『街へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
旅に出かけよう
スマホを持って、靴を履いて。
行き先は決まってない。行き当たりばったり。でもそれでいい。
北に行こうか南に行こうか。
少し考え、安らぎを求め北へ向かった。
雪の降る見知らぬ街中を、一人歩いていく。
どこか閑散としていた故郷とは違い、街はとても賑やかで忙しない。行き交う多くの人々は皆、軽く俯きながら足早に通り過ぎている。
「どうしようかな」
目的がある訳ではない。この街へ来たのも、ただの偶然だ。
立ち並ぶ店先を冷やかしながら、ぼんやりと思う。
街で見る景色は、どれもが故郷ではないものばかりだ。以前ならばきっと、目を輝かせて見入っていたのだろう。けれど今は、特別何かを思うことはない。
無意識に、足が静かな場所を求めて路地裏へと入り込んでいた。街の喧騒が少しだけ遠ざかり、小さく息を吐く。
賑やかさは、自分には合わないらしい。苦笑して、薄暗い道を雪を踏みしめ歩いていく。
「あれ?」
ふと、道の先が明るいことに気づく。
よく見ると、それは店の看板の灯りのようだった。
手作りらしい、木の看板。ガラス越しに見える店内では、どうやら雑貨品を売っているようだ。興味を引かれて、扉に手をかける。
からん、とベルが鳴る。だが店内に人がいる気配はない。
不思議な店だ。足を踏み入れた瞬間、ふわりと漂う香の匂い。木の香りと混じり、不思議と心が落ち着いてくる。
思わず深呼吸して、店内を見回した。
手作りなのだろうか。可愛らしい小物が並んでいる。
「可愛い」
木彫りの人形を手に取り、呟いた。
可愛らしい女の子の人形。妹はきっと気にいるだろう。
隣にある、木彫りの飛行機は弟が好きそうだ。向かいの棚にあるアクセサリーを母へ贈ったら喜んでくれるだろうか。
次々と目に入る小物やアクセサリーに思い浮かぶのは、全て家族のことばかり。故郷を、家を出ても、家族からは離れられないようだ。
苦笑して、人形を棚に戻す。
空しいわけではないが、何だか興味が失せてしまった。
「いらっしゃい」
不意に奥から声をかけられて、ぴくりと肩が跳ねる。
弾かれるようにして振り返ると、カウンターの奥で店主らしき女性がこちらを見て微笑んでいた。
「あ、すみません」
「謝ることは何もないさ。ゆっくり見ていっておくれね」
「はい……」
見て行けと言われても、気分が乗らない。しかしそれを正直に女性に告げるのも憚れた。
気乗りはしないものの、店内を見て回る。可愛らしい小物やアクセサリーは、どれも故郷にはないものだ。それなのに故郷の誰かが常に頭に浮かんでくる。
そっと息を吐く。このままここにいても意味がない。
店を出ようと、女性に視線を向けた。
「あの……」
「真面目だねぇ。優しすぎるともいうべきか。だが、たまには息抜きが必要さ」
おいで、と手招かれ、断ることもできずに店の奥へと向かう。
そこは、小さいながらもカフェのようだ。促されるまま、カウンター席に座る。
「特別サービスだ。余分な荷物を下ろせる、そんな魔法をかけてあげよう」
そう告げられて、手際よく棚からガラス瓶をいくつか取り出した。
乾燥した草や花を混ぜて、ポットに入れる。聞きなれない言葉の歌を口ずさみながら、ポットにお湯を注いでいく。
ふわり。湯気と共に、不思議な香りが辺りに広がっていく。甘く、草原を思わせるような爽やかさがあり、けれどもとても心地の良い香りに、体から力が抜けていくのを感じた。
無意識に、緊張して力が入っていたのだろう。いつものことだ。そうぼんやりと思いながら、カップに注がれる、煌めく金の色をした紅茶を見つめていた。
「さぁ、どうぞ」
「ありがとう、ございます」
カップと共に蜂蜜の瓶を置かれ、目を瞬く。
紅茶に入れろということだろうか。不思議に思いながら一匙、蜂蜜を救って紅茶の中へと入れる。
とろり、と溶け込んでいく蜂蜜。くるりとスプーンでかき混ぜれば、甘い匂いが立ち上る。
とても心地良い気分だった。どこか夢見心地で、カップに口を付けた。
「――おいしい」
「だろう?魔法をかけているからね」
くすくすと女性は笑う。
「それを飲んでゆっくりしたら、余分な周りへの気持ちも軽くなるはずさ。そうしたら、ゆっくり店内を見て回るといい。気にいるものが、必ず見つかるからねぇ」
「余分な、気持ち……」
紅茶に視線を落としながら、家族を思い浮かべる。
弟妹の笑顔。母の手の温もり。父の声。
けれど、どうして先ほどよりも形にならない。ぼやけた輪郭が残るだけ。
「あぁ。心配せんでも、ここを出る時には戻っているよ。その魔法は長く続くようなものではないからさ」
女性の言葉に、密かに安堵の息を吐く。
完全に忘れたいわけではないのだ。安心すると、途端に体が軽くなってきた気がした。
カップに口をつける。優しい甘さが口の中に広がり、じんわりと体が温かくなっていく。
気づけばカップは空になり、ゆっくりと席を立つ。店内を見回せば、店内の装飾も商品も煌めいて見えた。
「可愛い」
さっきは感じなかった、胸の高鳴り。忘れてしまったはずの感情が込み上げて、見るもの全てが魅力的に見える。
もう一度店内を見て歩く。作り手の思いが込められている商品たちが、どこか誇らしげにしている。そんな風に見えて、笑みが浮かぶ。
ふと、棚の上に置かれた可愛らしい装飾の施された小さな木箱が気になった。手に取り開くと、軽やかな音楽が鳴り始める。
「オルゴール……」
昔、皆には内緒で、父と二人きりで出かけたことを思い出した。いつも頑張っているご褒美だと、見に行ったクラシックコンサート。あの日の光景が鮮やかに浮かんで、少しだけ視界が滲む。
「それにするかい?」
問いかけられて、振り向いた。
優しく微笑む女性に頷いて、オルゴールを手にレジへと向かう。
「この子は、どんな時でも寄り添ってくれる。また抱えてる荷物が多くなったら、ほんの少し持つのを手伝ってくれるさ。大事にしておくれね」
「はい」
丁寧にラッピングされたオルゴールを受け取る。
軽く頭を下げれば、段々と故郷や家族の姿がはっきりと浮かぶのを感じた。
「あの……」
女性を見つめながら、逡巡し口籠る。
またこの店に来たい。けれどそれを言う勇気が出ない。
言っても本当にいいのだろうか。迷惑かもしれない。断られたらどうしよう。
色々な悪いことが頭を過ぎていく。やはり何も言わないで帰るべきかと視線を落とせば、ラッピングのリボンがふわりと揺れた。
まるで頑張れと言っているようだ。小さく笑い、顔を上げた。
「あの、また来てもいいですか?」
「もちろん。この魔女の隠れ家Aisling《アシュリン》は、いつだって歓迎するよ」
「魔女の、隠れ家……」
微笑む女性の姿は、確かに魔女のようだ。優しくて、人を導く良い魔女。
「ありがとうございます」
笑顔で頭を下げる。
帰ろう。そう思い、晴れやかな気持ちで頭を上げた時、後ろでからん、とベルが鳴った。
「どうやら、お迎えが来たようだね」
女性の言葉に首を傾げながら振り向く。
開いた扉の向こうには、誰もいない。ただ白い雪が舞っているだけだ。
「あ……」
「大丈夫さ。行っておいで。また重くなり過ぎたら、ここに戻ってくればいい」
そっと背を押され、ゆっくりと扉の向こうへと歩いて行く。
じわりと視界が滲む。胸が苦しくなり、うまく呼吸ができない。
そっと手を伸ばした。触れる雪が手を包み込んでいく。
「――お父さん」
掠れた声で呟いた。
それに応えるように、雪が体に降り積もっていく。
まるで抱きしめられているかのような温もりを感じて、一筋涙が溢れ落ちた。
20260128 『街へ』
「I love……」
口から溢れだそうとした言葉を飲み込んだ。
形にはできないそれ。中途半端な言葉は、吹き抜ける風に乗って高く舞い上がり、残るものは何もない。
空を見上げ、そっと息を吐く。白く濁り消えていくそれに、ただ胸が切なくなった。
「それは誰に向けようとしたの」
呟く声に、視線を向ける。
誰もいない。
当然だ。雪の深いこの森の奥に、訪れる誰かがいるはずはない。
「愛だなんて、形の定まらないものを誰に向けようとしたの」
声が囁く。風が雪を舞い上げるように軽やかに、木々の枝を揺するような力強さで、無感情に告げる。
「さあね」
姿のないそれに向けて、小さく答えた。
誰かに向けた言葉だったのか、もう覚えてはいない。空なのか、風なのか、あるいは遠い昔にここを離れていった誰かにあてたものだったのか。
誰にも向けていなかったのかもしれない。
「残るものがないから、思い出せない。誰でも良かったんじゃないかな」
「誰にも向けない愛に、意味はあるの」
「さあ?誰かに向けて愛を語ったことなんてないから、誰にも向けない愛との違いなんて分からない」
自嘲して歩き出す。声は近すぎず、離れすぎない距離で、囁き続けている。
「分からないのに、愛したいの」
「ただの真似事だよ。皆が口にするから、言葉にしようと思っただけだ」
「愛とは、何」
「何だろうか。暖かいものだとは聞いたことがあるけれど」
問いかける声に、足を止めずに言葉を返す。
よほど意外だったのだろうか。浮かぶ疑問に意外だろうなと、ぼんやり思う。
一度も言葉にしたことがないものだ。異国の言葉では誤魔化しきれなかったのだろう。
「神様」
ぽつりと囁かれた言葉。
思わず、足を止める。
「違うよ。人間が神だと祀っただけで、誰もいない今は、名前のない何かだ」
見えない声を見据え、告げる。
ざわりと、木々が揺らぐ。どこかで、すすり泣く声がした。
「神様」
誰かが呼ぶ。ざわざわと木々を揺らし、あちらこちらで囁く声がする。
「神様」
呼ぶ声に、応えなかった。誰もいないこの場所で、かつての呼び名は、認識は何の意味も持たない。
風が雪を舞い上げる。白く染まる視界の向こうに、小さな影が佇んでいるのが見えた。
「ねえ、神様」
澄んだ眼差し。悲しむのでもなく、況して嘲るわけでもない、無垢な瞳。
瞬きもせずこちらを見つめ、問いかける。
「愛がないから、寂しいの?それとも、愛したことを後悔したの?」
静かな声に、息を呑んだ。
言葉を返そうとして、掠れた吐息だけが溢れ落ちた。声は喉に張り付き、形になるのを拒んでいる。
喉に手を当て、ただ首を振った。それだけしかできなかった。
「わたしたちは、きっと寂しい」
「でもこの終わりに、後悔はない」
「愛された。だから愛そうとした。ただそれだけ」
いくつもの声に、優しさはない。事実を語り、思いを告げているだけだ。
目を伏せ、声を聞きながらかつての日々を思う。
決して豊かではなかった。
だが誰もが笑みを浮かべ、日々を生きていた。
「――愛とは、とても難しい」
気づけば、思いが溢れていた。
「愛してくれていたと思った。だから同じように愛を返した。与えられたものと同等を、返したはずだった……何が違ったのだろう」
顔を上げ、かつての営みがあった場所に視線を向ける。
そこには何もない。何もなくなってしまった。
「I love you……外から来た人間は、そう言って愛を返していた。誰かに向けた愛はとても美しいものだった。喜び、笑顔が溢れて……それを与えられたらと思っていた」
金に煌めく髪を持つ少年が、小さな花を手に少女へと告げた言葉。
驚きに目を丸くし、ふわりと微笑む少女を覚えている。その笑顔を見て、顔を赤く染めながらも同じように笑った少年の顔も。
「本当に、愛とは難しいものだ」
ただ一人、あるいは一つに向けての言葉なのだろうか。
形の定まらない思い。簡単でいて、とても難しい言葉。
けれど、今更知ったとしても、もう遅い。
「――眠るよ。きっともう二度と目覚めはしないのだろうけれど」
「神様」
「おまえたちは、風と共に好きな場所に行くといい」
ざわり、と木々が騒めく。舞い上がる雪の向こう側に佇む影の目が、微かに揺れた。
「I loveに続く言葉を知らないまま、間違った。おまえたちは、言葉を見つけられたらいいね」
笑みを浮かべ、目を閉じる。
いくつもの声を聞きながら、形を溶かして意識を深く沈めていく。
ここには誰もいない。
二度と目覚めることはないのだろう。
「――あった」
「間違いない。祖母ちゃんが言っていた通りだ」
誰かの声が聞こえた気がして、沈んでいた意識が僅かに浮かぶ。
「残っててよかった。お祖母ちゃんもきっと喜ぶね」
「ちょっと!置いてかないでよ!」
「ごめんごめん。でも見つかったよ」
知らない声。知らない気配。
誰もいないはずのこの場所に、誰かが足を踏み入れている。
ゆっくりと目を開けた。社の前に複数の男女の姿が視界に映る。
誰だろうか。彼らに見覚えはないというのに、どこか懐かしさを感じる。
「これ?お祖母ちゃんが言ってた神さま」
「そうみたいだな」
「社を壊そうとしたら祟られて、雪に沈められたんでしょ?動かしても大丈夫なの?」
何を言っているのだろう。まだ、はっきりとしない意識では、彼らが何を言っているのかよく理解ができない。
社を壊すのだろうか。だが移動するとも言っていた。
触れる手が暖かい。彼らは誰で、どこへ行くのだろうか。
「大丈夫。ちゃんと手順を守れば問題ないよ」
「じゃあ、早く終わらせて帰ろうよ。お祖母ちゃんが会いたがってるし、神さまもこんな寂しい所にいつまでもいるのはかわいそう」
「だな。さっさと準備をするか」
懐かしい光景。懐かしい音。そして言葉。
意識が浮かぶ。言葉が全身に広がり、形を伴ってはっきりと目を開けた。
祝詞を奏上する男。その背後に控える二人の女性。
その一人と、目が合った。
「あ、神さま!」
笑顔で手を振られる。
無邪気な仕草。初めてのことに、どう返せばいいのか分からない。
「一緒に帰ろうね、神さま。お祖母ちゃんも待ってるよ!」
花を手に、微笑む少女の姿が浮かぶ。
彼女の面影を宿した三人に、あぁ、と思わず声が漏れた。
彼女の元へ行くのか。あの異国の彼もいるのだろうか。
「異国の彼?誰のことかしら」
「異国?外国人ってことでしょ……あ、お祖母ちゃんに告白して振られた人じゃない?」
振られた、ということは、一緒にいないということだったか。
やはり、愛とは難しい。
「おまえら。煩いぞ」
「だって神さまが!」
「知るか。俺はお前らと違って、見えも聞こえもしないんだ。お前らが騒いでいるようにしか聞こえん」
「そんなに拗ねないの。それより、終わったなら早く帰ろう」
随分と賑やかな三人だ。それでいてとても優しい子らだ。
片付けをしながら楽しげに話す彼らを見て、そう思う。
祝詞を通じて伝わる、温かな思い。与えられる愛に、胸が苦しくなる。
これは返していいものだろうか。何もなくなった雪原を思い出し、困惑する。
「帰ろう!神さま」
差し出される手に、迷いはない。
その手を見ながら迷い、戸惑いながら手を重ねた。
溢れる笑顔。かつて求めていたもの。
I love you.
それを伝えた少年は、けれど今少女と共にいないのだという。
一人に向けた愛も、必ず報われるわけではないらしい。
この愛を返しても、本当にいいのだろうか。
誰に向けた愛ならば、傷をつけずに笑顔を咲かせられるのだろう。
I love…
それに続く言葉は、まだ分からない。
20260129 『I LOVE...』
【街へ】
オレは『普通の友達』が欲しい。
『体』だけなんて虚しくて嫌だ。
そういえば自分から好きになった人って
あまりいなかった。
仲良くなって、勢いで一線を超えて、
好きになって、体だけの関係になって…
それだけの関係ばかりの人ばかりだ。
体だけ求められてオレの愛情は拒否ばかりされる…
『素性で話せて、素性のまま居られる人』が欲しい。
好きな物を『好き』と言えて共感出来て、
ちがければ意見を言い合って馬鹿やって…
『セ🔞クスもできる 楽な友達』
…そんな人間なんて居ないのは知ってる。
でも、そういう意味でオレは『セ🔞レ』が欲しい。
好きな酒、好きなタバコ、
好きな音楽、好きなファッション…
色々できて楽しめる友達が欲しい。
ねえ、オレと『セ🔞レ』になってよ。
あなたに会うためにしか
街へなんて行きたくない
街へ
青年は街へ訪れた。
しかし美しくはなかった。
青年はまず市庁舎を訪れた。
「階段が動くとは気持ちが悪い。
それに無意味な装飾だらけだ。」
次は市場を訪れた。
「外国産のチーズだとかワインとかばかりで
地元の物がないじゃないか。」
青年は気に入らなかった。
街にあるほとんど全てのものを。
最後に街の広場を訪れる。
すると
着飾った裕福そうな男が演説をしているのである。
「この街はまさに文化人の為に作られたようなものだ。特に市庁舎。あれこそ真の芸術だ。
そこの若いの、どう思う?」
「先程訪れましたが、本当に素晴らしかった。
仰る通り真の芸術です。」
青年はそう答えた。
目が覚めたら、横でユキが寝ていてぎょっとした。眉間に皺がよっていて、いや、そらこんな寒い中布団もかけずに寝たら魘されるよと思う。自分はいつもこたつで寝たら風邪ひくとかいうくせに、この吸血鬼は。というか、吸血鬼って風邪もあんまりひかないんだろうか。記憶の中で、ユキが体調を崩したところは見たことがない。
「さむ」
布団から這い出て、掛け布団はユキにかけてやる。敷布団は畳んで枕と一緒に押し入れへ。自分の部屋からリビングに移動して、まずいつも通りにカーテンを開ける。
真っ白だった。
「おお……」
ついに積もったんだ。カーテンを閉じたときは降ってなかったから、夜中に降って積もったんだろう。空に雲の気配はほとんどないから、これは今日も寒くなるだろうな。
さて、と部屋を見渡す。朝やることはルーティン化している。洗濯物まわして、朝ごはんを作り、食べて、洗濯物を干す。空いた時間に床を軽く掃除して、くらいまでが朝。終わったら本を読む。買い物に行く。ご飯を作る。食べる。日によって図書館に行ったり、散歩したり。ユキのゲームを一緒にやったりもする。
「あ、ない」
読む本がない。だから今日は図書館に行こう。
時間は無限にあるのに、本はそれでも読みきれないほどある。おかげでおれは一生退屈しないんだろう。
図書館に行くたびに、アオイに会う。会うと話さなければいけないが、おれが提供できる話題はそんなに多くないので、ほとんどアオイが話すままに任せていた。アオイの両親はアオイを理解しない。クラスメイトや教師もそうだ。だからアオイは生きづらくしている。そういう話を週に一度か二度、会うたびに聞いていた。
話される分には構わない。アオイが嬉しそうにするからだ。けれど、今日は違った。
「……シンヤくん」
いつもの赤いコートを着たアオイは、おれが図書館に着くとすでにいた。多分、開館からいたんだと思う。小さく震えていた。
「どうしたの、それ」
いつもより青白い顔の中で、頬が赤く腫れていた。叩かれたの、と震えた声でアオイが言う。
「学校、行ってないのバレて。バカにしてるのかーって」
学校まで車で連れてかれたけど、こんな顔で行けるわけない。そうこぼすアオイの顔を見ながら、じゃあなんで図書館はいいんだろうと思う。ここにも人はたくさんいるのに。森みたいだからだろうか。視線を動かすと、本棚のところにいた人がちらりとこちらを見て、すぐ本に目を戻した。
「ねえ、一緒に来て」
「うん? うん」
おれが本を返却するのを待ってアオイがそう言ったとき、おれは特に何も考えずに頷いていた。いつものことだからだ。ここ最近追加された、いつも。図書館からアオイを駅まで送ること。
けれどアオイはおれの手を取った。触れられるのは初めてのことだ。その顔を見ると、少し強張った、怖い顔をしていた。
「一緒に来て」
でもそれだけしか言われなかったので、おれはどうしようもなく、もう一度頷いた。
「やっと来たか!遅かったな」
奇怪な風貌のキャラクターが俺に話しかける。
「お前…街に行こうって、ゲームかよ」
負けず劣らず自分も性別不明な見掛けのアバターで答える。
学校が終わって帰り際に突然「今日の夜に街に行こう!21時に集合な!お風呂もちゃんと済ませて来いよ」と言われたから何かと思えばこれである。
「だってよーこんな田舎でそんな夜遅くに出掛けたら怒られるべ?」
「だったら最初からゲームしよって誘えよ」
紛らわしい。
目の前の奇怪なアバターがポリポリと頭を掻く。
「それだと面白みないやん」
「紛らわし過ぎるんだよ」
「まぁまぁそんなことより俺と一緒に冒険しようぜー」
「冒険ってお前…」
このゲームは自分の分身で普通に生活するほのぼの育成ゲームである。
冒険要素なんてない。
「何すんだよ」
「浜辺でも走りに行く?」
「何のために?」
「せいしゅん?」
「ゲームのなかで?」
「そう」
「そういうのってリアルでやるからいいんじゃないの?」
「冬に海は寒いやん?」
「いやいやいや」
「まぁ何でもいいんだけどさ。単にお前と遊びたかっただけだから意味とか求めんなよ」
「じゃあ、今から何すんの?」
「何しよっか?」
画面越しに脳天気に笑うアイツの顔が見える気がする。
「普通に学校で喋ってる時と何ら変わんないやん」
目の前に居ない相手に笑いかけてしまう。
「それもまた醍醐味よ」
「何の自信だよ」
相変わらず意味が分からない。
「まぁ…な!でも今度リアルでも遊びに行こうな!」
「本当の街にな!」
皮肉を込めて答える。
俺のアバターが満面の笑みで会釈した。
(街へ)
雪が降った
あの人に拒絶された。
かなしい、悲しいはずなのに、涙が出てこなくて。
あいしてる、あいしてた、あの人に愛されたかった。
きっとこの気持ちも、ここではないどこかの街へ旅してしまう。
けど、いい。
私の行き場のない愛があったということを、
誰かに気づいてもらえれば。
27「街へ」
街へ行こう、
ふたりで手を繋いで
走って逃げよう。
何かモヤモヤする時は、街へ出かける。人の波に紛れると、自分の影が薄くなる気がする。色々考えて、ふと涙がでそうになっても、誰にも気付かれないだろう。
〝わたし〟ではない、〝だれか〟になって歩く。街は刺激的だ。色とりどりの看板、店、音楽、人のざわめき…。そんなものに気をとられる。私は今楽しいに違いない、と思う。
テンション高めの街の雰囲気に、しっかりとからめとられたころには、もういいかなという気がしてくる。そして、だんだんとそのパワーに負けてきたら、帰る。
家の最寄り駅を降りると空気が違う。静かな日常が淡々とある。少しほっとする。でもそれが街との良いバランスを取っている。
「街へ」
街へ
街って町という漢字より瀟洒なイメージがありますよね
生活するなら町 観光なら街へ
という勝手な独り言でした
『街へ』
寺山修司の著作で『書を捨てよ、町へ出よう』という本があった。
読んだのは随分と昔だが、面白く感じたのを覚えている。
で、この題名って元ネタがあるんだよね。
アンドレ・ジッドの紀行的詩文集『地の糧』に出てくる言葉で、書斎に閉じこもらず、旅に出て生の感覚を取り戻すことの重要性を説いている。
今日のお題の「街」の字は、商店やビルが立ち並ぶ賑やかな通りのことだから、より人と交わる若しくは多くの人を観察することになりそうだ。
たまにさ。
普段は人と関わるのが億劫なのに、本当にたまに、物寂しく人恋しい気持ちになることがある。
そういう時にふらりと街へ出てみるんだけど、当然周りは知らない人ばっかりで、いきなり話しかける不審者にもなれず、すごすごと帰ってきちゃうんだよなぁ。
いつか、こんな檻から抜け出して
いつか、自分の目で青空を見て
いつか、広い世界を見てしまったなら
いつか、君は僕のことを見なくなるんだろう
賑やかな街も、静かな街も何もかもを知ってしまったら
僕は君のなかにいさせてもらえない
でも、もう大丈夫
君が気になってた街にも連れてってあげるよ
君はもう、力も入らない
君はもう、目に僕以外を映さない
だから大丈夫
あぁ、でも君には時間がないから早くしないとね
さぁ、街に行こう
しばらく行っていなかった街に行こうと思う
寒い冬は終わったしもうでても大丈夫だろう
街の人々はオレを見る度に叫ぶ
オレはクマと呼ばれている
街は楽しい
人間が沢山いるけど
また寒い冬が来るまでオレは毎日街に行こうと思う
街へ/光の指す街へ
黒雲が開いた
その切れ間に日がさして
輝き始めたら
歩き始めよう
一歩を大切に
焦らないで行こう
光の指す街へ
押し込めた塊が
いつまでも溶けず
両腕が痛くなっても
抱えたままでいた
その塊を少しずつ端から
削るのは
鳥の目で見ること
そうじゃないよ、と言って
否定の指を下げること
自分の機嫌は自分で直す、って
誰かが言ってた
『街へ』
いつもありがとうございます。
今日もスペースのみです😢💦
「街へ」
我が家の愛犬は、よくわかっている。
私がお化粧を始めると、ワクワクした目でこちらをチラチラ見始める。
そして、洋服が、仕事着か私服か、確認する。
仕事着を着た時は、プイッとそっぽ向き、眠りだす。
もう、お仕事に行く寸前に、私が愛犬に、「行ってきます。」の声掛けするまで、私に興味はなくなる。
着いていけないのを理解している。
これが、私服の時は「行けるよね?私行けらりよね!」っとアイコンタクトで圧をかけてくる。
私が用意し、歯を磨き戻ってくると、ドアの前で凄くいい姿勢で、お座りして待っている。
「私用意できてますよー!ママ!」って言ってるのが凄くわかる。
いつも、そんな姿を見て、「はいはい。行こーね!」っと言いながら、リードをつけて、街にくりだす。
街へ
いつもは昼頃に書いてるんだけど今日はすっかり忘れてて夜に書いてる。だからなんだという話だが。
それでお題は街か。といっても日本に街じゃない場所ってどのくらいあるんだろ。
そりゃ日本にだって街じゃない場所はいくらでもあるけど大抵は街な気がする。それとも地理的に見たら街じゃない場所のほうが多いのかな。
久しぶりに街へでた
辺りは白黒だった
この辺りはもっと明るかったはずなのに
白黒に加えて何故か焦げた匂いも
そこらじゅうから漂っている
街の人たちは1人も見当たらない
みんな.....
ドコニイッタンダロウ....?
たましいだけになって懐かしい街へ還り
再開発のビルと人口緑地の一角にその場所を探し当て
平屋の縁側で風を浴び、庭のブランコで揺れる
: 街へ