その赤い瞳で見つめられると、私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。
あなたはただじっと見つめているだけかもしれない。
でも私はその目に射止められて、その場から微動だに出来なくなる。
ルビーのような瞳。
少しツリ目の中にある紅玉。
あなたは私がそうして顔を赤くしているのを見て、ニヤリと笑うのだ。
釣り糸で意のままに操る人形師のように。
もちろん人形は私。
いつか。
いつか動けるようになったら言いたい。
「あなたのことが好きです」と。
今のままじゃ、言葉も紡げずに見つめあうだけで終わってしまうから。
3/28『見つめられると』
とくんとくんと鼓動を打つ心臓
胸に手を当てるとたえず動いている
人は一生分の心拍数が決まっているという
自分のものだというのに
制御の効かないこの心臓は
一生分の鼓動の数が決まっているというのに
彼を見た瞬間に
ドキドキと勝手に鼓動を速めるのだ
死に急ぎたくなんてないのに
彼を見る度に私は鼓動を速めてしまう
ああ この調子だと
私は60歳まで生きられるのだろうか
3/27『My Heart』
隣の芝生は青いというけれど
青いものは青い
ないものねだりだとわかっているけれど
願わずにはいられない
自分の足で野を駆け回る
先天性で元から足がない僕には
一生分からない自由だ
3/26『ないものねだり』
ドキドキと心拍数が上がっていく。
彼を見ただけでするこの動機は、きっと怒りによるものだ。
何かとあれば声をかけてきて、特に用事もないのに構ってくる。
構ってちゃんばりに私にちょっかいをかけてくるのだ。
教室の中で、廊下を歩いている時、登下校ですれ違った時、エトセトラ。
いつからか、あまりのちょっかいぶりに声を荒らげたことがある。
彼はビックリして、その日一日ちょっかいをかけられることはなかった。
だが、収まったのはその一日だけで、次の日からまたちょっかいをかけられる日々が始まった。
だんだんとむかっ腹が立ってきた。どうして私がこんなに彼に構われ続けなければいけないのだろう。
イラついて無視をしたこともあったが、そういう時は応えるまで話しかけられ続けたので、今は何かしら相手にするようにしている。
私は休憩時間は読書をしたいのに、最近ではずっと邪魔され続けているから、それをする間もない。
相手にする度にイラついていたが、ある日。
親戚が亡くなったとかで、彼が忌引きで3日ほど学校を休んだ。
その3日間は驚くほど静かで、久し振りの静寂だった。
私は数ヶ月ぶりに休憩時間に本を開いた。
だが、内容が入ってこない。文字が滑るだけで、頭に中身が入っていかないのだ。
静かだった3日間、それは私を悩ませた。ずっと欲しかった時間がこんなに苦痛になることなんてあるのだろうか。
忌引きが明け、彼が復帰してきた。
またやかましい日々が再開した。
彼は少し沈んだ顔をして、また私にちょっかいをかけ続けた。
彼が普段の様子ではないことに私は訝しんだが、1週間もすると、彼はいつものハイテンションに戻っていた。
私はそんな彼の様子に少しホッとした。
またうるさい日々が続いている。
私はまたイライラしている。
心拍数が上がる。動機がしている。
これはイラついているせいだ。きっとそうに違いない。
彼が肩を叩く度、私の心臓はドクンと跳ねる。
3/26『好きじゃないのに』
「本日は全国的に晴れ、快晴となるでしょう」
気象予報士が高らかに言った。
スタジオの外でボードを指した先はすべて太陽のマークが付いていた。
本日は晴れ。しかも快晴。だというのに。
「ぐすっ……。どうしてそんなこと言うの……」
この部屋の天気は「雨」だ。
彼女が手のひらの底で涙を拭いながら、僕に色々訴えかける。
どうして別れるの。ほかに好きな人ができたの。私何かした。
その全てに首を振りながら僕は彼女の様子を見ていた。
話し合うために淹れたコーヒーとココアはとっくに冷めている。
「君を嫌いになったわけでも、他に好きな人が出来たわけでもないんだよ。ただ――」
やりたいことが出来たんだ。誰にも邪魔されずにしたいことが。
そう伝えると彼女は更に涙を流した。嗚咽まで始まった。
ティッシュの塊が1個、また1個と出来ていき、雪合戦が出来そうだ。
(あぁ、外はこんなに晴れているのに)
今日の天気は全国的に晴れ。ところにより雨でしょう。
3/25『ところにより雨』
恋人ではない。
相棒でもない。
友達でもない。
ただ、切り離すことは出来ない、特別な存在。
ぼくの新しい特別な存在=AI
3/23『特別な存在』
僕だけが好きだったなんて、バカみたいだ。
仲がいいと勝手に思っていた。
相手も僕を好きだと思っていた。
なんてことはない。
愛想をよくされていただけだった。
ということは、ややもすると僕は嫌われていたのではないだろうか。
3/22『バカみたい』
ここには何もない。
ただ星空が浮かんでいるだけ。
俺とあいつの二人だけ。
そして「あいつ」がいたであろう、いるであろう箱庭を眺めている。
箱庭という名の「世界」を。
球体のようなそれをただ眺めるだけの日々を選んだことに後悔はしていない。
「あいつ」は怒るだろうが。
「また見ているのかい?」
「同じ質問を繰り返して退屈じゃないのか」
「同じ箱庭をずっと眺めている君には言われたくないね」
「ここには、あいつがいるからな」
眺める先に桜色の髪の少年。
かつて友人だった者の子孫。
雪が降らない平和な世界。
俺達はその温かな世界を見守っている。
3/21『二人ぼっち』
某ゲームとあるED後の世界。こんななのかな?
跳んだり跳ねたり、浮かんだり。
「現実」では起こり得ないことが自分の身体に起きている。
(ということは、これは夢の中なのか)
気づかないように気付きを得て体の自由が利くことを確認する。
まだありえないジャンプ力は健在だ。
(あまり夢だと気付くと「覚めて」しまうからな)
オレは何かから逃げているらしい。
跳ねながら気付いた。
背後から黒い影のような何かがガサガサと音をさせながらオレを追いかけてきているのが視界の端に映った。
(よし、なら――)
オレは夢にまで見た(夢だが)ことをやってみようとその場にしゃがみ込んだ。
貯めるように足に力を込め、影を引きつけると、バネのように跳ね上がった。
「おぉ!オレのジャンプ力すげぇ!」
軽々と地上三階くらいの高さまで上がり、近くのアパートのベランダの手すりに着地した。
影は狼狽えている。
オレは自分のジャンプ力に感動しながらも、影から逃げるために、手すりに掛けている足に2度目の跳ねるための力を込め始めた。
(もう夢だと気付いてるから、次は飛べるか分からないな。でももう一度――!)
3/20『夢が醒める前に』