ののの糸糸 * Ito Nonono

Open App

No.53『彼のとなり』
散文/恋愛/掌編小説

 私と彼との身長差は、15センチもある。ちなみに、彼が162センチで、私は177センチだ。
 だから、彼は一緒に帰る時も隣を歩いてくれない。幼なじみでお隣さんの彼と帰るのは小学生の頃からの習慣のようなもので、一緒に帰ることができるだけで嬉しいと言えば嬉しいのだけれど。
「ちょっと待ってよ」
 足の長さも私のほうが長いはずなのに、彼はいつもズンズンと前を行く。振り返りもせず、ただ、距離が空きすぎると角で待ってくれていたり。
「遅い」
「ジロちゃんが速いだけじゃん」
 高校生になって、初めてクラスが別れた彼との貴重な時間。
「あ」
 降り出した雨に空を見上げたら、
「ん」
 ぶっきらぼうに差し出されたビニール傘。

 私はその手を取り、彼の手の上から傘の柄を握りしめ。身を屈めて彼の隣に立ってみた。

お題:相合傘

6/20/2023, 8:21:43 AM