『逆さま』眼前に広がる湖とその先に遥か高くにそびえる山。カメラと三脚の用意を済ませたのは日の出の一時間も前。缶コーヒーはすでにぬるく、かじかんだ指先に息を吹きかけながらカイロを持ってくればよかったと後悔する。スマートフォンが知らせる天気予報と風速表示はおおむね正確だったが、頬に感じる冷たい風に不安を少しあおられていた。薄明かりを先触れに太陽の気配が訪れて、ファインダーと対峙する。風よ吹くなと祈り続けていた。
12/7/2023, 3:05:13 AM