『相合傘』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
相合傘って
愛の深さが
あらわれる
無意識に
相手が濡れないようにして
自分が多く濡れていたら
好きが溢れている
濡れても寒くないなら
心が温かいんだね
2人でいれば
雨も彩りだす
虹か出てなくても
心に架かっている
雨の日は心に余裕を持ちたい
相合傘
1つの物を2人で分けるってなんだかいいよね。
小さい頃よく父親に言われたなぁ
食べる時は必ず一緒にいる人に分けなさいって
それに、あんパンなら半分こして必ず大きいほうを相手にあげなさいって。
これを今でも守ってるなぁー
相合傘
それは
心を不安から守り
大切な人と繋げてくれるもの
好きな人
大切な人
相合傘で
守ってあげてね
シトシトと降り注ぐ雨。
朝の天気予報で快晴だと謳っていた天気予報士を
恨んでやる。
(…この降り方なら走れば帰れるな。)
そう思い走り出そうとした瞬間、クイッと俺の上着を引っ張る感覚がして後ろを振り向く。そこには同じクラスの
女子、俺の片思いの相手がそこに立っていた。
―なんだ?どうして俺の上着を掴んで…
追いつかない頭をフル回転させ言葉を放つ。
「…どうしたの?」
もっと何かなかったのかって自分でも思う。でもこの言葉だけでも出た俺を褒めて欲しい。
彼女は上着を掴んでいた手を話して、耳を赤くして言った。
『……傘』
「え?」
『…傘、無いなら一緒に入る?』
「…え?」
必死にフル回転させた頭がまた機能停止した。
これは、これは相合傘が出来るという事か?
(マジ!?これ夢!?)
動揺がバレないよう平然を保つ…が、
口角が無意識に上がってしまう…
―何やかんやあって俺たちは同じ傘に入って
帰ることになった。
普段は絶対に縮まらない距離。
でも今日は違う。
肩と肩が触れてしまえる程の距離。
"相合傘"という魔法がもたらした、
この恋が実る為の大切な1歩。
【どうかこの恋が実りますように】
#022 『理由はそれだけ』
雨が降っていることを忘れて玄関を開けてから慌てて低反発傘ベルトを取りに引き返すと、姉に「だから言ったのに」と笑われた。
うるせー、と返してからベルトを身につけ、起動させる。反発層が発生するまで約五分、その間は家を出られず玄関先に座り込んで待つ。発生に時間がかかるだけで、全身を包むのは早いんだけどなぁ。
「お先ー」
事前にベルトを起動させていた姉が俺を追い越していった。
今朝はいつもの地下鉄に間に合わないかもしれない。だが、自転車の傘差し運転は罰金が高い。結構な確率で見つかるし免停をくらう可能性があるから、濡れたくなければ待つしかないのだ。
原理はよく分からんが、規定粒度の水と湿気だけを反発してくれる「まとう傘」こと低反発傘ベルトは日本じゃ爆発的に売れた。自転車の傘差し運転がほぼなくなっただけじゃなく、傘を持ち歩くわずらわしさがなくなったと喜ぶユーザーは多いらしい。国のスタートアップ支援だとかなんとかで、意外に安価なのも好評だ。
ガレージに停めてあった自転車に乗り、駅へと急いだ。案の定いつもの地下鉄には間に合わなかったが、仕方ない。人混みの中、通路を急ぐ。
出口付近で同じ学校の制服を見つけ、俺は歩調を落とした。同じクラスの女の子だ。……今日も可愛い。
いつもは会わないのに、今日に限って会ったのは一本遅い地下鉄に乗ったせいか。だとしたらラッキーだ。
結構急いでも遅刻しそうな時間なのに、何やってるんだ? 声をかけるか迷いながら近づきかけたら、向こうが振り向いて目が合った。
「……はよ。遅刻するんじゃね?」
声をかけると、彼女は困ったように微笑んだ。
「今朝ね、寝過ごしちゃってあわてたの。それで傘、壊れてるの忘れて出てきちゃって。あたしの家、駅直結だから気づかなくて……」
彼女が差し出した低反発傘ベルトの起動部には、確かにエラーサインが出ている。
「濡れるの嫌だけど、走るしかないかな。傘を売ってるコンビニに寄るのも遠回り──」
「あー、入ってく?」
彼女が言い終える前に、つい食い気味に言ってしまった。
えっ、と小さくつぶやいた彼女の頬が赤くなる。しまった、深く考えずに言っちまった。
「いやその、今なら一緒に走れば間に合いそうだし? 多分ほら、このへん、袖をつかむだけでも大丈夫だから。せっかくここまで濡れずに来たんだからさ」
「あっ……うん。じゃあ、お邪魔しちゃっていいかな……」
彼女の華奢な指先が制服の袖先に触れる。起動しっぱなしだった反発層はすぐに広まって、小柄な彼女を包み込む。
「じゃ、ちょっと走ろうぜ。速すぎたら引っ張ってくれていいから」
ついつい早口に宣言して、俺は駅を出る。彼女は小走りについてくる。時々、腕や指先が互いに触れる。距離が近い。
走ったから、ってだけじゃ説明のつかない心臓の爆音を抱えながら、俺はいつもの通学路を急いだ。
お題/相合傘
2023.06.20 こどー
同じ傘を二人で分け合うと
結局ふたりとも濡れてしまう
それでも、貴方がひとり雨に凍えるくらいなら
私は何度だって 共に肩を濡らしましょう。
相合傘
朝、登校したら黒板に落書きがされていた。
そう、定番中の定番の落書き。ハート傘だ。
私と、私のことが好きな人の名前が書かれている。
私はみんなにヒソヒソと笑われながらそれを消した。
そして名前を書かれてしまった彼はずっと俯いている。
許せない。こんな落書き。いや、相傘と言う風習をこの世から消したい。
心から願った。
家に帰ると、あったはずの私の傘がなくなっていた。
しかし私は、妹が使っているのだろうとソコまで気に留めなかった。
日付が変わった。今日は雨だった。まだ傘はなかった。そして道行く人は、傘をさしていなかった。大雨だったにも関わらず。
私が相合傘を世界から消してしまった。そして、それと同時に傘も消してしまったようだ。
確かに、傘が存在したままだとふとした時に一つの傘に二人入ってしまうことがあるかもしれない。それなら、神様からしたら傘を消す方が手っ取り早いのだ。
私は傘を開発した。この傘がない世界にもう一度傘という文化を芽生えさせるためだ。
朝、登校したら黒板に落書きがされていた。
雨の夜は、どこもかしこもきらきらと、妖しい光に満ちている。雨で銀色にそまる歩道を、ひとりじめにするのが私は好き。
だから君の傘の下は、息苦しくって溺れそう。
いつもはみえない透明な膜が、私たちを包み込んでいるのがわかる。
いっそのこと傘をとじて、この雨の夜に飛び出そうよ。2人で本当に溺れてしまうのが気持ちいい。
「相合傘」
道路側を歩いてくれる
傘を傾けてくれる
歩くペースを合わせてくれる
横を見るだけで
胸がギュッてなるよ
歴史の授業で使った資料の片付けを進んで買って出た
内申点を上げるというより、授業の合間の時間に話しかけられるのを防ぐためだった
家に仕込まれた人心掌握術でいかようにもできるが、
今日はあまり人と話す気分ではない
避けられるのなら避けたい
そんな心情など露知らず、先生は眉を八の字に下げすまないねと言い、準備室の鍵を手渡した
気にしないでくださいと人好きのする笑顔で鍵を受け取り、資料を持って廊下を歩く
それなりに重いが日頃鍛えてることもあり、さほど時間をかけずに準備室へ到着した
一度資料類を置いて、鍵を開け入室する
あまり人が入らないのだろう、室内は少し埃っぽい
教室に早く戻りたくもないが、ここに長居もしたくないのでファイルに書かれた番号や背表紙を確認しながら資料棚へと戻していく
作業が終わり戻るかと棚から踵を返したその時
視界の隅に捉えた文字を視野の中心に置く
ホワイトボードの隅、赤いペンで小さく書かれた相合傘
よく知った人間の名前と、たまに話す程度の女の子の名前
この学校にアイツと同姓の生徒も先生もいないので確定だろう
あの子がアイツのことを好きだったのは意外だった
俺と話したい奴なんて家柄目当てだと思っていたが、もしかしたら隣で無関係面で呆けてたアイツに少しでも近づきたかったからなのかもしれない
極度の面倒くさがり屋で寝てばっかりでも成績はトップクラス、顔もスタイルも良いからなぁアイツ
声をかける勇気もなく、こうして秘めた想いを書いたのだろうか
誰にもバレないように、でもあわよくば本人に知ってくれたらって期待もしちゃって
その様子を想像してみて、微笑ましさに口角が上がる
心の底から同意するよ
上から滑らせたクリーナーはあまりにも軽く、初めから何もなかったかのよう
こんなささやかで可愛らしい恋ですら
握り潰さなきゃ気が済まないほどに俺もアイツが好きだから
「あら、あなたも?」
「ええ。貴女もですか」
とある喫茶店の軒下で出会った。
二人は共に雨避けを探していた。
二人して軒先から滴る雫を眺めていると、背後に明かりがついた。
振り返ると、喫茶店のマスターらしき髭をたくわえた初老の男性がドアを開けて立っていた。
「こんばんは。雨宿りですか?」
マスターの言葉に二人は無断で軒下を借りたことを謝罪し、もう少し借りられないか尋ねた。
マスターは二人に少し待つよう言い、奥から傘を一本取ってきた。
「一本しか無くて申し訳ないが、こちらをお貸ししましょう。二人で差していきなさい」
二人は遠慮し合ったが、行き先が同じ駅なことが分かると、マスターの後押しもあり二人で傘を借りることにした。
二人を見送った後、喫茶店の明かりは静かに消えた。
駅までの道行で、二人が実は同じような悲しみを持った者同士だった話は、また今度。
哀合傘/6/19『相合傘』
コーヒーをご馳走してもらうver.はいつか。
#相合傘
肩を濡らす雨を遮ってくれる人は、もう居ないから___。
横で笑う大好きな君を思い出して、雨に降られる
「ごめっ…、俺のせいで…っ、ごめん…っ」
遠くでなる、救急車のサイレンの音を聞きながら、雨の中彼の身体を起きあげて抱く
もう、君の隣では歩けない
【相合傘】
「何でそんなもの持ってるのっ‼︎」
高校生のころ、家に帰ると妹の美月が母に怒られていた。母が感情をむき出しにするのを見たのは、そのときが最初で最後かもしれない。美月は、下を向いてひたすら母の怒りが鎮まるのを待っているようだった。
「今すぐ捨ててしまいなさい!」
母はそう言って、その場を去った。美月は、母が目の前からいなくなると大きく伸びをした。
「あ〜あ、見つかっちゃったぁ。失敗失敗」
「見つかったって何がだよ、美月?」
「これよこれ。見つかっちゃったから、もう効力ないんだけど」
そう言って、美月は小さく折り畳んだ紙を俺に見せた。そこには、一筆書きで書かれた相合傘と「カケル」「ミヅキ」という名前があった。
「は? お前なんで俺らの名前書いたの?」
「違うって‼︎ これは2コ上の先輩のこと!お母さんもそれを誤解したんだと思うけど、聞く耳もってくれなくて…」
美月は、憧れの先輩への片想いを成就させるべく、「自分で書いた相合傘の紙を小さく折り畳み、肌身離さず持ち歩く」というおまじないの最中だった。財布に入れていたその紙をうっかり落としたところに母が来て、その中を見てしまったらしい。先輩の名前が偶然にも俺と同じだったことで、話がややこしくなってしまった。
「なるほど、そういうことか。まぁ、母さんも落ち着けば忘れてると思うけど。ただ、またこんなことがあると面倒だから、別の方法を考えた方がいいぞ」
「うん…そうだね、わかった」
美月は少ししょげていたが、折り畳んでいた紙を破ってゴミ箱に捨てた。そして「さ〜て、次どうしようかなぁ」と言いながら自分の部屋へ入っていった。
「…なぁんだ、先輩かよ」
俺は、ちょっと複雑だった。ホッとしたような寂しいような…美月が「実の妹」ならそんな感情にはならないだろう。あいつはまだ、この真実を知らない。
~相合傘~
雨ですが待望の雨ですのでお買い物に行きましょうか
え?この傘で一緒に?
背丈が
嫌ではなく
あの…
ええと…
……
わかりました
56文字の黒の史書
好きな人との相合傘を想像する…
虚しくなる…
今日はいきなり雨が降った…
私の好きな人は…
私の親友だった人と相合傘して…
幸せそうだ…
彼と相合傘する…
幸せだった…
友から奪った好きな人…
仕方ない私の好きな人を奪ったんだから…
【ハイキュー!!】月島蛍 相合傘
『おかあさーん、今日雨降る〜?』
降らないよーと声が聞こえる。
『ありがとー。行ってきまーす』
私は毎日ウキウキしながら家を出る。なぜなら
『あっ、蛍くーん』
彼氏の月島蛍こと蛍くんと一緒に学校に行ってるからだ。蛍くんとは同い年でクラスは違うけど登下校やお昼は一緒に過ごしている。
「おはよう。○○。今日は寝坊しなかったの?」
とからかってくる。
「もー、なんで私が寝坊常習犯みたいになってんの(`-´)」
『えっ、違うの?昨日も一昨日も寝坊して僕のこと散々待たせたじゃん』
「そっそれはそうだけどさ今日はちゃんと起きたもん」
『あっそ。はやく学校行こ』
と言って蛍くんは足を早める。
「あっ。ちょっと待ってよ〜」
と私も足を早め蛍くんに追いつく。
・
・
・
「じゃあ、またお昼ね!バイバイ!」
『はいはい、また後でね。早く行かないと遅れるよ?』
「はーい」
・
・
・
・
〜お昼〜
[◯◯〜] ⇐ 友達
『んー?』
[外雨降ってるけど傘持ってきた?]
「え!?持ってきてない」
[帰りどうすんの?]
「え〜どうしよう。……蛍くんに入れてもらう」
[なら大丈夫だね。]
「ありがとう」
・
・
・
・
〜放課後〜
私は蛍くんのクラスに行った。
「蛍くーん」
みんなが私の方に視線を向ける。ヤバっと思っていたら蛍くんが私のところにきた。
『なに?そんな大声で呼ばないでくれる?』
「だって蛍くん毎回ヘッドホンしてるもん」
『あそ。それで要件は?』
「あっ、そうそう。今日傘忘れたから入れて」
私がそう言ったら蛍くんはため息をついた。
『また忘れたの?……はぁ、分かったよ』
「ほんと!ありがとう!(´▽`)」
『次はないからね』
「うん!」
「よし!帰ろ〜」
・
・
・
〜帰り道〜
「久しぶりじゃない?こうやって相合傘して帰るの」
『そうだね』
そうやって話していると、あっという間に家についた
「ありがとう。蛍くん。今度ショートケーキ奢る」
『ん。じゃあまたね。』
【相合傘】
【相合傘】
1つの傘の中で、見知らぬ2人がしゃべっている。
会話の内容は、雨音に隠れて、うまく聞き取れない。
2人きりの空間に水を差すのは、よくないだろうに。
気になってしまうのが人の性というやつだろうか。
No.53『彼のとなり』
散文/恋愛/掌編小説
私と彼との身長差は、15センチもある。ちなみに、彼が162センチで、私は177センチだ。
だから、彼は一緒に帰る時も隣を歩いてくれない。幼なじみでお隣さんの彼と帰るのは小学生の頃からの習慣のようなもので、一緒に帰ることができるだけで嬉しいと言えば嬉しいのだけれど。
「ちょっと待ってよ」
足の長さも私のほうが長いはずなのに、彼はいつもズンズンと前を行く。振り返りもせず、ただ、距離が空きすぎると角で待ってくれていたり。
「遅い」
「ジロちゃんが速いだけじゃん」
高校生になって、初めてクラスが別れた彼との貴重な時間。
「あ」
降り出した雨に空を見上げたら、
「ん」
ぶっきらぼうに差し出されたビニール傘。
私はその手を取り、彼の手の上から傘の柄を握りしめ。身を屈めて彼の隣に立ってみた。
お題:相合傘
澪子は雨に多少濡れようが気にしない性分だ。農作中に雨に打たれることは頻繁にあるし、小雨くらいなら我慢できる。
しかし、今のような雨になれば別だった。慌てて近くの東屋らしき場所に走り寄った澪子を待ち受けていたのは、ベンチで横になっているやんごとないお方だった。
「え、太子殿下……?」
「……お見苦しいところを見せてしまいましたね」
ゆっくり起き上がったのは、間違いない、将来帝になるだろう青年、橄欖太子だった。なぜどこにも護衛がいないのか、キョロキョロしている澪子に、どうかご内密に、と唇に人差し指を当てる太子。意外と不真面目な方なんだなあ、と思ったが、手に持っているのはいかにもお堅そうなタイトルの書物だった。
「だけどそろそろ戻らないとバレそうだな」
送りましょうと言う太子の手には、傘がある。用意周到な太子は、本だけでなく傘も持ってきていた。
断ることもできず、澪子は太子の左隣に立った。どうか美琴ちゃんに見られませんように、と祈りながら歩き始めた。
当たり前のように歩き出したが、ふと、太子に傘を持たせるなんて失礼じゃないかと思った。そろっと右手を伸ばしかけたが、スッと避けられた……ように見えた。
「澪子さん、もう少し右に寄っても大丈夫ですよ。左肩、少し濡れてしまいましたよね」
気が付かず申し訳ありませんと謝る太子に、傘を持つ役割を代わろうかと申し出るタイミングを失ってしまった。太子に遠慮していたのは本当だ。傘を差さずに土いじりをすることも多い澪子は、体が少し濡れてくらいで気にする性分でもない。が、太子がそのように気を遣われた以上、寄らないのもダメだよなと傘が守ってくれる範囲に左肩を入れた。
「中央の生活には慣れましたか」
「いやあムリで……あ」
屋敷の裏庭でこっそり育てている作物に思いを馳せていた澪子はやらかした。慌てて取り繕う。
「最初は田舎から大都会に出てやっていけるのか不安でしたが、最近では鳳翔の本邸や帝央学舎の雰囲気にも慣れてきました。今は中央の生活を楽しんでいます」
「嘘ですよね」
そっと横目で窺う。はっきり切り捨てた太子の表情は、嘘をつかれた?割に楽しそうに笑っている。怒っていないらしい。
「中央なんてやってられないあたし地元に帰りたい、本音はそうですよね」
「……すみません、嘘をつきました。中央とは永遠に分かち合えません」
「永遠!ははっ、永遠ときましたか!それは、澪子さんには申し訳ないことをしましたね」
とりあえず怒ってないことに安堵した。そして、先ほどと違って微塵も申し訳なく思っていないらしい太子の様子に、地元に帰る道は開拓できないことを悟った。傘を半分貸してもらったり、濡れた左肩を気にしたりする優しさがあるのなら、澪子がそもそも中央に引っ越すこととなった諸悪の根源である婚約を解消してほしいが、そうする気はさらさらなさそうだ。
「澪子さんが中央と永遠に分かち合えない理由として、やはり、農芸や園芸を自由にできないことでしょうか」
「もちろんそれも大いに関係あります!中央は土いじりができる場所が少ないんです。それに、王夫妻や義理の兄弟は、私が本家所有の農地に出入りするのも良く思ってないらしく、行動を制限されました。だから最近は学舎の庭で綺麗な花の咲く薬草を植えてみたり、本邸の使われていない裏庭でこっそり野菜を育てたり、そんな感じで鬱憤を晴らしているので、もっと自由に使える土地が欲しいです」
「その秘密の行動、私に話しても大丈夫なの?」
「あっ、このこと本家の皆様には……」
「ふふっ」
太子は笑っただけだった。
「あのう、育ち盛りの薬草や野菜の芽を抜かれることだけは避けたいので、本当にここだけの秘密にしてほしいのです」
澪子の切実な願いが伝わったのか、太子は笑顔を引っ込めて神妙な顔つきで頷いた。
「わかりました、ここだけの話にします。しかし、澪子さんは嘘がつけない性格で明るい方ですね。裏表がなく、好きなことには一直線。だからこそ、先日の六花の顔合わせの時のように、公の場に長時間出席するのは難しいかもしれませんね」
バレていたか。澪子は苦笑した。実家では、妃教育はおろか王女としての心構えなど大して教わっていなかった澪子は、中央の本家で初めてそういう上流階級らしい教育に触れた。おまけにこの性格だ。それらしく取り繕うことも危うい。先日の公的な会でも、義兄の監視下で最低限の挨拶を済ませた後、早々に退席してしまったのだ。この頃は、澪子の王女教育にやや諦めモードだった本家の皆様は、公式行事を経て「やはり本人が嫌がろうが逃げようがやるしかない」と火をつけてしまったらしい。お陰で、皆の目が厳しくなり、本邸に戻るのが億劫だ。
「そうですね、宮殿会場の妃の社交なんて考えただけで気が重いです」
しかし、太子は真顔で、
「ああ、それは大丈夫ですよ。そういうのは美琴の役割だから」
てっきり励まされるか笑われるかのどちらかだと思ったが、太子の予想外の言葉に、澪子は言葉を失った。
「美琴、さんの役割」
辛うじて出てきたのは、太子が先ほど言った言葉だった。
「はい。美琴は、生まれる前から将来の妃として相応しくあれと育てられてきました。私は、公的な社交において美琴に並び立つ者はいないと思っています」
「ずいぶん美琴さんを信頼しているのですね」
「美琴には、それこそ私が立太子に臨む以前から助けられてきました」
「大事にしないんですか?」
「え?」
「………………すみません。忘れてください、大事じゃないはずありませんよね。私妃どころかまだ王女としての立ち居振る舞いもよくわかってなくて、本家でも学舎でももう皆仕方ないわねって感じでフォローされることばかりですが、今の私のどこがダメだったのかも正直わからないときもあって。だけど、美琴ちゃんはこういうことをずっと、生まれる前からやってきたんですね」
あ、雨小降りになりましたね。もう大丈夫です、傘を貸していただきありがとうございました。そう言って去ろうとしかけた澪子の手を太子が掴んだ。
「澪子さんは、帝の妃もしくは帝配がなぜ6人いると思いますか」
「……後継者を残すため」
あるいは、政略結婚をした妃たちの中に、本当に好きな相手を紛れ込ませること。以前、太子が楽しそうに喋っていた相手は、物心つく前から妃になるべく育てられたお姫様ではなく、太子の同級生だといわれる背の高い女性だった。マーヤ、と彼女の愛称を呼んでいた。六人もいるのだから政略結婚とはそんなものだと澪子ですら思っているのだから、美琴は割り切っているに違いない。
太子は軽く頷いた。
「もちろんそれもあります。しかし、私は、一人ではできないことを補い合うためだと思います。六人の配偶者を娶る六花制度の成り立ちは、帝が必要とする六つの役割を果たすことで帝国の発展に繋げることだと思っています」
「六つの役割」
「その役割が、美琴の妃然とした社交であり、澪子さんの持つ高い神力です。だから、あなたが美琴のように社交に特化しなくて良いと思っています」
まあ、神殿の儀式に必要な所作を身につけてほしいですと付け足した太子の言葉に、澪子は追い打ちをかけられた。まだ料理やダンスがあって人と好きに喋っていい分、宮殿での社交の方が楽だ。
「雨、今度は上がりましたね」
太子は傘を閉じた。相変わらず曇天だったが、雨は完全に止んでいた。
「ハウス栽培の逆ってありますか?」
「逆?」
太子は傘を丁寧に畳みながら、
「暖かい地域で育つ食物を作る方法として、ビニールハウスや温室を利用した栽培方法がありますよね。その反対に、寒い地域で育つ野菜を暖かい土地で栽培する方法って何かありますか?」
「えっと……申し訳ありません。何処かにはあるかもしれませんが、寒暖差を利用した農業にはあまり詳しくなくて」
言いながら、澪子は気になってきた。確かに、逆の方法はあまり聞かない気がする。もし、ハウス栽培の逆があるとしたら、熱を吸収するような感じで育てる……?ぐるぐる頭の中で考え始めた澪子の耳には、それ以降の太子との話を記憶していない。
気がつけば、目的地に辿り着いていた。
「傘を貸していただきありがとうございました」
今度こそお礼を言った澪子に、太子は笑いを噛み堪えながら、
「入内後の住まいになる宮、庭園ではなく農園にしてもいいですよ」
と言い、澪子が思わずガッツポーズをしている姿を目に焼き付けて去っていった。
今日のテーマ
《相合傘》
昼休みまで晴れていたのが嘘のように、5時間目の終わり頃から曇り出した空は放課後になる頃には完全に雨模様になっていた。
傘を持ってきていない者達は、諦めて濡れて帰る覚悟を決めて駆け出したり、家族に迎えを頼む電話をしたり、最終下校の時間まで校内で時間を潰して雨が止むのを待つことにしたりと、その選択は様々だ。
天気予報をチェックしてきた僕はしっかり傘を持ってきていて、そんな級友達を少し気の毒に思いながら昇降口で靴を履き替える。
仲の良い友人達も今日はみんな傘を持ってきていたようで入れてくれと頼まれることもない。
そんな僕の目に、ふと、生徒用玄関の軒下で空を見上げる女子の姿が目に止まった。
あまり話したことのない、同じクラスの子だ。
「傘、忘れたの?」
「まあ、そんなとこ」
困り顔で肩を竦める様子を見て、ちょっと迷う。
特に親しいわけじゃないけど、彼女の家は通学路の途中にあることを僕は知ってる。
僕がここで「入れてあげようか」と声をかけたら、彼女は濡れずに帰ることができるだろう。
でも、それを誰かに見られたら、絶対にからかいの種にされる。
彼女は男子の間で密かに人気があって、対する僕はと言えばクラスでも影の薄い陰キャで。
たとえそれが事実であったとしても、いや事実だからこそ、そういう噂の矢面に立たされるのは正直言って全力で避けたい。
そう、僕もまた彼女のことをいいなと思っている内の1人だったから。
一向に止む気配のない空を見上げながら彼女がため息を吐く。
途方に暮れたようなその横顔を見たら、やっぱりこのまま知らんぷりすることはできないなと思う。
そうなると選択肢は限られる。
「傘、良ければ僕の使って」
「え? でも……」
「家までダッシュすれば10分くらいだし」
「駄目だよ! 風邪引いちゃう!」
「女の子って体冷やすの良くないっていうじゃん。こっちなら大丈夫だから」
幸い傘は無地の水色で、女子が使っても違和感はない。
だから僕は傘を押しつけてそのまま雨の中へ駆け出そうとしたんだけど、それより彼女が腕を掴んで引き止める方が僅かに早かった。
「それなら一緒に帰ろう」
「いや、でも、それは……」
「わたしが傘借りたせいで風邪引かせたら責任感じちゃうから。それくらいなら一緒に帰ろう。ていうか、一緒に入れて帰って。お願い」
両手を合わせて拝むように頼んでくる。
気になる女の子にこんな風にお願いされて、どうしてすげなく断ることができるだろう。
でも変に噂されたりするのは、僕も困るけど、彼女だって嫌なんじゃないだろうか。
ためらい、逡巡する僕に、彼女も僕が嫌がっているわけじゃないということに気づいたらしい。
「もしかして、誤解されると困る人がいるとか?」
「えーと、僕はそういう相手はいないけど、そっちは変に噂されたら困るんじゃないかなって」
「なんで?」
「だって、僕、こんなだし」
「こんなって?」
「陰キャだし、その……女子って僕みたいなのキモいって思うんじゃないかなって」
「は? 全然そんなことないよ! むしろ逆だし!」
「え、なんて?」
「ううんごめん何でもない!」
めちゃくちゃ慌てたように彼女が首を振る。
何だかよく分からないけど、キモいとまでは思われてないようでそのことにこっそりホッとする。
「うち、一応通学路の通り道だよね? 遠回りさせちゃったりとかじゃないと思うんだけど」
「あー、うん、そそれはそうなんだけど」
「何だったら寄ってってくれたらお礼にジュースくらい出すし」
「いや流石にそれは」
「じゃあ家まで入れてってくれるのはいい?」
あれ?
何だか一緒に帰る流れになってる?
どうしたものかと考えるけど、そうじゃなくても口下手な僕が、女子に口で勝てるはずもなく。
「もし誰かに何か言われたら、私が無理矢理お願いして入れてもらったってちゃんと言うから!」
「う、うん、そこまで言うなら……」
身を乗り出すようにしてそこまで必死に懇願されたこともあり、僕は仕方なく頷いた。
緊張するし、本当に大丈夫かなって心配もあるけど、だからって嫌なわけじゃない。むしろ嬉しいまである。
あまり目立つようなことはしたくないけど、誰かに何か言われたらその時はその時だって開き直ろう。
そうして僕たちは1本の傘の下、寄り添うようにして歩き始める。
彼女が少しでも濡れなくて済むように、少しだけ彼女寄りに傾けて。
触れる腕から伝わる体温とか、時々ふわっと鼻を擽るシャンプーの香りとか、蒸し暑さのせいばかりじゃなく火照る頬とか、そんなことばかり意識して、心臓が全力疾走したときみたいにドキドキしてくる。
どうかこのことが彼女に気づかれませんように。
祈るように思いながら、僕はその10分程度の道のりを、緊張と幸せを噛み締めながら歩いていく。
彼女の鞄の中に実は折り畳み傘が入っていたことや、これが彼女なりの拙いアプローチだったということ僕がを知るのは、それからだいぶ経ってからのお話。