雨と君
また傘忘れたの?
君は、ちょっと恥ずかしそうな、困った様な顔をして、コクリと頷く…
天気予報見なかったの?夕方雨になるって言っていたのに…
君は、頬を赤らめ乍ら、俯く…
仕方無いな、ほら、一緒に帰ろう…傘は一つしかないから…
君は、ちょっとはにかみ乍ら、でも嬉しそうに、私の傘に入って来る…
また明日、相合傘って言われるね、こっちはいいけど、君は、大丈夫?
君は、耳まで赤く成りながら、大丈夫って、小さな声で答える…
ずっと前からこんな2人…君は、故意となのか、午後の雨の日は、傘を持って来ない…決まって、昇降口で誰もいない、水溜りの出来た校庭を見つめている…そして私は、お決まりのように、君を傘に誘う…本当は、もっと優しく声掛けしたいのに、何時もぶっきらぼうになってしまう…
私は、この夕立が毎日あって欲しいって、願っている…だって、君と一緒に帰るのは、雨の日だけだし、君との相合傘は、神様からのご褒美だって思っているから…
誰もいない教室
放課後に、1人教室に残って、本を読んでいた…人付き合いが苦手で、放課後に遊ぶ友達もいないし、家にも帰りたくなくて…
夕方の教室は、静かで、外の部活の声が、聞こえてくる位で…夕陽が差し込み、埃が舞う教室は、ほっと出来る唯一の場所だった…
でも、矢っ張り、1人の教室は、何処か物悲しい…話し相手はいないけど、誰かの話しを耳にするだけでも、一人じゃないって感じる事が、出来る…休み時間の、騒がしい空気は、決して嫌いじゃない…
一人きり…の教室は、ちょっと哀しくて、少し柔らかで、わたしの存在を、アピール出来る居場所だと思う…
信号
あと3つ…あなたと一緒の帰り道…歩道に伸びる影法師も、先月よりも、長くなった気がする…
あなたと2人の時間は、私にとっては、一番のたからもの…お喋りが下手な私だけど、あなたの声を聞いているだけで、凄く幸せ…
でも、あと3つ目の信号機で、さよならしないといけなくて…しかも今日は、こころなしか、青信号ばかりで、余計に過ぎる時間が早く感じる…ずっとずっと、赤信号ならいいのに…
少しでも長く、あなたの声を聞いて居たいって心で叫んでいるのに、あなたに、気持ちを、伝えられずにいる毎日…
意地悪な青信号が、嫌いになりそう…
言い出せなかった「」
結局、ずっと言い出せないまま、卒業していた…ずっと片想いしていた君に、想いを伝えられずに…何時も、一緒にいて、告げるチャンスなんて、沢山あったのに…
君との出逢いは、入学式から間もない頃…引っ込み思案な私は、なかなかクラスの雰囲気に馴染めなくて、移動教室の時に、迷っていた時に、君から声を掛けられて…何も、言えずに俯く私を、君は、教科書から察してくれて、一緒に行ってくれたね…
それから、3年間、ずっと隣で助けてくれたね…不甲斐ない私を、優しく手助けしてくれて…
そんな君に、惹かれない訳もなく…何気ない会話も、君の癖も、仕草も、心に刻んでいたんだから…痛い奴だって、自分でも自覚しているけど、それくらい、あなたが好き…
それなのに、結局言えないまま、何度も崩れた決心が、今更悔やまれる…今なら、多分、言える…かな…
secret love
誰にだって、秘密があるはず…
家族以上に仲良しのあなたにも、言えない秘密がある…と言うか、あなただから言えない私の秘密…
それは、あなたに抱いている、愛おしい気持ち…もう、ずっと前から、あなたには、友情よりも、もっと強い想いが私の心に芽生えている…
隣にいるだけじゃ、もう、安心出来ないけど…もしも、この関係が壊れて、あなたの近くにいられなくなるのが怖くて…
あなたに一番に知って欲しいのに、あと一歩が怖くて、今日もあなたには秘密を抱えたまま…