『空模様』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
吸った煙草の煙が晴天の空に消える。
吐き出す煙が1度として同じ形をとることは無い
吐き出された煙がそこにい続けることは無い
そんな事を思いながら、タバコの灰を落とす。
燃え尽き灰となった所が灰皿の中にぼとりと落ちる。
途方もない喪失感を煙草で誤魔化す。
1週間前に親友が自殺した。
自殺する2日前にあった時は、元気だったしいつもの様に笑ってた。
そんな彼が、ビルから飛び降りたのだ。
勤めていた会社の屋上から飛び降りたらしい。
屋上には、彼の靴と遺書が残されており自殺したのは間違えようのない事だった。
葬儀は淡々と進んだ。
僕は涙とを流すことも、悲しみに押しつぶされるようなこともなかった。
ぽっかりと心の臓を抉られ風穴が空いたみな感覚がいつまで経っても消えることは無かった。
最後に会った時の会話がふと蘇る。
「なぁ、知ってるか?焚き火の揺らめきと波の満ち引きは永遠と見てられるんだってよ。同じ形が1度としてないかららしい。
でもさ、同じ形が1度もないって言うなら空も人は永遠とみ続けられるよな!」
「たしかに、僕が煙草の煙を好きなの理由はそれかもしれないね」
「海も川もキャンプもしたからさ、今度は山登り行こ。
谷川岳辺りにしよう。あそこの空が好きなんだ」
「あぁ、道具を買って準備しておくよ。再来週にいこう。」
気持ちに一段落が着いた、風の強い晴れたある日。
彼と約束した山に行くことにした。
山頂でみた空が心の虚空を少しだけ埋めてくれた気がした。
「君が好きな空は、こんなにも移ろいやすく綺麗なんだね」
『空模様』
寂れた社の屋根の上に寝そべり、空を見る。
このまま晴れ渡るのか、それとも雨が降るのか。
青に混じる雲の白は随分と中途半端だ。
猫には雨を読む事など出来はしない。それは子らの領分であった。離れて久しい二人を想い、目を細める。
一人になっても猫は気の向くまま。好きな所へ行き、好きなものを食べ、好きな事をしていた。
遠く海の見える街で昼寝をし、山奥で化生を追いかけ回した事もあった。
だがいつしか子らと共に訪れた場所を辿るようになり、記憶をなぞるように動いて。
結局は、この地に戻ってきた。
猫とは、自由を愛するモノだ。
それは変わらない。子を持とうと、その本質は変わりようがない。
だが同時に、
猫とは、どうしようもなく寂しがりなモノでもあった。
のそり、と起き上がり、音もなく地に降り立つ。誰もいない社の裏へと歩き出し、その先にある一本の藤の木にすり寄った。
「藤。雨が降るかもしれないよ。恵みの雨となればいいな」
藤は答えない。
村が『死んで』藤が枯れてから、たくさんの季節が過ぎた。常世の藤は再び花を咲かせているのだというが、現世の藤はまだ花が咲く事はない。
「藤。どうやら猫には、オヤは向いてなかったようだ」
藤に体を擦り付け、その場で丸くなる。雨が降るかは分からない。たとえ降ったとしても、その時は社へと走ればいいだろう。
だから今は。少しだけでいいから。
誰かの側にいたかった。
懐かしい、匂いがした。
ざり、とわざと土を踏み締め、二つの気配が近づく。
「猫」
共にいた時には聞く事のなかった、冷たい響きを含んだ声が猫を呼んだ。
それは怒りか、はたまた憎しみか。
猫には感情の機微など分かりはしない。だが分からないなりに考え、不安になった。
猫は蜘蛛の二人のオヤにはなれていなかったのではないか、と。
「猫はちゃんとオヤができていたか?銅藍《どうらん》も瑪瑙《めのう》もイチニンマエになったか?」
猫の問いに蜘蛛は答えない。猫もそれ以上何も言わず、丸くなったまま蜘蛛を見る事はない。
沈黙。誰も動かず。何も言わず。
言うべき言葉を探し、結局は何も思い浮かばずに。
先に口を開いたのは蜘蛛の方だった。
「猫は親だったよ。だからこそ今も妖として在る事が出来る」
「だがそれだけだ。親として在り方を教えはしたが、情を与えてはくれなかった。正しく親は出来ていなかったな」
情とは何だろうか。猫は考える。蜘蛛の求める情を猫は与える事が出来ないのか。
考えて、悩んで。それでも何一つ思いつかず。
それならと考えるのを止めた。
猫は難しい事は分からない。
分からないならば仕方がないと開き直り、猫は頭を上げてようやく蜘蛛を見た。
随分と険しい顔をしているが、それでも二人の姿を認めて嬉しさで目を細める。
なぁ、と知らず甘える声が溢れた。
「猫はたくさん考えたが、銅藍の言う情は分からない。分からないから、猫には与える事が出来ないよ」
「猫」
「猫はやはりオヤには向かないな。子はイチニンマエになったら離れていくのに、子離れをしなくてはならないのに、それがたまらなく寂しいよ。離れたくないんだ。どうしたらいいのだろうな」
体を起こして蜘蛛を見据え、背筋を伸ばして座る。猫から近づく事はない。いつだって手を差し伸べ呼ぶのは、蜘蛛なのだから。
息を呑み、何かに耐えるように唇を噛みしめて。
険しい顔の二人の蜘蛛は、困ったように笑い、疲れたように深く息を吐いた。
「ったく、何だ。何なんだまったく!ここに来てそれとか、ありえねぇだろうが!」
「仕方ないよ。だって猫だもの。今までもそうだったじゃあないか」
それぞれ異なる反応をしているが、先ほどまでの険しい空気はなくなっている。
猫には理由は分からないが以前の二人がいた頃の空気を感じ取り、懐かしさからゆるりと尾が揺れた。
それに気づいて、蜘蛛は柔らかく笑むと猫に向けて手を差し出す。
「猫。おいで」
甘く優しい声。尾を立てて近寄れば、頭を撫で抱き上げられた。それだけで機嫌良く喉が鳴るのを止める事が出来ない。
「猫はもう親にならなくてもいいよ。代わりに僕達に飼われてくれないかい?」
「猫を?飼うのか?」
きょとり、と目を瞬かせ。蜘蛛の言葉を繰り返す。
「そうか。飼われれば一緒にいてもいいのか。その手があったのを忘れていた」
「嫌じゃないんだ。もっと早く言えばよかったね」
まったくだ、と隣で疲れた顔をしている蜘蛛に、猫も同じようにまったくだ、と頷いた。
もっと早く、出来れば別れる前に伝えてくれたのならば、こんな寂しい思いはしなかったというのに。
猫の内心の不満を悟り複雑な顔をする蜘蛛は、けれども何も言わず。猫の察しの悪さは、共にいた頃から変わらないのだ。
「それなら猫の首輪と名前を用意しないといけないぞ。真鍮の鈴と、紐は二人が編んでくれ」
「めんどくせぇな。何でもいいじゃねぇか」
「真鍮でなければ駄目なの?」
蜘蛛の問いに猫は少し考え、頷いた。
「真鍮がいいな。銀も悪くないが、やはり真鍮だ。猫はそうあるべきだ」
その理由は猫ですら分からない。なんとなくというのが、猫の答えである。
「分かった。猫に合う鈴を探しに行こうか」
「しゃあねぇな。ほら、とっとと行くぞ」
蜘蛛に抱かれたまま、猫は満足げに喉を鳴らす。こうして蜘蛛に抱かれ、頭を撫でられながら移動するのも悪くはない。
ふと空を見上げ。変わらず中途半端な空模様に、猫は蜘蛛に問いかけた。
「瑪瑙。雨は降るのか」
「ん?まだ降らないよ。雨は明日だね」
つい、と空を見、雨を読む蜘蛛に、なるほどと猫は感心する。
「さすがだな。猫にはさっぱりだ」
「これくらいはね。出来て当然だから」
苦笑する蜘蛛に、それでもすごいと猫は思う。猫が猫である限り出来ない事だ。猫に出来るのは、二人が知らないものを教える事だけ。だが今はもう何も教えられるものはない。
だからこそ、今度は蜘蛛に飼われる事がとても魅力的だと猫は笑う。
少し不自由になってしまうが、一人きりで寂しい気持ちになる事もなく、こうしてずっと甘やかしてくれるのだから。
「猫。上機嫌だね。しっぽが揺れてる」
「二人がどんな首輪と名をくれるのか、今から楽しみだからな」
くふくふと猫は笑う。尾がゆらゆらと揺れ動く。
喉を鳴らして、もっと撫でろと蜘蛛の手に頭を押しつけた。
20240820 『空模様』
空模様ってなんとなくポジティブなイメージが浮かぶけど
雲行きって聞くとなんか不穏な感じするよね
空模様
今日の空模様はどうだろう?
晴れていれば気分も晴れる!
曇っているとそれだけで落ち込む..
曇り空もすきになりたい
「空模様」
今日は快晴。夏らしい空模様だ。
……自分の心模様とはまるで違う。
こんな暑い日は、洗濯物をよく乾かすと同時に人の心も萎びさせる。もし自分がバスタオルとか、あるいは梅干しとかだったら嬉しかったのかもしれないけど。
暑くて体力が持っていかれると、心まで疲れてしまう。
自分は何にも悪くないあいつに酷いことを言ってしまった。
いくら謝ったとしても、あの言葉を消すことはできない。
最初こそ自分の感情に任せていたから、自分の言ったことの重さを考えることもなかったけど、だんだん気持ちが落ち着いてきたら後悔が重くのしかかってきた。
ため息をついて、窓の外を見る。大きな入道雲が見えた。
もしあいつがこれを見たなら、何て言うんだろうか。
『ソフトクリームみたいで美味しそう』とか言うのかな。
そんでその後、『ソフトクリームを食べに行こう!』って、この炎天下に駆り出される。暑い暑いって、ふたりして文句を言いながら、ソフトクリームの店まで歩くんだ。
『こういうのもいいだろう?』とか言って、自分も悪くないなって答えて。あんたは綺麗な目でこっちを見て笑って。
……何で自分が被害者みたいにあれこれ妄想してるんだろう。
あいつのほうがよっぽど辛いだろうに。
……あいつのほうが、よっぽど悲しいだろうに。
そんなことを考えているうちに、さっきの入道雲は大きな積乱雲になって、少ししたら大雨が降ってきた。
自分の心にも、多分あいつの心にも、ずっと冷たい雨が降り続いている。そんな気がした。
珈琲に ミルクで描いた 空模様
食事に買い物、懐中電灯
台風準備に一息をつく
_______________
空模様が穏やかでなくなり、その暑さとは裏腹に秋の天気になってきましたね。
「女心と秋の空」なんて言われるようになったのが実は最近数十年の話で、もともと「男心と秋の空」だったという話はなんとなく知っていたのですが、女心の慣用句のもとにイギリスの慣用句があった可能性があることを今回初めて知りました。A woman‘s mind and winter wind change often
これを尾崎紅葉が「男心と秋の空」に続いてヨーロッパには「女心と冬日和」というのがあると紹介して、その後浅草オペラで『風の中の 羽のように いつも変わる 女心――』と歌う『女心の歌』が大ヒットしたのが背景にあるとか。
並列思考が女性の方が得意なんていうのもただの都市伝説らしいですし、今の時代の価値観では男も女もなくそのうちまた別の諺になるのかもしれませんね。
ふと見上げた空には
広がる鼠色の雲
湿った風が頬を撫でた
そろそろ
降るかな
僕は天日干ししていた座布団を
部屋に置くと
雨戸を閉めた
部屋の電気を付けると
テーブルに置いてあるスマホが鳴った
はい
もしもし
「もしもし お兄ちゃん あたし
今お兄ちゃん家に居るの?」
妹からだった
居るけど なに
「あー見間違いかあ お兄ちゃんと
すれ違った気がしてさーさっき
声かけて知らんぷりされたから
何って思って電話したんだけど…」
「ついでに駅に傘持ってきてよ〜」
分かったよ
電話が切れたあと
僕は傘を用意して
近くの駅まで歩いた
ポツポツと雨が降り出した
お兄ちゃんー!こっちー!
妹を見つけて歩いて行くと
妹のそばに男が居た
この人と一緒に暮らそうと思ってるの
妹が嬉しそうに言う
ちゃんと料理作れるのかよ
僕が聞くと
自分が作ります
と男が言う
僕は少し寂しい気持ちになったけれど
妹が決めた事だし
二人に
仲良くやれよ と
声をかけた
ーーそして
妹が
家を出る日が来た
またね!お兄ちゃん
と扉を開ける妹に
僕は
…うん
としか
言葉が出なかった
空模様
8月20日 晴れ(36.5)
玄関を出てすぐ、蝉が死んでいた。
とおもったらジリっと泣いた。
泣いた、と思う。
泣きたいんはこっちよ。
8月21日 晴れ/時々雷雨(36.6)
ともだちがつくった歌が
YouTubeで公開された。
また一つお気に入りと嫉妬が生まれた。
8月22日 晴れ(36.5)
三日坊主というけれど
この日記が続いていること
体温と天気だけはメモできていて
盛大に自分を褒めたい。
8月24日 曇り(36.8)
ははは、もう1日ダメになった。
昨日のつもりで書いてみようと思ったけど
自分しか読まない日記でまで
嘘をつきたくない。
胸が張ってる。眠気もある。
8月25日 雨(36.8)
雨ふりで頭も耳も絶不調。
豆乳を飲もう、豆乳は全てを解決する。
そんなはずはないことはもうわかってる。
メンヘラ気味。
仕方ない、明日あたり来るかもな。
8月27日 昨日は晴れ、今日も晴れ(36.5)
薬の効きが悪かった。
今日はまだいい。
友達のYouTubeにコメントを残した。
そのくらいのことしかしていない。
部長しね。
8月28日 曇り晴れ(36.4)
ミマが言ってた雑誌発売されて早速一部送ってきた。
すごいな、自分の家が雑誌に載るとか
国家試験取るより難しいだろうに。
かっこいい家を40ちょいで構えて子供も2人いる。
無駄に生理してる場合じゃないのに。
8月29日 晴れ(36.3)
病んだ
8月30日 晴れ、ゲリラ豪雨すごい(36.5)
久々にペンでサインしたら
握る力がわからなくて
紙に穴を開けた。
契約書はこれで破棄。
ウォーターマンみたい。
万年筆でも作ろうかw
8月31日 雨(36.4)
友達のYouTubeはいいねが30を超えた。
再生回数は180。
すごい確率だと思う。
私だけでも10回はみてるし。
この日記もやっと10日を迎えた。
早く終われ8月。
8月32日 虹(36.5)
雨の後に晴れたら絶対探しちゃう。
けど今日は朝からずっと虹が出てた。
明日は雪になれ。
8月33日 雪(36.6)
昨日の記憶がないけど
日記をつけていてよかった。
大したことはしてなさそう。
季節外れの松ぼっくりを踏んだら
足が気持ちよかった。
明日も踏もう。
8月34日 晴れ(37.2)
綺麗にバチが当たった。
雪だるま作りに夢中になっていたら
どうやら風を吹いている。
ピューっと吹いている。
喉も痛いし、苦しい。
ふわふわのおにぎり食べたい。
8月35日 (37.9)
空が見えない。
誰かが淹れてくれた
レモングラスティーの香りがする。
青くさい、いい香りだ。
きっと、若くて青いんだろう。
8月38日
どうやったらここから進めるのか
わからない。
朝起きると雪が降っていて
日差しが眩しい。
天気予報はもう意味もない。
葉月が、越えられない。
ふと空を見上げる
昨日とはちょっと違う景色が
広がっていて
疲れたこころを癒してくれる
おんなじときは一度もない
そんな空がとっても好きだ
【空模様】
「空模様」
今日はやけに空が怪しい。
これから雨でも降りそうだ。
雨は好きだ。
1人で雨の音を聞く
とても落ち着く。
明日 空模様はどうなるだろうか?
晴れるだろうか?
空は青い。
そんなことを改めて感じさせる夏らしい空の色。そこに綿菓子みたいな白く肉厚な雲がいくつか浮かんでいる。夕方だというのに肌を貫くような容赦ない陽射しに、ほんの少し外にいただけで体が焦げてしまいそうだ。
まさしく生憎の空模様ってやつである。俺にとっては、だけど。
「はぁ……」
ため息をつきスマホに目をやった。待ち合わせまであと三十分もない。続いて天気アプリを開く。さっき調べたら今時分には雨が降るはずだと知らせていたのに。気象予報士でも占い師でもない俺には雨が降るようにはとても思えなかった。
あんまりに暑いので図書室に行って涼むことにする。見るともなしに書架の間を歩いているうちに、約束の時間が近づいていた。
待ち合わせの下駄箱へ向かえば、廊下の向こうから彼女――可愛くて、キュートで、綺麗で、ビューティフルで……とにかく語彙力ゼロになるくらいに素敵な、オレの、彼女がこちらに歩いて来ていた。
「よぉっ!」
彼女が片手をあげる。
「部活お疲れ様で〜す!」
可愛らしく俺が言えば、彼女はぷっと笑った。よし! 付き合ってから二回目、一緒の下校に向けてのスタートは上々。
かと思ったのに彼女は顔をしかめた。肩までの髪を一生懸命に撫でつけながら言う。
「雨が降るよ」
「マジで!?」
「うん、私の髪の毛広がってきてるもん。てか何か嬉しそうじゃない?」
「そんなことねぇよ」
靴に履き替えて玄関を出れば、ポツリ、ポツリ雨粒が地面に黒いシミを重ねていくところだった。
「ホントだ……すげぇな」
「でしょ?」
俺は背負ったリュックの底に手を当て、折りたたみ傘の存在を確かめる。彼女は傘立てから長い傘を取り出した。
「でも私、ちゃんと傘あるから大丈夫!」
「さすがだな〜俺は忘れちゃったよ」
「入れてあげるね」
彼女は傘を広げ俺に差しかけた。
「ありがとう。俺持つよ」
「うん」
傘の下で、彼女と俺の距離はいっきに近くなる。
「うわっ雨ひどいね!」
「えっ? 何?」
傘を叩く雨音は強く大きい。彼女の声を聴きとろうと顔を近づけた。
まだ手を繋ぐことさえできない俺にとっては、まさしく恵の雨、というやつだった。
暗く沈んだ灰色の空の下、夏の空のような青い傘が、今までにないくらい近づいた彼女と俺の上で揺れていた。
#14 2024/8/20 『空模様』
また、あの執事と夢で会う。
知っているのは燕尾服を着ていることと「アイザック・ガーデン」という名前。名前からしてどこか海外の執事であることは間違いないのだが、何故か毎回夢で会う場所はその執事の部屋、しかも日本語が通じるのである。
初めこそ「ついに性癖が夢にまで現れてしまったのか」と動揺した。でも夢にしてはちゃんと会話しているので、きっと向こうも存在する人間なのだろう。
アイザックが海外の人というなら、この先の人生で出会う確率はほぼゼロに等しい。なので自分は生意気だと思われるだろうが上手く使えないよりマシだ、と敬語を使っていない。
そんなわけで、冒頭に戻る。
「それ、捨てないの?」
「え?ああ、この鏡のことですか?」
「うん。」
「捨てません。 " 捨てられ " ません。」
「理由を聞いてもいい?」
「……君にはまだ理解できませんよ。
…それと、お願いですが、こいつには絶対触らないでください。触らせないでください。」
「わかった。…触ったらどうするの?」
「殺します。俺の世界で、一番大事な物に触れるんですし。何も知らない第三者に触れられてしまうのは、俺とその鏡の想い出を穢すのと同じです。」
「ふーん。大事な物なんだね、それもあんたの世界で一番に。」
「…俺にとっての " 世界 " が、周りから見てどれだけ小さくても、俺には大きく見えたんです。」
「まるでアイザックの世界に鏡しかなかったみたいな口ぶりだね?」
「まあ、大雑把に言ってしまえばそうですが。」
「この鏡の向こうへいくまで、俺が、………」
「…ザックは、その鏡の持ち主だった人の執事?」
「いいえ。…もうこの話はよしましょう。」
「………ごめん。」
「夢ですから、君に知られても別に大丈夫です。
でもそれは今じゃなくてもいいでしょう。
それに、ちゃんと俺が言えないのではあの鏡も、…君も困るでしょうし」
「………。」
「さて、そろそろ仕事ですので、また。」
「あ…はい。」
「………まーじで誰やねん…。」
夢も醒めて起き上がる。
数回頭を掻いて自室のカーテンを開けた。
「…………………はぁ。」
深呼吸をして朝日を浴びる。
いつもは綺麗に見えた青空だったけど、今日は雲が出ていて少し濁った青をしていた。
「あの鏡……どういうことなんだろう」
#2024.8.20.「いつまでも捨てられないもの」「鏡」「空模様」
創作夢の執事と多分学生。
てか思ったけど海外の人間なら寝る時間違くね?
いろいろお題詰め込んだらちょっと長くなっちまったぜい…。
群青色に包まれた空
その青さを目の当たりにして、僕は思わず息を飲んだ。
沈んでいた心が、少し洗われたような気がした。
空って、同じように見えても
二度と同じ空模様を見ることはできない。
まるで天然のキャンバスみたいだ。
また次にブルーモーメントを見て、
それがまるで同じように見えたとしても、
それはきっと違う青だ。
そう考えると、今日のこの青がとても愛しく思えた。
そんなかけがえのない空が、
見上げるだけでいつでも見られるなんて、
幸せだと僕は思う。
秋の風が頬をなぞった。誰も居ない道を歩き続ける。ただどこに行くでもなく、歩く。不思議な事に、たくさん動かした脚はまだ歩きたい、と言っているかのように疲れていない。何の目的も持たない。どこかに行きたいだけ。身体がそれを認めているような気がした。
どこか。ずっと遠いどこかに。
歩いて逃げた。どうして?
僕は誰に、何に追いかけられているのだろう。
そして辿り着いた場所。懐かしいその公園。ブランコに乗ってみると、幼い、あの頃のままの僕が居る気がした。
今はもう居ない。友達も、誰も。追いかけっこをする子供も、滑り台で遊ぶ子供も、シーソーに一人で乗る子供も。それで良い。前を向けたのなら、それで良い。
僕は会社の反対側に歩いていた事に気が付いた。逃げていた。周りが出世して、結婚していく中で、自分は何も出来ていない。何かしようとするほど迷惑をかける。
だから歩き続けたんだ。どこかに、行きたかった。
秋の橙と紫の夕暮れが帰りを促す。誰も居ない公園を出る。空が綺麗だった。いつも残業を終えて帰る頃には真っ暗だから、空なんて気にしなかったのに。
そして僕は走った。雨が降っている。帰らないと。焦りながら来た道を戻った。家に帰ったら誰かが僕を叱ってくれれば良いのに、生憎僕は一人暮らしだ。雨に濡れた顔をタオルで拭かないといけないな。そしたら謝罪をして…明日は逃げずに行かないと。
道行く人は誰も傘をさしていない。僕だけの雨模様だった。
空は寒色から暗色になる。空がレイヤーであること、一枚のポリゴンではないことに新鮮な驚きを覚える。
空はなんの役割も持たない。私達が利用するのは太陽や雨雲だけで、空は利用しない。空は空間。色づいているので、物らしく見えるだけだ。あるいは幼少期のお絵かきの中で作られた偏見のせいだろうか、空間に色はないのに、水色で塗らなければいけなかったから。私達は空に触れることが無い。空はあるが、存在しない。
多くの憧れは、そのようなものだ。名前のつけられたある地点を目指すと、その地点は無い。確かに自分はその名前の位置にいるのに、何も掴めた気がしない。床に雲が敷かれて初めて自分が空にいることを知る。しかし空は依然として頭上にある。より暗く、より境界は曖昧になっていく。どこまでが空なのだろう。誰かが「そこが空だ」と言えば、おそらくそうなる。
なら、私達は空にいる。
空模様
何もかも予報通りになればいいのかわからない。
こうも今までと違うと統計と観測に基づくデータが努力と共にまた新しく構築していく事になる。
でも、ゲリラ豪雨とか、線状降水帯とかわかるようになったじゃない?地震とかもわかればいいのにね?
そりゃ、研究者の人達は早くわかれば誰も犠牲にならなかったかもしれないって後悔と先に行こうって気持ちがあるからな。こっちはそれが出来るように協力しないとな。だから、文句言わないで今日のデータまとめてくれないか?
ご褒美は?
まったくコロコロとよく表情が変わるもんだな。さっさとまとめろ。終わったら夕食に行こう。角のラーメン家な。特別に餃子をつけてやる。
え〜?またぁ?
いやか?そうか。じゃあ、俺はカップラーメンだから好きなものを自腹で食って帰ってくれ。データはああこごでなら俺が残りはやるよ。お疲れ。
浮かしかけた腰はまた椅子に戻り、パソコンの画面に向かう。帰り支度をしてから、俺の机の上にトートバッグをドサと置くとジッと見つめてくる。
一体、何日カップラーメン?顔色悪いし。
一拍置いてから、仕方なさそうに言う。
空模様が悪いから途中で大雨で攫われちゃったら困るでしょう?わ た し が。家まで送りなさい。お礼に私の手料理を振る舞ってあげる。
俺は外を見た。快晴だ。
何すんだ?
パソコンをシャットダウンされた。
早くして私の心が大荒れにならないうちに。少しは感じて欲しいものね。
強制的に連れて行かれたが楽しかった。
外も満天の星だ。
「最近空模様が怪しいねぇ…」
麗がそんなこと言ってたなぁ…なんて思いながら俺は家に帰った。
確かに最近雨はすごい降るし雷の音はよくする。
あいつ、普段はぼんやりしてるくせにそういうのはよく見てるよなぁ…。
「…雨が降る前に帰るか」
今日も天気予報は夜から雨模様だった。
雨は嫌いじゃないが、雷が怖いんだ。
そうして俺は急いで帰ることにした。
今日は雲がたくさんの晴れだった。あれはうろこ雲かな?羊にも見えるし、もふもふしててわたあめみたいに食べれそう。今は夕方の6時半、冬やからまだ明るい夕焼けが綺麗。
悲しい時には雨が降って
嬉しい時には晴天で
つまらない日には吹雪いて
怒り狂えば嵐の様
そのくらいだったなら
こんなに傷付かなくて済んだかな
‹空模様›
夜の窓
止まったレンジ
磨いたシンク
写る黒髪は私ので
白い服も私のもの
後ろに揺れる金色だけが
いつまで経てども分からない
‹鏡›
かつて、とある人間が
「明けない夜はない」
と言ったそうだ。はたしてそれは本当だろうか?
空模様さえ伺い知ることの出来ない、この闇の世界にも本当に朝は来るのだろうか?
本当にそんな日が来るのであれば、私はまず友の姿を確認することだろう。
——哲学する深海魚