「あら、あなたも?」
「ええ。貴女もですか」
とある喫茶店の軒下で出会った。
二人は共に雨避けを探していた。
二人して軒先から滴る雫を眺めていると、背後に明かりがついた。
振り返ると、喫茶店のマスターらしき髭をたくわえた初老の男性がドアを開けて立っていた。
「こんばんは。雨宿りですか?」
マスターの言葉に二人は無断で軒下を借りたことを謝罪し、もう少し借りられないか尋ねた。
マスターは二人に少し待つよう言い、奥から傘を一本取ってきた。
「一本しか無くて申し訳ないが、こちらをお貸ししましょう。二人で差していきなさい」
二人は遠慮し合ったが、行き先が同じ駅なことが分かると、マスターの後押しもあり二人で傘を借りることにした。
二人を見送った後、喫茶店の明かりは静かに消えた。
駅までの道行で、二人が実は同じような悲しみを持った者同士だった話は、また今度。
哀合傘/6/19『相合傘』
コーヒーをご馳走してもらうver.はいつか。
6/20/2023, 9:34:11 AM