「約束だよ」
校舎裏の1本の木の下。
その根本のうろのなか。
みんなで「秘密基地だよ」と言っては集合した。
小さな体をぎゅうぎゅうに押し込めて、何をするでもなく、ただくだらない話をした。
それが今や――。
「オレ一人入るのもキツイか」
ポケットに手を突っ込んで校舎裏の木の下にきた。
誰と約束したわけでもない。ただ卒業式から十年後の今日、なんとはなしに来てみただけだった。
「あれ?」
懐かしい高い声が聞こえた。
「君も来たの?」
振り返れば、幼馴染の2人がいた。
そこで会ったと言って、ついでにここまで来たらしい。
「なんで来たんだ?」
「なんか懐かしくなっちゃって。たまたま来てみたの。そしたら彼がいて――」
「僕だって来るつもりはなかったけど、家に居場所がなくて」
妻子を持つ彼は後ろ頭をかいて言った。
彼女は俺と同じで、たまたまここへふらりと立ち寄ったらしいが、十年経っても、みな考えることは同じだったということだ。
「せっかく会ったし、どっかで飯でも食ってこうぜ」
「どこかでごはんもいいけど、ここでお花見するのもいいんじゃないかな? ギンさんなら許してくれそう」
「いいわね!お酒とおつまみ買ってきましょう!」
物静かな見た目に反して大胆なことをする彼は、昔から変わらなかった。それに同意する彼女も。
それに比べてやんちゃな見た目とは裏腹に規律などを守るタイプのオレは、そわそわしながら2人の動向を見守った。
結局2人に腕を引かれてコンビニに行くことになったが。
昔より少し範囲を広げた木の下で、昔話と今の話とこれからの話――くだらない話をいつまでもした。
2/11 『この場所で』
誰もがみんな
悲劇のヒロインになりたがる
「私が一番苦しいの」
「僕が一番辛いんだ」
「人それぞれ違うよね」
そう言いながら笑顔の画面を被る
それぞれ辛さは違うのに
「辛いのはみんな一緒」だと誰もが言う
そして同じ口で影で「自分が一番辛い」のだとのたまう
確かに人それぞれ辛さは違う
けれど辛さを感じていることは同じだ
悲劇のヒロインでもいい
だって物語の主人公は『きみ』だ
『きみ』の物語の中では『きみ』が一番つらいんだ
2/10『誰もがみんな』
ひとつ、愛の花。
ふたつ、藍の花。
みっつ、哀の花。
よっつ、Iの花。
たくさんの花を花束にして、君に贈ろう。
僕の全ての感情を君に。
ねぇ、愛してるよ。
2/9『花束』
にこっ。
微笑み小首を傾げる君は大変愛らしい
その笑顔の裏に隠しているものを知らなければ
ただそう思うだけで済んだのに
2/8『スマイル』
どこにも書けないことは
どこにも書けないから
どこにも書けないことなのです
誰も知らない
私だけのノートに綴る
2/7『どこにも書けないこと』