散る桜。
満開から涙のようにはらりはらりと散っていく桜。
春の始まりを告げる桜が終わりを迎えようとする頃、私たちは花見に来た。
ちょっと奮発して、小門堂の可愛い一口サイズの大福を何種類かと三色団子を準備して。
水筒に緑茶を淹れて、レジャーシートを広げて。
シートを広げる最中、はらりはらりと桜が舞い落ちてきた。始める前に花見が出来てしまった。
散ってきた花びらをさっと払って、私たちはシートのうえに座り込んだ。
さて本番はこれからだ。
花より団子のお花見の開始だ。
4/10『春爛漫』
あなたのことを知っている。
あなたのことを思っている。
あなたのことを待っている。
誰よりも、ずっと。
人間じゃ、ないけれど。
僕だって、誰よりもマスターを想っている。
スマートフォンの中からずっと。
4/9『誰よりも、ずっと』
付き合って6年。
明日から関係が変わる。
白い衣服で誓いあった、新たな関係。
「夫婦になることを誓います」
これからもよろしく。
ずっと隣で笑い合っていられますように。
4/8『これからも、ずっと』
青から赤に変わるグラデーションの夕景が、私の心模様そのものみたいだ。
告白して1週間待ったのに、「彼女がいるから」と断られた。
彼女がいるなら、告白したその日に断ってくれればよかったのでは?
舐められているようで悔し涙が出た。
とろりとろりと夕日が沈んでいく。
あれは燃え溶けた私の恋心だ。
4/7『沈む夕日』
君の目を見つめると、息ができなくなる。
その赤い瞳に射抜かれると、顔が同じ色になってしまう。
私のすべてを見抜かれてしまうようで、本当は目も合わせたくない。
けれど、抗えない。
その宝石のような瞳を見つめたいと思うことに、
4/6『君の目を見つめると』
屋根の上に登り星空の下で
明日の平和を願う
明日こそ
お父さんとお母さんがケンカしませんように
4/5『星空の下で』
ごはんを食べなくても
お風呂に入らなくても
睡眠を取らなくても
部屋にこもりっぱなしでも
人間をやめたような生活をしていても
それでいい
心さえ無事ならば
4/4『それでいい』
ひとつだけ。
ひとつだけ好きなものを挙げて。
それが僕だったらいいな。
「好きなものなあに?」
「え?こんにゃく!」
喫茶店で問いかけて返ってきた答えに、コーヒーを噴き出しそうになった。
脈絡のない唐突な質問がいけなかったのだろうか。
「えっと、そういう意味じゃなくて」
「ん?どういう意味?」
「ん、やっぱいいや。こんにゃくね」
きょとんとした顔で尋ねられ、質問の意図を説明するのも気恥ずかしくなった僕は、そのまま受け流してしまった。
「今度群馬にでも行こうか」
4/3『1つだけ』
僕の大切なもの。
カラコロ鳴るおもちゃ。
ピンクのお水入れ
僕を小さくしたようなぬいぐるみ。
夕方のお散歩の時間。
お散歩の時間に会うメーちゃん。
そして僕のご主人!
頭を撫でてくれて抱きしめてくれる、優しいご主人!
4/2『大切なもの』
「好き!」
「え、ほんと?」
「付き合って!」
「ほんとに?」
告白をした相手が、面白いくらいに顔を赤くして尋ね返してきた。
昼休み前の会議終了後。早めに終わった会議に嬉々とする面々を横目に、部屋に戻る前の目当ての彼を捕まえて告白した。
もちろん嘘だ。罰ゲームで彼に告白するよう言われたのだ。
「う、嘘じゃないよね?」
「ほんとだよ」
内申にんまりしながら、恥じらいを演出して彼を見上げる。
自販機の上にある黒い時計が正午のベルを鳴らした。
「好きなの。付き合って」
昼休みに入って各部屋から出てきた社員のざわめきが聞こえだす。
誰かに見られる前に真実を話さないと。彼の返事を待つ前に打ち明けようと口を開くと、
「って、ほんとはウッソ――」
「じゃ、付き合ってもらうからね」
彼は真剣な顔で言うと私の手を強く握ってきた。
今度は私が顔を赤くする番だ。
奥手な彼がこんなに積極的に手を握ってくるなんて。そもそもタイプじゃないから嬉しくもないし。
私は慌てて訂正する。
「え?嘘だよ?エイプリルフールだよ?」
「うん。だから僕確認したよね?嘘じゃないよねって」
「そう、だからウソ」
「エイプリルフールってね、午前中までなんだよ。あなたが僕に付き合ってといったのは、午後になってからだ」
「ええ、ウソウソ!聞いてない!」
「僕はちゃんと確認したし、君も答えた。とにかくも、これで僕たちは恋人同士だ。じゃ、まずランチデートでもしにいく?」
ぎゅっと手を繋がれたまま、外に向かうエレベーターホールの方へぐいぐいと進んでいく。
ちらちらとランチに向かう別の社員たちにすれ違いざまに見られた。
やばい、こんなやつと恋人同士だなんて知られたくない。ありえない。
振りほどこうとするにも彼の握る手の力は強く、私は引っ張られるようにエレベーターの前に立つ。
「今日ノー残業デーだったよね。君もこないだ予定はないと佐藤さんに愚痴ってたよね。このまま晩もデートしようか」
エレベーターホールの前で手を繋いだまま、数人の社員がいる前で彼は宣言してきた。同じ部署の人間がたまたまおり、驚いたようにこちらを見ている。
私の顔面は蒼白になった。
4/1『エイプリルフール』
2人で歩くバージンロード。
腕を組むなんてこれが最初で最後なのかな、なんて思う。
昔はこの腕によくぶら下がっていたのに。
ああ、これで明日から――いや今日この瞬間からこいつのものになるのか。
どうかこの子が、この2人の歩む道が幸せでありますように――。
3/31『幸せに』
「おはよう」
「おはようございます」
廊下ですれ違いざまに挨拶を交わす。
いたって普通に見えたはず。
言葉を交わすことはない。
交わす必要もない。
仕事上の連絡はチャットで済むし、対面する用事は後輩に任せている。
周りからはいい上司に見えているに違いない。
気は遣えるし、周りのことをよく見ており声もよくかけている。仕事も出来る。
だが、私は彼が大嫌いだ。
彼と本当は挨拶すらしたくないのだ。
それでもするのは、大人だから。社会人だから。
今日も何気ないふりで会釈しすれ違う。
私の背後で爽やかに別の社員に挨拶する彼の声が聞こえた。
3/30『何気ないふり』