『鋭い眼差し』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「すみません。少し話を聞いてもいいですか」
問われて振り返る。
柔和な笑みを浮かべた少年が、男の返答を待っていた。
「私で答えられる事であれば」
「えっと、この神社の事なんですけど」
浮かべた笑みに安堵の色を乗せた少年は、どうやら旅行者のようであった。
スマホを片手にこちらへと歩み寄るその姿に、男は僅かに目を細める。
「ここはどんな神様が奉られているんですか?調べても出てこなくって」
時折、少年のように観光目的で訪れる者はいる。
観光目的であり、興味本位であり。
理由は様々ではあるが、こうして人が完全に途絶える事がないのだから、それは悪い事ではないのだろう。
「ここには遠い過去に、国に抗った民の長が奉られています」
「国に?逆らったんですか?どうして」
「従えば、殺されていた。それ故に抗った。それだけです」
笑みが訝しげなものへと変わる。
理解はされないだろう。
血を絶やせなど。命ずる皇尊の意思も、意図も。絶やされる側からしても分からぬ事であるのだから。
「外部の干渉を受けず暮らしてきた少数の民ですから、淘汰されたのかもしれません。ですがその滅びから一つでも残そうと、その民の長は最期まで抗ったのです」
分からぬままに蹂躙され、屍を積み上げられる。
足掻いても、受け入れても結果は同じ事だというならば。適わぬと知りながらも、主は最後まで民のために刀を振るった。
その覚悟すら踏み躙り、民の血は絶えた。
残すものはなく、歴史に語られる事もなく。
「じゃあこの神社は、祟りを鎮めるために造られたんですか?」
少年の疑問に、男は首を振る。
勝者が敗者の影を恐れる事は良くある事だ。そうして奉られ、鎮められてきた御霊は数多くある。
しかしこの社は、違う。
「いいえ。ここは主を慕う者らが建てました。御霊を奉り、それを己の慰めとしたのです」
勝者の安寧を守るためではない。
民のために生きた御霊の眠りを祈るものですらない。
これは、過去を忘れる事が出来ぬ愚かな者らのよすがだ。
慰め、と繰り返す少年の表情には、最初の柔和さなど欠片も見えない。
普段ならばここまで子細を語る事のない男は、己自身に驚きながらも表情には出さず、取り繕うように言葉を続けた。
「なので、ここは他の神社とは成り立ちが異なります。御利益等は期待されない方が賢明でしょう」
観光目的であれば、酷な事を言っている。だが、男にはそれ以外の説明のしようがない。
気分を害したかと、少年を見る。
「大丈夫です。それを目的に来た訳じゃあないですから」
社を見る少年の横顔に、何故だか違和感を感じた。
原因を探ろうと、少年を注視し。すぐに理解する。
大人になりきれていない、まだ成長途中の幼さが残る顔。
その眼が。眼だけが、不釣り合いな鋭さを抱いていた。
「もう一つ、聞いてもいいですか?」
社から男へと視線を移し、少年は笑う。
人好きのする笑みに、消えぬ眼の鋭さが異様だった。
「ここに、女の子が来ていませんか?髪の短い、活発な子。写真とかは、全部消えてなくなってしまったんですけど」
女の子。今はいない彼女が思い浮かぶ。
「消えてなくなった、とは」
「消えたんです、全部。写真も動画も、記憶からも。今は俺以外、誰も覚えていないんですよ。俺の家の隣に住んでいて、幼なじみだったはずなんですけど」
笑いながら、眼だけは強く訴える。
逃がさない、と刃の切っ先の如く鋭さを増して、声なく叫んでいる。
「朝起きたら、消えていたんです。誰に聞いても知らないって。彼女の家もずっと空家だったって。そんなわけないのに」
「何も残っていないのならば、ここに来た理由は?」
愚問だとは思いながらも、男は問う。
少年の笑みが深くなり、眼の鋭さがさらに増した。
「彼女が来ると思ったから。分からなかったけれど、今、理解した」
男から視線を逸らし、境内を見回す。
鳥居、社、社務所。
目を細める。
「ずっと比べられてきて腹立たしかったけど、こういう事か。ならやりようはいくらでもある」
呟いて、男に視線を戻す。
彼女の居場所を、視線だけで問いただしている。
「探している本人かは分からないが、先日一人の娘は来た。主を迎えに行くと出てしまったが」
「誤魔化さないんですね。意外だな。同胞を隠すのかと思ったのに」
「あれが憎み厭うているわけでもなし。ならば匿う理由はない」
男の答えに、少年の纏う鋭さが僅かに和らぐ。
「そう。じゃあ、戻るまで待っていてもいいですか?」
「いつ戻るか分からない。もてなせるものもないが、それでもよいと言うならば」
形だけの許可を願う少年に、男は特に否を返さず。
「大丈夫です。少し待って、戻りそうになかったらまた追いかけます」
男の了承に、少年は笑って礼を述べた。
その言葉に、少年の執着に、ふと疑問が浮かぶ。
「何故、そこまで求める?」
彼女の話と、目の前の少年の差異。
確か、振られたのだと彼女は言っていなかっただろうか。
それを契機にすべてを思い出し、ここまで来たのだと彼女は話していたはずだ。
男の問いに、少年は眼を瞬いて。
「彼女が俺を見ない事が許せない。過去に恋い焦がれて今を見ない振りをするのが我慢ならない…それだけです」
少年の、獣のそれに似た眼を、かつて見たような気がした。
20241016 『鋭い眼差し』
心の余裕は表情と眼差しに
怖れからの鋭さではなく、
根拠のない絶対的な自信から
力を抜いて
拷問官はいらついていた。
「嘘をつくな。そこにデータがないことは調査済みだ」
壁に縛り付けてから11時間と26分。
どんなに痛めつけようと脅迫じみたことをしようと、男は情報を吐こうとはしなかった。
時間が経過してから最初にした質問を繰り返すと、大抵の人間は本当のことを言うものだ。しかし男から受け取った答えも全く同じだった。
拷問はされる側だけでなく、する側にも忍耐力が必要だ。だからこそ、拷問官はあえて定期的に腕時計を見るようにしていた。長引くことには慣れている。
拷問官のいらつきの原因は、男の態度であった。
まともな人間なら、これだけ長時間何も食べずに身動きも取れない状態でいれば、うなだれて力が入らなくなる頃だ。
だが男は違った。臆することなく、顔をずっと拷問官のほうへ向けていた。そうして10時間以上前に行ったのと同じ受け答えをしたのだ。
またしばらく無音の時間が続く。
部屋に窓はない。暖色のランプは時の流れを長く感じさせるのに役立つ。時の流れなどお構いなしに、ランプは狭い部屋をこうこうと照らし続けている。
このランプを見ていると、拷問官は今日もいつも通りだと気持ちが落ち着いてきた。
再び器具を手に取る。金属の音だけが部屋の中にあった。
しかしそれは違和感の第一歩だった。
男からは唾を飲む音もしない。瞬きの数は増えていたが、それでもしっかりと視線をこちらへ向けている。
その視線は針のように鋭く、恐ろしさがあった。
拷問官にとって、このような表情は見飽きたはずだった。死んでいった男の仲間達。組織への恨み、復讐心。拷問官にはどうでもいいことだった。
この男はそのような顔でありながらも、どこか冷静に見えた。
ランプが男の瞳を照らす。そこにくらい闇の中から燃えあがる光を見て、拷問官はため息をついた。
これはまだまだ時間がかかりそうだ。
こちらを見ている彼の鋭い眼差しは何かを訴えている
何をして欲しいのか、何をすればいいのか、私は彼の意思を汲み取ることは簡単に出来るが、同じ職場の同僚は頭を抱える程悩んでいた。
意気投合した、私たちは目で話すことが多く
彼の目つきが変わった時は、深く物事を思案(考えて)いる事が多く、その時話をふっかけると不機嫌にもなったり、移りゆく四季を見ている気分にもなるのだが。
当の本人は少なからず不愉快なのであろう
言葉を発せず、眉間に深いシワを刻むだけだった
「鋭い眼差し」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
─────────────────────────────
「鋭い眼差し」
機械であるボク達が気に入らないという、元宇宙管理士の少女。彼女に酷いことを言われた兄はこんなに高い所まで来てしまった。とりあえず回収したがそのまま寝てしまうとは……。
宇宙管理機構でもいまだに言われるようなことだ。
「機械のくせに」「生命体の模造品の分際で」
「自我を出すな」「黙って仕事をしておけ」などなど……。
はぁ、全く!よく言われることだとはいえ、思い出すだけでだんだん腹が立ってきた。こんなことばかり言われたら、いくらボクでもさすがに少しは傷つくよ。
だからこそ、兄の気持ちがよくわかる。
それはそうと……勝手にお父さんのいたところから出ていってしまった。はてさてどう言い訳したものか。
とりあえず歩きながら考えようか。
下り坂ばかりで思わず転びそうになる。おっと、危ない。
あの子が変なことを父に吹き込んでいなければいいが……。
そうだ。
そういえば、お父さんはボクと彼女のどちらを信じるんだろう。
ボクを信じてほしいのはやまやまだが、昔の過ちもあることだから、彼女に対して強く出られずにボク達が我慢する羽目になるかもしれない。
どうしたものか。
ボクは我慢が得意だが、小さい兄はきっと違う。
これから先、兄が悲しみ続けるかもしれないと思えば……ボクまで辛いよ。
そんな時、下の方から足音が聞こえてきた。
随分と急いでいるみたいだが、上には崖以外なにもない。
一体何のために───「⬜︎⬜︎!⬛︎⬛︎!どこだ?!」
お父さん。ボク達を探しに来たの?
「⬜︎⬜︎……!⬛︎⬛︎……!」声が掠れている。
ボクも応えなくては!
「お父さーん!ここだよ!」「⬛︎⬛︎!」
「どうして勝手に出ていったんだ!こんな危ないところに、どうして!」「……ごめん。」
「ボクは⬜︎⬜︎を探しに出たんだ。すぐ見つかると思っていたが意外と時間がかかってね。遅くなっちゃったよ、ごめんね。」
「⬜︎⬜︎を探しに……?」「あ、うん。」「どうして?」
「ちょっと、ケンカしちゃったみたいでね。」
「あぁ、またあの子か……。」
「え、『また』?」「うん。」
「彼女から話を聞いたんだ。君たちに酷いことをされたって。君たちからもちゃんと話を聞かなければと思ったのにふたりともいなくて、とても嫌な予感がしたから探しにきたんだよ。」
「お父さん……。手間をかけさせてごめんね。」
「いや、気にしないで。ふたりとも無事でよかった。本当に安心したよ。ただ……。」「ただ?」「⬜︎⬜︎が心配だ。」
「もちろん、君のことも心配だよ?でも、この子はまだ小さい。だからなおさらケアしないと可哀想だ。もしも心に傷を作ってしまったらと思うと、それだけで苦しい。」
「はぁ……漸く戻ってこられたね。ニンゲンさんたちも来ているよ。ほら、もう晩ご飯の時間だ。ひとまず何か食べて休もうか。」「へへ……ありがとう、お父さん。」
兄を起こして夕飯に取り掛かる。
ボク達に対して暴言を吐いた彼女が平然としているのを見て、ボクは、おそらく兄も夕飯の味がまるで分からなかった。
夕飯の後、ボク達と彼女がお父さんの部屋に呼び出される。
兄はいまだに不安そうだ。
「どうして君たちが呼び出されたかわかるね?」
「もちろんです!この子達が酷いことしてきたから───「酷いこと、とは?」
父のこんなに冷たく鋭い眼差しは見たことがない。
ボクまで思わず立ち竦んでしまった。
「ねぇ、⬜︎⬜︎。」「おとーしゃ……しぇんしぇ……。」
「おや、どうしていつも通りお父さんと呼んでくれないの?」
「だって、だってボクとしぇんしぇーは……かぞくじゃないから。」
泣きそうな目をして父を見上げる。
「ほら、⬜︎⬜︎〜。抱っこしようか!」「ぎゅ〜っ。」
「えへ、へへへへ!おとーしゃん、だっこー!!」
「⬜︎⬜︎、抱っこ、嬉しいね?」「んー!」
「私も嬉しいよ。だって私たちは、家族だからね!」
「かじょく?ほんとに……?」「当たり前だろう?家族じゃなければこんな風に抱っこもしないよ?」
「じゃあ、⬛︎⬛︎ちゃんも!だっこ!ちてあげて!」
「そうだね、⬛︎⬛︎。抱っこだ〜!」「さっき散々してもらったじゃないか!へへへ!」
「あの!さっきからなんなんですか?!気持ち悪いもの見せつけないでください!不愉快です!」
「まだ分からない?」「は?!」
「この子達はとても優しい子だよ。基本的に全ての存在に対して友好的に接するプログラムで動いているとはいえ、この子達は飛び抜けてフレンドリーで可愛い。」
「それに、親の欲目もあるだろうけれど、とても純粋で甘えん坊で、どこをとっても愛せる。そんな子達だ。」
「この子達が君を傷つけるような真似は絶対にしない。もしそんなことがあるとしたら───君に原因があるだろう。」
「なんで私が悪者にならなきゃいけないんですか?!意味わかんない!私はただみんなが思ってることを代わりに言ってあげただけじゃない!機械のくせにって!」
「そうか。それじゃあ、彼らが機械じゃなければ何も言わなかった?」「そんなの分かりません。でも、なにも言ってあげなかったと思います。だって博士の子どもなんですから。」
「ねえ、さっきからどうしてそんなに高圧的なの?」
「だって、強いものが正義なのが当たり前じゃないですか!私は一番強くて正しい!それを教えてあげたかっただけです!」
「そんなの、正しくも強くもない。君も分かっているはずだろう?前にも話さなかったかな。私は生前、生命体も機械も仲良くできる宇宙管理機構を作りたかったと。」「あ……。」
「『機械と仲良く』なんてあり得ないと、機械を埋め込まれたせいで命を落とした一部の子からは反対もあった。」
「それでも、私は生き物も機械も、皆のための居場所を提供するために努めてきた。そのうち少しずつ理解してもらえるようになった。とても安心したよ。」
「だが、君には分かってもらえなかったようだね。君は強いこと、正しいことにこだわって、小さな子や珍しい子をいじめていた。そうだろう?」
「君は私にいい顔ばかりするけれど、私は知っているよ?」
「あ……その、ごめんなさい。」
「謝るのなら君が今までいじめてきた彼らに謝りなさい。」
「君が強さにこだわる理由は否定しない。けれど、誰かを守れもしない力に意味はあるのかい?その点でいえば、君は───「ストーーーーーーップ!!!!」
「これ以上言ったら喧嘩になるから!!!やめようよ!!!」
「⬛︎⬛︎……ごめん。」「謝るのなら彼女に、ね?!」
「あ……ごめんね。」「……私も、ごめんなさい。」
「さて、みんなもう気は済んだかい?もう寝る時間だから、部屋に戻ろう!」
「おやすみ……えーと、名前は……。」「私、◆◆。」
「◆◆、おやすみ。」「今日はごめん。おやすみ。」
彼女は部屋に帰っていった。
「おとーしゃ……ねむいのー……。」
「そうだね、いっぱい歩いたもんね。」「んー……。」
「偉かったねー、泣くの我慢して。」「んー!」
「お父さん。」「ん?」「今日さ、昔みたいに一緒に寝ようよ。……ボクの寝相、随分と良くなったんだよ?」
「はは、そうか。それじゃあ一緒に寝よう!」
久しぶりに家族で眠ったベッドは、すごく暖かかった。
いっそのこと、この時間がずっと続けばいいな……なんてね。
もうすぐ選挙がある 日本国内にもいろんな問題があって とても難しい… 少しでも自分の考えと近いと思える政治家を 鋭い眼で見ていきたい 少しでも世の中が良くなるように…
ポポヤ
「さあ、狩りに出かけよう」
大鷹のダイヤは翼を広げゆったりと巣から飛び出した。
ダイヤは冬の狩りが好きだった。ピンと張り詰めた空気が心地よく、他の季節に比べて視界がクリアだ。
風に身を任せ上空をゆっくり旋回する。じっくりと獲物を探す。
こちらに気付いていないようだ。狙いを定める。
「今だ」
大きく翼を広げ、力強く羽ばたく。
獲物に向かい一直線に急降下。相手に逃げる隙を与えない。
鋭い鉤爪でがっしりと捕まえる。
一瞬の出来事だ。
ダイヤは満足そうに大きく羽ばたき巣に戻っていく。
————————-
お題:鋭い眼差し
秋渇き 実をつけ終えた ミニトマト
ハダニをめがけ 霧吹きをまく
テーマ 厳しい眼差し
__________________
もう実ることは難しくても枯れる最後まで。お腹がすいた私は何か別のもので満たそうか。
周りの視線が気になる 陰口を言っているのか?
まるで鋭い眼差しを受けているようだ
その鋭い目つきが痛くて怖いんだ
鋭い眼差し
彼と僕は、同じクラスで席が前後。
僕が前で、君が後ろ。
普段、授業中だろうが、休み時間だろうが、やる気無さそうに、机に突っ伏してる君。
友達らしきクラスメイトに声を掛けられても、一瞬軽く顔を上げるぐらいで。
気だるげな返事を返すだけ。
……なのに。
僕が授業中配られたプリントを、彼に渡す時。
彼は決まって、顔を上げて僕を真っ直ぐに見つめてくるんだ。
その鋭い眼差しが、僕はちょっとだけ怖い……のに。
いつまでも見ていたいなんて思うのは、どうしてなんだろう。
そんなある日の放課後。
俺が担任の先生からの頼まれ事をこなしてから、教室に戻ると。
彼が教室に一人、机に突っ伏していて。
どうやら、眠っているみたいだった。
このまま、彼をほっといても良いのだろうか。
そろそろ下校した方が良いんじゃないか、なんて。
彼のことを心配……してるようで、そうじゃない。
僕の頭に妙な好奇心が生まれて。
気が付くと、僕は彼の席の前に立ち。
そっと、名前を呼んでみる。
彼の名前を口にした僕の声は、不思議と落ち着いていて。
小心者の僕らしくないな、と思った。
そんな時、だ。
机に突っ伏していた彼の顔がゆっくりと上がって。
俺と視線が合うなり、目を見開いたかと思ったら。
いつもの鋭い眼差しに変わって。
じっと、僕を見つめてくる。
「……何か用、か?」
なんて、眼差し同様に鋭い声色に。
僕は一瞬ドキリとしたけれど。
でも、気が付いてしまったから。
鋭い眼差しを向けてくる彼の頬が薄っすらと赤く染まっていることに。
だから、僕は自然と笑みを浮かべて。
「可愛いね」
と、口にすれば。
「……何、言ってんだよ、バーカ」
そんな、鋭いけど、少し震えた声が。
何だか、やっぱり……可愛いらしく思えて。
「やっぱり、可愛いよ」
僕が君の鋭い眼差しを見つめてしまう理由が、今わかった気がした。
End
1日1回の制限がしんどくなりました。
これからはnoteに書きます。
気が向けば、お題の文章を書きに来ます。
たまに
自分で
鏡を見て
怖いな
と思うことがある。
仕事柄
優しい眼差し
は心がけている。
でも、
危険な時は
それを回避することが
優先だ。
真剣だからこそ
なんだけど
怖い人
にならないよう
気を付けよう。
#鋭い眼差し
鋭い眼差し
一番最初に思い浮かんだものは人間。
機嫌が悪そうな感じ。
鋭い眼差しは、自分に向けられると「うッ」ってなる。
好きではないよね。
皆も同じ気持ち?
カモメって結構、鋭い眼差しだと思う。
自分はないが、すぐ横にいた人が
総菜パン持ってかれたのには驚いた。
目が驚くほど怖い。
(鋭い眼差し)
鋭い眼差しと聞いて、一番最初に思いつくのは猫だ。アーモンド型の華やかな目が特徴的だ。真正面よりも横切る姿を見かけることが多いからなのか、切れ長で鋭い目線を感じる。他にも、暗い所で光る瞳孔や獲物を一心に見つめる姿にも鋭さを感じる。鋭さは目の造形が問題なのではなく、対象に対する意識の強さがもたらすのかもしれない。
「鋭い眼差し」
昔から、大嫌いな奴がいる。
テストの点数で落ち込んでいる時、体育のマット運動の授業で倒立に失敗した時、果てには消しゴムを落としただけでからかってくるあいつ。
たまに私のことを、鋭い眼差しで見てくる。
他の人にはしない。私にだけだ。
どうしてこんなにも執着するのか、わからない。
せっかくの華金の帰り道なのに、こんなこと考えてるなんて、気分が悪い。
そんなことを思っているうちに、通学路にある分かれ道に差し掛かった。
登校のときは急いでいるのであまり気にしないが、下校のときは好奇心に揺さぶられていつもと違う道を行きたくなってしまう。
…今日は、好奇心が勝ってしまったみたいだ。
いつもとは違う道。結局同じ道に着くことはわかっていても、どこを通っているかはわからない道。
好奇心を抑えられず、どんどん体は進んでいく。
ちょうど曲がり道の前を通り過ぎようとした時、そこにはあいつがいた。
いつも私を見る時とは違う、このうえなく優しい目で小学1年生くらいの子の頭を撫でている、あいつが。
私はあいつがそこにいることにびっくりして、逃げるように帰った。
次の日の朝、学校であいつに呼び出された。心底嫌だったが、あいつがいつもより不安げな顔をしていて断ることもできなかった。
「なぁ、お前、昨日の帰り、俺のこと見てた…?」
『……?別に見てたわけじゃない。たまたま通りかかったときに見えただけ。』
「、でも、見たんだよな…?」
『まぁ、』
「っ、はぁぁぁぁぁぁぁ…」
「さいあく…」
『は?なに、私に見られたのがそんなに嫌だったわけ?いつも散々私のこと見て、からかってきたくせに?』
「いや、だって、」
「好きな奴にあんなとこ見られるとか、恥ずいじゃん」ボソッ
『、?なんて??』
「なんでもねぇよ、!!」
あいつは顔を赤らめた。
初めてみる顔だった。
すごく新鮮で、なぜか目が離せない。
心臓が、きゅんと鳴った気がした。
end
そんな鋭い眼差しで見ないでくれ。
状況はわかってるつもりだ。
どうやら、渋谷駅の野郎が「ヘマ」をやらかしたらしいな。自転車の立ち往生がどうのこうのって?
え、実際は違う?
しかしな、今は正確な情報など手に入りづらい状態なんだ。
ご存知の通り、スマホを開こうにもそうできるほどの隙間がない。
スマホがあるのにしぶとくラジオが生き残ってるのは、コレが理由かもしれないな。
情報を手に入れる唯一の方法は、現在乗っている車両の車掌のアナウンスのみ。それが、
「状況を確認次第お伝えします」
その連呼ときている。頼りにならない。
足りない。圧倒的に情報が足りない。
まあ、どんな原因であっても埼京線の野郎が止まっちまったのがいけないんだ。
埼京線に乗り込むはずの人数が、こちらにしわ寄せしにきて、それでこの混み具合っと。
ひとまず俺たちの状況を整理しよう。
日が落ちた夜7時半。
無事一日を終えた会社員たちでごった返す、帰りの満員電車。7号車。山手線。
ここまではいいな。
いつもなら、混雑率120%といったところだろう。
ドアの目の前はぎゅうぎゅう詰めだが、車内の中ほどはいくらか空いている。おしくらまんじゅう、押されて泣くな。それを車内でしても別に泣くほどのものでもないだろう。
朝の死闘に比べたら、だいぶマシ。
そう、平常時であれば、な。
今は朝の死闘を再現されている。
混雑率は180%くらいはあるんじゃないか?
わからないが、非常にすし詰めとなっている。
パーソナルスペースがない。
四面楚歌よりも逃げ場なし、というわけだ。
そんな脳内で架空の人物と脳内対話をして気を紛らわしていると、U駅に止まった。
通常なら乗降者数は数人レベルで、ドア周りの人の交換程度なのだが――ぐぉ!
し、失礼……。
変な声を出してしまった。
くっ。や、やるな。
あまりにも優秀なボディブローを腹に喰らってな。
不覚だが、ガード代わりのカバンは足元に下ろしてしまっている。
というか、まだ入るの?
まだ入るの?
え?え?え?
ちょっ……。
ちょっ、ちょっと……こらっ!
ホームで乗り込んでくるサラリーマン!
オメーだ、オメー!
「ったくしょーがねーな。俺のスペースねぇーじゃねーか。しかたねーな、ちょっと本気を出すか……」
出すな出すな! 本気を出すな!
もう絶対はみ出てるだろ!
ホームドア内にいるだろうからって、「まだ入るだろ」みたいなことをするなっ!
それを、ひと駅ごとにするな!
ケーキの断面からクリーム出てるって!
もう入んないんだって! そのくらい分かれよ!
「あっ痛」
というマダムの声が目の前から聞こえた。
本当に痛いときでなければ言わないセリフだ。
それを見受け、……ドア前のサラリーマンは全然懲りない。
だ・か・ら!
おしりで!
無理やり押し込もうとするなぁーー!
あまりにも強い乗車意識により、僕は形容しがたい圧力を感じた。
積み残しになりたくない、という強い心を感じとった。
今乗らなければならない。
昼間であればわかる。
デッドラインにいるということだ。
わかる、わかる、けど……
もう無理だ。強制的な撤退だ。
上から垂れた、船のいかりのようなつり革を放してしまった。僕は漂流せざるを得ない。
手を挙げたまま、車両の中ほどで宙ぶらりん状態。
ちょうどつり革が設置されていない場所。
暗黒の群衆のなかで突っ立っている。
身体全体に200%の乗客率を感じる。
体感は250%。それ以上はあるだろう。
この中でスマホを落としたりでもしたら、と思うとゾッとする。人を、暗闇だと思え。
画面操作を諦めて、握りしめるように手を変え……ようとするが、それすらもできないレベルだ。
かろうじて、画面に指を滑らせて、(あとで書く)を書いた。昨日のお題を書いていたのに、場の悪い冗談だ……
《鋭い眼差し》
※当方、銃に関しては素人です。
ご都合的な描写をしていますので、気に触りましたら申し訳ありません。
今日は、彼が私に射撃訓練をするところを見せてくれることになった。
以前に私がそれを見たいと呟いたのを覚えてくれていた彼が準備をしてくれて、私達は揃って射撃場にいる。
「危ないですから、そこから先には近寄らないようにしてくださいね。」
そう言って指し示した場所に私を立たせた彼は、銃を撃つための場所に移動する。
ここからだとちょうど、彼が的を狙う横顔が伺える。
別世界からだと彼が大きめの銃で戦う全身は見られても、全然表情は見ることができなかった。
それもあって、私は物凄く楽しみで仕方がなかった。
きっと、凄くカッコいいんだろうな。
彼は所定の場所に立ち、自分の掌くらいのサイズの銃を取り出した。
そして、ささっと銃を操作している。たぶん、安全装置を外しているんだと思う。
的までは、私から見ればかなり遠い。
素人目では、的に弾を当てることすら困難に思えるほど。
「では、いきますよ。」
そう私に声を掛けた彼は、まっすぐに伸びた背筋で的の方を向く。
銃を持った右手を前に持ち上げ、左手を右手にしっかりと添える。
その体制でぴたりと止まった瞬間、彼の纏った空気が凍るように張り詰める。
的を見据える燃えるような鋭い眼差しは、それだけで的を射抜かんばかり。
私も釣られて肌がひりつくような緊張感に包まれたその時、彼の銃からパシュっと音がした。
銃身から飛び出した弾は、遥か先にある的の中心を難なく貫いた。
難なく。そう見えるけれど、それが如何に難しい事であるかは素人でもある程度理解はしているつもり。
だから、私はひゅっと息を飲んだ。
見事に的に命中させた彼の技巧と一連の動作の美しさに、私は彼が今までどれだけの血と汗を滲ませて訓練してきたかが感じ取れた。
私が声もなくそんな彼に見惚れていると、彼は的を見据えていた鋭い目をそのままにこちらを向いた。
その突き刺さる氷のように冷淡にも見える眼差しの奥には、どんな困難も貫き通す強い意志が燃えている。
それは、ほんの一瞬のことだった。
私に向けたわけではない、的に向けていた彼の集中の名残りの眼差し。
けれどその眼差しに、私は全ての意識を奪われた。
怖いけれど、綺麗。
不純なものなど焼き尽くされたかのような、美しさすら感じる威圧感。
恐怖の向こうにある、完全に呑まれた者のみが触れることの出来る重厚で夢のような昂揚感が、私の心を支配した。
ああ、だから私はこの人に自分の命を託せたんだ。
私が本当に闇に魅入られた者ならば、あなたに引き金を引いてほしい。
この世界で、自分が何者か全く分からない。
そんな私を裁くのは、あなたであってほしい。
あの時月に願い誓ったこの想いは、決して間違ってはいなかった。
私が気が遠くなるような一瞬に想いを馳せていると、彼は銃の安全装置をロックし、目を伏せふっと息を吐いた。
そして目を開くと、いつも見せてくれる柔らかな眼差しを私に向けて言った。
「どうでしたか? 普段僕の使う銃とは違うので、本番ではないですが緊張しましたね。」
彼にとっては至極当たり前で、今の私にとっては至極唐突なその優しい声に、私の意識はグイと現実に引き戻された。
それでもその現実は酷く優しく暖かく、次はそれを得られた幸福感に私の全身が包まれた。
「はい…あの、本当に…見事でした…。」
私はどうにも掴めないふわふわした心地で、彼に何とか口に出せる本音を伝えた。
私ね知ってるの、
いつも鋭い眼差しで怖がられてる貴方は
本当は………
優しい人ってこと
誰もお水をあげない、
忘れられたお花に
お水をあげて、
誰かものを無くした時は
放課後まで1人で探してあげてるとこかね
ふふ、今度話しかけてみようかしら?
鋭い眼差し
まずい、と思った。彼が私の地雷を踏みぬくのは予想できたはずなのに、いざそうなると感情的になってしまい、後は己が体に任せるままになってしまった。立ち上がって彼を見下ろす私は直ぐに何か言わなければと思ったが、彼が先に口を開いた。
「悪かった、もうこの話はやめよう」
そう言うと直ぐに立ち上がり、彼は部屋に戻ってしまった。
このような点が私と彼を決定的に分けていた。私は特にどうすることもなく、立ったまま彼が去った姿を目で追った。
『先生と私』