ようやく家に着いて、玄関で傘をおろす。
その途端に、自分の体に叩きつけるように降っていた雨音が静かになった。
雨脚が弱まったわけではない。先ほどまで、頭上で弾け続ける、ただただ不快でしか無かった雑音がなくなり、しとしとと、ただ雨が降り続けている。
庭の葉に雨粒が弾けるパラパラとした音が軽やかさまで感じさせ、今までの苛立ちが収まる。
傘を介しているからこそ雨音が弾ける音が自分のなかで爆音になり、大雨でもないのにとんでもなく雨に降られたような気分になっていた。
本人以外に痛みが分からないことの例えに良い気がしたが、私以外なら雨のなか佇むことについて、こんな余計なことではなく、もっと楽しい想像を膨らませるんだろうと落ち込み、太陽が出ていようが、やはり家のなかが一番だと、さっさと家に入った。
【雨に佇む】
8/27/2024, 8:33:48 PM