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逆さま

パァン!! 一つの破裂音が 響いた。
気付くと 俺は、後ろ向きに倒れる様に
意識を失った。

目が 閉じられる寸前 視界がぐにゃりと
歪み 反転する。上と下が 逆さまに 
なった様な 体が宙に浮いた様な
空間に ぐるぐると かき混ぜられている
様に感じられ 体の中にある臓器が
口から 飛び出そうだった。

銃で 額を撃たれ 見事に 貫通し
俺の額には、空洞が 穿たれ
俺は、死んだ。....

呆気ないと言えば それまでだし...
ロクでもない生き方をした 俺は、
案の定 ロクでもない
死に方をした。


所謂 その筋の 末端の末端だった俺は、
体よく 使い潰されたのだ...

こんな扱い この世界では
よくあること 上に 珍しく
褒められた 俺は 調子に 
乗ってたんだと思う...

その 褒め言葉さえも あいつらに
とっては、俺を嵌める為の
仕掛けだった。

それに 気付かなかった
俺の落ち度だ
分かってる...

でも もし何かが 一つでも違っていたら
全く 逆の 違う人生もあったのかも
しれない....


ああ神様 もし 生まれ変わる事が
できるなら...

誰も傷つけず 身内に 迷惑を掛けない
世間一般の平凡な庶民として

普通に誰かを愛して 結婚して
子供も 生まれて 平和な家庭を築いて

夫として 父親として 誰かを
大切にできる人生を...


今とは、逆の...
逆さまな人生を 俺にください...





【反転・・・】



「パパ起きて!!公園に行くって
約束だよ!」

息子が 俺の腹の上で ダイブする

俺は その衝撃で目を覚まし
伸びをしながら起き上がる。

「ん~っそうだったな...」

「貴方 大丈夫 やっぱり 今日の
お出かけは、やめて 家でゆっくりする?」

妻が心配そうに 俺を覗き込んで言う

「あ~あ 大丈夫 何か 変な夢見て
ちょっと夢見が 悪いだけだから」


「パパ 早く~早く」
「こらっ急かさないのパパ疲れてるんだから!」

息子が 俺の腕を引っ張り促す。
妻がそれを見て 窘め 叱る。

俺は、その光景を苦笑しながら
そして 幸せを噛みしめながら
見ていた。

何故だろう...
俺は、この光景を 当たり前だと
感じず ずっと欲しかった物が
今 目の前にあると感じる。...


妻と結婚し 子供も小学生になり
結婚生活も 随分立つと言うのに...

「パパ!」
「貴方!」

「「行こう!!」」妻と息子の声が重なり
俺に 笑い掛ける。

「ああ...」俺は、立ち上がり
玄関のドアを開け

二人と共に公園へと向かった。

12/7/2023, 2:53:24 AM