「大好き」以上に伝える言葉ってあるのかしら?
「愛してる」? それも少し違うのよね。
私は「愛」ほど、あなたの嫌いなところを許容していないもの。
でも、あなたのこと、好きで好きで大好きで、たまらなくなるの。
こんなとき、人はどうやって感情を伝えればいいのかしら?
/8/14『言葉にならないもの』
遠く遠く見える太陽。
海の向こうの空に高く、太陽は「まるで自分が、一番だ」とでも言うように輝いていた。
(まぶしい……)
じっと汗ばむ背中。照りつける太陽が痛い。
僕は砂浜へ続く階段に座って、手の甲で顔の上に影を作った。妬ましいほどにサンサンと降り注ぐ陽光を睨みつける。が、まんまと照り返された。
(太陽なんて大キライだ……!)
僕がこんなに太陽を苦々しく思い始めたのは、一昨年からだ。
あれは同じクラスの女の子に告白した時のこと。
「わたし、あなたみたいな普通の男の子とは付き合う気はないの。レントみたいに輝いている人じゃなきゃ!彼はわたしの太陽なの!」
フラれるだけならよかったが(よくはないが)、まさかの比較対象が太陽だった。いや、太陽のようなアイドルだった。
太陽だなんて、まさかと思い『レント』を調べてみた。
(太陽だ……。これはまさしく、太陽だ)
光り輝く笑顔に、スポットライトに照らされて踊るダンス。輝いているのはライトのおかげかと思いきや、そんなことはなかった。暗くほのかな明かりに照らされたステージでも、彼はサンゼンとそこに己の存在を示していた。もうこれでもかというくらい。
そこで僕も『レント』を好きになれば、もしかしたら彼女と友達くらいには仲良くなれたかもしれない。ただのクラスメイトから脱却出来たかもしれない。
だが、あの『太陽』に僕は屈してしまった。あんな輝きに、ただのクラスメイトの僕が敵うわけがない。
まざまざと知らしめられた僕は、なぜか『レント』ではなく、太陽をキライになってしまった。特に、ギラギラと必要以上に輝く真夏の太陽を。
告白したのが夏でなければ、もしかしたら太陽をキライになるまではなかったかもしれない。
「はぁ……」
逆恨みだということは分かっている。
だが一度キライになってしまったものをまた好きになれるほど、僕はまだ人間が出来ていなかった。
/8/13『真夏の記憶』
小指を伝ってこぼれ落ちるアイスクリーム
手で包んだコーンにまで垂れ落ちて
まるで昨日のあなたみたい
手首まで流れる雫を舐め取ると
甘くて苦い抹茶の味がした
ああ なんて――
愛しさと切なさを覚える味は
昨夜のことを思い起こさせるよう
/8/12『こぼれたアイスクリーム』
8/13/2025, 1:57:51 PM