「雪を待つ」
「やあニンゲンくん!週末には雪が降るそうだよ!楽しみだねえ!」子どもらしい無邪気な笑顔をこちらに向ける。
雪か。寒いし交通機関のダイヤは乱れるしでちょっとな……。
「おや、乗り気ではないご様子だね?」「ニンゲンしゃ、なんでー?ゆき、ふわふわでおいちそーだよ?きらいなの?」
「嫌い……とかではないけど、でも好きではないかな。」
「んー……。あっ!しょーだ!」「どうしたの⬜︎⬜︎。」
「ニンゲンしゃんがゆきだいしゅきになるおあしょび!つくろ!」「いいねえ!だがその前に……。」「んー?」
「雪遊びとはなんぞやかを知っておこうではないか!」
「わー!」
雪遊びとは……なんぞや……?まあいっか。
「まずは!!!雪だるま作り!!!」「ゆきだるまー?」「そう!雪だるま!!!このボクでさえまだ作ったことがない!!」そういえばそうだったっけ。
「メタな話をすると、ボク達が登場したのは今年の2月19日、タイトル名は『今日にさよなら』だからね。春が始まりかけていたタイミングだったから、雪遊びはまだしたことがないのさ!」
……登場?なんの話だ?
「いやあこっちの話さ!お気になさらず、だね!」
「ねー、ゆきだるま!なあにー?」「あぁ、すまないね!」
「大きな雪の塊をふたつ作って、それを組み合わせるんだ!」
「それに顔や腕、それからマフラーなんかもくっつけて──完成!」
「どんなかおー?」「画像があるよ!こんな感じだ!」
「わ!かわいい!ボクもちゅくりたーい!」
「雪が降ったら作ろうね!」「わ!わぁ!」
「他にもあるよ!」「わくわく!」「かまくら作り!」「かまくらー?きのうたべておいちかったあれー?」「それはかまぼこ。」「しょっかー。」「うん。」「ん。」
「かまくらっていうのはね、言うなれば雪で作ったテントだね。しっかりしたものを作れば中で暖をとることも出来るんだ!」
「ゆきのおうちー?!たのちそー!」
「ボク、かまくらちゅくりたい!」
「いっぱい降るといいな、雪。」「ニンゲンしゃーもたのちみ?よかったー!」「いや、えー……まぁ?」「素直じゃないね!」
「他にもあるよ!かまくらや雪だるまが作れるほどの雪が降らなくても、雪うさぎならきっと作れる!」「ゆきうしゃぎ?ゆきでうしゃぎしゃん、ちゅくるー?!」「そうだよー!」
「手のひらで丸っこい塊を作って、そこに落ち葉の耳と南天の目をつけるのさ!」「こんな感じだよー。」「かわいー!」
ふたりとも嬉しそうに話している。
雪が楽しみ、か。
「ちっちゃなお兄ちゃんにはまだ早いけど、雪玉を作って投げて当てる雪合戦もあるよ!機会があればやってみようね!」「ん!」
「そうだな。雪、きっと楽しいな。」「ニンゲンしゃん!」
「ゆきふったら、いっぱいあしょぼーね!」「うん。」
こっそりわくわくしながら、自分も雪を待つ。
いつもと違うことを純粋に楽しめる心って、雪みたいに真っ白なのかもしれない。
12/16/2024, 10:00:16 AM