『街の明かり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ここは暗くて寂しい。
少し行ったところには街の明かりが見える。
そこまで距離はないはずなのに
僕には遠く感じる。
【街の明かり】
#74
街の明かりは未だ煌めいているのだけど、夜よりも少しだけ光の彩度を欠いたような気がした。きっと、自分のいる場所が明るくなったからだろう。
石レンガの塀が長く続いていく。その塀の向こうには、なんの変哲もない、なんの特徴もありはしない民家が続いていき、闇の中に溶けていった。
住宅街であるので、大した街灯などはなく、ここから数駅先の街と比べればこんな街などは真っ暗闇と言っていいほどだろう。
それでも、先を見通せるかどうか、ギリギリの間隔で配置された灯り程度ならばある。彼はなんとはなしに、その下を意識して歩いて進む。
ひゅうと吹きつけた風は生ぬるくて、二の腕の半ばほどにあるシャツの袖をひらひら揺らす。先まで乗っていた電車の中は心地の良い冷風が吹いていて、その中で汗が乾いてしまったからか、外に出てからは皮膚は汗によって冷えることもなく、蒸した暑さを享受せざるを得ないのだ。
仕事からの帰路は憂鬱で、だけれど日常的にすぎて憂鬱さの感覚など麻痺していく。1人の道は孤独であるけれど、その孤独も仕方がないと割り切れてしまう。
そうして彼はいつも歩き始めると、くだらないことを思案し始める。例えば、今じわじわと皮膚の表面に浮かび出した汗が、とても強い酸性を持ったとして、そして彼の体はその酸に耐えられるようにできているとして、汗が地面に落ちるとその地面はどのように溶けるのだろうか。ずうっと立ち止まって、ポタポタ汗が垂れていけば、もしかしたらコンクリートの道は溶け切って、地層に行き着くのではないだろうか。……でも、そこまでたどり着いてどうするんだろう?彼はそんなことを思った。まあだけれどこれは、生産性のないくだらない想像であるから、そんなに真剣に考えることなどないのだ。
彼は上に書いたみたいなくだらない想像を数回繰り広げてはやめて、やめては繰り広げた。
その妄想を続けて、彼は闇の静けさを進んだ。そうしてしばらくたち、彼がふととある街灯の下で足を止めると、その途端彼は全てがイヤになった。
妄想で終わる一日。暗い中を街灯頼りに進む道。ぬめついたような風。全てがイヤになった。彼を取り巻く人々、働く職場、明日の予定全てを唾棄し、踏んづけてやりたくなった。嫌悪が彼の中に満ち、全てを投げ出し自身を酸で溶かし尽くしたいような気分になった。
だけれど彼は横を見やった。彼のアパートがそこにある。いつの間にやらそこに着いてしまっていた。
彼は衝動的なイヤを全て諦めた。イヤを諦めて、アパートの彼の部屋に入って、そしてイヤを諦めてしまった自分に今日もため息を吐き、やはり自分のこともイヤになった。
外で仄暗く電灯が道を照らす。それは明るいのに暗く、先行きの見えない道はひどく不安を掻き立てるもので。今だけは、彼はその電灯に縋りつきたくなるのだった。一時的な安寧でしかないそれに、縋りつきたくなる自分がやはり、イヤなのであった。
“街の灯り”
昨日テレビで見た、王蟲の群れの明かり
都市どころか国も丸々呑み込める規模の攻撃色
絶望的なまでに圧巻だったな
何度も何度も見ているのに
最後は感動して泣いてしまった
私が住んでるとこ、
めちゃ田舎
コンビニは近くて車で30分
地元に信号は1箇所しかない
中学校は18人クラス
夜はカエルの大合唱だし
深夜走る車は丸太積んだ大型車くらい
徒歩圏内に友達の家は無いし
だから遊んだことがあるのは2、3回
高校帰りにゲーセン行くとか考えられないし
高校帰りに寄り道するような場所も時間もない
川沿いに並んで歩いたり 川で水遊びしたり
びしょ濡れでアイス片手に駄弁ったり
日焼け止めとかどうでも良くて
そんなことがうちらにとっては青春であって
都会への憧れは正直ないけど
ネットでしか見られない好きな人に沢山逢いたいとも思う
ライブとかフェスとか、だいたい関東でしかやらねんだもん
18年の人生 東京にいたのは10分
夢の国は 行ったことないで
今日のお題は「街」だけど
まず、街 じゃないし なんなら 部落だし
あかりなら歩道に数百メートル間隔である街灯くらい
あ、嘘 月も星もある
それでいったら月と星は都会より最強
そういう自然環境だけは誇れる
都会っ子の皆さんよ、
人間に疲れたら田舎へ逃げて来てね。
_ ₈₉
『下界』
下界を見ると点々と光が続いている。
人間の街だ。
いつも夜遅くまで明かりがついている。
人間はどうやら働くのが好きらしい。
…どこにも光がない場所もあるが。
このニホンという国のトーキョーというところは朝まで光が絶えたことがない。いつも目まぐるしく人間が動いている。そしてもちろん、朝も早い。
「…そんなに動いたら死ぬぞ」
私は天界から人間を見守る天使だ。
人間とやらは良く働きすぎだ。
お題:《街の明かり》
遠くから、街の灯りを眺めていた。見つめていた光が、ふっと消えた。
題名『都会夜空』
ある日、街から電気が消えた。
突然の事だった。
何か災害が有った訳でもなく、急に、日本の電気が使えなくなった。
一人暮らしのカップ麺倉庫の中、懐中電灯を付けて不便だと呟いた。
都会なこの街は、いつもよりも暗くて何だかお化け屋敷みたいで。蒸し蒸しとした熱が、汗を垂らす。
電気が使えないから、エアコンも付けられず仕方無く携帯扇風機でどうにかやり過ごしていた。
テレビも付けられないし、携帯の回線も繋がらない。
情報も何も無い儘、今日の夜を過ごすのか。
俺はカレー味のカップ麺に御湯を注いで不安になった。
幸い、水とガスは使えるから食に困る気配は無さそう。
今では、あの目を刺して、鬱陶しくて、邪魔な街の灯りが恋しくなる。
いつも、隣街から帰る俺をじッ⋯と見つめていてくれた。母みたいな街の灯り。
三分待つ間、ベランダに出て見た。
隣の部屋から肉じゃがの匂いが風に乗せられて匂う。
暖かくて、少し温い風。
目の前は、満天の星空と真ん丸いお月様。
街の灯りが、満天の星になった。
『恋しいなぁ...、』
明るい月にそう呟いた。
煙草の煙は、月の目の前を通り、汚す。
何だかんだ、一番良いのは街の灯り。
初めて、この街に来た時は希望に満ちていた街の街頭と、散らばる店や家の明かり。
都会の星空だった。
『煙草が今日は美味く無い。辞めよう。』
そう呟いて、煙草の火を消した。
また、一つの星が消えた。
2023.7.8 【街の明かり】
私はさすらいの明かりつけ師。
他人の住居に侵入し、部屋の明かりをつけることに命をかけている。
理由?そんなものはただ一つ。
家主が帰って来たときに寂しくならないようにするためだ。
我ながら出来すぎた性格である。
「さあて、今日の報酬は何かな〜♪」
ちなみにボランティアでやっているわけではない。
見返りとして家のものを拝借している。
とりあえずブランド物のバッグと腕時計と液晶テレビとパソコンと、、、
私は手近なものを袋に詰め込んだ。
「まあこんなもんか。シケてんな」
大したものはなかったがそろそろ潮どきだろう。帰ろうとすると物音がした。
「誰だ?姿を見せろ」
私はいい感じに威圧した。
出てきたのは家主だった。
「お取り込み中にすみません」
やけに低姿勢な家主だった。
私がさらに威圧しようと考えていると家主は続けて言った。
「ちなみに警察には通報しています」
「あああああーーー」
私は家から飛び出た。ここで捕まったら泥棒と勘違いされるに違いない。
見た目に騙された。あの家主は鬼だ。
しかし家の周りにはすでにパトカー100台が待機していた。
私は警察官に袋叩きにされ息を引き取った。
朝日が差して
一日が始まる
静かな都会に
足音が鳴り響く
昼になり
人の話し声
街を賑わす音楽
笑い声が響き渡る
闇に光る街灯
乾杯の合図
グラスに写る瞳
子供達の“おやすみ”
クラシックが穏やかに
やがて無音
明かりも静かに消えていく──
(2023.07.08/街の明かり)
夜の帷が降りて
私を飲み込めば
消えてなくなる
街の明かりに縋って
あなたを探して彷徨えば
見つからないまま息を呑む
あなたを照らす街灯は
私の瞳にどう映るのでしょう??
サーサーサー ..
鳴り響く風で揺れる葉の音
また今日が始まる
今日の朝
目覚ましをかけていないのに
目が覚めた
今日の朝には違和感があった
何かを忘れているような..
なんだろう
そう思っていたら
一通の通知が鳴った
"ピコンッ"
そこには
「◯◯ー??まだー?」
それを見てすぐさま
思い出した
忘れてた!!!
今日は修学旅行だった ..
_ 実話です💦
「父さん!めちゃくちゃキレイだね!」
今にも駆け出してしまいそうな息子の左手をしっかり握りしめながら、その弾む声に返事をする。
父親として面目が立っただろうか。
先日、不可抗力とは言え約束を破ってしまったお詫びとして、今日は息子と2人でキャンプに来ている。
いつもと違う、少し遠い所にある穴場のキャンプ場。山も川もあり、いろいろと体験するには良い環境だ。
到着が思ったより遅くなってしまったので、テント設営、魚釣り、焚き火の準備、食事までを、日のある間に一気にやりきった。妻が用意してくれていた握り飯の美味かったこと。今頃、下の子と一緒に何してるかな…。
家に思いを馳せながら食後の片付けをしている内に、1日の疲れがどっと出たのか、気付いたら息子が椅子に腰掛けたままうたた寝をしている。
少しだけ寝かせておこうかと思ったが、今日のメインイベントがまだ残っている。そっと揺すって起こす。行こう。
「父さん!キレイだね!灯りがこんなにいっぱい!」
本当に来て良かった。息子とこんなに長い時間2人だけで過ごしたのはいつ以来だったか。
「こんなに楽しいなら、父さん、たまには約束破っても良いよ!」
眼下に広がる街の灯りを望みながら、思いがけない発言に苦笑する。名誉挽回とはまだ言えないようだ。
テントに戻るまでの道すがら、いろいろなことを話した。今日のこと、学校のこと、友だちのこと、家のこと。子どもは子どもなりに、いろいろ感じ取ったり一生懸命考えたりしているんだなと感心する。はて、自分がこれくらいの年齢の頃はどうだったろうか…。
テントに戻った途端、電池が切れたかのように眠りについた息子を横目に見ながら、明日のプランを確認する。明日は龍見学ツアーか。
息子の隣に寝転びながらさっき見た夜景を思い出す。あの灯りの中に、きっと自分たちと同じような "人の親子" がいるに違いない。その親子も自分たちのように幸せな時間を過ごせていたら良いな、などと取り留めのないことを考えている内に眠り落ちていった。
―――続・信頼と実績 [鬼の親子]
#5【街の明かり】
『齧歯類と亀の街』
生きる速さが違うけど 僕らは同じ街の住人だ 土日祝日は実入りが良いから 綺麗な服を着ていよう 今日のニュースは知らないけれど 別段変わりなく暮らしていける 知識がいらなくなったのはいつの日か
おつきさまがまあるい日にはたまにそういうことも考える 晴れた朝 遅い朝食をとっている 警告音を知らない吟遊詩人の命が危うい
木々の茂る暗闇から遠くを見据える。街の明かりは星空の延長。二人で眺める人間の生活の印は、星と同じくらい手の届かないものに思えた。
「今日は星が綺麗だから、一緒に見に行こうか。」
彼の一言をきっかけに、私は山の上へ連れて行かれた。
生身を持たない彼は、時折この山の頂上からあの街を見下ろすのが趣味らしい。人間の営む全く知らない暮らしが、明かりの数だけ見渡せる。その一つ一つの中にも各々違った生活が見える。私にはただの小さな明かりの集合体にしか見えないが、彼は明かりの"中身"まで見通せるのだという。
「時は動いているのだな…。」
私を抱きながら、彼はどこか物悲しげに呟く。
時の流れから追放された彼には、間違いなくあるはずの「今」の景色は、ただ形のある絵巻のようなものなのだろう。
私は、彼に寄り添って言った。
「今の私は、あなたと同じ時の中にいるよ。」
遠くに見える明かりの群れが、気づけば少し減っているように思えた。
空を見上げればそこにあったはずの星々の代わりに、人工的な街の明かりが夜景を照らす。その中を私は一人歩いていた。人工の街に越してきた以上、嘗てのような無数の星を眺めるような事はもう無いのだろう。
あの時隣に居た優しい兄は仕事で東京に越して以来、連絡が途絶えたままだ。きっとあの星々のように、人口の明かりに呑まれて消えてしまったのだろう。ならばいずれ私も、同じように消えていくのだろうか。
「街のあかり」
街から少し外れた、山の上。
麓には田んぼやら、誰かの墓があったり地蔵が置いてあったりする。
走り屋の煩い車の音と、なんだか忘れた夜を囃す虫の音に包まれて、街を見渡してみる。
いつも過ごしてる街の、いつも行くスーパー、コンビニ。
今通った電車の中で光の粒。下には確かトンネルがあったかな。
一つ、正面に見えるマンションの光が消える。
私もさっさと家に帰ろう。夜に酔えるほど豊かな人間では無かったみたいだよ。
街の灯りなんてもうだいぶ遠い。
遠くの街灯の光で暗い砂浜を歩くのには暗すぎるだろう。
足を取られ、びしゃんと闇に沈む。手を繋いでいた君も冷たい!ときゃっきゃ笑っている。僕らが何も覚えていないような、昔から変わらないと思っていた海も温暖化のせいか水温が些かぬくいような気がした。
海水をのみ込んで沈みたい。本当はわかってるんだ、ここに君が居てはいけないこと。だって、自分の体温が温かく、水面に映る影があまりにも。息とともに海水を大量に含みながら溺れていた君に似ていたから。嗚呼なんてつめたい、海。
街の灯り
#街の明かり
午前2時
この時間になると街の明かりは、住宅街でまだらに点いている光か、道にぽつりぽつりと立つ街頭、はたまた24時間営業の店や自動販売機。
この時間はなんだかワクワクする。
子供の頃には出来なかった、深夜に外に出るという行為。
それを大人になった今なら存分に味わえる。
さぁ、今日はどこへ向かおうか。
ぎらぎらと輝くネオン、街灯。もうじき夜も更けると云うのに、天高く伸びたビルの四角い窓は、未だ幾つか光を灯していて。狭い道路を縫う様に走る車輌だとか、路地を駆ける自転車だとかのヘッドライトが、ちかちかと瞬く。宙を見上げれば、其処には昨日切った足の爪みたいに細い月と、点滅しながら移動する航空機の光が見えるばかりだ。
眠らない街、とは良く言ったものである。部屋着でベランダに座り込み、煙草をふかしているわたしも、そんな街の一部だった。明日も仕事で朝早くに起きなければならないと云うのに、如何にも眠れる気がしなくて、こうしてぼんやりと景色を眺めている。
そういえば、こんな風に街を見るなんて初めてかもしれない。何時もは日付が変わる随分前に布団に包まっているし、休日もあまり外に出ない上に、丑三つ時迄呑み歩く様な友人も恋人も居ないから。起きて、働いて、寝て、偶に買い物やネットサーフィンや読書をする。唯其れだけの毎日の中、此の光景は少しだけ新鮮だった。子供の頃住んでいた片田舎に比べると、星なんか一つも見えやしないし、聴こえるのは虫や蛙の合唱ではなくて老若男女の騒ぐ声ばかりだけれど。明日になれば、今見た物も忘れて忙殺されているかもしれないけれど。
「もう少し、生きてみても良いかなァ」
短くなった煙草を灰皿に擦り付けて、のそりと立ち上がる。風呂上がりで濡れた儘だった髪は、すっかり乾いてしまっていた。風邪をひいてしまうかもな。そんな事を考えながら、部屋に入って、窓の鍵を掛け、カーテンを閉めた。次に此れを開ける時、外は眩しいばかりになっているだろう。明日もまた、何時も通りの朝が来る。