『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雨に佇む
しとしとと、なら可愛げがあるのに、今日の雨はバケツをひっくり返したような土砂降りだ。
折りたたみ傘でなんとか対抗していたが、雨の余りの強さに負けそうだったので、シャッターの閉まるお店の軒先を借りて凌いでる状況だ。
意地を張らずに待たせて貰えば良かったか。
先程出てきた彼女の家を思う。こんなタイミングで喧嘩しなくても、と思うがしょうがない。
ふと、水の跳ねる音が混じった。あまりの土砂降りで聞き取りづらいが、確かに聞こえている。
雨足が強くて視界が白くもやが出る中、1人傘を指しているのが辛うじて見えた。
あれ?まさか――
「こんな雨の中、出てくくらい嫌い?」
そう言って傘を閉じ、軒先に入ってきたのは先程喧嘩した彼女だった。部屋着でそのまま出てきたらしく、ノーメイクのままだし、湿気が苦手な髪はとても膨らんで跳ねまくっている。手には傘が2本あった。
「すまん……」
謝罪の言葉がするりと出てくる。我ながら現金なやつだが、普段からガッチリメイクの彼女とはかけ離れた行動が、嬉しくてしょうがなかった。
「もう一声」
「明日はケーキ買ってきます」
横柄な態度も可愛くて即答する。
「よろしい」
そう言って差し出された傘。それよりもその笑顔に安堵した。
いつか
いつか私がだめになったとき
あなたは助けてくれるだろうか
そんな淡い期待は数年前に砕かれて、結局誰からも助けてもらえず全てを失った。いや。正確には私が遠ざけてしまってそのまま縁が切れただけだったはず。
特に惜しむことはないけれど、あの時期のことはあまり記憶がない。人生のどん底とはああいうものだったんだという認識だけ残っている。私にはそれがあまりにも心地よかった。
縁が切れてしまったのは悲しかったけど安堵したのも事実だ。仲良くはしていたけど友だちでもない人たちに囲まれて過ごすのは苦しかった。そんなだから信頼関係なんてものはなく、私がいないところでバカにしていたのには気づいていた。そんなことはどうでもよかった。それだけで関係を保てるなら安いものだ。
なんてことはなく、積もり積もった透明なストレスが私の首を絞めた。雨の日は窓を開けた、ベランダに出た、深夜にこっそり散歩した。傘なんて差さず濡れながら時間が過ぎるのを待っていた。
私がだめになったところで代わりはいくらでもいる。
助けなんてこない。我慢してもしなくても陰口はやまない。雨に打たれてどれだけ洗い流しても消えやしない。
―私という存在は雨に溶けることすら許されないんだ
【題:雨に佇む】
「あの、もし宜しければ隣に居てもいいですか?」
あの日、僕は急な雨に振られて屋根がある場所で雨に佇んでいた。
そしたら話しかけられたわけだ。
うっかり傘を持って出るのを忘れた
電車に乗っている間に降り出して
着く頃にはザーザー降り
駅の出口で雨宿りしながら
少しだけ期待する
もう少し待ってみよう
しっとりとした空気を身にまとって
(雨に佇む)
雨天に追われ屋根の下
埃で汚れたバス停の案内板
所々に穴の空いた頼りないトタン屋根
もう何年も広告が変わらぬ薄い壁
少し背の傾いた弱々しいブリキのベンチ
雨を飲み続けるひび割れたアスファルトの道
バスの待合所の裏では竹林の葉が雨に唄う
ここは誰かの遠い記憶の中
バスは届け先を決めあぐね、来る事もない
記憶の主は雨と草の音に閉じこもり
頻りに懐かしさをしげしげと眺めては
空ではなく、気分が晴れる事を待っていた。
ー 雨に佇む ー
◎雨に佇む
#28
ぽとり
木々の間を縫って落ちてきた雫が
頬を掠めて地面にしみを作った。
ついと手を伸ばして雨滝の中に差し出すと
水が肌に弾かれて小さな珠になった。
湿り気のある山の呼吸が
大きな雲を呼び寄せて
自身を白い綿で隠してしまった。
深く息をする。
目を開けば墨で描いたような宵闇が
木々を塗り替えていく。
青い影の中から動けなくなった人影は
再び空を見上げた。
ぽとり
今度は雫が頬を伝った。
「雨に佇む」
突然の雨に佇む。
天気予報では晴れの筈が,土砂降りの雨だった。
咄嗟にシャッターが閉まった店の軒下に駆け込む。
物音がして振り向くと,貴女によく似た女性がいた。
まさか,有り得ない。
何気無く確認したら,別人だった。
ゲリラ豪雨はすぐに止み,嘘のように晴れ出した。
僕は天に感謝して歩き始めた。
詩(お題)
『雨に佇む』
悲しみの雨に佇む
濡れながら冷えながら
感じて語らう
たくさんの粒でさえ
私を簡単に
殺せない
しあわせの雨に佇む
穏やかで優しくて
天気雨みたいだ
いっぱいの粒でさえ
私の笑顔は
引き出せない
台風の雨に佇む
叩かれて飛ばされて
地獄を味わう
狂暴な自然さえ
足早(あしばや)逃げてく
負け犬だ
絶望の雨に佇む
見上げればキラキラと
宝石みたいだ
たくさんの愛でさえ
守れぬ世界に
死んでゆく
傘がない 傘を貸してくれる親切な人は勿論いない。 濡れるしかないか。
雨に佇みながら、物思いに耽る。
今日は何をしようかな。
お家で映画でも観ようかな。
それとも歌でも歌おうか。
◤雨に佇む◢
しとしとと
しとしとと
じとじとと
じとじとと
雨は降る
肩にあたって跳ねるまで
その身を雨に染めるまで
しとしとと
しとしとと
じとじとと
じとじとと
雨は止む
多くの人に恵を撒けば
大災害の一歩手前で
しとしとと
しとしとと
じとじとと
じとじとと
君は言う
なんで貴方は雨が好きなの
傘も差さずに雨を受けるの
しとしとと
しとしとと
じとじとと
じとじとと
意味は無い
それでも今日明日明後日も
私は雨に佇んでいる
テーマ:雨に佇む
雨に佇むって言葉あまり使わない気がします。佇むは、しばらく立ち止まっていると言うことだからかさをさしてしばらく立ち止まっていることです。そんなことあるのかなと思うけどあるとするなら、雨の場合だと9歳未満の子どもとがだだをこねた時や恋心がめばえたや失恋で心が折れた時かなと思います。私が佇むって、外出は統合失調症の疑いありの夫と一緒なのでありませんが、家の中だと夫に暴力、暴言を言われた時です。さすがに壁に押しつけられて、ひざやひじが擦り傷や青たんで痛いとおどろきより殺されると、きせいをあげてやめさせた後にいつか殺害されるのかと実感したら佇みます。佇んだからと言って、統合失調症の疑いありで、他害で暴力してる夫が、暴力しなくなることはないです。統合失調症は、完治するのが20%〜30%なので、全体の7割〜8割は完治せず一生付き合っていく精神病になります。どうするのって、症状に合わせた対処法を習得するしかないし、専門病院でない限り初期段階から抗精神病薬を服用です。他害による暴力があるならずっと抗精神病薬飲み続けます。配偶者に対してだと他害ではないと決めつける医師もいるのです。初期段階に専門病院で診察を受けて、治療すれば完治も見込めます。配偶者に対しての暴力は、DVだけでなく統合失調症の他害もあることを覚えておくと良いです。
雨に佇む
雨は嫌い、じゃない。何でもかんでも周りに合わせないといけないなぁとこの頃思う。初対面だったら何が嫌いなどというものは話題にしてはいけない。だされたものも嫌いであっても食べなくてはいけない。
凄く辛い時に傘をささなければどうなるだろうと雨に濡れた。冷たくてでもなんだか静かな気持ちになれた。
周りから見れば風邪をひいてしまうや、なにやってんだと思われる行動
でも実際は大した事なかった。風邪はひかなかった。
昔は好き嫌いが多いのが子供と言われたけれど、それは個性があったと思うのは私の間違いだろうか。
多分これも批判ばかりうける。周りにあわせられないのはバカのする事だとよく見かける。大人って子供の時と比べて自分が他人と似ているということをあまり自覚していない。よく何に当てはまる性格診断などというものがあるが、1億もいる中でその枠にハマっているという時点で自分は個性がない。
というように悪い言葉を吐けば私は批判ばかりうける。批判をうけていい対象だと勝手に認識される。
どうして否定的なことからはいる人が多いんだろう。
雨に濡れながらそう考えた。そこにいる間考えてみたけどやっぱりわかんない。例えば大勢の人が通る道でぽつんと立ったらきっと責められるのは私だろう。
迷惑をかける存在はいらない。
でももっと違う視点から見ればそこにいる人をも避ければいい
こんなことなんでしなくちゃいけないんだって思うけど私達にはそれができる。ちょっと左右に動くだけでいい。
これだと迷惑をかけたことになるのだろうか。
雨は何も気にせず降ってくる。けれどなくてはならない存在だ。立ち止まって考える。
どんな人も存在していい世界なんて一生実現出来ないことは分かった気がした。
雨はどこかで降っていてこの水は私達より生きているのかもしれない。
迷惑なんて言われる筋合いなんてない。
雨よはやくきてくれ、そして似たもの同士の人間が否定的な考えをするのを止めてくれ
と勝手に雨に願った。
次の日は晴れだった。やっぱり必要な人間だけが必要とされる世界が今日もきた。
雨に佇む
女性は残酷だ。もうこの人はムリと思ったら、二度とムリなのだ。
昨日長い春になりそうな位、ダラダラと結局お付き合いしてしまった彼を振った。
結婚するでもなく、ただ流されていく時間と彼の決断力のなさに嫌気がさした。
私も、今年で33になる。世間では晩婚も流行りの一つかも知れないが…。
そんなのどうでも良かった。自分の心に正直になった結果、お別れする道を選んだ。
朝から雨が降り続いていた。ちょうど土曜日の休みだったので傘をさして駅前の馴染みの喫茶店でナポリタンとカフェラテを飲んで、一息ついてからお会計を済ませ外に出た。
通りの真正面に傘もささずに、雨に佇む彼がいた。
これ見よがしにずぶ濡れになって、悲劇のヒロインよろしく捨てられた犬の様な目をしてこちらを見た。
私の気持ちは1ミリも動かなかった。
寧ろ嫌悪感さえ抱いた。
最後の優しさなのか何なのか、傘だけ彼に差し出した。
「傘は返さなくていいから…。」
彼への最後の言葉だった。
私は近くのコンビニでビニール傘を買って、何とも言えない気持ちのまま家路についた。
私が契約者のアパートの玄関に、紺色の無地の傘が立てかけてあった。
燃やせないゴミの日は何曜日だったかな…。
ふとそんなことを考えて玄関のドアを開けた。
雨はもうやんでいた。
雨に佇む
道化師たちよ
ネオンの街
レモンの香り
故郷離れて
一人になって
ここまで来た
もう泣くこともない
誰もが夢中で
誰もが必死で
だから君の優しさは
ミルクのように溶けていくのかな
8月78日今日はお父さんと一緒に仕事に行きました。
雨に佇む
私はカワウソか?
私はなんだ、こんなにも雨が好きだなんて。
いや、紫陽花かもしれない。
いや、カタツムリかもしれない。
雨の日が好き。
ぽつぽつと雨音を楽しみながら本を読む。
久しぶりの雨だ。
私は、寂れた古民家で煙草屋をやっているのだか、こういう日はお客さんが少ない。
が、雨の日にしか来ない人もいる
「こんにちは。お兄さん」
「こんちわ」
雨の日、いつものように雨宿りをしに来ているお兄さん。
黒いスーツにサングラスという柄の悪さだが、話してみれば礼儀正しい青年だ。
「今日も雨だね。はい、タオル」
「サンキュー」
「気にしないで」
お兄さんが来るであろう事を見越して、雨の日はタオルを用意する。これも習慣になってるね。
「さて、雨が止むまでどんな話をしようかね?」
「俺はあんたの話を聞きたい」
「私の話は前回しただろ?次は君の話だよ。mtdくん」
「名前で、呼んでくれよ」
「もう少し親しくなったら、呼んであげる」
お互いに口には出さないが、暗黙の了解で、雨の日にしか会えない。
「俺のどんな事を聞きたいんだ?」
「そうだね、好きな食べ物は前回聞いたからね。好きな事はなんだい?」
こんな、曖昧な関係を私達は気に入っている。
︰雨に佇む
改札を通ろうと定期券を取り出したつもりが、掴んでいたのはクシャクシャになったポケットティッシュだった。チャックを全開にしてガバンの中身をグチャグチャひっくり返しながら定期券を探した。いいや、探しているかのような行動を取っているが、ただパニックになって慌てふためいているだけ。無い、無い、どこにも無い。今更取りに帰ったって遅刻するのでさっさと券売機に向かう。
ジャラジャラと財布を振るが丁度払える金額の小銭がない。これだけ大量にあるにもかかわらず、ピッタリが無い。仕方がないので500円玉を入れると、カラン、と戻ってきた。ああクソ、カラン、ああクソ、カラン、ああクソ、カラン、ああクソ!!500円玉はカランと無慈悲な音を立ててこちらを見上げる。とっとと1000円札を突っ込んでボタンを押した。カツンと切符1枚と欲しくもない小銭がジャラジャラ流れ出てきた。さっさと鷲掴んで改札を目指す。
切符が使える改札は右端の2つで、空いてそうな奥側に並んだ。さあさっさと電車に乗ろうと切符を構えたところで前に並んでいた人が「ピンポーーン」と鳴らした。何度かICカードをタッチしているが上手く改札を抜けられないらしい。イライラだとかそんなレベルを通り越していっそ何も感じなかった。電車は一本乗り損なった。
吊革を持って外を眺める。体がだるくて立っているのでやっとだ。寝不足の影響か酷い頭痛がして目眩もあった。ガタンゴトン、ガタンゴトンと規則正しい音と、時折対向する電車とすれ違う瞬間のバーーーーという音だけを聞いていた。揺られて、内臓も揺られて、この場で嘔吐するのを耐えることばかり考えていた。
そうしていると「ぅあ〜〜〜〜!!あーーー!!」と赤子の泣き声が耳を突き刺し脳を揺さぶった。一気に吐き気がこみ上げてきたがなんとか喉で押さえ込む。正直な所体調不良に赤子の泣き叫ぶ声は堪えた。でも赤ちゃんは泣くのが仕事だからなぁ、お母さんも一生懸命育ててるんだ、きっと大変だろうなぁ、ああ、あぁ、ぁ、無理だ。耐えられない。
ガラガラと扉が開いて人の波に押されながら電車のホームへと降り立った。嘔吐することはなくなんとか耐えたが、ボロボロ流れてくる涙は一向に止められそうになかった。哀れだ。「大きくなったら誰もあやしてくれない」なんて当たり前な文章を脳内でふと生成してしまって自爆していた。あーあ、あーぁ、惨め。
階段を降りて地下鉄へ。コンビニ寄って一番安い昆布おにぎり1つ購入。また切符を買って改札へ、改札通ったら急いで1番線。乗車して数駅、また下車したらそのまま3番線へ。決まった道を通って決まった3号車1番ドアへ。そしてまた乗る。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、どうして?、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、もう嫌なの!、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン
ン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、お願いだから、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン
ガタンゴトン、ガタンゴトン、分かってくれる?、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、おやすみなさい、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、じゃあね、ガタンゴトン
プーーーーーーーーーーーーーーーー
我に返る。息を吸う。おにぎり、を持っている。もう昼食の時間になっていた。おにぎりに齧り付く。モチャモチャ、白米は小さな幼虫を噛んでいるみたいで、プチプチ、昆布は内臓を潰しているみたい。美味しいのか美味しくないのか分からない。今食べているものが自分の体の一部になるんだと思うと、このおにぎりが可哀想だった。
これから帰りの電車が来るからなるべく早く地下鉄へ向かいたかった。でも傘を忘れた。今朝スマホの天気予報で雨マークを見たはずなのに。いや、今思えば本当にただ見ていただけ、眺めていたただけだった。傘なんて頭に無かった。
もう服も鞄もどうでもいい。濡ればいい。もう全部どうでもいい。そんなことより早く家に帰りたい。
家に帰って、何するんだろう。洗濯物をずっと溜めてる、洗わないと、違う、洗濯機に入れて回したのに干さなかったやつ5日も放置してる、臭くなってるからそれから手を付けないと、その変にほったらかしてるゴミ袋いつ出せばいいのかな、早く食器洗わないと、もうカビ生えてた、使える食器ももうない、違う、もうとっくに使える食器なんてなくてずっと紙皿と割り箸ばっか使ってた、そういえばご飯最後に炊いたのいつだっけ、また炊飯器カビの温床になってる、めんどくさいな、嫌だな、ご飯買って帰らなきゃ、冷蔵庫の中のきゅうり、腐って溶けてたの片付けないと、最後に料理したのいつだっけ、料理?りょうり?ってどうやるんだっけ、しばらく電子レンジしか使ってなかったな、机の上に積み重ねてる食べたあとのゴミ、早く纏めなきゃ、虫湧く、ハエ邪魔、それより風呂入らないと、シャワー浴びなきゃ、汚いよ、不潔、分かってるのになんでできないのかな、そうだ、電球切れてるのも変えなきゃ、もうずっと部屋が暗い、『朝日を浴びたら健康になります。まずはカーテンを開けましょう!』ねえ、ねえ、カーテンってどうやったら開けられるの、カーテンの前に積み上げちゃったゴミ袋どうしよう、ねえ記事書いてる人教えて、どうしたらいいのか分かんない、どこから何から手を付ければいいのか分からない、どうしよう、どうしよう、どうしよう、帰って、どうするの?
雨が冷たい。
雨が冷たい。みんながスローモーションみたいにやけにゆっくり通り過ぎて行く。今日は灰色の空。雨は冷たい、でもなんだか温かいような感覚がする。ゆっくり、ゆっくり。何かがぼやけていく。皮膚がバリバリ剥がれて浮かんでいってるような感覚に陥る。何してるんだろう。今自分はどこにいるんだろう。今って“ここ”にいるのかな。どこに立ってるんだろう。どんどん自分から遠のいてく。上なのか、後ろなのか、奥なのか、斜めなのか、どこかへ離れていく。幽体離脱でもしてるみたいだ。ここって、どこで、今、なにしてるんだろう。
パポ!パッパポ!パポ!パッパポ!パポ!ざーーーーパポ!パッパポ!ペポ!パッパポ!ざーーびちゃびちゃざーーーーパポ!パッパポ!ペポ!パッパポ!ざーーーーパポ!ペッペポ!パポ!ざーーーーーーパポ!びちゃ!ペポ!パッパポ!ざーーーパポ!パッパポ!
何か音が聞こえる。何か混ざって気持ち悪い。頭の中がぼんやり白くて黒くてモコモコしてる。
ざーーーーーーーーーざーーーーー
『あ、おかえり〜。雨凄いねぇ、よっと、丁度タオル敷いとこうと思ってたとこなの……って、ランドセルびちゃびちゃ!拭く用のタオルもいるか、持ってくるね』
ただいま、×××。あれは、誰だったっけ。この記憶は、一体いつのものだろう。なんで、今、
そうだ、今 雨が降ってるんだ。
横断歩道を渡る最前列で傘も差さず佇んでる。
ピヨ!ピヨピヨ!ピヨ!ピヨピヨ!
今は、この音、南北の横断歩道が青なんだ。じゃあさっきの音はカッコウで、東西の横断歩道の音だった。雨音と混じって、グニャグニャになってたんだ。
コツコツびちゃびちゃと足音を立てて皆通り過ぎていく。大丈夫、もう大丈夫だ、みんな普通のスピードだ。
帰らなきゃ、早く帰らなきゃ、なんで?なんだっけ。さっきまで何考えてたか忘れてしまった。早く帰って、それで、早く寝たい。
ここ、さむいなぁ。
『プーーーーーーーーーーーーーーーー』
ようやく家に着いて、玄関で傘をおろす。
その途端に、自分の体に叩きつけるように降っていた雨音が静かになった。
雨脚が弱まったわけではない。先ほどまで、頭上で弾け続ける、ただただ不快でしか無かった雑音がなくなり、しとしとと、ただ雨が降り続けている。
庭の葉に雨粒が弾けるパラパラとした音が軽やかさまで感じさせ、今までの苛立ちが収まる。
傘を介しているからこそ雨音が弾ける音が自分のなかで爆音になり、大雨でもないのにとんでもなく雨に降られたような気分になっていた。
本人以外に痛みが分からないことの例えに良い気がしたが、私以外なら雨のなか佇むことについて、こんな余計なことではなく、もっと楽しい想像を膨らませるんだろうと落ち込み、太陽が出ていようが、やはり家のなかが一番だと、さっさと家に入った。
【雨に佇む】