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ぽつぽつと雨音を楽しみながら本を読む。
久しぶりの雨だ。

私は、寂れた古民家で煙草屋をやっているのだか、こういう日はお客さんが少ない。

が、雨の日にしか来ない人もいる

「こんにちは。お兄さん」
「こんちわ」

雨の日、いつものように雨宿りをしに来ているお兄さん。
黒いスーツにサングラスという柄の悪さだが、話してみれば礼儀正しい青年だ。

「今日も雨だね。はい、タオル」
「サンキュー」
「気にしないで」

お兄さんが来るであろう事を見越して、雨の日はタオルを用意する。これも習慣になってるね。

「さて、雨が止むまでどんな話をしようかね?」
「俺はあんたの話を聞きたい」
「私の話は前回しただろ?次は君の話だよ。mtdくん」
「名前で、呼んでくれよ」
「もう少し親しくなったら、呼んであげる」

お互いに口には出さないが、暗黙の了解で、雨の日にしか会えない。

「俺のどんな事を聞きたいんだ?」
「そうだね、好きな食べ物は前回聞いたからね。好きな事はなんだい?」


こんな、曖昧な関係を私達は気に入っている。


8/27/2024, 8:50:25 PM