『繊細な花』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
繊細な花
と言えば、何が思い浮かぶだろうか。
花全体が小さいもの?
花弁が散りやすいもの?
それとも…
うーん、よくわからない。
もしかしたら、人間の例えとして使われることの方が多いかもしれない。
高嶺の花、という言葉もあるのだから。
何が言いたいかというと…
このお題難しい!
花に疎いので話を広げることは出来なかった…
空を焦がす星よりも、綺麗で儚い存在を初めて見た。
「名付け親…此《これ》が……」
差し出した指を両手で握り、にこにこ笑う赤子。
未だ眼も開かぬ小さな存在から目を離す事が出来ない。
「頼めるか。この子は鬼《私》の血が濃い故に、繋ぎ止める楔が必要なんだ」
「いや、でも此が名付けなんてッ」
名は縛るものだ。
彼女の言う楔の意味も理解は出来る。妖にも人にも成り得ないこの不安定で小さな光を留めるには、名で縛るしかないだろう。
けれど。いや、だからこそ。此が名を与えるべきではないはずで。
「花曇はそれでいいのか?誉も何で黙ッてる!」
少し離れた場所に座る彼を睨め付けても何も語りはせず。穏やかな微笑みを湛えてただこちらを見つめていた。
「納得しているよ。だからこそ人である誉はこの場では何も言わない…それに東風を選んだのは私達ではなく、この子自身だ」
「ッ…この子、が?」
子に視線を戻す。
握られたままの指をそっと引き抜けば、笑みを浮かべていた顔がくしゃりと歪み、声を上げて泣き出した。慌てて指を戻しその小さな両手に握らせれば、途端に泣き止み笑みを浮かべ。その姿に何故かどうしようもなく胸がざわついた。
「ほらな。東風が良いそうだ」
楽し気に笑われながらそう告げられれば、それ以上は何も言えず。握られている指はそのままに、空いている手で子の柔らかな雪のように白い髪を撫ぜ考える。
花のように笑う小さな白い子に相応しい名を。
「…本当に後悔はしないな?」
最後にもう一度だけ二人に問えば、返る言葉の代わりに頷き微笑まれた。
一つ息を吸い、吐く。
握られた指を引き抜き、脇の下に手を差し入れ抱き上げる。
羽のように軽く、小さなその身体を壊してしまわぬよう気を配りながら。そっと胸に抱き留めて。
「銀花」
溢れ出た名に、異を唱えるものはなく。
愛しい名付け子は、変わらず笑みを浮かべ此を求めるように手を伸ばした。
20240626 『繊細な花』
繊細な花
上司が結婚した。
勇敢なるお相手は仕事でもパートナーを務めており、結婚前と全く変わらず、いつも穏やかに感じよく仕事をしている。デカいが殺人課の刑事には見えない。
上司は今、誰かエラい人に呼び出されているので、隙をみて話しかけた。
「仕事と関係ないこと訊いてもいいか?」
「警視の私生活に関わること以外でしたら」
「…それってあの人の指示?」
「いえ、実は今一日に二十回ほど訊かれているんですが、勝手に答えるべきことではないと思いますので」
立派だ。
「じゃあ…プロポーズしましたか?」
「いいえ」
コイツは俺らみたいに、「人間として生まれた」だけの連中にはない美点を持っている。嘘がつけないのだ。
「え、じゃあされたの?」
「されたとも言えないような…」
私生活に関わる質問だと思うが、答えてくれた。何というか、イイ奴なのだ。
「え、何でOKしたん? なんて言うか、色々手ェかかるだろあの人」
「…少し前に、あなたと聞き込みに行ったお宅がありましたよね。黄色い薔薇の鉢を大事に育てていた黒人の女性です」
あった。記憶力が異常に良く、でも読み書きに少し不自由があるシングルマザー。唯一の贅沢が、小さな鉢植えの薔薇を育てることだった。
「その方が言ったんです。花は子どもと同じで、思い通りになんてならない。でもこの子はとても繊細で、私を必要としてるから、私が世話をするんだって」
それを思い出して、自分はこの人と生きていくんだな、と思ったんです。指示されたとか義務とかではなく、何か納得したというか、まだうまく言葉にできないんですが。
それを聞いて、何かちょっといいなと思った。思ったのでその晩、パブで呑みながらその話をした。うちに帰って妻にも話したら、「それくらいは言ってくれないとね」とのことだった。
三日後。
「何か私の私生活に関して唾棄すべき誤解が生じているようなんだけど、君たちは刑事だよね? 適切な聴き取りと報告は必要な能力だと思うんだがね」
俺がビールを三パイント呑んでした話は、いつの間にか「あの人は繊細な花のような人なので、守ってあげないといけないと思いました」という話になって広まっていた。
「私は半分東洋人だからこの表現は嫌いだけど、チャイニーズ・ウィスパーズ(※伝言ゲーム)にしても酷すぎない⁈」
「…ちなみに、今怒っておられるのはプライバシーの侵害と俺らの無能さのどちらに対してですか?」
我が相棒が勇気を奮って尋ねたところ、全てに怒っている、一番腹が立つのは私はそんなにロマンティックなことを言って貰えていないことだ云々と上司が言い出したところへ「パートナー」が帰って来たので俺たちはとりあえず救われた。
最近の上司はすっかり身綺麗になり、何だか肌艶も良くなったように見える。
唾棄すべき誤解は実のところ全くとけておらず、パートナーは密かに「最高の庭師」と呼ばれているのだが、これは秘密である。
繊細なお花は庭師に守られて幸せ、俺らの査定は無事。それだけで充分だ。
繊細な花
「推しとかいる?」
「うち、ジャニオタなんだよねー」
「えー!マジィ〜?」
高校入学からまもない時期。
皆、友達を作ろうと必死だ。
私も早く親友を見つけたい。
とりあえず1人は信頼できる人を作っておかないと。
安心して高校生活送れない。
「っとちゃん!まことちゃんってばぁ!」
「、、はっ、えっ?なんか呼んだ?」
しまった。考えに耽って呼ばれたのに気づかなかった。
「だからー!推しいる?」
「あー、えーっと、、、」
好きな芸能人とかアーティストとかいないんだよね。
私、飽き性だから。とは、この空気感では言えない。。。
何かしら捻り出さないと!
かと言って有名な人挙げちゃうと、「あ!その人私も好きなのー!」とかなって、「今、〇〇ってドラマ出てるよね!見てるー?」とか言われて、ついていけなくても気まずいし、、、。
んんんんんんおおおおおおー!
あ。
「い、い、犬っ犬かな!」
犬は本当に好きだし!
嘘じゃないし!
犬嫌いな人、あんましいないでしょ。
なかなか良い答えしたんじゃない?
「、、、へ、へぇ〜、そうなんだ〜」
え、え?
いかにも気遣われた笑顔だった、、、。
私、気遣われると壁感じちゃうから苦手なんだよね。。。
壁作られちゃうとあなたとは気が合わないから距離置くわって言われた気分になってしまう。
壁を作られると、壁を取っ払ってほしい、仲良くなりたい、気に入られたいって思いが大きく膨れ上がって、神経をすり減らして自分らしくない話し方をしてしまう。
でも結局本心を見せてないから仲良くなれない。
壁はずうっとそこにあるまま。
ずっと壁を感じながら話すのにも疲れちゃって、
もう仲良くならなくていいやって思っちゃって、
結局仲良くなれない。
人と関わるうえで壁を作られる瞬間は少なからずある。
その度にこの重たい思考回路を毎回毎回するのだから、人と関わりたくなくなってしまった。
こんなに弱虫な自分が嫌いだ。
すぐにネガティブに考えてしまい、すぐに追い込まれ、すぐに自分が嫌になる自分が、嫌になる。
そんなすぐに傷つく自分が嫌になる。
繊細な自分が嫌になる。
いっそのこと何も考えずにしゃべれたらどれだけ楽だろうと思う。
思ったことを思った時に言って、それで笑いを取れたら、、、
そんなに幸せなことはないだろう。
一度挑戦してみたいとずっと思い続けている。
だけど、もしすべったら?上手くいかなかったら?
上手くいかなかった時のことを考えると、
挑戦するのが億劫になる。
なぜそんなにも失敗を恐れているのだろう?
自分でも分からない。
つまるところ、傷つきたくないから、現状に不満をもっていても挑戦しない。
そんな繊細な自分も嫌になる。
生きていく限り、人と関わることは避けられない。
つまり、人と関わるときに必ず生まれるこの負の感情を、一生感じ続けなければならないのか。。。
いっそ死んでしまえば楽になれるのだろうか。。。
もうこの世界に未練はない。。。とは言い切れないが。
まだやりたいことはたくさんある。
あるにはあるけど、それを投げ打ってでも楽になりたい気持ちが強い。
けど、死ぬのは怖い。
痛いだろうし、苦しいだろうし。
それでも楽になりたい。
でも痛いのは、、、。
死ぬときの痛みへの恐れが、かろうじて私の自殺を食い止めている。
結局私は生き続けている。
死ぬ時さえ勇気を出せないのかと自分に絶望している。
絶望しながら、しぶとく生きている。
そんな自分が嫌いだ。
そういえば、久しぶりに友達親子と出かけた。
友達のお母さんは、県随一の進学校卒らしいが、
大学にはいかず、やりたいことも見つからず、遊び呆けていたらしい。
23才になってやっとやりたことを見つけ、専門学校に行って、夢を叶えたんだとか。
そんな人生もあるのか、と思った。
私も県トップの進学校に在学中だが、将来は旧帝大に進学し、大企業に勤めるという、レールの上を真っ直ぐ進むだけの人生しか見えていなかった。
思っているよりも生きるのって自由なんだな。
父に学校に行きたくない理由はなんだと聞かれた。
実は私は今不登校だ。
私は、好きな時に好きなことを好きなだけできないから嫌だ。それに人に気を遣いまくってしまうから人が多いところは疲れると答えた。
父はそうかと言って、しばらく経ってからポツリと呟いた。
「まことには〇〇高校があっているかもな」
なにそれ?と聞くと、自分の興味のあることをとことん突き詰められる学校だ、と教えてくれた。
その代わり、皆本気で突き詰めにきてるから空気感が今の学校とは全然違うけどねとも言われた。
父は常に解決策を出そうとする。
今まことは先々のことを考える余裕はない。
今の状況を打破しようとも思わない。
そんな気力はどっかいってしまった。
だから解決策を出そうとする父を見ると、もう解決しようとするのか、もう少し休ませてくれよと思ってしまった。
夜中に目が覚めてしまった。
しばらくベッドの上でゴロゴロしていたがどんどん目が冴えてくる。
もう今夜は寝れないかもしれない。
ついにまことは諦めて起き上がった。
なんだか心がざわざわする。
心を落ち着かせたい。
ベランダに出た。
夜風に当たるとなんだか落ち着く。
しばらくベランダの壁に寄りかかっていると、
ふと、父から勧められた高校のことを思い出した。
少し調べてみようか。
スマホをポケットから飛び出し、高校名を検索してみる。
ホームページを開いた。
「通信だから、できることがある。
通信じゃないと、できないことがある。」
ホームページを開くとすぐに、白黒のでかでかとしたキャッチコピーが浮かび上がってきた。
デザイン、音楽、ICT、語学、、、
学べることが多岐に渡っていた。
大学受験を考えていれば、難関大学対策の授業動画も視聴することができるらしい。
本当に好きなことを好きな時間に好きなだけできる環境が整っている。
まことは気づけば、食い入るようにホームページを読んでいた。
あれだけ解決策はやめてくれと思っていたのに、
今ではこの高校に行きたい思いが強くなっている。
今通っている高校に進学を決める時は、本気で行きたいとは思っていなかった。
ただでさえ狭い視野の中で、最もマシな高校を消去法で選んだだけだったのだ。
通信制の高校なんて考えたこともなかった。
どこかでこのまま簡単に高校を決めて良いのか、しっくりきていない気持ちはあるにはあったが、、、。
だが今調べているこの高校は、本気で行きたいと思わせてくれる。
こんな感覚は初めてだ。
なんだか嬉しい。
高校を一通り調べた後、もしこの高校に通ったとしたら、将来はどうなるのだろうと思った。
自分の将来について深く考えてみる。
やりたいこと、なりたいものは山ほどある。
宇宙の研究者になりたい、陽キャになりたい、アニメを作ってみたい、音楽を作ってみたい、モテたい、医学について学びたい、歌手になってみたい、有名になりたい、小説家になりたい、塾講師になりたい、地学の研究をしたい、やりがいのある仕事がしたい、役者になりたい、結婚したい、垢抜けたい。
しばらく考えを巡らしていると、あることに気づいた。
一見バラバラチグハグに見える夢の数々。
だが、もしかしたら分類できるのではないだろうか。
まず、探求・研究系。
宇宙、医学、地学について学びたい、研究、開発をしたい。
次に、創作系。
アニメ、歌、本を作りたい。
歌いたい。演じたい。
といった、何かしらの作品を作りたい。
そして、チヤホヤ系。
陽キャになりたい、モテたい、有名になりたい、垢抜けたい。
チヤホヤ系は職業にはできないが最初二種類のやりたいことはできそうだ。
だが、安定しづらい職業ばかりだ。
それに、ある程度社会経験を積むことが社会を生き抜く上で大切になるだろう。
だから、一度一般企業に就職して、社会経験を積みつつ、やりたいことを探すのがベストだろう。
仕事をしながらやりたいことを探すためには、しっかり休日が取れることが必要だ。
つまり、福利厚生がしっかりとしている大手の会社に就職することが重要になる。
そのためには、勉強を頑張って、頭の良い大学に行かなければならないだろう。
将来の道筋が少しだけ見えた気がした。
よし。明日から自分なりに勉強してみよう。
いきなりたくさんはできないかもしれないけど、
自分のできる限り頑張って、夢に近づけるように。
まことはベランダから部屋に戻り、ベッドに潜った。
そしてしばらくすると、深い眠りへと落ちていった。
SNSが発達した今の世界は昔のような心の豊かさがないと感じる。
私自身もそうだ。
娯楽、食べ物、服など今の時代腐るほどある。
だが、何故だかぽっかりと心に穴が空いたような気持ちになる。
私はそれはきっと人との繋がりや自分の核となる部分を見失っている人が多いこの時代に昔と比べ欠落している物があるからとだと思う。
私達はもう一度立ち止まって考えなければならない。
確かに便利な世の中にはなったし人と会わなくても連絡は出来るようになった。
知りたいことも分からないことも全てこのスマホさえあれば答えがわかる。
でも、どうだろう。
頼りすぎてはいないだろうか。
このまま進んでいいのか。
いつか後悔する日が来ないだろうか。
私は、昔の人が羨ましいとさえ思うようになった。
私は今のこの世界は生きづらくてたまらない。
どこかでこう呟いても叩かれるか共感の半々だろう。
顔も知らない誰かが自分の正義を自分勝手に振り回す。
それに左右されてしまう。
良くも悪くも繊細な花のように。
私は世界の片隅でもがく。
この世界に慣れてしまわないようにこの気持ちはずっと持ったままでいよう。
慣れてしまえばきっと人の心は貧しくなっていく。
人の心まで失ったら本当に自分がなくなってしまう。
生まれてきた喜び悲しみ苦しみ痛み楽しみを味わってこそ自分だけの人生を歩める。
人と比べて自分が持っていないものを数えるより自分が持っているものを数えたらきっとそれがどれほど大事かわかるだろう。
人は見た目でもお金でも地位でもない。
自分とどう向き合って心がどれほど豊かなのかが重要じゃないのかな。
私達は忘れてしまっている。
人の温かさを。
人の優しさを。
人の繋がりを。
欲張って求めるよりも1度自分を見つめ直して考えることも時には大切だ。
私は今も自分が分からないけれどこんなヘンテコな自分もいつか笑い飛ばせるようになると信じているから生きるよ。
ぶっつけ本番の人生なんて誰も結末は分からない。
ただ、言えるのは一時の感情だけで人生を終わらせてしまうのは勿体ないということだけ。
どんなにつまんなくったってどんなに苦しくたって悲しくたっていつか笑い飛ばせるから。
だから、自分を諦めないで。
感情の波は激しいけど大丈夫。
きっときっと大丈夫。
大丈夫だからさ。
諦めないでよ。
繊細な心はいつか強くなっていくから。
それまで気長に生きようや。
一緒に生きていこうよ。
【⠀繊細な花 】
野草のように強かで逞しいあなたが本当は
触れたら割れてしまいそうに繊細な花だと知ってるよ
大きくて重たい雨が
何時間もこの街を占拠する
いくつもできた小さな池で
色とりどりの花びらが踊る
敷き詰められた花びらが
道ゆく人の足元を華やかにする
また散ってしまった
「繊細な花」
繊細な花とは何色だろうか、
ピンクとかは女の子っぽくて繊細そう
水色もガラスの心みたいで繊細そう
灰色は一匹狼って感じがして繊細ではないイメージだけど実は繊細そう
うーんじゃあ
黒はどうかな
黒は強いイメージがあると思うけど
1番孤独で繊細そうだよね
孤独かあ
じゃあ今の気分は黒かな…笑
あぁ全員から嫌われてるみたいでしんどいや笑
「繊細な花」
花は美しい。しかし、踏まれればすぐ壊れる。
繊細なものは美しいが、壊れやすいものだと思う。
ガラスのように。
私は大雑把な性格なので繊細なものをみると美しいと思うと同時に頭が痛くなる
[ガラスの華]
手を出したら壊れてしまいそうなガラスの華。
彼女にぴったりの華だろう。薔薇が似合うのはもちろんだがそれよりも鈴蘭とか小さくて可憐な花が似合う。
「るーちゃん!こっちこっち」
手招きして案内されたのは彼女の豪邸の庭。小さいときから知ってる私たちは良くこの庭でお喋りをする。
「るーちゃん、私ねもうすぐ猫になるの」
唐突に彼女が言った。
「どういうこと?遥、犬派じゃなかった?」
話している間も彼女の手は花冠を編んでいる。
「んー、そうなんだけどね 。でも、もうすぐだからるーちゃんにこれをあげる」編む手を止めてポケットから小さな液体が入った瓶をだした。
「なぁに?これ」
「これはね香水だよ、こうやってふるの」彼女は瓶の蓋を押す。ふわっと広がる香りは彼女そのものの匂いだ。「この匂い、好きだなぁ。遥の匂いがする」彼女は少し儚く笑うと私に編み終えた花冠を乗せた。「これで、私を思い出してね」
数日後、彼女が亡くなり猫になるの意味を知った。
「繊細な花」
レースのカーテンのような
その間の柔らかな光のような
柔らかな光を浴びる繊細な花のような
あなたは美しい、儚いひとだった
朝日にきらめく銀のさざなみのような
さざなみに照らされる木陰のような
木陰に隠れるすみれのような
そんな美しい瞳で見つめられる時間は
とてもとても、幸せなものだった
隠されたセノーテのような
ガラス細工のような
雨に濡れたサンカヨウのような
透き通った髪も肌も、とても美しかった
誰かが悲しんでいるときには
優しい子守唄のような
懐かしいひだまりのような
たんぽぽの綿毛のような
ひとに寄り添った言葉を紡いで
誰かを愛するときには
夏の日の花火のような
真夜中の灯台のような
真紅の薔薇のような
そんなまっすぐな歌を歌った
桜の花びらのような指先も
牡丹のような笑顔も
鈴蘭のような声も
すべてが、すべてが愛しかった
でも、あなたは今、どこにもいない
赤いスイートピーのように
まるではじめからいなかったかのように
どこにもいない。
それでも世界は歩みを止めない
季節外れの沈丁花のような
私の心を置いてけぼりにして進んでいく
私も進まなくては
あの繊細な花のように
題 繊細な花
散文、書き散らし
繊細な花というのはあるか?そもそも花は繊細か?
植物博士とは程遠い自分だけど、花は植物にとって繁殖のために必要な重要な器官だ、ということはわかる。
もちろん例外はあるかも。
虫などを引き寄せたり、近寄って貰うために目立ったり。
逆に、花には成長のエネルギーをほとんど回さず、目立たせもしない植物もあったり。
目的のためにある姿を狙って、自らを変化させて、そういう姿はむしろ力強いと思う。
芝桜はいい例なのでは。
小さいけれど、人間に好かれることで広く繁殖していて、万も集まるとむしろ威圧感がある姿になる。
花は力強い。どんな姿でも。
従容な
諸刃の剣
この藍が
扶翼を誓う
水盃で
【繊細な花】
《繊細な花》
野花ほど、その言葉の似合うものはないだろう。
何故って、理由は簡単。
道端に咲いている小さな花なんぞ、人が一瞬で踏み荒らすことができる。
摘んでしまえば尚更、一瞬にして世界から『野花がそこに咲いている』という事実を消し去る事ができる。
誰かの何気ない行動で花弁を散らす、その繊細さは言うまでもない気がするのだ。
けれど、繊細なだけかと言われればそうでもない。
寧ろ、強かな花であるとも言えるだろう。
また、か弱い少女というのもまた、それと似ている。
細腕で思わぬ剛力を発揮するやもしれない。
つまりは、繊細に見えるだけの花もそうでない面を持ち合わせている、と思うのだ。
「今回の話はまあまあね」
「お気に召されませんでしたか……」
「まあまあ、と言ったのよ。聞こえなかったかしら?」
「申し訳ありません、陛下」
「次はきっと、面白い話であって頂戴ね」
「……必ずや」
「語り部」
「はい? いかがなさいましたか、陛下」
「楽しみにしているわ」
「……ありがたきお言葉」
知を、想いを、好む不可思議な女王が居る。
その噂の真偽や、如何に。
僕が今も覚えているあの花
覚えている中では6歳の夏に最初に見た
色も形もよく覚えていない
けれども綺麗で派手だったということを覚えている
そして「花火」とは、そうゆうものなのだろう
とても繊細な花だった。
お題「繊細な花」
しとしとと、世界中に降りそぼつような雨だった。
水の中にいるような、そんな感覚に陥らせるような、雨が降っている。僕はそんな天気にすぐに嫌気がさして、憂鬱に任せて外を見やるだけだった。
だけど、彼女は同じ光景を見て何を思ったのか。辛抱ならんと言わんばかりに、とても楽しそうに、白いワンピースの裾を翻しながら縁側から飛び出していった。雨に降られてはきゃあきゃあとはしゃぐ声を上げている。時折うひゃひゃ、みたいな品のない笑い声すら混じっている。元気だ。
僕と彼女ではたぶん、見えている世界が違うんだろうな、と思う。
僕は重い腰を上げた。彼女はこのまま庭で存分にはしゃぎ倒すであろう。ならば拭うためのバスタオルを取りに行かねば。
彼女は遊び終わって満足したら、多分そのまま上がってくる。自分がびしょ濡れだろうと、歩いたあと廊下がぐちゃぐちゃになろうと、何一つお構い無く。どうせ床を拭くのは僕になるのだろうから、そうするくらいなら今のうちに備えておいた方が労力が少なくて済む。
戻ってきて、縁側の方へ座り直す。畳んだバスタオルを脇におく。さっきよりも少し近いところにいる彼女は、もう濡れ鼠であった。
ほんの先程まで水滴を弾いてきらきらとしていた艶やかな黒髪は、雨が染み込んで、重そうにぐっしょりとして、水を滴らせている。髪と同じように、服にも先ほど翻った軽やかさはもう既にない。ワンピースはしとどに濡れて、下の肌色がうっすら透けている。
あれみたいだ、何だっけ。そうだ、サンカヨウの花を思い出す。
白い花びらの素朴な花。長雨に濡れた花びらは透明になって、ガラス細工のようになる花だ。色々と条件が重ならないと花びらは透明にはならず、どしゃ降りの雨に降られると、その雨粒の重さにさえ耐えられずに簡単に散ってしまうほど、繊細な花らしい。
彼女の内面はともかくとして、外見は清楚で儚げな人だから、サンカヨウのようだと言ってもそれほど齟齬はないのかもしれない。
そんなことをつらつらと考えていると、へぐしっ、と些か豪快なくしゃみが聞こえた。寒そうに自分の体を抱き締め、腕を擦っている彼女と目があう。
「また何か考え込んでた?」
彼女が首を傾げながら問う。
「君がまるでサンカヨウの花みたいだなと思って」
そう答えると、彼女の首を傾げる角度が増した。おそらく、サンカヨウの花を知らないんだろう。それがどういったもなのかを説明する。
彼女は雨に打たれながら、うんうんと話を聞いてくれる。
何故、屋根の下に入れば良いのにわざわざそこで。何故。
そう思いながらも説明を続けた。話終えるくらいのタイミングで、もう一度彼女はくしゃみをする。
「私がその何とかっていう繊細な花だったら、今の衝撃で散ってた」
「君はサンカヨウじゃないから散らないけど、風邪は引くかもね。冷えきる前にちゃんと拭こうね」
そう言って彼女を屋根の下に引き寄せて、タオルで包む。思った以上にぐっしょぐしょだ。お風呂上がりの濡れそぼった犬とか、何かこんな感じだよなと思いながら、わしわしと拭いてやる。とたん、
「雑!拭き方が雑!私が何とかって繊細な花なら散っちゃう!」
彼女が、上手いことを言ってやったぞと言わんばかりに得意気な色を顔に滲ませながら不満の声をあげ始める。
うん、僕はいらないことを言ってしまったかもしれない。
その懸念の通りしばらくの間、僕が何かと彼女を雑に扱う度に『私がサンカヨウの花なら今ので散っていた』と不満を主張するのが、彼女のマイブームと化してしまった。
【繊細な花】
君、花を見て言ったんだ。
「繊細な花だね。がんばってるなぁ」
って。
"綺麗"、"かわいい"、"なにこれ"
とかじゃなくて。
『繊細』って言ったんだ。
そんな君が僕は素敵だとおもった。
その日は、朝早くから夜遅くまで食事もままならない程仕事が立て込んでて、帰る頃にはヘトヘトだった。
極度の疲労と空腹で頭が可笑しくなっていた。
普段なら素通りするような、私には縁遠いそのショーウインドーの中身、神々しく光り輝くソレにときめいてしまったのだ。
すっかり忘れた頃に郵送されてきた黒地のクラシカルな箱の山。
見たことのないロゴマーク、スマホで検索すれば老舗ドレスメーカーがヒットした。
サイズ直し品の為、返品不可という但し書きがついた伝票が指からすり抜けてピラリと床に落ちる。
なんてこった、と趣味じゃないキラッキラッふわっふわっの純白ドレスを入っていた箱に雑に仕舞った。
テーマ「繊細な花」
(繊細な花)
(創作です)
「はぁ〜」
「あっすいません、まだ開店準備中で……ああいやすみませんオーナー、珍しいですね」
「うんほんと店長ごめん、邪魔しないからとりあえず座らせて」
「入るなりでっけえため息つきやがってまあ」
「うっさ。お前だってこんな時間にこんなとこいて、相変わらずの不良刑事が、通報するぞ?」
「れっきとした休憩時間ですー。
って何だ、奴とまた喧嘩か」
「……」
「……」
「グラス下げますねー」
「ああ、ありがとう」
「……またってほどじゃない。あっちがへそ曲げたから一旦離れただけだ。すぐ戻る」
「あっそ。じゃ俺はそろそろ署に戻るかな〜邪魔だろうし〜」
「っ女だと! ご機嫌取りにスイーツ、とかたまにいじられてるけどっ、男ってどうなんだ……モノに頼るつもりはないが……」
「そりゃ、人にもモノにもよるからなんともかんとも」
「そもそも、どっちかが悪いとかの話なんです?」
「違うと思う、同意して欲しかったらしいのを、どうでもいいから素通りしただけなんだが……或いは言い方か……っくそ、面倒くさい」
「だいたい、嫌んなったら追い出せばいんじゃん。お前んちなんだし」
「まあまあ、そこまでじゃないんでしょうよ。
オーナーもあんまり考え過ぎないで。気が向いたら声かけてください」
「すまない」
「よっと、オジサンちょっとお花を摘みに」
「はいどうぞ」
「乙女かよ」
(立場は完全にこいつの方が上なのに、これほどまでに気にするとか、どんだけのノロケぶりだよ……犬だって食わねーどころか見向きもしねーぞ。
まっ、俺もぼちぼちトンズラこきますかね)
「さってーと、おっさん不良刑事は退散しましょうかね、通報される前に。
……頭下げるつもりなら、もう皆の前とかはやめとけ? みじめになるからよ? そん位は分かるよな? で、やっぱ解決すんなら夜なんじゃねぇの?」
「! びっくりした耳打ちすんな。
余計なこと言うな。早く戻れよ」
「失っ礼しやした〜」
「今度は営業時間内にどうぞ〜」
(やれやれ一体どっちが繊細な花なんだろな、ははっ。
せっかくだから、帰りに嫁さんに何か買ってみるかな)
真っ白の菊
花弁に触れてはいけないと
触れた処から傷んで腐っていくのだと
知っていたはずなのに
どうして触れたの
どうして触れずにいられなかったの
◼️繊細な花