ふわふわと風に乗って鳥の羽が飛んできた。
羽毛布団の中に入ってそうなその羽は、軽やかに遊び浮かんでいる。
(いいなぁ、僕もあんな風に風に乗ってふわふわしてたいなぁ)
そう思った時だった。
突風が吹き、自分の意思など少しも利かないような速度で羽は彼方に飛ばされていった。
(自由とは――)
風に乗るということは、風に命運を任せることなのだと羽を見て思った。
4/30『風に乗って』
今。
一瞬。
束の間。
刹那。
すぐに過ぎてしまう時間。
瞬きをする間の時間。
君が僕に笑いかけてくれた気がする。
刹那の幻だったのだろうか。
気付いたときにはもう、君はいつもの仏頂面に戻っていた。
4/28『刹那』
俺の生きる意味。
なんだろうな。
俺の生きる意味?
うーん。
特に思いつかないけど、
こうして人の身を得たってことはさ、
あんたを守り抜くためにここにいるんだと思うよ。
だから、今はそれが俺の生きる意味なんじゃないのかな?
4/27『生きる意味』
どちらが善で、どちらが悪か。
それは立場の問題に他ならない。
僕から見ればきみは悪だし、
きみから見れば僕は悪だ。
そしてあの人は唯一の善だ。
きみから見ても、僕から見ても、
真っ白なあの人は、無垢なあの人は、善だ。
あの人を守るために僕たちは、
互いを悪とし戦っている。
4/26『善悪』
ひらん、ぴかっ。
音にしたらそんな感じだろうか。
空を一閃の光が裂き、闇に消えていった。
「流れ星だ!お願いごとしないと!」
「流れ星ぃ?そんなのに願って何になるんだ」
師匠がタバコをつまみながら僕に煙を吐きかけた。
「ゲホッ、何に願っても叶わないのなら、刹那の流れ星にくらい願ったっていいでしょう!」
「あぁん?んなもんは自分(てめぇ)で叶えるもんなんだよ」
師匠はまた僕に煙をぷはぁと吹きかけた。
僕は咳き込んで涙目になりながら、反抗するようにもう一閃光った流れ星に心のなかで願い事を呟いた。
4/25『流れ星に願いを』
ひとつ、一日一回鏡を見ること
ひとつ、一日一回笑顔を作ること
ひとつ、大好きと言ってあげること
ひとつ、自分を大切にしてあげること
自分で自分を傷つけても、炎症を起こすだけ。
どうせ他人に傷つけられるのだから、自分だけでも自分を大切に。
なんて綺麗事、出来れば苦労はしないのだ。
そう簡単な話ではない。
4/24『ルール』
『今日は雲ひとつない晴天、快晴でしょう!』
と、言わんばかりに始まった一日だったのに……。
いつの間にか雨模様。
あれ?わたし、いつ傷つけられた?
知らぬ間に、たくさんのかすり傷。
4/23『今日の心模様』
「俺が人間を好きになる?はっ、ありえないね」
と、笑っていたのはいつだっただろうか。
あの時飲んでいた酒の味は、今はもうわからない。
「あの娘か?」
「ああ。神の端くれの俺がまさか人間の娘を気に入るとはね」
「恋だと素直に認めればよかろう」
「恋か?これが?」
木の上で烏天狗と想いを寄せる娘のいる村を見下ろした。
神が人の子を好きになる。
たとえそれが間違いだったとしても、始まってしまった想いはもう止められないのだ。
4/22『たとえ間違いだったとしても』
ぽたり、ぽたりと先端から雫がこぼれる。
ぽちゃりぽちゃりと雫が落ちる。
落ちた先には、水たまり。
水たまりには、私が欠けた想いのかたまり。
ああ、なんで好きになっちゃったんだろう。
4/21『雫』
「早く! 次は?」
「待って、まだ……」
早く早くと誘われる次のこと。
私は息を大きく吸って吐いて、次に備えた。
もう私は力になれないかもしれない。
早く寝転がりたい。
もう限界だ。
「早く! ほら行っちゃう!」
娘に次の皿を取れと促された。
私は溢れそうになる口を何とか閉じて、レーンの上の皿を取った。
5皿で一回くじが引けるというシステムの回転寿司。
娘と妻は早々にお腹いっぱいと手を合わせたが、くじはしたいと娘が駄々をこねた。
「う、うう……」
膨れる腹を撫でながら、私はまぐろを口に押し込んだ。
食事が終わったあと、いつものようにコンビニでデザートを買おうという話になった。
私が食べている間に腹ごなしになったのか、妻と娘は嬉々として自動ドアをくぐっている。
「パパー、パパは何にするの?」
「もう、何もいらない」
4/20『何もいらない』
もしも未来を見られるのなら――
君の隣に僕がいるのかを確かめたい。
もしも隣にいなかったなら、
これから頑張るから、覚悟しててね?
4/19『もしも未来を見れるなら』
溜めに溜めてしまったのでちょっとずつ。
なにもない。
なにもないと思っているから、なにもない。
ここにはソファもドアも窓もなにもない。
誰かを思わせる存在すらも。
ぼくも?ぼく?ぼくはだれ?
手を見てみた。
手とはなんなのか?広げてみたそれは、そこにあることはわかるものの、何があるのかわからない。
それもそうだ。
色すらない世界なのだから。
ぼくがぼくとしてここにあるだけで、ほかにはなにもない、そんな世界なのだから。
ぼく?ぼくは、なに?
どうしてここにあるの?
4/18『無色の世界』
「ねぇ、花見、花見行こうよ!」
「ああ、その内な」
「その内って、桜なんてすぐ散っちゃうんだよ!?」
「ああ、はいはい」
開花宣言が出てからずっと言っていた口約束。
毎年行っていたあいつとの花見。
その内、その内にと言っている内に、1週間が経った。
桜はとっくに葉桜混じりになり、花見もかろうじて出来るだろうかという頃。
「なぁ、花見だけどよ」
「ごめん、転勤が決まって、その準備で忙しいの」
ブツンと無情に切られた通話。
窓の外でははらはらと残り少ない花弁が散っていた。
それからあいつと花見をすることはなかった。
あれが最後のチャンスだったのだ。
4/17『桜散る』
公園に子どもを遊ばせに来ていたら、近所の小学生だろうか、女の子たちの会話が聞こえた。
「私、大きくなったらドレスを着るのが夢なの」
「お嫁さんになりたいの?」
「ちがうの。真っ赤なドレスを着たいの!」
「まっかな?」
「そう、真っ赤な」
「結婚式で着るの?」
「ううん、結婚式じゃないの」
「じゃあ何で着るの?」
「別に何でもない時に着るの!いつでも好きな時に着れるの!真っ赤なドレス。それが私の夢!」
「ふーん。叶うといいね!」
キャッキャと笑い合いながら、彼女たちは公園を出ていった。
(まぶしいなぁ。あんな頃が私にもあったなぁ)
4/16『夢見る心』
「やめて、お願い……。もうやめて……」
今にも泣きそうな声で懇願するが、相手には届かない。
聞く耳を持っているのかいないのか、名前を呼べば反応するが、すぐにまた再開してしまう。
「お願い……。もう片付けるのもいやなの」
やめさせようと手を伸ばしても、手を払われるか泣き叫ばれるので無碍に出来ない。
「ねぇ、お願い……」
床に手をつき懇願するママの声は、赤子には届かない。
延々とティッシュを引き抜き、周囲に散らす楽しさに夢中なのだ。
4/15『届かぬ想い』
神様へ
あんたが俺の大先輩だか上司なんだか知らないけどさ。
もしそんな存在だって言うなら、今すぐあの人を俺にくれない?
あんたよりも誰よりも大切で、誰にも渡したくないんだよ
4/14『神様へ』
「本日は一日快晴が続くでしょう」
朝、天気予報で見たお天気キャスターの声が脳内で思い出された。
彼氏――元彼の家からの足取りは軽かった。
(ようやく別れられた!)
優しい人ではあった。
優しすぎる人。優しすぎてつまらない人。
別れる難点を挙げればそうなるのだろう。
結婚するにはいい人だったのかもしれない。
でも、もっと細やかな、言葉にするのも些細なあれやこれやが、私にはもう耐えられなかった。
(別れる理由?私が嫌になったから)
別れの言葉を告げた時、結構渋られたが、最終的には頷いてくれた。
そういうところも、嫌な理由のひとつだったよ。
(ああ、スッキリした!)
雲ひとつない空が祝福してくれているようだった。
4/13『快晴』
景色が揺れている。
進みはしない。
誰だったか、ゆあんゆよんと表現した。
僕はブランコに乗っている。
晴れた空。
このままこいで、遠くへいけたらいいのに。
その思いを乗せて、遠くの空へ届くように靴を飛ばした。
4/12『遠くの空へ』
突然の知らせ。
思わずすべての情報がシャットダウンされた。
何も聞こえない。
何も口にすることができない。
この気持ちをなんて言ったらいいのだろう。
言葉なんて出ない。
きみがなくなった。
4/11『言葉にできない』