こっこ

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雨に佇む


女性は残酷だ。もうこの人はムリと思ったら、二度とムリなのだ。
昨日長い春になりそうな位、ダラダラと結局お付き合いしてしまった彼を振った。
結婚するでもなく、ただ流されていく時間と彼の決断力のなさに嫌気がさした。
私も、今年で33になる。世間では晩婚も流行りの一つかも知れないが…。
そんなのどうでも良かった。自分の心に正直になった結果、お別れする道を選んだ。
朝から雨が降り続いていた。ちょうど土曜日の休みだったので傘をさして駅前の馴染みの喫茶店でナポリタンとカフェラテを飲んで、一息ついてからお会計を済ませ外に出た。
通りの真正面に傘もささずに、雨に佇む彼がいた。
これ見よがしにずぶ濡れになって、悲劇のヒロインよろしく捨てられた犬の様な目をしてこちらを見た。
私の気持ちは1ミリも動かなかった。
寧ろ嫌悪感さえ抱いた。
最後の優しさなのか何なのか、傘だけ彼に差し出した。
「傘は返さなくていいから…。」
彼への最後の言葉だった。
私は近くのコンビニでビニール傘を買って、何とも言えない気持ちのまま家路についた。
私が契約者のアパートの玄関に、紺色の無地の傘が立てかけてあった。
燃やせないゴミの日は何曜日だったかな…。
ふとそんなことを考えて玄関のドアを開けた。
雨はもうやんでいた。

8/27/2024, 9:16:01 PM