『真夜中』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「真夜中」
ベッドに入ってからどのくらい経ったかわからない。
ただ、西側に見えていた月がもう真上まで来ているんだから、そこそこの時間は経過してしまったようだ。
……眠れない。もうすっかり真夜中なのに。
眠くなかったはずはないのに、どうしても眠りにつけない。
少しずつ焦ってくる。おまけに喉まで乾いてきた。
仕方ない。とりあえず何か飲むか。
自分は冷蔵庫の飲み物を取るために体を起こした。
冷蔵庫には何が入っていただろうか。
「おや……どうしたんだい???もうとっくに眠ったものだと思っていたのだが?!!」
……何であんたがキッチンにいるんだ?
「おにぎりが食べたくなって!!!ごはんが炊けるのを待っていたのさ!!!あと15分だって!!!キミも食べよう!!!」
おにぎり?
「うん!!!悪くないだろう?!!ほら、中に入れる具も選び放題だよ!!!たくさん食べるといい!!!」
……全く、マッドサイエンティストを自称するやつの考えはよく分からない。こんな時間におにぎりを食べたら間違いなく太るっていうのに。
「体重?!!そんなことを気にしていたら食べたいものが食べられなくなるぞ!!!今日だけでいいから体重のことは忘れたまえよ!!!」
まあいいか。
でも、何でいきなりおにぎりが食べたいなんて思ったんだ?
「アニメを観ていたら美味しそうにおにぎりを食べるシーンが出てきてね!!!ボクも食べたくなったんだよ!!!ちょうどキミも起きてきたことだし、今夜はおにぎりパーティだね!!!」
そう言いながら笑顔で準備を始める。
……楽しそうでなによりだ。
寝るまでの時間潰しにはなるかな。
「あ、もうちょっとでご飯が炊き上がるよ!!!楽しみだね!!!そういえば聞き忘れていたのだが、キミが一番好きなおにぎりの具ってなんだい?!!」
おかか。
「もちろんおかかも準備してあるよ!!!ボクの好きな明太子もツナマヨもある!!!色々組み合わせて食べると美味しいに違いない!!!」
あんまり食べ物で遊ぶなよ。
「はーい!!!」
「おやおや!!!もう炊き上がったようだね!!!それじゃあ、握りたまえ!!!火傷には十分気をつけるんだよ!!!」
炊き立てのごはんは見るからに熱そうだ。ごはんの中におかずを詰めて形を整えていく。……熱っ。
「まあまあ!!!そんなに焦らず!!!ごはんもおかずも逃げはしないからね!!!」
そんなことを言いつつも、自分よりも早くおにぎりを握っていく……自分よりも小さい手のひらで。
熱くないのか?
「熱いよ!!!だがマッドサイエンティストの端くれたるボクくらいのレベルになると忍耐力がつくからね!!!それを全力で利用しているわけさ!!!」
何かすごい技術でも使っているのかと思ったのに、耐えてただけなのか……。それはそれですごい気もするが。
「それほどでも……あるよね!!!」
「どうだい???食べたい具は詰められたかい???他の具のおにぎりもちゃーんと作ってあるから!!!気分が変わっても安心だね!!!」
「それじゃあ!!!真夜中のおにぎりパーティのはじまりはじまり!!!」
……いただきます。
「いっただっきまーす!!!……そう!!!これだよ!!!これが食べたかったのだよ!!!」
……美味い。毎度のことながら自称マッドサイエンティストが作ったとは思えない美味さだ。……いや、もしかして実は何か変なものが入っていたりするのか……?
「失礼な!!!冷蔵庫と棚に仕舞われていたものを使っただけだよ!!!それと!!!ボクがここに来てからどのくらい経ったかわからないが!!!疑うのが遅すぎるんじゃないかい?!!」
……悪かった。でもよくよく考えたら、あんたも食べるものに何か悪い物を入れるようなことはしないよな。
「その通り!!!さあ、こっちも食べるといい!!!めんたいチーズ入りだよ!!!」
めんたいチーズ……?と思いつつ食べる。
え……?……自分が握ったものよりも遥かに美味しい。
解けるようなのに、ふっくらとしている。
「さすがキミだね!!!違いのわかるニンゲンでよかったよ!!!どのくらいの力で握れば最高の旨さを引き出せるのかを計算して作ったからねえ!!!」
さっきは忍耐とかアナログっぽいことを言っていた気がしたのに、こっちはちゃんと計算しているのか。
「えへへ!!!もっと食べてもいいよ!!!」
そう言いながら、こっちに手を伸ばしてきた。
……別に構わないが、どうしてあんたが作ってないのを取るんだ?
「キミが握った分も食べてみたくてね!!!」
「美味しいじゃないか!!!おかか……なんだか懐かしい味だねぇ……。初めて食べたはずなのにねぇ……!」
そうか、よかったよ。
「……にしても、いっぱい食べたね!!!残りは明日の朝ごはんにしようか!!!ごちそうさまでしたー!!!」
ごちそうさま。
自分たちは後片付けをする。
洗い物をしながら、あんたはまだ何かしたそうな顔をしてこっちを見ていた。……流石にもうこんな時間だからもう駄目だぞ。
「やりたいことがあるのは正解だよ!!!もう一回キミの協力を必要としているのも確かだが、そんなに大仕事ではないから安心したまえ!!!」
なるほど。……だが何がしたいのか見当もつかない。
「ボクがしたいのは……キミのベッドで一緒に寝てみること、なのだよ!!!」
ベッドで一緒に寝る……?
「そう!!!眠れなくなっちゃった妹分の子を自分の使っている布団に入れてあげてあったかくして眠るっていうシーンをアニメで見たのさ!!!こっちもやってみたいなー!!!」
……いいよ。
「本当かい?!!ありがとう!!!」
片付けを終えて寝室に戻る。あんたも一緒に。
「おじゃましまーす!!!ここに入るのは何気に初めてだね!!!」
そう言いながらベッドにするりと入っていく。
……素早い猫みたいだな。
「ほらほら!!!早く寝るよー!!!」
促されてベッドに入る。
……そういえば、誰かとこうやって眠るのは随分と久しぶりだ。最後にこんな風に眠ったのはいつだったろう。
「えへへ、暖かいね!」
「今日はありがとう!また明日もよろしくね!それじゃあ、おやすみ。」
ありがとう、おやすみ。
こっちを向いたまますぐに寝息を立て始める。
自分はこっそりあんたの髪を触る。
ミントグリーンでふわふわの髪。
……見た目通り、いや、それ以上の触り心地だ。
髪の毛だと思えないくらいに柔らかい。
続けて桃色のほっぺたも触ってみる。
すべすべもちもち。生まれたての羽二重餅みたいだ。
それから小さい手のひらも見てみた。
この手でおにぎりを握ったり、色んな物を作ったり。
……そんな熟練の手には見えない。
小さいし、柔らかいし、見た目も触り心地も頼りない。
だが大体のことを器用にこなす。
自分の手のひらを見て思った。
自分もあんたくらい明るくて、器用だったら良かったのかな。
……なんてことを考えているうちに、いつもよりずっと暖かいベッドだったからか、あっという間に眠ってしまった。
《真夜中》
誰かが、見ている。
そんな感覚がして振り返るが、そもそも一人暮らしのマンションに自分以外の視線など存在しない。
それを不気味に思ったが、まあ、仕事で疲れてそんな幻覚を抱いてしまったのだろう。
そう納得して、またパソコンに向き直る。
けれど、今度は間違いなく視線を感じた。
カーテン越しにベランダを睨むが、風に揺れてもいない。
だというのに、ここまで視線を感じるものなのか。
もう寝てしまおうか、なんて考えも過ぎるが、明日までに完成させなければならない資料が残っている。それではいけない。
かと言って、不安を感じながら仕事をするのも、如何なものか。
思考は現実逃避に過ぎず、視線もそれと同じものだろうと予想はつくが、やめられない。
そう思えていたのは、午前零時を過ぎた頃。
それから二時間、終わらない仕事を恨むうちに感じていた視線のことなど頭から抜け落ちていた。
そうして、仕事に区切りがついた時、また視線を感じたのだ。
なぜ忘れていたのか、いや、なぜ今また感じるようになったのか。
けれどそんなことはどうでもいいとばかりに、パソコンを閉じてソファに倒れ込む。
もう寝てしまおう。
そう思って目を瞑るが、視線を感じて眠れない。
たが、眠らなければ明日の仕事に耐えられない。
早く寝なければ。
資料は完成したのだから。
早く寝なければ。
気が付くと、朝になっていた。
殆ど気絶するように寝入ったのだろうか。
時間をみると、いつも通りの五時半だ。
そこから支度をして、家を出る。
またいつも通りの日々が始まった。
ベランダについた手形のような泥に気がつくのは、それから三日後のことだった。
六階のベランダについた、赤黒い泥に。
遠くで神楽笛の音が聞こえる。
明日の祭りのために、大人達が準備を進めているのだろう。
あれからどれくらい時間が過ぎたのか。一向に訪れる事がない眠気に、段々に不安が募る。
明日は、大事な日なのに。
「ねむれないの?」
もぞもぞと何度目かの寝返りを打てば、隣の布団から声がかかる。
布団から顔だけを出し視線を向けると、同じように顔だけを出した幼馴染と目があった。どこか不安そうな表情が一瞬で笑顔になり、いそいそとこちらの布団に潜り込んでくる。
「私も一緒。明日の事、考えてた」
にこにこと笑みを浮かべながらも、その手は微かに震えていて。落ち着かせるようにその手を取り、引き寄せた。
「何で私達なんだろうね。何でいつも通りじゃ駄目なんだろう。何で、」
「大丈夫。今年もいつもと同じ。お祭りも、神楽舞も。今年選ばれたのが、たまたま俺達だっただけ」
だから大丈夫なのだと、自分自身にも言い聞かせるように。
怖がりな幼馴染の頭を撫でながら、大丈夫と繰り返せば、少しずつ落ち着いてきたようだった。
「ありがとう。うん、大丈夫だよね。大丈夫…ちゃんと踊れるようにもう寝ないと、ね」
「そうだね。怒られないようにしっかり寝ないと。おやすみ」
「うん。おやすみなさい」
おやすみと言いながらも、幼馴染は自分の布団に戻る気配はない。仕方がないと、彼女の頭の下に腕を差し入れた。伝わる体温が不安を溶かしていくようで、ほぅと息が漏れる。
そのまま目を閉じていれば、幼馴染も同じように眠りについたらしい。微かに聞こえる寝息に、閉じていた目を開けた。
「大丈夫。いつもと同じ。ただ、神楽を舞うのが俺達になっただけ。祭りを仕切るのが父さんになっただけ」
囁いて、眠る幼馴染の額に口付け、祈る。
不安なのはきっと、彼女よりも自分の方だった。
村が少しずつ変わっていく。
一年前に、妹が雨を降らせるようになってから。
いつの間にか父は村長よりも立場が上になり、妹の言葉が絶対になった。祭りは一族が執り行うようになり、代々受け継がれていたはずの神楽舞も、明日は巫女ではなく自分達が舞う事になった。
まるで、村全体が毒に侵されているようだ。ゆっくりと蝕み、気づいた時には戻れない。皆変わってしまった。父も母も、以前はあんな傲慢ではなかったはずなのに。
妹はもはや、何を考えているのかすら分からない。何を思い、自分達に神楽を舞わせるのか。そして何故、
幼馴染との婚約を、祭りの最後に行うようにと告げたのか。
分からない。何一つ。
けれど、
「明日、何があっても絶対に俺が守るから」
これはただの見栄だ。
幼馴染に対して自尊心ばかり高くなってしまった自分の、精一杯の悪足掻き。
穏やかに眠る幼馴染は知らない。
変わってしまった家族の事。明日の事。自分達の事。
何一つ、伝える事が出来なかった。
本当は泣き叫び、縋りたいと思っているなんて。逃げ出したいなんて。
助けて、だなんて。
手を引かれてあどけなく微笑う幼馴染には、言えるはずなんてないのだ。
神楽笛の音はまだ止まない。
夜闇は益々色を濃くして、村を静かに沈めていく。
朝はまだ来ない。
20240518 『真夜中』
〝真夜中〟
コツコツと、ローファーの踵が音を立てる。
時計の針は真夜中を指していて、静寂に包まれている。こんな中じゃないと、昔の制服を着て歩けない。
秘密を、じっくりと闇に溶かす。
水道の蛇口をひねり、水の流れを止めた。指先から雫がぱたぱたと落ちる。
哺乳瓶を消毒ケースの中に入れ、電子レンジへ。500wを5分に設定してボタンを押す。オレンジの光に包まれるケースを見送れば、今日の任務は終わりだ。
気づくといつも日付を超えて2時間が経っている。明かりの消えたリビングでは、飼っているうさぎが耳を少しだけアンテナのように立たせながら、餅のように丸く伏せていた。どうやら寝ているようだ。私はそっとリビングの戸を閉めた。
子どもを出産してからは、なるべく一緒に寝るようにしていた。夜泣きや夜間の授乳もなく、手がかからない子でとても助かっている。
そっと扉を開ければ、常夜灯の薄ぼんやりとした中にころりと寝そべる小さな影が見えた。今日は私の布団の上らしい、丸まった背中をふっくりふっくり動かしていた。
昨日はベビー布団と壁のはざまにいたし、また別の日は私の布団とベビー布団を横断して寝ていたし、赤ん坊の寝相はずいぶん自由だ。毎日寝かしつけの時はベビー布団に仰向けて寝かせてから掛け布団をしている。にもかかわらず、私が家事を終える時間になると、当初とは向きが180度回転して伏せながら熟睡している。
私はうつ伏せになっている子の胸元と足の付け根に手を滑り込ませ、最短の動作で元の位置に戻す。仰向けにさせられた子どもは、若干ぴくりと肩を動かすが変わらず寝入っている。起こさずに済んでほっとした。
子どもの寝跡がついた布団のくぼみに手を置く。手のひらに、生きている命のあたたかさを感じた。
4時間もすれば、元気にずりずりと這いながら私を起こしにくるのだろう。笑顔が朝を連れてくるのを目蓋に浮かべながら、私もゆっくりと眠りについた。
[真夜中]
真夜中…、記憶に新しい気がするお題。
真夜中に真夜中のことを考え書くのもアレだな、と思っていたけど日が暮れてしまった…
真夜中、何かあったかな…と頭の中を漁る。無難なやつを。そう、無難なやつ。どう表そうか、はて。
心が弱りがちなとき…
真夜中には、やみのなかでながくたちどまってはいけない。真夜中には、確かな現実について焦点を当てるのがいい。真夜中のうちに、帰宅すべし。丑三つ時を過ぎないように。暗闇のなかから魅了を投げてくるものに近寄らないのがいい。これは一応大人に向けての文言だ。子どもが真夜中に家に居ないで外に居るのは論外だ。大抵の自治体で条例に引っかかる。
心を覇気で満たせるならば、何時でもまあ大丈夫だ。
真夜中
ふと目が覚めると
テレビの砂嵐の音がする
母がイスに座って
それをじっとみている...
て、寝てるやん
こわいからやめてー
【真夜中】
[後悔 続編]
登場人物
勇気
遥香
フーリン
翌日、遥香は勇気の家で作戦会議を行なっていた。
「敵はボスがオークで手下がスケルトンなんだよな」
「私が見たのはそうよ」
「何匹くらいいたんだ」
「村のあちこちにいたからハッキリとはわからないけど、
オークが数体
スケルトンが20〜30体いたと思う」
「そいつら全部俺が倒すのか」
「フーリンがいるじゃない」
「でも、アイツのは攻撃じゃなくて援護だって言ってたしな」
「それでも、風で敵を蹴散らしてくれれば、大助かりでしょ」
「なんか厄介なものに首突っ込んじまったな」
「ゴメン、私のせいかも」
「どう言う事だ?」
「勇気があの世界に最初に来た時の事覚えてる?」
「ああ、いきなりスケルトンに襲われたんだ」
「実は、あのスケルトン私に向かって来てたの。その時、(勇気助けて!)って叫んだら目の前に勇気が現れたのよ」
「お前のせいか」
「ゴメン。多分」
「まぁ、今更しょうがない。やってやるさ。どうせ死んでも夢だしな」
「あらヤダ、もう夕飯の時間だわ帰らなきゃ。じゃあまた、《夢美の国》でね」
「おぉ!《夢美の国》か?いい名前だ。今日行ったら夜が明けてればいいんだけどな」
「やっぱり、まだ真夜中のままか」
「みんな集まったわね、準備はいい?」
「おお!」
「もちろん」
勇気と遥香はフーリンにしがみ付いた。
「何やってんだよ」
「飛んで行くんだろ」
「私達、飛べないもん」
フーリンは仕方なくふたりを抱えて飛んだ。
フラフラフラ〜
「これ飛んでるのか?」
「なんか歩いた方が速いみたいね」
「歩きかよ」
俺達は月明かりの中歩き出した。
「星がとってもキレイね」
「夜中に歩くなんて初詣くらいだもんな」
「お前ら遠足じゃないんだから、もっと気を引き締めろよ」
「「は〜い」」
「そういえば、魔物のアジトってどんな所なの?」
「どうして?」
「お前、アジトに攻め込んだんだろ」
「攻め込んでない」
「だってケガして帰って来たじゃない」
「あれは、転んだんだ」あくまでシラを切っている。
「魔物はやっぱりオークと、スケルトンだけなのかな?」
「トロール」
「えっ?」
「トロールがいた」
「お前やっぱりアジトに行ったんじゃん」
「こっ、転んだんだ」尚もとぼける。
「「.....」」
「方角はこっちでいいの?」
「間違いない、“風の鈴”が教えてくれる」
3人はひたすらに歩き続けた。
すると、前方にポツンと明かりが見えた。
「あそこに明かりが見えない?」
「あっ、本当だ。なんか燃えてるみたいだな。もしかしたら、また村が燃えてるんじゃ」
「フーリン先に行って...」
「もう行ったよ。俺達も急ごう」
「うん」
炎に近付くにつれ、どうやら村が燃えている訳ではなさそうだ。
「ひとまずは良かったわ」
「フーリンが誰かと話してるようだな。髪の毛が真っ赤っ赤じゃないか」
やっとフーリンの所に着いた。
「遅い!」
「俺達は飛べないんだ」
「これでも全力で走って来たのよ」
『君が勇者ですか?』
「はい?」
つづく
ある真夜中
私は1人ベランダでタバコを嗜んでいた
故郷を出て一人暮らしを初めてからもうすぐ1年
東京という大都会を目にした時の感動は一生忘れない
そして、
「僕も一服良いですか」
この男
隣の部屋に住む一人暮らしの男
お互い夜にベランダでタバコを嗜む習慣があり少しづつ話すようになった
「ええ、どうぞ」
私はいつもと変わらない言葉をかける
「今日は一段と月が綺麗な夜ですね」
いつものように男は話し始める
「本当ですね、、」
これが私のナイトルーティーン
男はふと目を伏せて少し微笑む
「私たちはもう1ヶ月はこのやり取りを続けていますが、、貴方は気にならないのですか?」
「何がですか?」
「私たちはお互い名前すら明かしていない。でもこんなにも信頼し合い、、私もたくさん相談をさせてもらいました」
「そうですね」
「私ふと思ったんです。もっと貴方のことを知りたいなと」
「ふふ、、そうなんですか?」
「ええ、、かなり前から」
男は妖艶な笑みを浮かべ私の顔に軽くタバコの煙をかける
私は少し驚きつつも笑みを返す
今夜は長い夜になりそうですね
真夜中
憂鬱な朝から逃れるため
独り画面と向き合う
情報の渦に飲み込まれる
なにもない自分ではいけない
誰かの発信なしには生きれない
世界に共有される何気ない言葉が
今ここに生きているはずの自分を
その存在を思い出させてくれる
何かを獲得した実感がなければ
停滞し続ける己を認めることになる
新しい情報が更新が必要だ
疲れた。ああ疲れた!
あのくそ野郎、チョロチョロ移動しまくって。尾行して追っかけるこっちの身にもなれってんだ。
おかげで浮気の証拠はばっちり揃ったが。
何が休日出勤の出張だ。こんな夜中まで女と遊び回りやがって。
絶対ばれねえと思って安心してんだろうな。
全然振り返りもしねえし。
だいたい、奥さんはとっくに感付いてんだよ。おめでたい奴。舐めんじゃねえよ。
俺が一部始終を見ているとも露知らず。
件のカップルは別れ際にしっかり抱き合うと、互いに投げキッスまで残して漸く側を離れて行った。
「さて、と」
今のもしっかり写真に納めたし、これでこの件も粗方終わりだな。
あとは依頼人と連絡取って、調査結果を報告すれば終了だ。
俺もさっさと帰るとしよう。
二人の後を追っている間に日付も変わって、時刻はもう深夜一時近くとなっていた。
疲れた。すっげえ疲れた。
奴らを追いかけ回った肉体的な疲労も勿論だが、奥さんの気持ちなんか微塵も考えていない、馬鹿騒ぎみたいなデートには吐き気がして、こちらまでごっそりメンタルが削られた。
仕事だからとやりきりはしたが、しばらく浮気の素行調査はやりたくねえな。
報告書のまとめは一旦置いといて、今はとにかく帰って休みたい。
事務所まで帰る道すがら、ただそれだけを考えて暗い夜道を急ぎ車を走らせた。
それなのに。
「おっかえり~!」
事務所に到着して早々。
扉を開けるなり、騒がしい馬鹿と爆ぜるクラッカーが俺を出迎えた。
奴が夜に元気なのは元々だ。吸血鬼の性だから仕方がない。
それにしても、今日は一段と浮かれている。
満面の笑顔の馬鹿の頭の上にはパーティー用の三角帽子。
視線を外してその後ろを伺えば、来客用テーブルにはサラダに始まって肉料理、高い酒までが所狭しと並んでいた。
「――何だこれ」
訳の分からない状況に、疲れでツッコミも追い付かない。
戸惑う俺を他所に、元凶の馬鹿は「え~ノリ悪~い」とブー垂れた。
「いやマジで。何のパーティーだ? 騒ぎたいなら昼間にしろよ。夜中だぞ」
「やだー。ちょっと、何そのリアクション。まったくピンとも来てないの? 人間は短命だけど、流石に呆けるにはまだ早いでしょ。しっかりしてよ探偵さん」
「ちょ、やめろって!」
奴が近付いて、からかうように頬を突っつかれる。
うざい煽りから逃れるため、立ち尽くしていた入り口から中へ進んで遠ざかる。
そうして初めて、壁に掲げた日めくりの日にちが目に留まった。
依頼人から謝礼と一緒にもらって、何となく下げているだけのカレンダー。
めくり忘れることも多いその日めくりが、今はしっかりと更新されている。壁のパーティー飾りと一緒にデコられて、電飾に彩られピカピカと輝いていた。
日付が変わった今日は――。
「俺の、誕生日?」
漸く合点がいった。
振り向けば、にんまりと笑った相棒とばっちり目が合う。
「そうだよー。やっと気が付いてくれた?」
「俺、おまえに教えたか? 誕生日なんて」
「バーのお姉さんに聞いたんだよ。あと、念のため間違ってると恥ずかしいから、君が寝ている間に免許証を失敬してね」
マジか。油断も隙もあったもんじゃない。身内とはいえ、所持品管理には気を付けねえと。
「さあさあ。これで理由は分かったでしょ! いつもお世話になってるし、一番にお祝いしたかったんだ~。早く食べよ!」
呆気に取られている間に背中を押され、テーブル前のソファーに座らされた。
御馳走の匂いに釣られて腹も鳴る。
そういえば、見失わないように尾行するのに必死で、昼から飯を食べ損ねたままだった。自覚した途端に食欲も沸いてくる。
あんなに疲れていたはずなのに、こいつの陽気に引き摺られて、いつの間にか体も少し軽くなっていた。
「――そうだな。食うか」
誕生日パーティーなんて柄じゃねえけれど、たまには誘いに乗ってやるのも悪くない。
珍しく素直にグラスを取った俺に、向かいの相棒もぱあっと笑顔を輝かせた。
ワインをついで、グラスを掲げる。
「誕生日、おっめでとー!」
「恥ずいわ馬鹿」
口ではいつものように毒づいて、グラスを鳴らして乾杯した。
一口飲み干して、ふと疑問が浮かぶ。
「そう云えば、おまえこそ、歳いくつなんだ?」
「えっ今それ聞くの? そこはミステリアスなままで良くない?」
「勝手に免許証見た奴がそれ言うか?」
「ノ、ノーコメントで!」
二人で騒いで酒を煽る。
ずっと独りの仕事だったけれど、こうして笑う相棒が居るのも良いもんだ。
ま、吸血鬼で不老のじーさんだけど。
いつかこいつの誕生日も暴いてやるか。
(2024/05/17 title:036 真夜中)
「さむっ」
羽織っていた毛布を、引き寄せた。
流星群、あんまり見えなかったな。
いっぱい流れるのを、期待してたんだけどな。
たくさお願いしたいこと
---
真夜中
真夜中の寝落ち電話が好きだ。
夜型人間の私は夜が深くなるに連れ、目が冴えていくので寝落ちをするのはもっぱら相手方になるが。
多弁な私に合わせて聞き手に回ってくれる彼女の反応が段々と鈍っていき、声がとろとろとしてくる。彼女から発される言葉が全てひらがなに聞こえていく。今日はお酒を飲んでいるらしいから、余計に。
少しからかうみたいに、おねむかな?とこちらが聞くと、
うんともううんとも聞こえる答えが返ってきて思わず笑ってしまった。
彼女はなんで私が笑っているのかわからなさそうに「どぉしたの」と聞く。別になんてことはないけど、「それでね」とさっき中断した話を再開した。
本当になんてことはない。もう全然話なんて入ってきてないのに、私の声が途切れたときにとろっとろな相槌を挟んでくれる君が可愛いなって思っただけ。
声だけじゃなくてふにゃんと笑う顔が見たいなと思ってしまった自分に苦笑してしまっただけ。
反応が完全になくなった。
遠くで寝息らしきものが聞こえる。一応、寝ちゃったかな?と反応を得るつもりの全くない音量で声を掛ける。時々意識が浮上するときもあるけど、起こしたい訳じゃない。
寧ろ、この私だけの時間を楽しみたいと思っている。私だけの彼女。どうやら彼氏との電話中に寝落ちしたことは無いらしいので、正真正銘私だけの時間。
おやすみ、いい夢を。そう言って電話を切る時間が好きだ。
勿論、その時の私の声なんて彼女は一生知らなくてもいい。
(『真夜中』は多少の感情をうやむやにしてくれる)
作者の自我コーナー
懺悔。好きでごめんね。
真夜中の暮らし
夜に動く人を 私は暮らしという
夜に寝る人も 私は暮らしという
あの子は なにをしているのだろう
あの子は どんな夢をみているのだろう
私は あの子の夜に
いてほしい
ひとつの暮らし
真夜中の暮らし
どうすれば
よかったというの
真夜中を
照らすスマホの
画面に泪
「真夜中」
#04 『白夜になれ』
深夜徘徊を始めたのは、高校に入って3ヶ月程経った頃だった。
中学生の時から何となく家に居づらくなって、その頃は部屋に引き籠もったり友達の家に泊まったりしていた。
始まりは反抗期だったのかも自分ではわからない。いつの間にか、両親と顔を合わせる度に居心地が悪くなっていた。そして、両親から逃げるような生活をしていたら、高校受験が終わったあたりに昼夜逆転した。
学校から帰ってすぐに寝て、深夜に起きて、朝方にまた寝る不規則な生活。体調は悪くなったけど、親と顔合わせるくらいだったら昼間キツい方がずっと良かった。
ついに高校に入って、親の目が無くとも家にいるのが嫌になって、梅雨明けくらいから深夜徘徊を始めた。
確か、アサヒに会ったのも、深夜に家を出て近所の公園でぼーっとしてるときだった。
キィキィと錆びたブランコが音を立てる。本当は15になった俺は乗っちゃいけないけど、誰も見ていない今なら関係ない。
この公園は人通りも少ないし、誰か通りかかっても大きな音を立てない限り気づかれない。最近は毎日のように来ている。ベンチには屋根もついていて、雨が降っても来れるのもこの公園のいいところだ。
タッタッタッ
誰かが近くを通っている軽い足音がした。方向からしてブランコは見えにくいだろうし、公園に入ってきたりしないと俺の存在には気づかないだろう。それでも音を立てないようにとピタリと動くのを止めて息を潜める。
よし、そうだ。そのまま通り過ぎてくれ──────
「誰かいますか?」
声変わりもしていなさそうな幼くて少し舌足らずな声がした。
「こんばんは」
気づけば目の前まで来ていた思っているよりもずっと小さい人影、大体小学生高学年から中学生くらいの少年。
──────それが、俺とアサヒの出会いだった。
あれからアサヒとは何度も公園で会った。
俺は毎日のように公園に行ったし、アサヒは週に2、3回やってきた。
お互い、何で真夜中に外に出ているのかなんて話さず、ただ月を眺めて、ブランコを漕いで、他愛もない話をした。
それは夏休みに入っても変わらず(流石に台風が来ているときは外出出来なかったけど)、逆にアサヒが公園に来る回数が増えたくらいだった。
それでも、出会いがあれば別れがあって、それは、突然やってきた。
あの日は、夏休みが終わる前日だったと思う。
「流石に来ねえか…………」
いつもアサヒが来る頃からもう1時間は経った。針がテッペンを回るか回らないかの時。
俺と違って健全な男子中学生のアサヒは、長期休み明けの前日まで夜更かしはしないのだろう。
別に来ないのことはよくあるけど、何となくつまんない。相変わらず錆びついたままのブランコが、体重をかけたことでギィギィと音を立てた。
今日はもう帰ろうか。自分にだって明日学校があるのは変わらないのだ。
「サツキさん、いますか?」
「うぇっ!?」
ブランコがギリギリと悲鳴をあげる。
何時の間にかアサヒは公園の入口に佇んでいた。ゆっくりとこっちまで歩いてくるアサヒ。でも、いつもと少し違う気がする。
「今日も来てたんですね」
目の前まで来たアサヒ。その顔には酷いアザができて、鼻には血に濡れたティッシュが詰められている。
「アサヒっ、お前、それっ!」
慌てて勢いよくブランコを降りた俺にアサヒは笑う。
「あはは、ちょっとドジっちゃいました」
でも、大丈夫です。そう言ったアサヒは全く大丈夫そうには見えない。俺は知っている。こういう時に大丈夫と言って本当に大丈夫な奴なんていない。例えいたとしてもそれは人間の中でも一握りなんじゃないだろうか。でも、どう声をかけていいのかわからない。
「サツキさん、少しだけ僕の話聞いて下さいよ」
躊躇って口を開けては閉じてを繰り返す俺に、隣のブランコに腰掛けたアサヒは暗く陰った瞳を閉じてそう言った。
僕の父親は、暴力を振るう人なんです。ずっと小さい頃からそう。だいたいは夜、仕事から帰ってきて、お酒を呑んで、そして理不尽な難癖つけたり、時にはそれもなく僕を殴るんです。母はそんな僕を見て見ぬふり。昔、僕が生まれる前は母が暴力を受けていたらしくて、僕は丁度いいスケープゴートだったんだと思います。学校に通うようになってからは服に隠れてるところを殴るようになって、しかも中学に入った頃から更に酷くなって。それで、逃げるために夜出歩くようになったんです。でも、それが母にバレちゃったんです。母は世間体を気にする人なので、凄い剣幕で怒鳴られました。『なんでそんな事するんだ!』って言われて、久しぶりに母に平手打ちされましたよ。あはは。そこに父が帰ってきて、父にも深夜に出歩いたことがバレて。素面の父にもボコボコにされて、このザマです。頭に血が登ってたみたいであんなに気をつけてたのに顔も殴られて。痛かったなー。身体も見ます?凄いですよ。2時間くらい前かな?、ようやく父の気が済んだみたいで、開放されたんですけど身体が思うように動かなくって。そこから母がヒステリック起こしながら1時間くらい説教してきて。さっき身体が動くようになったんで、黙って家出てきちゃいました。
どのくらいの時間、話を聞いていただろうか。長いような短いような話を終えたアサヒは、諦めたような顔をして笑った。
お互いの詳しい話なんてしたことがなかったのに、初めて聞く話がこんななんて思ってもいなかった。
「あー、お疲れ様」
やっぱりなんて言ったらいいのかわからなくて、取り敢えず労りの言葉をかけてみた。
「僕こそこんな話聞かせてしまって、すいません」
その瞳は変わらず暗く陰っている。
こいつも逃げてきたのか。アサヒの話を自分の中で飲み下す内に、ふとそう思った。確かに俺は暴力を受けたわけじゃないけど、親から逃げてここに来たのは同じだった。
「ずっと夜だったら、俺達は逃げ続けられるのにな」
何ともクサいセリフだとは自分でもわかっていたが、口から出ていったものはなかったことには出来ない。ただ、自分がかけられる言葉はこれで精一杯だ。
「そうですね」
アサヒは空を見上げてブランコを漕いでいる。
「僕達は夜に生かされているのに、おかしいですよね」
やっぱりなんて言ったらいいのかわからない。俺はこういうのは苦手だ。
「僕、明日病院と警察に行こうと思うんです」
きっとこの怪我じゃ、『転んだだけ』なんてことにはならないでしょう?自嘲気味に笑ったアサヒはさっきとは違う明るい声をしている。
「学校行く振りして、病院行って、警察に行って、あの家から逃げるんです」
一言一言確かめるようなそれは、まるでアサヒが自分に言い聞かせるようだった。
「いつか、暗い夜じゃなくて、明日を楽しみに出来るような夜を、僕は過ごします」
あの夜を最後にアサヒとは会わなくなった。あれからも深夜徘徊は辞めなかったけど、公園にアサヒが来ることはなかった。
俺は高校卒業後直ぐに就職して家を出た。仕事で疲れて狭いアパートに帰って泥のように眠る日々。
仕事は大変だったけど、就職という大義名分を得て家を出ることが出来たから、深夜徘徊もほとんどしなくなっている。
久しぶりに夜中に外に出て、空を見上げて昔のことを思い出した。
「サツキさん」
舌足らずな声が聞こえた気がして後ろを振り返る。
後ろには、いつまでも変わることのない夜が広がっていた。
2024/05/18
これを書くことにした!
日記のように書こうかなと思う!
毎日書こうと思ってるけど、書けるかな?続きかけるかな?と疑問がある!
まぁでもそれでもええか
てことで今日はここまで!
《真夜中》
親に秘密でお菓子を食べる。
夫に秘密で少しドライブ。
妻に秘密であの人と会う。
秘密、秘密、秘密・・・
夜は人に秘密を与える。
人々は秘密が与えた小さな幸福を胸に眠りについた。
時計の針は動かない。
真夜中は、終わらない。
第2話何でも屋は違法なこともする
真夜中にハートの海賊団船長が恋した女の子が居ます。その女の子は表向きはただの女の子ですが、その子の本当の正体は「何でも屋」でした。しかも普通の何でも屋では無く、どんなに違法な事でもお金を積まれたら平然とやってのける、最強で最悪な何でも屋です。その子の名前は、 「トキタン・ミアラム」 ミアラム「え〜っと??今日のお仕事は〜……何だ、ただの盗賊の討伐依頼か。金額はー……(100ベリー)ほーらね。安っちぃ額。…明日の生活費足りないしもう1個やるか〜…とりあえず、今の依頼片付けて来ないとね。行ってきま〜す🚶♀️」しばらくして、ミアラム「ふぅ〜。もうちょい強くなってね〜、盗賊さん。殺しちゃったけど、ごめんね。みんなの為なの。」
※この世界線で書くから。期待しないでね。
真夜中眠れずにただただ考える
恐怖や不安に苛まれる
朝だろうと昼だろうと関係なしに襲ってくるがやはり真夜中は特にひどい
今までとこれからを手放せたらいいのに