◎雨に佇むぽとり木々の間を縫って落ちてきた雫が頬を掠めて地面にしみを作った。ついと手を伸ばして雨滝の中に差し出すと水が肌に弾かれて小さな珠になった。湿り気のある山の呼吸が大きな雲を呼び寄せて自身を白い綿で隠してしまった。深く息をする。目を開けば墨で描いたような宵闇が木々を塗り替えていく。青い影の中から動けなくなった人影は再び空を見上げた。ぽとり今度は雫が頬を伝った。
8/27/2024, 9:55:14 PM