多田野一人

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夕暮れの帰り道、だったと思う。重い鞄を肩に提げながら、今しがた角で別れた彼奴を振り返った。其処には、じっと此方を見つめる姿があった。微笑むような少し寂し気な瞳が、何かを傳えようとしている。それが永い時間に思われたけれど、其の儘踵を返して、行ってしまった。

其れから何度も、その道を通る度に、あの姿を探して仕舞う。時が経ち、もう逢わないと想いつつ。あの瞳から零れた雫を想出しながら。

4/21/2023, 2:38:31 PM