風邪でもないのに熱があった気がした。
競争したあとでもないのにドキドキする。
となりのお兄ちゃんに、初めておばあちゃんちに一人で行ったことを報告した日。
「そっかぁ。よくがんばったね」
と頭をなでてくれたあの日。
あの日私は恋をした。
たぶん、あれが初めての恋だ。
まだ何も知らない、やわやわの初恋。
5/7『初恋の日』
『明日世界が終わるなら』
幾度考えたことだろう。
明日、俺たちの世界が終わるなら。
それはこの世に平和が訪れたということ。
俺たちが戦わなくて済むということ。
けれどそれはすなわち――。
「今までよく頑張ってくれました。では、解散の儀式を行います」
俺たちの世界が、主との毎日が終わるということ。
俺たちは――俺は、主がいない世界なんて、考えられるのだろうか。
主がいない世界なんて、耐えられるのだろうか。
5/6『明日世界が終わるなら……』
君と出逢ってから、明日が来るのが怖くなくなったんだ。
太陽が昇ることに背を向けて、布団のなかで丸まってたあの頃が嘘みたいだ。
「太陽が眩しいなら、私が遮る雲になってあげる」
普通は「きみの太陽になってあげる」とかじゃないのかなぁ、なんて思ったけれど、その少し後ろ向きな前向きさが僕に勇気をくれたんだ。
光なんてまぶしいものじゃない。
僕が布団から出るための勇気をくれたひとつの灯。
手を差し伸べるわけでもない。
くぐもった声が聞こえた優しい灯。
毎日じゃない。少し日を空けて。僕が外を嫌がらないように。少しずつ、少しずつ。
そうして見た君の顔は、天女のようだった。
5/5『君と出逢って、』
耳を澄ますと、あなたの声が聞こえた気がした。
きっと幻聴だ。
だってもう聞こえることはないのだから。
あなたの幻聴を聞くまいと耳を塞ぐと、今度はメッセージの通知音が聞こえた気がした。
私にメッセージをくれるなんて、親かあなたしかいなかったのに。
きっとこれも幻聴だ。
私は震えるはずのない伏せたスマホを見ないふりした。
5/4『耳を澄ますと』
庭に大きなつつじの木があった。
子供の頃、僕とショウちゃんはその中に秘密基地を作った。
お菓子やおもちゃを持ち込んで、大人には見つからないように。
きっと大人たちは知っていたのだろうけど、あえて知らないふりをしてくれていたのだと思う。
つつじの木は春になると花をつけ、僕たちはその花の蜜を吸っていた。
たまに蟻が入り込んでいたりして、小さな秘密基地のなかでパニックになったっけ。
小学生も高学年になると、どちらか一人でも秘密基地に入るのが厳しくなり、最初は秘密のものを持ち込む共有場所になっていたが、その内それもなくなった。
いつからか遊ばなくなり、ショウちゃんとはすれ違っても会話もしなくなった。
それでも、つつじの木の下、あの頃の二人だけの秘密はまだ生きていると思うから、僕は秘密基地に埋まった期限のきた「たいむかぷせる」を未だ取り出せないでいる。
5/3『二人だけの秘密』
世界にひとりぼっちだと思った。
きみが手を差し伸べてくれた。
ただそれだけで。
きみの優しさだけできっと、僕は生きていける。
明日も世界が怖くなくなる。
5/2『優しさだけで、きっと』
色鉛筆のふたを開ける瞬間が好きだ。
多色であればあるほど、開けるときのわくわくが止まらない。
開ければ目に入ってくる様々な色。
色ごとに性格があり、それぞれが自分を使ってと主張してくる。
それらを眺め、「目が合った」色を使う。
一色使い終わると、次は自分だと新たな主張が始まる。
それらを使ってこの塗り絵を完成させていくのだ。
ぼくのカラフルな世界。
5/1『カラフル』
眠っている間だけ、あなたに会える。
夢の中、花畑に佇むあなた。
走っていって抱きつく。
現実ではとてもこんな事出来ない。今は出来ないけれど――。
いつかきっと、夢ではなくなるように。
4/30『楽園』
ふわふわと風に乗って鳥の羽が飛んできた。
羽毛布団の中に入ってそうなその羽は、軽やかに遊び浮かんでいる。
(いいなぁ、僕もあんな風に風に乗ってふわふわしてたいなぁ)
そう思った時だった。
突風が吹き、自分の意思など少しも利かないような速度で羽は彼方に飛ばされていった。
(自由とは――)
風に乗るということは、風に命運を任せることなのだと羽を見て思った。
4/29『風に乗って』
今。
一瞬。
束の間。
刹那。
すぐに過ぎてしまう時間。
瞬きをする間の時間。
君が僕に笑いかけてくれた気がする。
刹那の幻だったのだろうか。
気付いたときにはもう、君はいつもの仏頂面に戻っていた。
4/28『刹那』
俺の生きる意味。
なんだろうな。
俺の生きる意味?
うーん。
特に思いつかないけど、
こうして人の身を得たってことはさ、
あんたを守り抜くためにここにいるんだと思うよ。
だから、今はそれが俺の生きる意味なんじゃないのかな?
4/27『生きる意味』
どちらが善で、どちらが悪か。
それは立場の問題に他ならない。
僕から見ればきみは悪だし、
きみから見れば僕は悪だ。
そしてあの人は唯一の善だ。
きみから見ても、僕から見ても、
真っ白なあの人は、無垢なあの人は、善だ。
あの人を守るために僕たちは、
互いを悪とし戦っている。
4/26『善悪』
ひらん、ぴかっ。
音にしたらそんな感じだろうか。
空を一閃の光が裂き、闇に消えていった。
「流れ星だ!お願いごとしないと!」
「流れ星ぃ?そんなのに願って何になるんだ」
師匠がタバコをつまみながら僕に煙を吐きかけた。
「ゲホッ、何に願っても叶わないのなら、刹那の流れ星にくらい願ったっていいでしょう!」
「あぁん?んなもんは自分(てめぇ)で叶えるもんなんだよ」
師匠はまた僕に煙をぷはぁと吹きかけた。
僕は咳き込んで涙目になりながら、反抗するようにもう一閃光った流れ星に心のなかで願い事を呟いた。
4/25『流れ星に願いを』