G14

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 今日、街へ行くことにした。
 何年ぶりだろうか。
 何度も行きたいと思っていたけれど、どうしても体が動かなかった。
 前に街に行った時の記憶が、私を臆病にさせた。

 だけどいつまでも家に閉じこもったも仕方がない。
 私は勇気を出し、再び街へ行くことにした。

 街に向かいながら前回のことを思い出す。
 数年前のことながら、今でも鮮明に思いだせる。
 ずっと頭から離れなかったあの光景。

 あの日私は町をぶらついていた。
 特に理由は無い。
 なんとなくだ。

 だけど街に着くと、私に気づいた人達がキャーキャー歓声を上げ始めた。
 私は突然の事に戸惑い――
 いや、正直に言うと気分がよかった。
 だってあんなに注目されることなんて、生まれて初めての事だから。

 だから調子に乗った。
 みんなから見えるように、大きな道を歩いたり、たまに歓声に応えたりした。
 そうすれば、みんな喜んでくれたからだ。
 たまらなく気分がよかった。

 それがいけなかったのだろう。
 私が注目を浴びることを気に入らない人たち――いわゆるアンチがいることに気が付かなかった。

 そのまま私は調子に乗って街を歩いていると、ふと周りに人がいないことに気が付いた。
 周りを見渡しても誰もいない。
 歓声どころか、物音一つしない。
 まるで最初から誰もいなかったかののように……
 何が起こったのかわからず、恐怖に支配される。

 その時だった。
 何かが体にぶつけられた。
 アンチは私に暴力を振るってきたのだ。

 誓って私は何もしていない。
 でもアンチには関係が無かったのだろう。
 見えない所から、何かを何度もぶつけられた。
 私は抵抗をしたが、それでも暴力は止まず、泣きながら家に帰ったのだ。
 今思い出しただけでも、身震いがしてくる。

 でも私は決めたのだ。
 アンチたちと対決すると。
 ベストな方法じゃないことは分かっている。
 でも悪いことをしていないのに、やられっ放しなのは許せない。

 私が街に姿を現すと、みんなが私に注目しているのが分かる。
 だけど突然のことで驚いたのか、私を見て固まっていた。
 歓迎の声が無いのはちょっとだけ残念だ。

 だけど気にしない。
 だって今回の目的はそうじゃないから。
 こうしていれば、またアンチが姿を現すだろう。

 それまでは、この光景を楽しむことにしよう。
 みんなが私を《見上げる》光景は何物にも代えがたい。
 私はこの光景を守るために戦うんだ。

 私の決意を感じ取ってくれたのか、一人の女性が私を歓迎する声をあげてくれた。

「キャー。怪獣よー」

1/29/2024, 9:55:08 AM