箱庭メリィ

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4/4/2026, 9:48:13 AM

ひとつだけ。
ひとつだけ好きなものを挙げて。

それが僕だったらいいな。


「好きなものなあに?」
「え?こんにゃく!」

喫茶店で問いかけて返ってきた答えに、コーヒーを噴き出しそうになった。
脈絡のない唐突な質問がいけなかったのだろうか。

「えっと、そういう意味じゃなくて」
「ん?どういう意味?」
「ん、やっぱいいや。こんにゃくね」

きょとんとした顔で尋ねられ、質問の意図を説明するのも気恥ずかしくなった僕は、そのまま受け流してしまった。

「今度群馬にでも行こうか」


4/3『1つだけ』

4/3/2026, 4:00:23 AM

僕の大切なもの。
カラコロ鳴るおもちゃ。
ピンクのお水入れ
僕を小さくしたようなぬいぐるみ。
夕方のお散歩の時間。
お散歩の時間に会うメーちゃん。

そして僕のご主人!
頭を撫でてくれて抱きしめてくれる、優しいご主人!

4/2『大切なもの』



「好き!」
「え、ほんと?」
「付き合って!」
「ほんとに?」

告白をした相手が、面白いくらいに顔を赤くして尋ね返してきた。

昼休み前の会議終了後。早めに終わった会議に嬉々とする面々を横目に、部屋に戻る前の目当ての彼を捕まえて告白した。
もちろん嘘だ。罰ゲームで彼に告白するよう言われたのだ。

「う、嘘じゃないよね?」
「ほんとだよ」

内申にんまりしながら、恥じらいを演出して彼を見上げる。
自販機の上にある黒い時計が正午のベルを鳴らした。

「好きなの。付き合って」

昼休みに入って各部屋から出てきた社員のざわめきが聞こえだす。
誰かに見られる前に真実を話さないと。彼の返事を待つ前に打ち明けようと口を開くと、

「って、ほんとはウッソ――」
「じゃ、付き合ってもらうからね」

彼は真剣な顔で言うと私の手を強く握ってきた。
今度は私が顔を赤くする番だ。
奥手な彼がこんなに積極的に手を握ってくるなんて。そもそもタイプじゃないから嬉しくもないし。
私は慌てて訂正する。

「え?嘘だよ?エイプリルフールだよ?」
「うん。だから僕確認したよね?嘘じゃないよねって」
「そう、だからウソ」
「エイプリルフールってね、午前中までなんだよ。あなたが僕に付き合ってといったのは、午後になってからだ」
「ええ、ウソウソ!聞いてない!」
「僕はちゃんと確認したし、君も答えた。とにかくも、これで僕たちは恋人同士だ。じゃ、まずランチデートでもしにいく?」

ぎゅっと手を繋がれたまま、外に向かうエレベーターホールの方へぐいぐいと進んでいく。
ちらちらとランチに向かう別の社員たちにすれ違いざまに見られた。
やばい、こんなやつと恋人同士だなんて知られたくない。ありえない。

振りほどこうとするにも彼の握る手の力は強く、私は引っ張られるようにエレベーターの前に立つ。

「今日ノー残業デーだったよね。君もこないだ予定はないと佐藤さんに愚痴ってたよね。このまま晩もデートしようか」

エレベーターホールの前で手を繋いだまま、数人の社員がいる前で彼は宣言してきた。同じ部署の人間がたまたまおり、驚いたようにこちらを見ている。
私の顔面は蒼白になった。


4/1『エイプリルフール』



2人で歩くバージンロード。
腕を組むなんてこれが最初で最後なのかな、なんて思う。
昔はこの腕によくぶら下がっていたのに。

ああ、これで明日から――いや今日この瞬間からこいつのものになるのか。

どうかこの子が、この2人の歩む道が幸せでありますように――。

3/31『幸せに』



「おはよう」
「おはようございます」

廊下ですれ違いざまに挨拶を交わす。
いたって普通に見えたはず。

言葉を交わすことはない。
交わす必要もない。
仕事上の連絡はチャットで済むし、対面する用事は後輩に任せている。

周りからはいい上司に見えているに違いない。
気は遣えるし、周りのことをよく見ており声もよくかけている。仕事も出来る。
だが、私は彼が大嫌いだ。
彼と本当は挨拶すらしたくないのだ。

それでもするのは、大人だから。社会人だから。

今日も何気ないふりで会釈しすれ違う。
私の背後で爽やかに別の社員に挨拶する彼の声が聞こえた。


3/30『何気ないふり』

3/30/2026, 9:55:09 AM

「大好き」
「僕も」
これで結ばれるのがハッピーエンド

なら、秘めた好きを気付かれないまま結ばれた場合は
ハッピーエンド?

きみは僕のことが好きだけど
僕がきみのことを好きなことは
バレてはいけない

3/29『ハッピーエンド』

3/28/2026, 11:39:54 AM

その赤い瞳で見つめられると、私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。

あなたはただじっと見つめているだけかもしれない。
でも私はその目に射止められて、その場から微動だに出来なくなる。

ルビーのような瞳。
少しツリ目の中にある紅玉。
あなたは私がそうして顔を赤くしているのを見て、ニヤリと笑うのだ。

釣り糸で意のままに操る人形師のように。
もちろん人形は私。

いつか。
いつか動けるようになったら言いたい。
「あなたのことが好きです」と。

今のままじゃ、言葉も紡げずに見つめあうだけで終わってしまうから。

3/28『見つめられると』

3/28/2026, 2:56:22 AM

とくんとくんと鼓動を打つ心臓
胸に手を当てるとたえず動いている

人は一生分の心拍数が決まっているという

自分のものだというのに
制御の効かないこの心臓は
一生分の鼓動の数が決まっているというのに
彼を見た瞬間に
ドキドキと勝手に鼓動を速めるのだ

死に急ぎたくなんてないのに
彼を見る度に私は鼓動を速めてしまう

ああ この調子だと
私は60歳まで生きられるのだろうか

3/27『My Heart』



隣の芝生は青いというけれど
青いものは青い

ないものねだりだとわかっているけれど
願わずにはいられない

自分の足で野を駆け回る

先天性で元から足がない僕には
一生分からない自由だ

3/26『ないものねだり』

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