『逆さま』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
最も身近な異世界は水の反対側だという
触れられそうで触れられない
ありそうであり得ない
無いはずなのにあってほしい
逆さまの世界にいる私(あなた)
代わってくれないかな。
今はとっても苦しいから 辛いから
そういって、水面をさわっても行けやしない
隣にある逆さまのセカイ
#逆さま
言葉を推測してみても
わかり合えない とき
私が悪質なく言葉で
傷つけたとき
相手から傷つけられたときも
何故か
わかりきる100%無理
だが 逆に 無頓着に発した言葉
繰り返したら 失礼し過ぎたな
気づける 他者は違うから
冗談つもりでも 相手はそうなんだ
ないも 解ると
気をつけように できる
他者からも 何故 傷つくこと
話すか 無頓着か 意味があるのか
相手の 言葉を 声のトーンとか
真似てみる
苛々したのは 私を嫌いばかりでなく
好きだが 上手く言えないかも
なんか 嬉しくなる
逆に 相手と 仲良くしたい
摩擦 喧嘩には
逆なら どうおもう
その対応さ など 話し合えば
沢山 行き違いが あった
発見にも なるから
嬉しい
逆に私が されたら 迷惑だ
しないような していきたいな
不器用だけど
ここのところよく「逆さま」を思い起こす言葉を見る。
本屋のレジで見たポスター
「あなたの予想は全て裏切られる⁉︎話題の大逆転サスペンス!」
暖簾の奥の厨房に見えた段ボールの「天地無用」
「子猫を2匹拾いました。白と黒なので名前はポジとネガにしました。」
太極図。
誰かが誰かに送ったYouTubeのコメント「これ、立場が逆転したら同じこと言えますか?」
反転幾何学。
どんでん返し。
文字を目にして逆さまを想起する。
その後必ず強烈に眠くなる。
ああそう、ひっくり返るのかあ…へえ…ふーん。。
私はぴったりと吸い付くようにフィットした肌色のラテックスの手袋を脱ぐ。手首の部分を持って一気にひっくり返す。
そうして両方の指の先の先まで全部綺麗に裏返ったのを確かめたところで、パッと目を覚ました。
「逆さま」
私と貴女はまるで正反対
産まれるまでは同一だったはずなのに
出てきた瞬間から貴女は愛されて
私は忌み嫌われた
それでも貴女だけは私を愛してくれた
母様からも父様からも空気として扱われる私を貴女だけが認識してくれた。
だけどそんな日々も続くはずもなく突如として忌み嫌われた日々は終わりを告げる
私が貴女を…
唯一私を愛してくれた貴女を落とした
暗いくらい井戸の底
貴女は何も言わずに、ただ笑顔で真っ逆さまに落ちていった
私はその日から貴女になった
だけど、貴女は愛されてなんかなかった
私は貴女に守られていた事を知った。
貴女はこの狂った家から逃げられるのが嬉しかったのか
私は今日も愛される
醜い奴等に貴女の代わりとして
「逆さま」
世の中ひっくり返そう
くるっと一発 さくっと早く
何がホントでホントが嘘か
くるくる回って回って
海へと体が投げ出されて、宙に浮く。
目に入るのは、逆さまのセカイ。
それは、死の淵に見るには綺麗すぎる。
2年前生クリームを浴びるように摂取した無人駅で出会った恋人とツリーを見ながら公園のテーブルでおにぎりを食べている今日と
『逆さま』
逆さま
高校入学してすぐ。部活・同好会説明会でのことだった。
「来なくていいよ、うちにはさ。サッカー部とか、吹奏楽部とか、華々しいとこあるから。そっち行った方がいいと思う」
束ねた黒髪を真っ直ぐ降ろした人だった。
彼女は他の部活を見に行けとでも言うように、ほっそりとした白い腕をふらふら振った。
自分を諦めたようにたまらなく冷たい言葉なのに、目尻は緩んでいる。世相から外れた様はどこか魔術的な魅力を持っている。
僕は宙ぶらりん同好会に入会を決意した。
その日の放課、文化棟最上階。廊下は使わない教材の入ったダンボールがところどころに山積みされていた。下階と違って人がいない。静謐が一体を支配している。
その最奥。世界の隅っこのような場所に、宙ぶらりん同好会の会室はあった。
「反対になってる……」
『宙ぶらりん同好会』と書かれたプレートが、逆さに吊られている。
僕はドアを叩いた。
「どちら様ですか」
ドアが開いた。あの時の先輩が眉をひそめて僕をじっとみてくる。背筋をピンと張っていた。
「新入生です!」
「……何しに来たの?」
「青春しに」
「馬鹿じゃないの」
先輩はぷいっと背を向けて中へ戻って行く。レモンのような匂いがほんのり漂った。
「彩珠ちゃん! ……ごめんね。彼女、不器用なんだ」
代わりというように、男の先輩が出てきて言った。彩珠先輩っていうのか。放課なのに、セットしたばっかりみたいに整った髪をしていた。
「大丈夫です」
僕は言った。
「小嶋(こじま)といいます。新入生だよね?」
「はい」
「来てくれて嬉しいよ。いや、ほんとに」
小嶋さんは胸をなでおろした。
「説明会でキツイこと言われなかった? 」
「いや全然」
「そりゃよかったよ。……立ち話もなんだから、ささっ、中へ」
会釈して中へ。辺りを見回す。ドア側にロッカーや棚が、窓側に長テーブルがある。彩珠先輩は椅子に座って窓外を眺めている。夕日が当たって眩しそうだ。
テーブル上のお菓子とマグカップが風景によく馴染んでいた。ここだけ時間がゆっくり進むような、そんな気がした。
「そこの椅子にどうぞ」
「ありがとうございます」
小嶋さんが座るのを見計らって僕も座った。
「彩珠ちゃん。黄昏てないで」
「黄昏てる訳じゃありません」
「じゃあスカイフィッシュ?」
「スカイフィッシュ探してる訳でもありません!」
「照れてるんだって。説明会上手くやれなかったって言ってたから。来てくれて嬉しいよね」
小嶋さんは独り言のように言った。彩珠先輩はキッと小嶋さんを睨んだ。
「彩珠ちゃんの自業自得だよ。黄昏てることにしてあげようと思ったのに」
「そんな事頼んでません。それに、黄昏るなんて変な人だって思われるかもしれないじゃないですか! 」
「そうかなぁ?」
「そうですよ!」
聞いている限り、小嶋さんが3年生で、彩珠先輩が2年生なんだろう。
「ほら、彩珠ちゃん。新入生くんが暇そうにしてるから。何か話してあげないと」
「新入生くんって酷いですよ! 名前聞いてないんですか!」
「……うっかりしてた」
小嶋さんは頭の後ろを撫でながら言った。
「『うっかりしてた』じゃないですよ! 」
「ごめんごめん」
「『ごめんごめん』じゃないです! 」
彩珠さんは小嶋さんがわざと名前を聞いていないことに気がついていないらしい。
「……霧払 彩珠(きりばら いりす)。君、名前は?」
彩珠先輩は俯いて言った。
「夏寄 冬喜(なつより ふゆき)です」
「ふーん……」
彩珠先輩は鼻を鳴らすと、黄昏に目を向けた。眩しいのか、大きな目を細めている。白い肌は赤みを帯びていた。
「『ふーん……』じゃ駄目でしょ! 彩珠ちゃん、先輩なんだから」
小嶋さんは言った。
「新入生の自主性を育てようとしてるんです」
「早すぎるよ! というか一方的すぎるよ!」
2人のやり取りは楽しそうだ。あの時の直感は正しかった。ここならば僕の望む学生生活が送れる。
「彩珠先輩、でいいですか?」
「……なんでもいいよ」
「じゃ、彩珠先輩って呼びますね!」
「……君はなんて呼べばいいの」
「なんでも構いませんよ」
「困るんだけど」
「じゃ、夏寄で」
「……夏寄くんね」
彩珠先輩は俯いた。
「夏寄くん。僕のことは小嶋先輩と呼んでくれ」
「小嶋さんは小嶋さんがいいです」
「なんで!」
「小嶋さんっぽいから」
小嶋さんはガクッと肩を下ろした。
「夏寄、いいね」
彩珠先輩は意地悪に笑った。
「小嶋さんっぽいですよね」
「うん。小嶋さんっぽい」
「でもずっと小嶋さんって呼ぶのも他人行儀な気がしません? 」
「わかる。そういう時はコジコジって呼んでるよ」
「コジコジですか」
「そそっ。昼休み遭遇した時に『コジコジ、ジュース奢って』みたいな」
遭遇って。エイリアン見つけたみたいな言い方じゃないか。小嶋さんには悪いけど、ふ、ふふっ。
「黙って聞いてれば酷くないか」
小嶋さんは全く調子を崩さない笑顔で言った。
「すみません小嶋さん」
「コジコジごめんね」
「まったく……」
小嶋さん全然怒ってない。むしろ喜んでるまである。何となくそんな気がしたから小嶋さん呼びにしたんだけども。
「ほら、夏寄くん。一応、活動内容を話すね」
「いいよコジコジ。夏寄なら入ってくれるよ」
「彩珠ちゃんの仕事でしょ! ほら、ちゃんと教えてあげて」
「……話すことなくないですか? 小嶋先輩、お手本見せてください」
「しょうがないなぁ……」
彩珠先輩は僕を見て眉を上げた。困ったことがあったら先輩呼びするといいらしい。
「じゃ、説明するね。宙ぶらりん同好会の活動目的は『逆さまから物事を見ること』です。噛み砕くと、世間と逆さまのことをしてより物事を深く見て、知り、考えることかな。例えば、皆が右を見たら左を見ます。青シャツが流行っていたら白シャツを着ます。私生活には取り入れなくていいよ。ここだけの話、形骸化してるから」
皆と逆さまのことするの大変ですもんね。とは言う気にならなかった。
「で、活動内容なんだけど。『会話より汲み取れるあらゆる推定を思考しつつ、積極的なコミニュケーションを取り社交性を身につける』です」
カラスが鳴いた。
「つまり? 」
「『会話より汲み取れるあらゆる推定を思考しつつ、積極的なコミニュケーションを取り社交性を身につける』」
小嶋さんは笑顔で静止している。つまり、そういうことらしい。僕は頷いた。
「理解が早くて助かるよ。活動日は毎週火・木・金曜日。夕方5時から7時までって一応決まってます。基本もっと早くからいるけどね。学校外の活動があれば僕に言ってね」
「はい」
「それで、入会届だね」
小嶋さんは屈むと、もそもそと動いてバッグから取り出した。
「来たら渡す決まりになってます。入ってくれると嬉しいな。要らなかったら捨ててくれて構いません。連絡も要らないからね」
小嶋さんと彩珠先輩は僕から視線を逸らした。今日みたいな会話をずっと続ける同好会なんだろう。だから入会を断られてばかりなんだ。
僕はペンケースからボールペンを取り出した。
「説明会の時から入会を決めてました。いま書いてもいいですか?」
小嶋さんは口をすぼめた。
時計は18時を指している。地平線に落ちかけた夕日が、彩珠先輩の顔を真っ赤に染めた。
【逆さま】
猫派と犬派、コーヒー派と紅茶派、甘党と辛党、インドア派とアウトドア派……私たちほど正反対な双子というのも、世間には珍しいのではなかろうか。
放課後の教室、片割れを含めた友人たちと中身のない雑談を交わしていれば、よく喧嘩しないよねえなんて感心したように言われた。ちらりと片割れと視線を交わす。確かに私たちの趣味嗜好は何一つ噛み合わないけれど、だからと言って喧嘩などするはずもない。窓から差し込む陽光が片割れの横顔を美しく飾り立てるのを見つめながら、私は力強く断言した。
「「だって世界で一番、この子が可愛いんだから」」
ぴたりと重なった宣言に、友人たちが面白そうに笑い声を上げる。何もかもが逆さまな私たちの、たった一つの共通点。私たちは互いのことを誰よりも愛していて、何だって叶えてあげたいと本心から願うのだ。
机の下でそっと握り合った手の温もりが、私たちの全てだった。
『逆さま』
眼前に広がる湖とその先に遥か高くにそびえる山。カメラと三脚の用意を済ませたのは日の出の一時間も前。缶コーヒーはすでにぬるく、かじかんだ指先に息を吹きかけながらカイロを持ってくればよかったと後悔する。スマートフォンが知らせる天気予報と風速表示はおおむね正確だったが、頬に感じる冷たい風に不安を少しあおられていた。
薄明かりを先触れに太陽の気配が訪れて、ファインダーと対峙する。風よ吹くなと祈り続けていた。
逆さま
パァン!! 一つの破裂音が 響いた。
気付くと 俺は、後ろ向きに倒れる様に
意識を失った。
目が 閉じられる寸前 視界がぐにゃりと
歪み 反転する。上と下が 逆さまに
なった様な 体が宙に浮いた様な
空間に ぐるぐると かき混ぜられている
様に感じられ 体の中にある臓器が
口から 飛び出そうだった。
銃で 額を撃たれ 見事に 貫通し
俺の額には、空洞が 穿たれ
俺は、死んだ。....
呆気ないと言えば それまでだし...
ロクでもない生き方をした 俺は、
案の定 ロクでもない
死に方をした。
所謂 その筋の 末端の末端だった俺は、
体よく 使い潰されたのだ...
こんな扱い この世界では
よくあること 上に 珍しく
褒められた 俺は 調子に
乗ってたんだと思う...
その 褒め言葉さえも あいつらに
とっては、俺を嵌める為の
仕掛けだった。
それに 気付かなかった
俺の落ち度だ
分かってる...
でも もし何かが 一つでも違っていたら
全く 逆の 違う人生もあったのかも
しれない....
ああ神様 もし 生まれ変わる事が
できるなら...
誰も傷つけず 身内に 迷惑を掛けない
世間一般の平凡な庶民として
普通に誰かを愛して 結婚して
子供も 生まれて 平和な家庭を築いて
夫として 父親として 誰かを
大切にできる人生を...
今とは、逆の...
逆さまな人生を 俺にください...
【反転・・・】
「パパ起きて!!公園に行くって
約束だよ!」
息子が 俺の腹の上で ダイブする
俺は その衝撃で目を覚まし
伸びをしながら起き上がる。
「ん~っそうだったな...」
「貴方 大丈夫 やっぱり 今日の
お出かけは、やめて 家でゆっくりする?」
妻が心配そうに 俺を覗き込んで言う
「あ~あ 大丈夫 何か 変な夢見て
ちょっと夢見が 悪いだけだから」
「パパ 早く~早く」
「こらっ急かさないのパパ疲れてるんだから!」
息子が 俺の腕を引っ張り促す。
妻がそれを見て 窘め 叱る。
俺は、その光景を苦笑しながら
そして 幸せを噛みしめながら
見ていた。
何故だろう...
俺は、この光景を 当たり前だと
感じず ずっと欲しかった物が
今 目の前にあると感じる。...
妻と結婚し 子供も小学生になり
結婚生活も 随分立つと言うのに...
「パパ!」
「貴方!」
「「行こう!!」」妻と息子の声が重なり
俺に 笑い掛ける。
「ああ...」俺は、立ち上がり
玄関のドアを開け
二人と共に公園へと向かった。
この世の言葉が全て逆さまだったらいいのに。
そしたら私はあなたに気持ちを伝えられるのに。
いつもおちゃらけて、女の子には誰にでも優しく告白されたら誰とでも付き合う、隣の家に住んでるケンちゃん。
『なぁ、なんでお前はそんなに俺のこと嫌うの?』
『女の子を取っ替え引っ替えする人のどこを好きになれる要素があるの?』
『ほんと、お前って可愛くないよな』
そんな言葉のやり取りを、何度しただろう。
『うるさいな、別に私が可愛くなくてもケンちゃんには関係ないでしょ』
『そうだな』
『アンタなんて大嫌い』
『ああ、知ってるよ』
少しだけ悲しそうに笑うケンちゃんに胸が締めつけられる。
嘘だよ、ケンちゃん。
本当は、好き。大好き。
私もケンちゃんに告白する女の子たちみたいに素直にそう言いたい。そしたらケンちゃんと付き合えるかもしれないのに。
でも、そんな勇気私は振り絞れない。
言葉はいつも喉元で詰まってしまう。
だから今日も「大嫌い」しか言えないの。
本当は小学校の頃から好きで好きでたまらないのにね。
あぁ。いつもこうだ。
私はタイミングが悪い。
目の前には仲睦まじい様子で話す男女一組。
片方は私が1年半ほど片思いしていた男の子だ。
そんな男の子に、女の子、そう、私じゃない女の子が今週末に一緒に映画を見に行こうと誘う場面に遭遇した。男の子は頷いた。
それを死角になる壁にもたれかかって眺めている私はと言うと、座り込みたくなる気持ちを抑えるのに精一杯だった。
彼に気持ちを伝えようと思って手紙を綴った。
少しだけ寝る時間が遅くなった。
朝一で渡してしまおうと思ったけどなかなか踏み出せず放課後になった。
そうしたらこれだ。タイミングが悪いんじゃなくて思い切りが足りないんだろうか。何にしろ自己嫌悪の気持ちがチクチクと胸を刺す。
浮かれていた気持ちはすっかり真っ逆様に落ち込んで地面にめり込む勢いだった。多分来年の春あたりに私の気持ちが落ちた場所に地味な葉っぱが芽吹くだろう。誰にも気づかれない雑草だ。私と一緒……。
「こんなことろで何してんの」
上から声が降ってきた。
その声を認識した瞬間、頬と耳と背中あたりにかっと熱が上がるのを感じる。
過剰反応もしたくなる。片思いしている相手の声だ。
「な、何も……」
絞り出すようにした返事の声は、別の意味で顔に熱が上がりそうなほど情けないものだった。
「相沢さんと話してたの聞いた?」
「えっ、あ。いや……」
「なにキョドってんだよ。映画、日野さんも一緒に行かない?」
日野さん。誘われて羨ましい……などと思ったがよく考えたら日野は私の苗字だ。
「なんで!?」
「なんでって……嫌かよ。森と三村も来るらしいんだけど、確かあいつらとよく話してるだろ」
次々挙げられるクラスメートの名前。私は察した。これは、クラスメートとの健全な映画会!
「全然!嫌じゃないむしろ!めっ……ちゃ!うれしい……!」
私じゃないみたいな、ひどくはしゃいだ声。私の片思い相手も、少し困惑したような表情を浮かべていた。そんな顔も素敵で困る。あぁ、好きすぎる。
「映画そんなに好きか? ってか、何観にいくかも言ってないけど。さっきの会話で聞こえてた?」
「わかんないけどもうなんでも良い。遊べて嬉しい。……みんなと」
あなたと映画に行けて嬉しい、とは、はしゃいでテンションのおかしい私でも言えなかった。
「へえ。じゃあ当日まで黙っておくか。楽しみにしてて。他の奴らにも日野さんには秘密って言っとく」
んじゃ。と。彼は颯爽と去っていく。
私はしばらく呆然としていた。はっと気づく。
手紙、渡しそびれた。せっかく話できたのに。
手紙を見下ろすと、封筒に書かれている逆さまになった想い人の名前が少し歪んでいる。
先程の会話で興奮して握りしめてしまったのだろう。
「書き直そう……」
私は一つ息を吐き、軽い足取りで歩き出した。
鼻歌は抑えておこう。
『逆さま』
あなたへの好意
逆さまな気持ちで接してしまうの
ごめんなさい
逆さま。このお題なんも思い付かないし最近の出来事を普通に書くか。
昨日今日と暖かい日が続くな。暖かいと言っても肌寒い程度の気温ではあるけど。でも暖冬ってのは本当だったな。
去年は地獄のような寒さで水道が凍ったりと難儀したもんだが今年はそういうのなさそうで助かる。
今後も冬はこれくらいにしてもらえるとありがたいものだ。
最近冬支度で色々買ったけどこたつソックスは品質がいいな。高いだけの事はある。
ただ値段ほどの価値があるかといったら微妙なとこなんだよな。これなら普通のハイソックスでもいい気がする。
でも肌触りとか厚さの品質はやっぱりこたつソックスがいいんだよな。高いだけあって品質はいいんだ。
冬しか使わないからそう消耗する事もないだろうしこれからもこたつソックスを買いたいけどやっぱり値段が高いのがネックだな。
逆さま
私には姉が1人いる。
姉は生まれた時、心臓病が見つかり手術は無事成功。
しかし退院間近で院内感染が流行り
あと少し発見が遅れたら死んでいたらしい。
同室だった少女の1人は帰らぬ人となったそうだ。
退院から数年後、何事もなく姉はすくすくと成長し
続けた。しかし両親は大層心配し、2つ年下の妹である私は
幼少期からずっとおざなりな扱いだった。
川の字で寝る狭いアパートの寝室。
父、母、姉、そして私。
この並びはずっと変わらない。
5歳の頃それがとても悲しく、夜中に泣きながら訴えた。
いつも端っこでひとりぼっち。寂しい…と。
私にとっては精一杯の勇気だった。
しかし母はなだめるだけで状況は変わることはなかった。
おかげで諦めを早くに学んでしまい、少し冷めた性格に。
時は流れ、姉も私も2年差で結婚。
早く子供を産めとばかりに周りからよく電話が来た。
夫婦だけの時間も楽しみたいからと適当にかわしていたが
まさかは突然やってきた。
4年間不妊治療に励む姉よりも先に私に子供が出来たのだ。
安定期に入りサプライズで妊娠を両親に告げた。
すると通夜のように鎮まりかえる2人。
言葉はなくともいつまでもある人の存在を気にかける雰囲気を察した。
わかった…。
私にはひとりで十分だ。
寂しい思いも、逆さまの愛情もこの子には絶対しない。
#逆さま
空が青い。まさにスカイブルーだ。
こんなふうに真っ青な空を見たのはいつぶりだろう。都会のビルの上にはこんな色が広がっていたのか。
高揚感と浮遊感。まさにワクワクするような気持ちになっている自分に気付き、ふと笑みが漏れた。
「どうしたらこうなるんだよ」
詰問調というよりは、完全に呆れ果てた感じで言われたのを思い出す。
今は気持ちが良いから思い出したくなかったんだけど、今朝のあれはなかった。まさに、もういいと唇を噛んだ血の味がまた口腔内に蘇ってきた。
いつもいつも。そう、いつもいつもいつも。
俺はそうやって「なんで」「どうして」と言われ続けた。自分では普通にやっているつもりでも、他者をいらつかせてしまうらしい。
社会に出て役に立ったことなど一つもない。
もちろん、学生時代の頃だって、遡れば子供の頃だって。周りを呆れさせ、嘆かれたものだ。
そういうものだと自分だって諦めて、でも頑張って、必死に努力したつもりだが、頑張り続けるなんてことはどだい無理なことだ。
キラキラと通り過ぎていく景色を見るとはなしに眺めていたら、ちょうど俺が働いていた会社が入っているフロアの階だったようだ。
窓際で、タバコを燻らす部長と刹那の間、そう、ほんの数十分の一秒、目が合った。
部長は驚いているようだった。表情が変わろうかという筋肉の動きの一部しか目に入らなかったが、そりゃ驚くよな。
一時間前に叱責した部下が窓の外を落ちているんだから。
俺は逆さまに落ちながら、地面とのキスを心待ちにした。
きっとあっという間のはずのこの時間がこんなに長いものだとは思わなかった。
いろんな人の声が聞こえる。母親、部長、同僚のサイトウさんは唯一いい人だった。高校の先生、部活の顧問、父親は相変わらず背中を見せて何も言わない。
これで自由になる。
衝撃に備えて両手を胸の前でグッと握りしめる。
と、不意に肩を叩かれた。
肩を、叩かれた?
目を開くと、喫煙コーナーの片隅にいた。
手にしていたタバコがじじじと小さな音を立て、私の指を軽く舐めるように焼く。
「あ、あつっ!」
「え、部長、大丈夫ですか?」
差し出されたポケット灰皿に、慌ててタバコをねじ込んで顔を上げた。
そこにいたのは部下のサイトウだった。
「部長、お疲れなんじゃないですか?タバコを持ったまま寝ちゃ危ないですよ」
「いま……」
「ああ、お昼休みならまだあと30分近くありますから大丈夫です。飯、食いました?」
眼鏡の奥の垂れ目が下がって、いつもの人好きのする柔和な笑顔になったサイトウにそう言われ、私はもう一度部屋の中を見渡した。
ここは喫煙室だ。そう、今朝イイジマの奴がまた信じられないミスをやらかして……。
「イイジマ?」
私は勢いよく立ち上がり、サイトウに「イイジマは?」と尋ねた。
「イイジマさんですか?ああ、そういえばちょっとぼんやりしていましたね。お昼食べないのかって聞いたら返事がなかった気が……」
屋上だ。きっとイイジマは屋上にいる。
私はなぜかそう確信して喫煙室を飛び出した。
ちょうどやってきたエレベーターに駆け込み、屋上階を連打する。先客が目を丸くしているが、一瞥もせず上昇していく箱の天井を見つめた。
粗い息で膝がガクガクしている。それもどうでもいい。心臓が口から飛び出そうだ。
あれは夢だったのか。夢のはずだ。
エレベーターが着くやいなや、小さな箱を飛び出て屋上へ走った。
イイジマがいるという確信があり、フェンスぎわを探す。
「イイジマ!」
私の声に靴を脱ごうとしていたイイジマが振り返った。
二つの双眸は落ち窪み、黒い闇のようだった。
「お前!何してんだ!」
自分でもびっくりするようないつも以上の大声が出た。
イイジマは私の大声にはいつも萎縮するのに、むしろ背を伸ばしてニヤリと笑った。
「飛び降りるんですよ。だって、必要ないって言ったじゃないですか」
私は膝から崩れ落ち、その場に手をついた。
土下座のような格好で「そうか」とだけ声を捻り出した。
イイジマの視線が私の後頭部に突き刺さってる。
「逆さまに、落ちたかったんです。部長もやってみますか?」
その後駆けつけたサイトウがイイジマを抱えてフエンスから引き離し、社内は大騒ぎとなった。
イイジマは休職を経て、営業から事務方に異動になり、細かい作業が得意だったおかげでエースになった。
私はパワハラを咎められ、自主退社した。
止めなければ良かったのか。今でもわからない。
世界は逆さまになったようだ。
2023/12/07 猫田こぎん
赤いTシャツ自己主張 灰色スウェット反社的
尖った服に尖った思想
別に良いじゃんって誰か言う
零れた鉢の土
名前も知らない赤い花
隣でカーテンに透かした洗濯物
風で暴れてる
テレビで流すカザマタカフミ
組み足引っ掛ける棚の取っ手
2分でレンチンサトウのごはん
ラップ敷く1枚皿の上にフライドチキン
100均で揃えたコップがまだ割れない
こんなことならもうちょい真面目に選べば良かった
みんながたくさん笑わしてくれるけど私は誰かが原因で上手く笑えなくなって怖い。素直に笑えた日に戻りたいって思うのにそれが全然出来なくて友達に心配かけてるのもわかってるから早くいつもの自分に戻りたい
逆さま
僕の頑張ってきたことがうまくいかないのはやり方が間違っていたからうまくいかないんだなって最近気づいた。
真逆みたいな感じ。
教えてもらったことがちゃんと出来ていなかったんだ。そのことに気づいてからは真逆な方向に行かないように学んだことを忘れずにメモして勉強をした。
今もまだまだたくさん学ぶこと多いけど頑張って夢を掴むんだって決めたからね。
僕は今まで人の話をちゃんと聞いてはいたのだが努力するところを履き違えてしまったり、抜けてしまうことが多いので人からいろいろ指摘や注意を受けてしまいがちだ。
こんな感じだから逆さまというのかよくわからないけど僕の悪いところがよく出てしまうんだ。
気をつけなきゃだなぁと思ってはいる。
真逆な人生を歩まないよう気をつけてやりたいと思う。
終わり