/9/14『空白』
からりと晴れた空は
隠されていた今までの分を取り戻すかのように
太陽がサンサンと照っている
昨日までの大雨が嘘のようだ
風が重たい雲までも持っていってしまったかのように
雲が見当たらない
「よし、お布団干そう!」
ジメジメした湿気とも
これでしばらくオサラバだ
/9/13『台風が過ぎ去って』
コーヒーカップの底に残された茶色い砂糖みたいに
私の心は置いてけぼり
無機質に閉められたドアは
今後会うことのない2人を示唆している
「自分のマグカップぐらい、持っていけばいいのに」
/9/12『ひとりきり』
きみは光の三原色みたいな人だ。
情熱的で、
優しくて、
冷静でもある。
そしてそんな風でありながら、純粋無垢である。
きみは不思議な人だ。
艶やかで
穏やかで
淑やかさも併せ持つそんな人なのに。
三色を混ぜた中心の真っ白。
すべての性格を打ち消しているような清らかさは、君の不思議さを増長させている。
/9/11『Red,Green,Blue 』
「どこがいいの? あんなやつ」
私が好きな人の話をすると、8割の人に言われる言葉。
彼は一般的に見ると、性格まあまあ、顔はそこそこらしい。
そんなことないのに。
私にとって彼は、王子様みたいに優しくて自分を持ってて、とっても素敵な人!
そう言い返すように伝えると、仲のいい友人からは
「恋愛フィルターがかかってるから、そう見えるのよ」
と言われた。
この気持ちはフィルターなんてかかってないのに。
/9/10『フィルター』
「大好きな人がいるの!」
「あの人のあんなところがカッコよくて!」
「優しいだけじゃなくてユニークなところがいいんだよね」
ことあるごとに話される『好きな人』の話。
私には今まで好きな人なんて出来たことがない。
そもそも好きって?
寝食も出来なくなってしまうほど溺れてしまう感情を、私はまだ知らない。
「あなたは好きな人いないの?」
だから聞かれた時は、いつもこう答える。
「うん、今は自分のことで手いっぱいで」
『好きな人』を持つ仲間にはなれない。
/9/9『仲間になれなくて』
雨が降っている。
ザァァァとそれなりに強い雨がコンクリートを打ちつけている。
だんだん深くなっていく水たまりを踏んだ靴が、バシャリと水をはねた。
「はぁ、はぁ……」
雨に濡れたのか汗なのか分からない雫が彼の頬を流れていく。
傘はさしているというのに、走っているせいでその足元や肩は濡れていた。
(まったく、どこへ行ったんだ……!?)
探しているのは、少年だ。
野良猫のように勝手に居着いて、ふらっと消えた正体不明の少年。
彼を拾った日も、こんな雨の日だった。
(勝手に居なくなったんだから、それでいいだろうに)
なのに、自分は彼を心配して探し回っている。
それは彼を保護していたからというだけではない。
「見つけたらメシ作らせてやる……!」
ここ数日彼の作る食事に胃袋を掴まれてしまったからかもしれない。
「どこにいんだよ!」
少年を探すにあたって、ようやく名前も知らないことに気がついた。
/9/8『雨と君』
名前を呼んだら、振り向いた。
音もなく、スカートを揺らして。
真っ白な髪が動きに合わせてさらさらと流れた。
「……なに」
あまりの美しさに見惚れて声を失っていた私は、その声でようやく我に返る。
「え、あっ、あの、もう下校時刻、だから……っ」
たかが下校時刻を告げるためだけに盛大に噛んだ。
私の舌はまだ時間が止まったままだったらしい。
「……」
彼女は何も言わず、カバンを持って教室を去った。
夕暮れの太陽が、私以外誰もいなくなった教室を照らす。
彼女がいた辺りの机の上で、きらりと何かが光った。
不思議に思って近寄ってみると、一本の髪の毛だった。
絹糸のように白い。きっと彼女の髪の毛だろう。
私はそれを拾い上げると、何故か捨てることが出来ずにじっと太陽に透かして見つめていた。
「おい、なにしてる。下校時刻だぞ」
先生に声をかけられるまで。
驚いて指を離してしまった手から髪の毛ははらりと落ち、床のほこりと同化してしまった。
/9/7『誰もいない教室』