冬至。

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「あぁ…つまんねぇな」
薄暗い雲が低く覆い被さり今にも雨が降りそうな空を見上げ呟く。
「本当につまらねぇ」
重ねて言ったその言葉は消えてどこかに行った。
自分から手放したものなのにとみにあの憎らしい顔がちらつく。
もうこの恋情に、叶わぬ相手へのこの心に、振り回されるのは御免だと線を引いたつもりだった。
振り切ってあいつとの関係を最期まで終わらせても平気だと何回も言い聞かせた。
実際その顔を見ても恨みつらみしか出て来なくてたくさん傷付けてそれでこの心をお終いに出来るとそう、思ってた。
あいつとはこれまでたくさんの仕事をこなして来た。
あいつからの無理難題なんていつもの事で意見を交わしちゃあ喧嘩なんてこともよくある事だった。
それでもあいつは「お前はおれのよき相棒だ。お前の絵に惚れてる。お前さんが一番だ」とまるで睦言のようにおれに囁きかけおれを翻弄した。
その関係は正直心地よかった。
側に居られればそれでよかった。それでよかったはずだったんだ。
でも実際は蔑ろにされたり軽んじらたりする度に心に幕が降りて来て隣りに居るのがしんどくて。
しんどくて。
そして逃げ出した。
あいつが必要としてたのは絵師のおれで、生身のおれではない。
その事実がただ悔しかった。
悲しかった。
どんなに恋焦がれても無駄なのだな、そう実感した。
それからはもう何もなかった。
どうでもよかった。
叶わぬのなら捨ててしまえと。
もういいのだと。
笑いが込み上げてくる。
どうしてもどうしても。
「物たりねぇんだよ」
あいつの無理難題が恋しい。
絵について語り合いたい。
熱く同じ夢に向かって…。
なんて、もう何を思っても同じなのにな。


会いてぇよ。
口に出したらお終いなその台詞を。
「死んでも言ってやるもんか」
自嘲気味に笑う自分に嫌気がさした。
窓の外にはぽつりぽつりと重たい空から雨が落ちて来ていた。
会いてぇよ。


                📖(物憂げな空)

2/26/2026, 9:42:23 AM