『こんにちは。
元気にしていますか?
今頃あなたは、この世の終わりと思うくらいの経験をしていると思います。
大失恋です。
きっと今にも死にたくなっていることでしょう。
こんなこと今言われても、どうしょうもないと思います。
何を根拠にと思うと思います。
でも、「大丈夫」。
すぐに笑える日が来ます。
すぐにあなたの隣にあの人以上に大切な人が出来ます。
今は笑えなくてもいい。
ただ自棄にだけはならないでほしい。
きっと明るい未来があなたを待っているので。
こんなことを言われても信じないのがあなたの良いところですが、この手紙のことだけは信じてほしいです。
傷ついたあなたを見守ってくれる人はそばにいます。
もちろんここにも。
ではお元気で。
38歳の私より』
2/15『10年後の私から届いた手紙』
「はい」
2月14日。渡されたのは、塩の瓶だった。少し高級そうなやつ。
「塩?」
「塩」
問いかけた言葉には断定的な同じ言葉が返ってくる。
「なんで塩?」
今日はバレンタイン。
好きな子からはもちろんチョコレートを貰いたいお年頃。
素直に尋ねれば、彼女はきょとんとして答えた。
「なんでって、甘いものキライって言ってたし。しょっぱいものがいいなら、いっそこれかなって」
何を不思議そうな顔をしているんだろう。
不思議な顔をしたいのはこちらなのだが。
まさか自身のモテが裏目に出るとは。
少し高級そうなのがさらに泣けた。
2/14『バレンタイン』
君の瞳に吸い込まれた時から、僕は君に夢中だった。
でも、身分違いの恋。それはわかってた。
だから僕は懸命に努力した。君に見合うように。
勉強、武術に田畑や樹木の自然のことまで。
馬車の窓から見える景色がだんだんとのどかになっていく。
僕の靴は、君の家の前に降り立った時、泥で汚れてしまうだろう。大臣に怒られるな。
それでも僕は構わない。君を迎えに行けるのなら。
咳払いをして、君の家の扉の前に立った。
「もしもし」
扉の奥に声をかける。
鈴の鳴るような返事とパタパタと走る音が聞こえる。
待ってて。今から君をとびきり幸せなお姫様にするから。
2/13『待ってて』
「約束だよ」
校舎裏の1本の木の下。
その根本のうろのなか。
みんなで「秘密基地だよ」と言っては集合した。
小さな体をぎゅうぎゅうに押し込めて、何をするでもなく、ただくだらない話をした。
それが今や――。
「オレ一人入るのもキツイか」
ポケットに手を突っ込んで校舎裏の木の下にきた。
誰と約束したわけでもない。ただ卒業式から十年後の今日、なんとはなしに来てみただけだった。
「あれ?」
懐かしい高い声が聞こえた。
「君も来たの?」
振り返れば、幼馴染の2人がいた。
そこで会ったと言って、ついでにここまで来たらしい。
「なんで来たんだ?」
「なんか懐かしくなっちゃって。たまたま来てみたの。そしたら彼がいて――」
「僕だって来るつもりはなかったけど、家に居場所がなくて」
妻子を持つ彼は後ろ頭をかいて言った。
彼女は俺と同じで、たまたまここへふらりと立ち寄ったらしいが、十年経っても、みな考えることは同じだったということだ。
「せっかく会ったし、どっかで飯でも食ってこうぜ」
「どこかでごはんもいいけど、ここでお花見するのもいいんじゃないかな? ギンさんなら許してくれそう」
「いいわね!お酒とおつまみ買ってきましょう!」
物静かな見た目に反して大胆なことをする彼は、昔から変わらなかった。それに同意する彼女も。
それに比べてやんちゃな見た目とは裏腹に規律などを守るタイプのオレは、そわそわしながら2人の動向を見守った。
結局2人に腕を引かれてコンビニに行くことになったが。
昔より少し範囲を広げた木の下で、昔話と今の話とこれからの話――くだらない話をいつまでもした。
2/11 『この場所で』
誰もがみんな
悲劇のヒロインになりたがる
「私が一番苦しいの」
「僕が一番辛いんだ」
「人それぞれ違うよね」
そう言いながら笑顔の画面を被る
それぞれ辛さは違うのに
「辛いのはみんな一緒」だと誰もが言う
そして同じ口で影で「自分が一番辛い」のだとのたまう
確かに人それぞれ辛さは違う
けれど辛さを感じていることは同じだ
悲劇のヒロインでもいい
だって物語の主人公は『きみ』だ
『きみ』の物語の中では『きみ』が一番つらいんだ
2/10『誰もがみんな』
ひとつ、愛の花。
ふたつ、藍の花。
みっつ、哀の花。
よっつ、Iの花。
たくさんの花を花束にして、君に贈ろう。
僕の全ての感情を君に。
ねぇ、愛してるよ。
2/9『花束』