弐式

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駅前の、大きな窓があるカフェで朝食を摂るのが私の毎日の楽しみであった。

時間は決まって朝7時で、仲の良さそうな老夫婦とパソコンを睨みつける若いサラリーマン、勉強をする高校生などがちらほらと席を埋める。

私はいつも窓際の端の小さなテーブル席に座り、頼んだコーヒーとトーストのモーニングセットを食べる。忙しなく行き交う人々を見ながら様々なことに思考を巡らせる時間が、私は好きだった。

代わり映えのない景色だ。しかし、その中から小さな変化を見つけた時、私は少しだけ嬉しくなる。


ふと、目の前を黒い影が横切った。


「あ、猫」


艶のある毛並みの黒猫だった。

そういえば、黒猫が横切るという事象は新しい出会いや好機が訪れる前触れだという迷信がある。
私はそれを思い出して、少しだけ楽しくなった。


店の外が次第に騒がしくなっていく。
私は席を立った。いつもより少し時間が早いが、今日はいつもとは違う日になる気がした。

1/29/2024, 9:29:03 AM