また、あの執事と夢で会う。
知っているのは燕尾服を着ていることと「アイザック・ガーデン」という名前。名前からしてどこか海外の執事であることは間違いないのだが、何故か毎回夢で会う場所はその執事の部屋、しかも日本語が通じるのである。
初めこそ「ついに性癖が夢にまで現れてしまったのか」と動揺した。でも夢にしてはちゃんと会話しているので、きっと向こうも存在する人間なのだろう。
アイザックが海外の人というなら、この先の人生で出会う確率はほぼゼロに等しい。なので自分は生意気だと思われるだろうが上手く使えないよりマシだ、と敬語を使っていない。
そんなわけで、冒頭に戻る。
「それ、捨てないの?」
「え?ああ、この鏡のことですか?」
「うん。」
「捨てません。 " 捨てられ " ません。」
「理由を聞いてもいい?」
「……君にはまだ理解できませんよ。
…それと、お願いですが、こいつには絶対触らないでください。触らせないでください。」
「わかった。…触ったらどうするの?」
「殺します。俺の世界で、一番大事な物に触れるんですし。何も知らない第三者に触れられてしまうのは、俺とその鏡の想い出を穢すのと同じです。」
「ふーん。大事な物なんだね、それもあんたの世界で一番に。」
「…俺にとっての " 世界 " が、周りから見てどれだけ小さくても、俺には大きく見えたんです。」
「まるでアイザックの世界に鏡しかなかったみたいな口ぶりだね?」
「まあ、大雑把に言ってしまえばそうですが。」
「この鏡の向こうへいくまで、俺が、………」
「…ザックは、その鏡の持ち主だった人の執事?」
「いいえ。…もうこの話はよしましょう。」
「………ごめん。」
「夢ですから、君に知られても別に大丈夫です。
でもそれは今じゃなくてもいいでしょう。
それに、ちゃんと俺が言えないのではあの鏡も、…君も困るでしょうし」
「………。」
「さて、そろそろ仕事ですので、また。」
「あ…はい。」
「………まーじで誰やねん…。」
夢も醒めて起き上がる。
数回頭を掻いて自室のカーテンを開けた。
「…………………はぁ。」
深呼吸をして朝日を浴びる。
いつもは綺麗に見えた青空だったけど、今日は雲が出ていて少し濁った青をしていた。
「あの鏡……どういうことなんだろう」
#2024.8.20.「いつまでも捨てられないもの」「鏡」「空模様」
創作夢の執事と多分学生。
てか思ったけど海外の人間なら寝る時間違くね?
いろいろお題詰め込んだらちょっと長くなっちまったぜい…。
8/20/2024, 9:44:34 AM