの一軒家を通り過ぎた時、どこまで行くねと声をかけられる。画家に会いに行くと答えると、住人はカンカン帽を持ち上げてしかめっ面をした。
「画家先生ねえ。なんの用事があるんだい」
「用事ってわけじゃないけど、ぼく、学芸員だったんです。こっちへ越して来る前ね」
「へぇ、学芸員。学者さん?」
否定も肯定も面倒で、適当に返事を濁しておいた。
「関わらない方がいいよ。悪いことは言わないからさ」
多くは語らない住人にあれこれ尋ねることはせず、森へと踏み入ることにした。
そこは静かな森だった。人の気配がないのは当然としても、小動物を見かけることもなく、小鳥のさえずりさえ聞こえない。
風がそよげば木の葉は揺れる。初夏の爽やかな風は心地いい。だが他に音を立てるものは何もなく、土を踏む足音が奇妙なほどに耳に障る。
かの画家を一躍有名にしたのは『最初の沈黙』という作品だったことを思い出していた。画面いっぱいに描かれた女性の魅惑的な唇とその前に立てられた指。顔の上半分が帽子で隠され、読めない表情。ぷっくりと艶のある唇は今にも動き出しそうで、じっと見入ってしまったものだった。
森には生き物の気配がなく、見回してみれば立ち枯れた木が多い。
画家の絵にあった、どちらかと言えば都会的な空気と艶かしい生命力。森からはそのどちらも感じとれない。
ぼくとは逆に、都会への憧れを形にしたのだろうか。不思議に思いながら静かな森を進むと、ぽつんと小さな家にたどりついた。土壁に茅葺き屋根の素朴な家は、やはり絵の印象にはほど遠い。
人物像をまったく知らないと今さらながら思い当たった。村外れの住人の様子を思い出す。村人とは交流せず、噂話にも上がらない。よほど偏屈な変わり者なのだろうか。
にわかに緊張を覚えながら家に近づくと、ノックする前に扉が開いた。現れたのは年嵩の男で中肉中背、気難しそうな印象はない。
挨拶がてら自己紹介すると、老画家は破顔した。実に人のよさそうな笑顔で何度もうなずき、訪問の礼を言い、家の中へと招いてくれる。
「お茶を淹れましょう。気の利いた菓子はないが、木の実の砂糖漬けも美味いもんです」
誘われるまま踏み入った家には、所狭しとキャンバスが並べられていた。顔の下半分しか描かない画家と思っていたが、どうやらそうではないらしい。ただし、並ぶ絵はどれも未完成だった。
「いや、お恥ずかしい。描きかけばかりがあふれて、アトリエには収まらなくなって」
老画家は困り顔で笑う。いかにも人懐っこそうな笑顔だ。村外れの住人が見たら考えを変えるのではないか。
茶が入るのを待つ間、椅子には座らず絵を見せてもらうことにした。少女から大人の女性まで、何層にも絵具を重ねた筆致。瞳の中とあの唇の艶入れを残すばかりの絵の数々。肌の塗りは十分に瑞々しくて、艶さえ乗れば今にも喋り出しそうだ。
艶入れは得意だろうに、こだわりが強すぎて塗れなくなったのだろうか。瞳の光はどうだろう。彼の描く瞳は一度も見たことがない。
完成品を想像しながらくるりと向き直った時、窓越しの風景に違和感を覚えた。木々は青々と生い茂り、太い幹をリスが駆け上がる。窓際には蝶々がひらめき、その向こうには鮮やかな花々が揺れる。豊かな茂みからウサギが顔を出し、木漏れ日は大地に落ちてキラキラ輝く。
窓の向こうに、通り抜けてきたはずの枯れた森はなかった。
嫌な予感が込み上げる。家に入ってはいけなかったかもしれない。
窓の外で子供の笑い声が弾けた。年端もいかない子供が駆け抜けていく。
「あれはね、娘です。もうとっくに大人になっていたはずだが、今でも幼い」
唐突に後ろから声をかけられ、心臓が口から飛び出すかと思うほどに驚いた。
「お茶が入りましたよ。なに、飲んでもなんのことはありません」
老画家の声にも表情にも、暗い影が乗ったようだった。
老画家は客人を通り越してテーブルに茶器を置く。背を丸めた姿は寂しく老い、無数の後悔を重く背負うかのよう。
「昔はね。気づいてもおりませんでした。気のせいだと思っていた。明日には開くはずだった蕾が落ちようと、小鳥が力尽きて地に伏せようと」
老画家は音を立てて椅子を引き、重い体をひきずるように回り込んで腰を下ろした。
「あたしは描いてはならんのです。もっと早くに気がつくべきだった。雫で描いている自覚なぞありませんでしたよ」
返事を求めもせず、まるで独白のように老画家は告白する。
「雫が乗るとね、まるで生きもののように動くんです。早く筆を降りたい、絵になりたいとね。おかしいと気づいたのは、体力が自慢の家内が突然倒れてからでした」
それでは、突然絵を発表しなくなったのは━━。
問いは言葉にはならなかった。ただ身体中の血がざわつき、駆け巡るのを感じるばかり。
「地獄の茶でも果物でもない。飲み食いしても何も起こりはせんでしょう。ただ、長居はするべきではないかもしれない」
老画家の忠告に曖昧な声で応じ、ふらふらと玄関先へと向かう。
後方から風がささやくような音がいくつも聞こえた気がしたが、振り返ることはできなかった。家にいるのは老画家一人のはずなのに、無数の視線を注がれているような気分だった。
窓の外、楽しそうに笑い転げる子供の声がする。
込み上げる予感を押し殺し、生唾を飲み込み、怖々開けた扉の向こうには、寂れた森がただ広がっていた。
《了》
お題/雫
2023.04.21 こどー
雫
が落ちている。
散歩でもしようかと踏み出した私の足を遮るように。
すくいあげようか、無視したものか思案する。
シアンバター。
今朝いれたコーヒーはもうひとつであったな。
それが雫となって足元に落ちたのだろうか。
とりあえず歩き出そう。
挨拶を交わすだけの交友など何が楽しいものだろうか。
しかし話し込むのも大変骨が折れるものだ。
それで私は鳥を眺め、花を愛でている。
今日はとても暑い。ぎんぎんぎらぎらの春なんです。
目が合って笑うということの中に含まれるものを解き明かしていく。