バンジージャンプだって
命綱があるから飛べるでしょ?
死ななきゃやすい
勇気を出して、飛べ
/7/20『飛べ』 (自戒を込めて)
「なんでもない日バンザイ☆」
昔とある映画で聞いた
今日は誰かの誕生日であり
誰の誕生日でもない
君にとってどうでもいい日は
あなたにとって特別な日
ワタシにとっては?
なんでもない日
今日の毎日こそが特別な日
/7/19『special day』
お姉ちゃんの膝の上で眠るあの子
その膝の上で眠るぼく
お姉ちゃんは本を読んでいる
木陰でそよそよ揺れる葉のしたで
あの子は眠る
あの子は落ちていく 夢の中へ
ぱちん、と弾けたようにあの子が起きた時は
木の葉が落ちてきた時だった
飛び起きて跳ねたあの子の膝に驚いたぼくは
にゃあ、と声を上げた
/7/18『揺れる木陰』
本日、真夏日。
30度なんてとうの昔に越え、額から汗を流しながら買い物袋を持つ手を握り直す。
道の向こう、信号待ちの車のボンネットからは、ゆらゆらと陽炎が見える。
(あぁ、見るんじゃなかった。さらに暑い)
ゆらゆらと景色の影が揺れる。
ふっと、影がろうそくの火のように揺れた。
(このまま。このまま溶けて消えてなくなりたい……)
ふと、そんなことを思った。
「え……?」
思わず声が出た。歩いていた足が止まる。
落ち込んでいるわけでも、何か病気をしているわけでもないのに、ふいに消えてここからいなくなりたいと思ったのだ。普段そんなことは微塵も思わない。うつなど自分とは無縁だと思うくらいに元気な自分が。
(おいでよ、と手招きされているように思えた。誰に? 誰でもない何かに――?)
それは何だったのか。何も見えない。声も聞こえない。ただ、突然頭に言葉が浮かんだ。
(ホラー……?)
浮かんだ考えを取り消すように、ぶんぶんと首を振った。暑い中首を振ったせいか、少しくらっとした。
「いやだいやだ、暑いからそんな滅入ったこと思うんだ!」
誰に言うでもなく、声に出した。
『何か』に意識を乗っ取られないように。
「アイスでも食べよ」
ちょうど300メートルほど先にコンビニの看板を見つけた。休憩でもしよう。暑い中ずっと歩いていたから、あんなことが起こったのかもしれない。このまま熱中症にでもなったら大変だ。
意識せず競歩のように急ぎ足になった。『何か』に取り憑かれまいとするかのように。
「陽炎」/7/17『真昼の夢』
たとえば、喧嘩をした時は
ココアにクッキーを添えて仲直り
たとえば、二人で外を歩く時は
何かいいことを三つずつ見つけること
たとえば、ワインを買ってきた日は
おつまみのお返しで、夜に仲良くする合図
たとえば、金曜の夜にポップコーンを買ってきたら
ソファで映画を二本見る
たとえば、休日の昼間は
チキンラーメンに卵を落としたのがお昼ごはん
ありきたりだけれど
私たち二人だけの密やかなルール
/7/16『二人だけの。』
蝉の声。
道に群がるトンボの群れ。
アイスに素麺、スイカに海。
夏を彩るものは多数あれど、やっぱり私はあれ。
大好きな人との線香花火。
/7/15『夏』
「あのっ、実はあなたのこと、好きです……!」
ベタといえば聞こえはいいが、定番中の定番、校舎裏に呼び出された翔子は、クラスの八尋に告白されていた。しかも、
「あのね、実はも何も、わたし、あなたがわたしのこと好きって知ってたわ」
「えぇっ!?」
とても緊張していただろうに、出鼻をくじかれた八尋は、真っ赤な顔になりながら真っ青になっていた。
翔子は、
(人ってこんな顔色出来るんだ)
と感心しながら、
「でもね、付き合うことは出来ないの。わたしはあなたのこと好きでもなんでもないから」
と断った。
「おっ、お友達からでも」
「既にクラスメイトじゃない」
「そうだけど、そうじゃなくてっ……」
八尋はしどろもどろしながらも食い下がったが、無情にも下校時刻を告げるチャイムが鳴った。
翔子は「じゃ、また明日」と手を振り、後方で待っていた友人たちと帰っていった。
「翔子さん……」
うなだれる八尋を夕焼けが照らす。
しばらく俯いていた八尋だったが、その内顔を上げ、校舎裏の影を振り向いた。
「どうだった!?」
振り向いた先の茂みから、三人の男子生徒が出てきた。一人はスマホを構えている。
「バッチリ!」
スマホを構えていた男子が、サムズアップをして答える。
「いや〜、名演技!」
「凄いな。あれ、ホントに自分のこと好きだと思ってるんだろ?」
「そりゃそうだろ。そうなるように演技してたんじゃん!」
「まんまと騙されてるな、あれ。ちょっと可哀想なくらい」
「振ってるんだからプラマイゼロだろ。むしろ「わたし好かれてるわ」ってプラスなんじゃねーの?」
わらわらと四人が集まって結果報告をしている。
八尋含むこの四人、実は三ヶ月も前から翔子を謀っていたのだ。
自分を好きだと誤解させるように行動をし、告白をした。上手くいけば付き合って騙し続ける予定だったのだが、振られたのは互いにとって幸か不幸か。
すべては役者を目指す八尋のためという大義名分を得た、立派なイタズラだ。
「しかし罰ゲームのせいで、もう告白させられるなんてビビったわー。ホントはもうちょっと好きにさせてから告るつもりだったのにさー」
「可哀想なことすんなよ」
「いや、でも付き合えたらアリっちゃアリだろ。結構可愛いじゃん?」
「何にしろ八尋、三ヶ月お疲れさん!」
四人は口々に今回の計画の成功を労いながら、鞄を持って校庭に向かっていった。みな笑顔だった。
四人がいた後ろに、一人の女子生徒がスマホを構えていることを、彼らは気づいていなかった。。
/7/14『隠された真実』