/雫
しりとりのめぐる輪のなかに
ひたり、と 沈黙が落ち
耳の底に氷がひとかけ溶けた気がして
誰かが「幽霊だ」などと叫ぶので
ちりぢりになってしまう
ずん、と地がひびき
人びとは足を止め不安に見かわす
列車は止まり 踏切は鳴り続け
それら全てをうつして
壊れた水道の口から一滴がふくらむ
くちびるに落ちる雨粒は
広い天から
どうやって私を目がけ
墜落(おち)てきたのだろうと
いつも思うが
思いつくことはどれも空虚で
せめてうたを紡ぐこの唇だけは、と
天から落たもので湿(しめ)して濡らして
今日もこればかりの
しずくうた。
4/21/2023, 2:23:32 PM