『物憂げな空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
物憂げな空
屋上に寝そべりながら耳を澄ましてみる。大人の話し声、笛の音、笑い声。自分がいなくても変わらない日々。
目の前には、どんよりとした曇り空が広がっている。もう何日も晴れた空を見ていない。
目を閉じた。一番仲が良い友人、両親、バイト先の先輩、いつも行く本屋のおじさん、初恋の人、そして黒いフード姿の人物。
目を開けた。あの日から一ヶ月以上経っただろう。いくら考えたって毎日を適当に過ごしていた自分にわかるはずがない。悔しいと思うことが間違っている。最初の頃はいろんな人に会いに行った。でも誰も何も答えてくれなかった。
もう諦めた。時間ももう無い。大きく広がる薄暗い空だけが、自分を見ている。
「お前も俺が嫌いなんだろ。」
そう呟いた自分を鼻で笑うと同時に、聞き慣れたチャイムが鳴った。がやがやと楽しそうな声が聞こえる。無性に腹が立ってくる。
「せめて最後ぐらい晴れろよ!」
彼がそう叫んだ時、ガチャっと屋上の扉が開いた。一人の生徒がキョロキョロとあたりを見回しながら入ってくる。続いてその生徒の友人らしい二人の生徒も入ってくる。
「どうかしたのか?」
片方の友人が聞く。
「いや、誰かいたような気がしたんだけど、気のせいだったみたいだ。」
いつのまにか屋上は、明るく照らされていた。
「物憂げな空だね」
彼女はそう言って、いつものように花が開くみたいに笑った。
けれど、なにかがほんのわずかに、違った気がした。
それが何かは、分からない。
僕はその違和感を拾い上げかけて、やめた。
「そうだね。雨、降りそうだ」
踏み込むほどのことじゃない。
きっと気のせいだ。
そう思ったとき、彼女はもう一度笑う。
今度は、きれいに咲いた。
僕はその笑顔を見て、密かにほっと息を漏らした。
その瞬間、ぽつりと頬に落ちた。
「あ」
次の瞬間、雨脚が急に強くなる。
遠くの景色が白く煙っていく。
「走ろ!」
彼女は先に駆け出す。
水たまりを蹴って、髪を濡らして、振り返る。
「ほら、早く!」
その笑顔は、本当に楽しそうだった。
僕は息を切らし、彼女を追う。
喫茶店のドアベルが鳴る。
冷房の風が、濡れた袖に冷たい。
「雨宿りね」
そう言いながら、彼女はメニューを開いた。
「……これにする」
運ばれてきたのは、やけに背の高いいちごパフェだった。
雨宿りのつもりにしては、本気すぎる。
僕はコーヒーにミルクを落とす。
白がゆっくり広がって、やがて消える。
「おいし〜!」
足をばたつかせ、頬を押さえて、大げさなくらい目を輝かせる。
彼女はいつも、全力で喜ぶ人だ。
その明るさに、店内の曇りガラスまで少し晴れた気がする。
僕はコーヒーを口に運びながら、そんな彼女をただ眺めた。
なんだか、こんなことが前にもあった気がする。
初めてのはずなのに。
少しだけ、視界が霞む。
一瞬、スプーンを持つ彼女の指先がひどく遠く見えた。
冷房のせいか、湿気のせいか。
雨はやがて止み、僕らは店を出た。
別れ際、彼女は最後まで笑っていた。
目が覚める。
雨音はしていない。
窓の外は、からりと晴れている。
あの日、彼女が笑っていたことだけが、やけに鮮明だ。
物憂げな空
忘れかけた羽が私の足元に降り落ちて来た。一体どこの鳥が落としたのだろうか。その主を探しに視線を上げるも、羽ばたく獣は見当たらない。
単なる紅色の気まぐれか、はたまた風に運ばれたのか。否、それはないだろう。優しい冷たさは頬を撫ぜて居ない。
きょろきょろ。上げた視界を探しているうちにふと、どんよりとした空に気がつく。
雲はひとつない。しかしどこか晴れやかとは言い難い夕刻。晴れぬのは愛に染まらぬ私の心か、それとも藍に染まらぬこの空か。
足元の羽に視点を落とす。白く、暖かそうな羽毛。いつか見た、愛おしきの象徴。
晴れた空、晴れない私。
物憂げな空。
いま君に会いに行こうと決めたから
物憂げな空 嬉嬉と輝く
#物憂げな空
『物憂げな空』
涙が零れないように
空を仰いだ
彼もどこか
悲しそうだった
暗く沈んで
今にも泣きそうだった
「いつもお疲れ様」
そっと呟いた
そんな気がした
この2月の空には、さっきまでみたいな、すぐにでも泣き出しそうな『物憂げな空』のまま、そのままでいてほしかったのだ。
けれど。空は存外早々に雲を散らしてみせ、だけど遠くの山々が見えない程度には曇ったまま、所在なく夕日のオレンジを纏って、表情をわずかに緩めるだけの笑みを見せてきたから、ボクはちょっと裏切られたような気持ちになった。
もしも空から一粒でも水滴が落ちてきたなら、ボクはきっと「……ほら。キミはそうやってさ、簡単に泣くよね」とか、そんな言葉を平気で投げつけて、そしてやっぱり、キミに裏切られたような気持ちになったのだろう。
無理して笑ってみせるキミも、泣いてしまうキミも、どちらも許せない──笑うことも、泣いてしまうことも出来ないまま、この風の吹かない場所にボクと、ずっと一緒にいてくれたらよかったのに。
「でもね。ボクたちは、ずっとそのままではいられないのさ。どんな場所にだっていつかは風が通り、時は過ぎる──良くも悪くも、ね?」
……ボクは。
裏切り者の言葉なんか、信じない。
どこにも行けないボクのままでいい、淋しくなんかないのだから。
物憂げな空
私の住んでいる地域では、今日はかなり快晴でした。
普通に見るならば、とても物憂げと言えない程度に気持ちの良い気候でした。
しかし、物憂げ、と言う程ではないですが、自分の中に少しの不安がよぎり、心を満たしきれない部分があります。
思えば、私の推薦入試の時もこんな空だったかもしれないと思います。
11月下旬。当日の朝、戦地へ歩いて行った時。
恐ろしいほど気候が良く、歩いていて気持ちが良かったことを覚えています。
いつもなら「めちゃくちゃ天気良いな」と言って気分よく過ごすのですが、当時はその空をあまり十分に楽しめない自分がいました。
まあそりゃそうです。これから受験に行くんだから。
少しは気分が良くなりますが、流石に心の焦りを完全には無くせません。
それでも、ある種の皮肉かのように、空はとても良く晴れてくれるのです。
易しくもあり、同時に自分の焦りを目の当たりにさせるかのようにも。
その日の空は晴れてくれました。
と、それに似た雰囲気の心のざわつきを今日感じていました。
推薦入試に合格した今の私でも、この日は少し心が落ち着きません。
私の友達の多くが、国公立大学の二次試験に出かけています。
彼らにとって私を悪くは思っていないのは十分に分かりますが。
LINEか何かで応援しても、恐らく当事者にとってはかえって迷惑になりそうだ。
そう思った私は、自分から応援の言葉を掛けるのは止め、ただただ黙って友の武運を祈るのみです。
空を見る。
今日の空は、私が勝負したあの日よりも晴れていたと思います。
恐らく今日は雲も見ていません。
しかしそれでも、十分に気持ちを良くできません。
心の中には薄暗い雲が掛かっている様に思います。
友達の方では、それでも、少しだけでも晴れてくれることを信じて。
………
こちらでは明日は曇りらしいです。
それでも大丈夫。
今日は快晴だったし、友達も多分そうでしょう。
青を隠した灰色の雲を見上げ、溜息を吐く。
雨が降りそうで降らない、中途半端な天気に気分が沈んでいく。逸らした視線が公園の時計を認め、益々憂鬱になり項垂れた。
待ち人はまだ来ない。約束の時間はすでに十五分も過ぎているが、一向に来る気配はない。
いつものことだ。彼女が時間通りに待ち合わせ場所に辿りついた試しがない。
今度は何に巻き込まれているのか。何度か忠告はしているものの、お人好しな性格はそう簡単には変わらないのだろう。
「困ったね」
思わず嘆息するものの、彼女の優しさに惹かれ一緒にいる身としては強く言えない所だ。
もう一度空を一瞥し、肩を竦めて歩き出す。
待ち合わせに来ない彼女を迎えに行くのもいつものこと。込み上げる溜息を飲み込んで、彼女を探しに公園を出た。
しん、と静まり返った道を歩いていく。
辺りには誰もいない。見上げた空は待ち合わせ場所で見た時と同じような雲に覆われているものの、不気味な程に変化がなかった。
絵や写真のように、雲に動きがない。もう一度辺りを見回せば、空と同じく固まったまま微動だにしなかった。
このまま空が落ちてきそうだ。雲の重苦しい灰色を見ていると、そんな暗いことばかり考えてしまう。世界から切り離されて閉じられたこの空間は元には戻れず、潰され消えるしかないのだろう。
「――馬鹿みたい」
そんなことはあるはずがないと、頭を振る。先ほどから気分が沈みおかしなことを考えているのも、中途半端な空のせいに違いないのだろう。八つ当たり気味に考えながら、足早に彼女の元へ向かい歩いていく。彼女の居場所に心当たりはないものの、耳を済ませれば微かに聞こえる音の方へ向かえば出会えるような確信があった。
「今度は一体何に巻き込まれているんだか」
思わず乾いた笑いを溢しながら、困ったものだと繰り返す。泣くような、何かを怒るような声に足を速めれば、脇道の向こう側に見慣れた彼女の背が見えた。
「あ……ごめん。待ち合わせしたのに」
こちらに気づいた彼女が、眉を下げる。それに気にするなと肩を竦めながら、彼女にしがみつく小さな影に眉を顰めた。
震える体は泣いているかのように見えるのに、泣き声は聞こえない。彼女の側に寄れば、必死に唇を噛み締め泣くのを耐えている幼い少年の横顔が見えた。
「ごめんね。一人きりで寂しそうにしているのを見てたら、放っておけなくなっちゃって」
「まあ、待ち合わせに来ないのはいつものことだし……変な争いに巻き込まれているみたいな状況じゃなかったからよかったというか」
思わず本音を溢せば、彼女も泣きそうな顔になってしまった。ごめんと俯く姿に慌てて、話題を変えるべく声を上げる。
「それより、この子どうしたの?仲間とはぐれたとか?」
「ぼく、わるくない……」
今まで黙っていた少年が、こちらを向き呟いた。
「わるくないもん。ズルした方がわるい。なのに、みんなぼくがわるいって言うんだ……」
一度口にしてしまえば止まらなくなってしまったのか、少年は悪くないと繰り返す。
背を撫で慰める彼女を見ながら、飲み込めなかった溜息を溢す。事情が何も分からないが、ずっとこのままという訳にはいかない。仕方がないと膝をつき、少年と目を合わせた。
「悪くないってちゃんと皆に伝たの?」
「どうせ信じてくれないよ。ぼくはじぶんで雲を作ったけどあいつはお山の方でできた雲を持ってきただけだって前に言ったけど、信じてくれなかったもん」
きゅっと唇を噛み泣くのを耐える少年に、大方の事情を察し眉が寄る。
重苦しく物憂げな空模様。誰もいない、止まったままの空間。
随分と業が深い。一度や二度ではないのだろう。
「信じるよ」
目を合わせ、はっきりと口にする。
大きく見開かれた目にほんの僅かな期待が灯るのを見て、苦笑しながら頭を撫でる。
「私も信じるよ」
「ほら、信じているのが二人になった……どうする?望むのなら、君が嘘をついていないって説明してあげるけれど」
そう言って少年の背後を指さした。
迎えに来たのだろう。先ほどから青年がこちらの様子を伺っていた。
「――いい。大丈夫」
青年の姿を見て、少年の目から期待が消える。代わりに諦念を浮かべて彼女から離れ、立ち上がる。
「ありがとう。信じてくれて嬉しかった」
丁寧にお辞儀をして、引き留める間もなく少年は青年の元へと歩いていく。青年の差し出す手を見ない振りして、そのまま姿が揺らぎ霞み消えてしまった。
「あの子、最後まで泣かなかった」
「泣けなくなってしまったんだろうな」
「大丈夫かな。心配だよ」
少年が消えた方向をいつまでも見ながら、不安げに彼女は呟いた。
今にも泣きそうな彼女の髪を風が揺らし、過ぎていく。遠くから車の音や雑踏が聞こえ、戻ってきたことを感じさせた。
見上げる空は、変わらず暗い雲に覆われている。しかし先程よりも雲の淀んだ灰色が薄くなっているように見えた。
「今度会ったら、三人で遊びに行こうか」
「え?」
雲を見ながら、気づけばそんなことを口にしていた。
驚いたように息を呑みこちらを向く彼女を見つめ、笑ってみせる。
「嫌なことを忘れるくらい、楽しいことをして美味しいものを食べればいい」
「そう、だね……また会えたら。今度は一緒に」
頷いて、彼女は笑う。
「じゃあ、次に会えた時のために、たくさんいい所を探しに行かないとね」
そう言って手を差し出す彼女は、やはり底抜けのお人好しだ。呆れながら手を取り、態とらしく溜息を吐いてみせる。
「本来の待ち合わせ時間はとっくに過ぎているけどね」
「そういうこと言わないでよ。意地悪」
途端に気まずげな顔をする彼女に笑いかけ、手を引いて歩き出す。
お人好しな彼女と関わっていければ、きっといつか少年も心から笑い、泣くことができるのだろう。今まで関わってきたモノたちのように。
そんなことを思いながら空を見る。次に会えた時にはきっと、物憂げな灰色は白に染まってくれるのだろう。
20260225 『物憂げな空』
2/25 「物憂げな空」 8
後ほど書きます. ✎___
「あぁ…つまんねぇな」
薄暗い雲が低く覆い被さり今にも雨が降りそうな空を見上げ呟く。
「本当につまらねぇ」
重ねて言ったその言葉は消えてどこかに行った。
自分から手放したものなのにとみにあの憎らしい顔がちらつく。
もうこの恋情に、叶わぬ相手へのこの心に、振り回されるのは御免だと線を引いたつもりだった。
振り切ってあいつとの関係を最期まで終わらせても平気だと何回も言い聞かせた。
実際その顔を見ても恨みつらみしか出て来なくてたくさん傷付けてそれでこの心をお終いに出来るとそう、思ってた。
あいつとはこれまでたくさんの仕事をこなして来た。
あいつからの無理難題なんていつもの事で意見を交わしちゃあ喧嘩なんてこともよくある事だった。
それでもあいつは「お前はおれのよき相棒だ。お前の絵に惚れてる。お前さんが一番だ」とまるで睦言のようにおれに囁きかけおれを翻弄した。
その関係は正直心地よかった。
側に居られればそれでよかった。それでよかったはずだったんだ。
でも実際は蔑ろにされたり軽んじらたりする度に心に幕が降りて来て隣りに居るのがしんどくて。
しんどくて。
そして逃げ出した。
あいつが必要としてたのは絵師のおれで、生身のおれではない。
その事実がただ悔しかった。
悲しかった。
どんなに恋焦がれても無駄なのだな、そう実感した。
それからはもう何もなかった。
どうでもよかった。
叶わぬのなら捨ててしまえと。
もういいのだと。
笑いが込み上げてくる。
どうしてもどうしても。
「物たりねぇんだよ」
あいつの無理難題が恋しい。
絵について語り合いたい。
熱く同じ夢に向かって…。
なんて、もう何を思っても同じなのにな。
会いてぇよ。
口に出したらお終いなその台詞を。
「死んでも言ってやるもんか」
自嘲気味に笑う自分に嫌気がさした。
窓の外にはぽつりぽつりと重たい空から雨が落ちて来ていた。
会いてぇよ。
📖(物憂げな空)
自分では感じたくない感情に覆われる。これはいけないと隅に追いやったり、見えてないフリしたりする。でも、そうすればするほど、その感情が大きくなって、どんよりと心を覆う。
そんな感情を受け入れるなんて、できない。そうすれば、その思いは救われるのだそうだ。自分の一部として認める。そんな自分でもよいと。ちっぽけなプライドが邪魔をしているのだろうか。
心の中が灰色に覆われている。あの、物憂げな空のように。どんよりした空にも、時々光の気配が見えている。ああ、今日のあの空のせいかもしれない。明るく晴れてきた時には、自分を受け入れられるかもしれない。
「物憂げな空」
物憂げな空
が見えるのは多分わたしが物憂げな今日だから
空のせいにして、重すぎるあたまは、今日は起動できなくて
でもそれでも今日は息をした
ちょっとした知り合いがいると、ちょっとずつ元気をもらえた気がして
今日のわたしは、物憂げも悪くないと思った
クラスに空って子がいる。
いつも何考えてるか分からないし、なんなら自分でも何考えてるか分かってないらしい。
そんな彼が、私は好き。
いつか消えてしまいそうな儚さ、たまにすごく面白いことを言う時。
そんな彼を見て、恋に落ちた。
でも、彼には闇があると思う。
冒頭で言った通り、何考えてるか分からないし、なんなら自分でも何考えてるか分かってないし。
彼には、誰も入れないゾーンがあるかも。
『物憂げな空』#実話(※本名ではありません)
物憂げな空
悪戯な風が木々を揺らし
街を駆け抜ける
何かに追い立てられるように
人は時の河を泳ぐ
季節が静かに彩りを変えていることすら
気づかずに
ほんの少しでいいから周りを見て
空を見上げてごらん
鈍色の空もやがて色が変わるよ
きみかいつか見たいと願う空は
この物憂げな空の先に必ず
きみを待ってる
憂鬱げな空
憂鬱げな空を今日も見上げる。
そこにはどこまでも続く空と疲れた顔の自分。
また成長したのか。衰えたのか、わからない。
【物憂つげな空】
自分が嫌になる時、大抵は空もなんとなく物憂つげになっている。
どんなに晴れていたって、嫌な気持ちになると、目にフィルターが掛かるようだ。
僕の心はガラス細工より脆く、誰かを傷つけると、ガチ目に凹むし、ガチ目に病む。
普段陰キャでしかないやつが人の足を引っ張ると、僕の存在意義が分からなくなる。
今日も、変なフィルターが掛かってる。
今日も、物憂つげな空だなぁ、
小さな命 物憂げな空 です
小さな命
「ストップ」
「わっ」
キミと公園を散歩していると、急にキミに腕を取られる。
「ど、ど、ど、どうしたの?」
突然のことに驚いて、ドギマギする僕に
「急にごめんね。ね、これ見て」
キミは下に向けて指をさす。
「あ、つくし」
キミが指さした先。そこに、小さいつくしが顔を出していた。
「つくしを踏みそうだったから」
「そっか、止めてくれてありがとう。小さな命も大事にしなきゃね」
「うん」
小さな命を踏まないように、その後は足元を確認しながら散歩したのだった。
物憂げな空
「あー、余計に気が滅入りそう」
仕事に行くため外に出ると、物憂げな空が広がっていた。
昨日ミスして、それじゃなくても行きたくないのに、余計に行くのが憂鬱になる。
「休んじゃおうかな」
そんな気分になったけれど
「いや、今日行かないと、行けなくなりそう」
気持ちを切り替え前を向く。
「私の代わりに、空が物憂げになってくれてるんだよね」
暗い気持ちを空に託し、仕事へ向かうのだった。
物憂げな空を見上げる
この空と同じように
僕の心も濁っていく
何を言いたいのかしら。
どこまでも私を追ってきて、
何を言いたいのかしら!
その向こうへ連れて行ってくれるわけでも
ないのに、どうして追ってくるのかしら!
ううん、本当はなんでか知っているの。
「あーもう!
マキったら、また今度お空を見ればいいでしょ?
今日は……。ね!ほら!」
「でもね、母様?
お空、昨日はね、ぱんだったから、笑っていたのよ!
その前はね、あめさんだったから、泣いていたのよ!
今日はね、今日はね、
何もないから、私を追ってきているのよ。
私のお洋服がまっくろで目立つから!」
その日は、マキの父親の命日だった。
父親は毎日マキに何か一つ食べ物をあげていたらしい。
物憂げな空
人は空を見上げる時、様々な表情をする
嬉々とした晴れやかな表情、物憂げな寂しさを感じる表情
では、空はどうだろうか
空は私たちをどのような表情で見ているのだろうか
好奇心に溢れているのか、下を蔑み見下しているのか、はたまた何も感じていないのか
私はせっかくなら興味を持って欲しいと思う
だから泣き、笑い、怒り、喜び、そして素直に生きる
そして私も、様々な表情で空を見上げるのだ