雨に佇む
しとしとと、なら可愛げがあるのに、今日の雨はバケツをひっくり返したような土砂降りだ。
折りたたみ傘でなんとか対抗していたが、雨の余りの強さに負けそうだったので、シャッターの閉まるお店の軒先を借りて凌いでる状況だ。
意地を張らずに待たせて貰えば良かったか。
先程出てきた彼女の家を思う。こんなタイミングで喧嘩しなくても、と思うがしょうがない。
ふと、水の跳ねる音が混じった。あまりの土砂降りで聞き取りづらいが、確かに聞こえている。
雨足が強くて視界が白くもやが出る中、1人傘を指しているのが辛うじて見えた。
あれ?まさか――
「こんな雨の中、出てくくらい嫌い?」
そう言って傘を閉じ、軒先に入ってきたのは先程喧嘩した彼女だった。部屋着でそのまま出てきたらしく、ノーメイクのままだし、湿気が苦手な髪はとても膨らんで跳ねまくっている。手には傘が2本あった。
「すまん……」
謝罪の言葉がするりと出てくる。我ながら現金なやつだが、普段からガッチリメイクの彼女とはかけ離れた行動が、嬉しくてしょうがなかった。
「もう一声」
「明日はケーキ買ってきます」
横柄な態度も可愛くて即答する。
「よろしい」
そう言って差し出された傘。それよりもその笑顔に安堵した。
8/27/2024, 10:27:44 PM