『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雪を待つ
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.12.16 藍
雪がとけちゃう。わたしは眠りからさめた。
わたしを包む、お母さんの大きな翼から、ズリズリ、わたしのちいさな翼をだすと、スーっと冷たい風が触れて、翼がかたく縮んじゃった。
でもいかなきゃ。
黒いわたしのちいさな頭を、黒い全身を、ほそい足を出して、お母さんの顔をみる。
わたしにそっくり。まだねてる。
さ、いよいよ外に出る。
目の前には、細長い四角形型に漏れ出す、白い光と白い地面!とってもきれいで、わたしの白い息すらわずらわしい。
そして四角形型からわたしは落ちた。
白い地面が目の前をおおう。寒さに怯えるわたしの翼!
地面から頭をそらせ、翼ではばたく!
「ジ、ジ、ジ……!」
わたしは鳴いた。
白い、冷たい地面からグングン離れる、ああ、さむい!
つめたい指先、長い爪先さえ凍りついたような、このかんじ!
わたしは飛んだ。
鳥のように、綺麗にまっすぐ飛ぶことはできないけれど、ずっとずっと、たのしそうに飛べる。わたしはこの飛び方がすき。
「ジジジ、ジジジ、ジジジ」
飛びながら、後ろ足を雪に触れさせてみる。
ふしぎなかんじ!新な芝に触れたときのような、ばらの花のくきを握っちゃったときのような……!
思わず高く鳴いちゃった、その時反響する音があることに気がついた。
目の前の、みどりに白に茶、と色とりどりな岩がある。そこにいる!
すぐ飛んで、岩に親指をひっかけてしがみついた。
てっぺんにいるカタツムリは、わたしを見下げて頭をふってくれた。私も耳をクイクイ動かして、返事を返す。
わたしのちいさな友人。また来年も、雪といっしょにわたしのちいさな友人はあいさつしてくれるだろうか。
窓枠に肘をついて、ヘンリエッタはずっと外を見つめている。その視線の先にあるのはどんよりと厚い雲に覆われた曇天だ。窓に当たる呼気で白く曇ってしまうほど、外の気温は低いらしい。
「おい、ヘンリエッタ。お前、何をしているんだ」
一心に外を眺める彼女を訝しげに見ながら、ローレンスが口を開いた。
「んーと……」彼女は振り返ることなく答えた。「雪が降らないかなって、ずっと見てるの」
彼の眉間の皺が濃くなった。苦虫を噛み潰したような渋面を作ると、大きな溜息をついた。
彼の溜息の音を聞いて、彼女は振り返った。渋い顔をする彼を見て、くすくすと笑い声を上げる。彼は寒いのが嫌いなのだというが、話をするのも嫌がるとは。彼女が笑うので、彼はますます眉間の皺を深くした。
ヘンリエッタは窓枠に面したベッドから飛び下りると、てくてくと暖炉の傍をで本を読む彼の元へと歩いていく。
「ねえ、ロロ」
すり寄りながら甘えた声を出すと、彼は嫌そうに顔をしかめながら、口を開いた。
「何だ」
「お外、行こっ」
「断る」
即答すると、ローレンスは彼女を氷のように冷たい眼差しで見やる。その眼差しの冷たさは、おそらく外の気温より冷たい。
「お前、私が寒いのが嫌いなのを知っているだろう」
だってぇ、と彼女は唇を尖らせた。
「ずっとお部屋の中にいるのつまんないんだもん」
そうだ、と何かを思いついたらしいヘンリエッタが顔を輝かせた。
「じゃあ、わたし一人でお外行ってくる!」
「馬鹿を言うな。私の目の届く範囲にいろ」
間髪容れずに却下されて、彼女は頬を膨らませた。けち、と彼をぽこぽこっと叩くと、しゅんとして窓辺に戻っていく。その様子を横目で見ていたローレンスは、彼女があんまりにもしょんぼりとしているので、深々と溜息をついた。
ヘンリエッタ、と声をかけると、近くのポールハンガーに掛けてあったコートを掴んで、彼女に向かって放り投げる。真正面からそれを受けた彼女は、小さな悲鳴を上げた。
「な、何?」
困惑したようにコートを握り締める彼女に、ローレンスは自分もコートに袖を通しながら言った。
「雪が降るまでなら付き合ってやる。さっさと用意しろ。全く……好き好んで、寒い中に出たがるとは酔狂な……」
見る見るうちに顔を輝かせて、ヘンリエッタは満面の笑みを浮かべた。いそいそとコートを着込んで、マフラーを巻く。あっという間に用意した彼女は、扉の前で早く早くと彼を急かした。その無邪気な笑顔を見て、彼は知らず知らずのうちに口許を緩めていた。
雪を待つ
雪を待つ。これを越えれば春だから、と、信じていられる冷たい光。
手の冷たさはポケットで誤魔化して、じりじりする耳に耐えて、コンビニに入る。
ほぅ、と息を吐く。いらっしゃいませの声。暖を取りにきただけではないと言い訳するように、まっすぐ、なんとなく、あたたかい飲み物の棚を見る。別に、飲みたいものは無い。ガラス張りの外を見ても、雪は一向に降ってこない。雲の少ない、薄い色の空。風に揺れる街路樹の枝。
…模試の結果が、ダメだった。
入りたい大学。友達や家族。自分のやってきたこと。あともう少ししか時間がないのに。何がいけなかったのか。
雪が降れば良いのに、いっそ。雪が降ればいいのに。白く埋もれて仕舞えば良いのに。私だけがそこから芽吹かない春。
ペットボトルのレモネードを買って、コンビニから出る。ありがとうございましたの声。冷たい風に怯んでなんかいないと見栄を張って、足を止めずに出ていく。
はぁ、とため息をつく。レモネードをひとくち、ふたくち、冷めないうちに。
…あったかいや。
こんなに悪かった模試、今まであったっけ。
本番じゃなくてよかったや。…うん。
これを超えた春に、花を咲かせたいと思う。
12月15日(金)
しんしんと雪の降る日、
「一晩留めていただけませんか」
そんな声が聞こえた。この館の扉が開くのは何時ぶりだろう。この言葉を聞き、私はとても喜んだ。階段を下り玄関へと急いだ。
玄関の扉を開けると、顔が青白くなっている女性が立っていた。ボロボロのフードを被って震えている。私は彼女を館に招き入れた。
彼女にココアを差し出したが、ぎょっとしたような顔をして、
「すみません。ココアは苦手でして…」
と断られてしまった。ならばと思い、マフラーを渡した。渋々彼女は受け取ってくれた。
12月16日(土)
朝になり、彼女はお礼を言うと帰っていった。朝ごはんに目玉焼きでもと思い差し出したが、またもや断られてしまった。貴重な人間だっただけに、食べ物を食べてもらえなかったことをとても悔いたが、きっと、次の雪の降る日に彼女はまた訪れるだろう。そのときにでも、何か食べ物を食べてもらおう。
雪を待つ。
雪を待って、雪は好きなだけ降ったら自分をここにおいていくんだ。
雪はいいよな。
どんなに嫌なことがあっても溶けるから。
僕は溶けないんだよ。
どんなに怖くても嫌なことがあっても悲しくても。
何で僕はこんなにとろいの?
何で僕は現実より夢を求めるの?
何で君は手を差し伸べて突き落とすの?
僕の疑問は積もっても解けることはない。
夕暮れ時になっても雪は降らない
雪が降ったらという約束はまたしても守られない
君がここに来てくれるまで私は雪を待ち続ける
かじかむ手を擦りながら、白い空を見上げる。
雪はまだ降らなようだ。
俺は雪が舞う町の写真を撮るため、ここでその機会を待っている。
この地域は雪が降っても一瞬で止んでしまうので、シャッターチャンスを逃さないよう、ここで待っている。
長丁場なのを覚悟して、かなり着込んできたのだが、予想以上の寒さだ。
刺すような寒さに身を震わせながら、雪を待つ。
心の中の弱い家に自分が帰ろうと言うが、その度に頬を叩いて気合を入れ直す。
ここで妥協なんて出来ない理由があるのだ。
その理由とは、俺と友人との勝負だ。
どっちがキレイな写真を撮るかの写真勝負。
友人とは幼馴染で、何かにつけて勝負して遊んでいた。
その時の気分で勝負内容を決めていた。
写真勝負だって今回が初めてだ。
そして最後の勝負でもある。
友人はもうすぐ引っ越すのだ。
海外に…
海外に行ってしまえば、二度と勝負は出来ない。
年内に引っ越すので、これがタイミング的に最後の勝負になる。
今までの勝負は、毎回真面目にやってきたわけじゃない。
フザケたり手を抜いたりした事もある。
その度に怒られたが、向こうもたまにサボるのでお互い様だ。
でも今回は手を抜いたりはしない。
アイツと俺の最後の勝負が、最後の思い出が、いいかげんなものなんて、絶対に嫌だ。
だからこそ、俺は妥協しない。
予報ではそろそろ降るはずなのだが、まだ降らない。
雪はまだかと空を見上げると、少し遠くの方に黒い雲が見える。
あれが雪を降らせる雲かもしれない。
俺はスマホを取り出して、カメラを起動する。
雪が降る瞬間を逃さないように、空の様子に集中する。
恐ろしく寒かった空気も、今では全く気にならない。
黒い雲が少しずつ近づくのに比例して、遠くの景色が白くなっていく。
もう少しで、ここにも雪が降る。
チャンスを逃さないよう、じっと雪を待つ。
冬の日
寒さに震え
来るはずのない貴方を待つ
叶うはずない恋
いつしか雪が舞い散る
"雪を待つ"
「先生!雪合戦しましょう!もしくは雪だるま!」
開口一番にそんなことを言った君は今日も元気に寒そうな脚を見せていた。
雪のように真っ白の脚が寒さで赤くなっているのが可哀想だと思った。
でも、貴方は寒さにひるむことなくむしろ寒い日の方が元気そうねなんて。
貴方がいるだけでこの場所も温まる気がする。
「えぇ…俺寒いの苦手だから嫌、」
「え〜そんなこと言わないでくださいよっ!きっと楽しいはずです、ね?」
「嫌なものは嫌、貴方の頼みでも無理よ、」
冬の凍てつくような寒さは20数年生きても慣れることはない。雪を触るなんてもってのほか。
何も考えずに雪玉を転がしていたあの頃ならこの誘いも嬉しいものだっただろう。
「もー先生の意地悪、冬が1番すきだから先生と思い出作ろうと思ったのに…わからず屋、…」
1番好きな季節に俺と思い出作りたいなんてやっぱり貴方は物好きだね。
でも、貴方となら…ちょっと楽しそうだなって考えてしまった。
作った雪だるまが溶けてしまうのを優しい貴方の事だから心底悲しがるんだろうなって想像まで安易に出来てしまう。
「…あーもう、分かったってば…、雪が降ったらね?」
「やったぁ!先生私にあまいですねっ、」
俺は大概貴方に甘いみたい。だって楽しそうなんだもの。
冬休みまであと一週間もない。
それまでに雪が降るといいなぁ、なんて寒がりの俺らしくないことをこっそりとお願いした。
寒がりなのに貴方との雪遊びを楽しみにする俺も相当物好きかも。
2023.12.15『雪を待つ』
『雪を待つ』 190
綺麗な葉っぱが枯れて散る。
死体となったそれら葉は、地面の上に積み重なって、土塊となって還るのだろう。
茶色くなった体には、虫食い穴が散見される。
生前の輝きはそこに無い。
人々はそんなものに目もくれず、頭上の綺麗な葉っぱを想う。
落ちぶれた綺麗な《汚い》葉っぱ等は、そこから見える景色を眺めて、いったい何を願うのか?
落ちぶれた汚い《綺麗な》葉っぱ等を、見えないように隠しておくれと、そんなふうに願うのか?
また一枚枯れる。
また一つ重なる。
想いが枯れて願いが重なり、纏う重さが冷たくなる時、望みが叶うことだろう。
わざわざ待ちわびるほどじゃないけど、降るとなんかちょっと嬉しい。
(雪を待つ)
【雪を待つ】
僕の恋人は冬が苦手らしい。
そんな恋人と冬に出かけると手を握ってくる。
去年雪が降った日出かけたら抱きつかれた。
だから今年も雪を待ってしまう僕がいる。
ポツポツザーザーと雨が降る、今日も雪は降らなかった。 今年こそはとウキウキして最終的に来ないことはいつもの事である。 しかも雪が降る時に限って私はいつも不在だ。 まともに遊べたのは一度きりな上その時は暗かったので少ししか遊べなかった。 今度こそは満足出来るまで遊べるだろうか、そもそも雪が降る時にその場に居合わせる事が出来るだろうか。 いや、そんな事を考えてもしょうがない。 次は思いつく限りの雪遊びをする事は決定している。 後は天任せだ。
「兄ちゃん、雪が降ってきたね」
「そうだね」
廃墟で暮らしていた僕たちが、雪が降ることを恐れていた僕たちが、こうして降る雪を家の中から見る時が来るなんて夢のようだった。僕たちを拾ってくれた恩人様には感謝しないといけない。
弟は窓ガラスに鼻がくっつくほど熱心に外を眺めている。雪に触ってみたいと前から言っていたけれど今年は出来るだろう。
……この子は理解しているのだろうか。雪が降ってきたということは、あのスラム街にも冬がやってきたことを。頼りないシートを使って寒さに耐える人がいることも。
僕たちはたまたま運が良かっただけで、この雪で苦しむ人がいることも、知っているのだろうか。
「また、お兄ちゃんは何か小難しいことを考えているね?」
後ろから両肩に手をぽん、と置かれた。思わず振り返ると、僕たちを拾った恩人様がニコニコ笑って立っていた。背の高い人が怖いのか弟はまだこの人のことに慣れないようで、窓から離れて僕の袖をぎゅっと握って背中に隠れた。
「雪が降っているんだね。今日は冷えそうだ」
「はい。たくさん、降っています」
「へえ! それは良いね。僕は雪が積もった景色が大好きだよ。出張で別の国に行った時に見たんだ。辺り一面が真っ白になって、いつも見ている景色が見えなくなった。本当に面白い経験だったよ」
話しながら、恩人様も窓に近付いて外を見た。雪はまだ降っていて、真っ暗な空から落ちる白い塊がよく見えた。
「でもここは比較的温暖だから、あれくらい積もることはほとんど無いんだよね。せいぜい靴底が埋まる程度だよ。いつか君たちにも、本物の雪景色を見せてあげたいな」
弟は早々に寝てしまった。あたたかい毛布と柔らかいベッドの中で安心した顔で眠っている。
考えることや思うところはあるけれど、弟が雪を楽しみにしているなら僕はそれで満足だ。いつか、こうやって溶けて水になる雪じゃなくて、今日聞いたような積もった雪も見せてあげたい。
雪はまだ降っていた。僕も眠ろうとして、隣にいる弟を抱きしめた。
お題:雪を待つ
雪を待つ
来る日も来る日も
ただ待ち続ける
そんな日々に
もう嫌気が差して
振り向かずに進むんだ
肌寒い空気に両手をすり合わせる。暖房の効いた学校から出たばかりの僕には十分に寒いが、今年はこれでも暖かい方らしい。毎年雪が降るこの地域だが、今年の雪は年を越してからになるだろうと聞いた。だからどうと言う訳でもないが。
大人になれば、昔は好きだったものに興味が無くなることは往々にしてある。僕にとっては雪もそのひとつだ。それを言えば、隣の彼女は眉を吊り上げて否定するのだろうけど。
「寒いねぇ」
「そうだね」
「でも息は白くならないなぁ」
「あれは空気が綺麗な時はならないからね」
「え、ほんと?」
「しらない」
聞きかじりの豆知識を披露して、いつもの道をちんたら歩いた。これだけ寒いと自転車を持ってこれば良かったかと考えてしまうが、隣の彼女は学校の通学手段に自転車を登録していないから、仕方ない。
「雪が降ったらさ、一緒に雪だるま作ろうよ」
「恥ずかしい」
「えっ、何が?私が?」
「うん」
「辛辣!」
もこもこの手袋で肩を殴られる。もこもこな上にコートを着ているので全く痛みは無い。が、大袈裟に吹き飛ばされておいた。
「じゃあかまくら作ろう!それか雪合戦!」
「…………」
「今それも恥ずかしいって思ったでしょ」
「言わなかったんだから見逃してよ」
もう、と怒ったポーズをとる彼女をいなして家路を急がせる。こんなことを言っていても、どうせこの幼馴染は約束だなんだと僕を引っ張り出すのだろうけど。僕もそれがわかっているから、安心して軽口を叩けるのだ。
ぶすくれる彼女を横目で確認して、少し緩んだ口元をマフラーで隠した。彼女が鈍くてよかった。
雪の降る日、誰よりも早く僕を誘い出す彼女を期待して、今年も僕は雪を待つ。
『雪を待つ』
次の雪の日
必ず会いに来るからと
残した言葉を抱えて今日も
雪を待つ
雪を待つ
雪は待ってない。
いや、待ってる人もいるだろう。
スキー場関係の人とか。
子どもの頃、北海道に住んでいたので、
冬の外遊びは楽しかった。
あの頃は、雪を待っていたのかも。
子どもの頃って、雪しかないのに、
いつまでも遊べるんだよね。
いつから、雪が降ることに溜め息が出るように
なったのかな。
いつから、雪を待たなくなったのかな。
paki
冬が大好きで、
特に雪が降る時期が一番好きだ
今日もいつもと変わらないところで
雪が降るのを心待ちにしている