『澄んだ瞳』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
7.31 澄んだ瞳
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彼女のあの何を考えて何を目的としているか分からない、ただ一人で遠くを見つめる瞳が好きだった。
でも直接話したいとか、触れたいとかそういう感情は湧かなかった。あまり彼女の話を聞かないのもあってどんな人か見当つかなかった。
「なぁ、○○さんって知ってる?いつも一人でいる色白でめっちゃ綺麗な女の人。」
「誰だ?聞いたことないな。」
おかしいな、ここじゃ全く見ないほどの美人だからこいつの耳になら絶対入ってるのに。なんて考えていながら友達に話していた。
「あっ。」
その時ちょうど彼女が通り掛かる。それにしても綺麗だ。あんなに綺麗なら男が、いや女までも寄ってくるんじゃないのか?
「ほら!あの人だよ!」
「はあ?笑あそこは誰もいねえよ笑何見えてんだよ笑」
そこでようやく気づいた。
もしかしたら、話したい、触れたいと思わなかったのではなくて
話せない、触れられない相手が好きだったのかもな。
澄んだ瞳に出会うことは稀である。スマホばかり見ている人の目は何処か人間らしくない瞳になっている。子どもでも澄んだ瞳を持った者は稀である。
澄んだ瞳(罪を暴く)
人の目で見えるものには、何かしら欺きがあるかもしれない。
心の目でよくよく観察しなさい。
欺きに惑わされる人間に成り下がるな。
………今はいない母親が、俺に口酸っぱく言っていた言葉。
「この子はわたしが引き取ります!」
「いやわたしだ! 遠い親族が出しゃばるな!」
「オレが引き取る! 血縁的にオレが最も近い!」
「どいつもこいつも! 私が一番後見人に相応しい!」
―――いやいや、何とも醜いね。
俺はそんな争いを尻目に、脇で灰皿片手に煙草をふかす。
ある会社の代表で、一代で財を成し順風満帆だった、俺と仲の良かった自慢の従兄。
その娘には祖父母、兄弟姉妹共に軒並みおらず―――天涯孤独の身に置かれた、まだ10歳前後の少女をどう扱うかで対立が深まっていた。
まあ従兄と言っても俺は母方の方で、この春就職したばかりの学生上がり。
結婚もしてない男にちっさい女の子を養育できるはずもなく、早々に蚊帳の外に出されていた。
両親亡くした上に、本人そっちのけで親族がこれでは相当参っているだろう………とちらりと彼女を見ると、全くもってけろりとしている。
「大丈夫か?」
何気なく声を掛けると、うん!と明るい一言が返ってきた。
「あいつらのあの調子じゃ先が思いやられるな。………強く生きろよ、これから」
「………。お兄ちゃんはお父さんの従弟でお友達だったね。良かったね、“ぼうかんしゃ”になれて」
「え?」
―――傍観者?
「お父さんがわたしに遺したお手紙、………何が書いてあったと思う?」
「………」
彼女が薄汚い口調で罵り合う親族に目を向ける。
「ひとごろしってね、罪が重いんだよ」
その真っ直ぐに澄んだ瞳が、俺の背筋を寒くする。
“娘を頼む”―――
それはこのことだったのか。
数日前に送られてきた短い手紙の内容を確かめる術は、もうない。
―――彼女と共に同じ人間とは到底思えない塊を遠くに見つめながら、俺は無言でその小さな肩に手を置いた。
END.
何が映し出されているのだろう。
人々が行き交う街並み、広く青い空。
はまたま希望、その瞬間の気持ち。
潤っているあなたの澄んだ瞳には
今、何が映し出されているのだろうか。
澄んだ瞳
小学生になってまだ間もない男の子が、人を殺した。
彼の父親が浮気をしていたのだ。その事実を知った母親は怒り、悲しんだ。
次第に両親の仲が悪くなっていったとき、男の子は思いついた。
「おとうさんのおんなのひとがいなくなれば
きっとまたなかよくなる」
そう言った彼は、とても澄んだ瞳をしていた。
【澄んだ瞳】
みんな彼女を好きだった
くるくるの髪の毛、白い肌、自然な眉、
小ぶりな鼻、ふさふさのまつ毛
かなしいと泣き、うれしいとよく笑い、
甘えんぼうで、可憐で、女の子らしくて、
ほどよく賢く、ほどよく天然で、
漫画の主人公のような強さも持っていた
ウエストが細くて、お婆さまはもと舞台人だった
黒目がちなその澄んだまなざしで
無自覚にひとを魅了し、心を許させてしまう
「嫌ってはいけない子」
澄んだ瞳で、彼女は線をひく
あなたは、こっちね
わたしとあの子とあの子たちは、こっち
だってあなたは特別なんだから
澄んだ瞳で、彼女は選んでいく
花一匁みたいに、「そうじゃない」ひとを
ちゃあんと見定めて、優しくハンコを押していく
こわいこわい
澄んだ瞳には近づいちゃいけない
青く澄んだ海の中、ヒカリなんてまるで届かなけれども、もも先生はアリエルたちが住つ幸せのセカイをフルートで表現したの○o。.
「よく見て、素敵ねこれで、もっと完璧。何でも持ってる私はすべて〜』と夏音ちゃんは、照れながら、ナイトメアービフォァーの衣装でうたったの。(眼たんたいをした、ジャック、スケルトン)
何処か夏音ちゃんらしく、クールなツンとして遜らないお姫さま✨
『周り中取り囲むなんて素敵な宝物、陸にあるもの全部取り入れた~』正統派の陽葵ちゃん、登場アイドルなら、まゆゆかな〜✨黑魔女の衣装だ。🧙次は、私のパートだ。ドキドキ💗ならした。
『何に、使うものかも離開らないの。名前も。ねぇ~、これほしい、ニ゙0コもあるの。だけど、足りない、何が…。』呟くようにアリエルの心の声を言った。私の衣装は、赤と黒のセンターで、分かれているピエロ⭐オーバーめのリップをつけて何時もより高い位置のツインテール🎀リボンは、黄色と黒い色。でも、ハートは、あんずのまんま。テーマが百鬼夜行だからね🎵もも先生の番だ🎵
少しはにかみながら『人間の住む国でみたいな。素敵なダンス🎵そして、歩くなんて言った?!。ハイ、あんずちゃん🎵』と、振られた。😯!
『澄んだ瞳の仮面』
幸福の王子って本当に幸福だったのかな?
なんて考えた。
もしかしたらこうだったりして…
【王子視点】
生まれた瞬間この国の運命を背負わされて、小さい頃からパーティーなり勉強なりで大忙し。いつの間にかどういう‘僕’を求められてるのかわかるようになって、〈いい人〉とか〈真面目〉とか表の顔の仮面を作った。ウケが良かったのは、純粋でピュアな王子だったけ。コツはキラキラお目目。
んで、若くで死んだ。
そして、黄金で宝石の瞳をあしらえた僕の銅像が建てられた。そこに魂を宿して国の様子を見てた。
僕が死んだ後、ケイルっていう人が国を仕切ったせいで、貴族と平民の格差が激しくなった。
まだ〈いい人〉の仮面が脱げなくて、助けたいとか思った。せめて僕の金箔とかを届けられたらいいのに。
ある日足元にくりくりとした目のツバメがいた。そのツバメに「澄んだきれいな瞳ですね」と言われた。ツバメに国のことを話したら、「私が貧しい人達に届け物をしましょう」と言った。
さっそく体から金を剥がし、ツバメは飛んだ。足が灰色になった。
次はマントが灰色になった。
そして、マッチを売っていた少女には左目を、森に捨てられた兄妹には右目をあげた。
届け物をした人の黒い瞳は明るく輝く。
ツバメが言った。「良かったのですか?きれいな瞳だったのに。」僕は「いいんだよ。本物の目じゃないからさ。まぁ何かをみることはできなくなったけどね。」って答えた。
そうして3ヶ月が経った。
ツバメが休みたいと言ってきた。
でもまだ苦しんでる人々がいる。もう少し頑張れない?と言って届け物をさせた。
帰って来る頃には目に光はなかった。
次の朝には動かなかった。
泣きたかったけど、目がないから。
届け物ができなくなった今、ここにいる意味はない。僕の魂は天国に行った。
その後、灰色の銅像は鋳物工場で溶かされた。
神が名もなき天使に言った。「この世界で大切な物を持ってこい。」
天使は銅像の溶け残りとツバメの死骸を持ってきた。
神は「正しい選択をしましたね。」って。
僕はその様子を見てた。
そして呟く「ホントかな」
【ツバメ視点】
僕はツバメ。
ちゃんとした名前はないからただのツバメ。でも、自分で考えた名前はある。〈ジャック〉って言うんだ。大きな豆の木を育てた人の名前。生まれ変わったら自己紹介で言ってみたい。
ちなみに僕は国の偉い人(ケイルだっけ)に仕えていて、たまに仕事がある。
ある日、ケイルが「私の国なのに前の王子の銅像があるのは癪だ。どんな方法でもいいから撤去させろ。」って僕に言った。なんか街の人は王子を尊敬してるから撤去できないらしい。
とりあえず、その銅像に行ってみる。魂が宿っているみたいだから話しかけてみる。「澄んだきれいな瞳ですね。」少々猫を被るように言う。銅像は小さくありがとうと言った。少し喋って懐に潜り込もう。そう思った。しばらくして銅像は国のことについて話してきた。そしてなんとかして銅像の金箔を届けたいと言った。僕は考えた。銅像の金が剥がれれば銅像はみすぼらしくなって撤去される、と。だから王子のと届け物を手伝うことにした。金を剥がし、飛び立つ。毎日毎日。宝石の瞳とかも届けた。僕は内心どんどんみすぼらしくなっていく銅像を見て、ほくそ笑んだけど、目論見がバレないよう心配の言葉をかけた。
そうして3ヶ月が経った。毎日国中を飛び回り、僕の体はボロボロだった。休みたいと頼んだが、銅像は僕に届け物をさせた。
それが最後の届け物になるとも知らずに。
でも銅像は、お世辞にも綺麗とは言えない。きっと撤去される。未練はほぼないから成仏した。
その後銅像が撤去されたかはわかんないけど、天国で〈ジャック〉って自己紹介できたからいいや。
おしまい
…この話で本当に瞳が綺麗な人は誰だろう?
なんてね。
僕の暇つぶしに付き合ってくれてありがと。
え、僕が誰かって?僕なんかに名前はないんだ。
…になりたい。
でもパソコン等で目の疲れもあり、定期的にルテインを摂取したりホットアイマスクをする日々。最近少しずつ老眼みたいな症状も出てきて今までのメガネの度数がちょっとだけ合わなくなってきたような…
皆さんも目を大切に♪
テーマ:澄んだ瞳
"澄んだ瞳"
私が高校生だった頃の話。
入学して初めて入った教室。
顔も名前も分からないクラスメイトたち。
私は黒板に貼ってある座席表を頼りに
自分の席へと向かった。
隣の席には、1人の男の子が座っていた。
小柄な男の子で身長は私とさほど変わらないように見えた。
入学して2、3日経った頃。
「学級委員を決めるから考えておいて」と
担任が私たちに告げた。
私は「クラスを引っ張っていきたい」と思い、
その日の放課後、クラスのみんなにやってみたいと伝えた。
みんなは「いいじゃん!やっていいよ!」と言ってくれた。
そんな時だった。
彼も「学級委員をやりたい」と言ってきたのは。
そして、ふたりでやることになった学級委員。
LINEや学校で話をするうちに、私は彼に惹かれていった。
愛くるしい笑顔で話す彼の姿
授業中に寝ている姿
休み時間に男子とふざけて遊んでいる姿
彼の澄んだ瞳に心を奪われた。
それから彼を好きになるまで時間はかからなかった。
彼と会えるから、彼と話せるから
学校に行くことが楽しくなった。
ある日、私は想いを告げることにした。
想いを告げた先に、何が待っているのか。
まだ私は知らない__。
『澄んだ瞳』
そんなに澄んだ瞳で
私を見ないで。
何もかも全部見透かされてしまう気がする。
私はあなたが思ってるほど
綺麗な人間じゃない。
澄んだ瞳を持っている君と、
凛とした僕の瞳はさ、
とても合うと思うんだ。
君は泣いてる時も美しいけど、笑ってる時の顔の方が
僕は好き。
何故か君は遠くに行こうとしてたよね。
僕は必死にとめた。
そんな事しないで、僕が代わりになるからさ。
……あぁ、泣かないでよ
笑っている君が素敵なんだからさ
「澄んだ瞳」
澄んだ瞳の先に見えているのは僕じゃなくてステージで飛んだり跳ねたり踊る彼を写していた。
複数の色のスポットライトが彼を照らしクルクル回る姿に無数の視線が注がれ澄んだ彼女の瞳は、彼に恋してるようにも見えた。
そしてそんな彼女の姿を見ては伏し目がちに瞼を落とした。すれ違う事すらままならない僕の気持ちがまるで泡沫のように消えた気がした。
無数の水泡のように
弾ける音は小さく聞き取れる事など出来ないくらい。
とても小さくパッと消えた。
Altair
(2024/07/31 13:49:36)
『澄んだ瞳』 215
歩いた軌跡だけが残って
足下はすでに薄氷へ
夢だけ見ていた瞳には
鮮やかな白昼夢が焼き付いている
それには気付かぬふりをしながら
今を生きているなんて嘯いた
怖がりのまま夢に浸って
夢を見たまま湖底に沈む
ひび割れた心に染みていく
冷たい水の感触を憶えても
誰にも見向きもされずに
気付いたふりだけしていたんだ
歩いた軌跡だけが残って
怖がりのまま夢に浸って
足下はすでに薄氷へ
夢を見たまま湖底に沈む
夢だけ見ていた瞳には
ひび割れた心に染みていく
鮮やかな白昼夢が焼き付いている
冷たい水の感触を憶えても
それには気付かぬふりをしながら
誰にも見向きもされずに
今を生きているなんて嘯いた
気付いたふりだけしていたんだ
サム君は3歳の柴犬だ。
今日も早くお散歩に行きたいのか、澄んだ瞳で
僕をまっすぐに見つめてくる。
今は太陽がキミの瞳を痛めてしまうかもしれないよ。もう少し日が翳って、お外が涼しくなったら行こうね。
僕の顔を真っすぐ覗き込んでくるから
ちょっぴり心が痛むよ。待っててね。
若者は、大真面目に、真実を見定めると言った。
それを聞いたとき、女は豪快に笑ったのだ。
生きるために、何をすべきか。何を大切にするのか。大切なものを守るために、何を切り捨てるのか。人の数だけ答えがあり、人の数だけ不正解がある。ある人にとっての真実も、ある人にとっては偽りと嘘になる。女はそれを知っている。
だが、若者はそれができると、成すべきだと、女を正面から見つめ返す。それが女には好ましくも思える。かつて女も、信じる道をまっすぐにまっさらなまま歩く未来を思い描いたのだから。
たとえ、若者と自らの道は、今きっぱりと分かたれたのだとしても。
『澄んだ瞳』
澄んだ瞳をして、いろんな世界を見ていたい
童心はずっと持ち続けて
お題『澄んだ瞳』
魔女は、旅先でたまたま訪れた戦場で一人の赤子を拾った。その赤子の目は、透き通った空の色をしていた。
魔女は、思った。
(成長したら、この赤子の目を貰おう)
と。魔女は、実は不老不死の実現のために体のいろいろな部分を他人から拝借しながら生きているのだ。
光の加減で白にも見える金のふんわりした髪を足首ほどまで伸ばして、背は女性にしては高く、出るところは出て引き締まっているところは引き締まり、顔もしわひとつない美しい容姿ではあるが、目が見えにくくなっているのが最近の悩みだった。赤子の髪の色は自分とおなじ色をしていて、一見すると親子に間違えられなくもないだろう。
ならば、自分の眼窩に眼球がこぼれおちないくらいまで育ててある時、その目を奪おう。そう、決めた。
赤子はすくすく成長していく。情を抱くつもりは毛頭なかった。だが、歩けるようになったり、言葉を喋れるようになったりしてどうしてか自然と笑みがこぼれる。
「おかあさん」
なんて、呼ばれた日には魔女の方がおどろいて涙をこぼしたほどだ。
これも気まぐれ、と少女に成長した赤子に魔術を教えようとしたが、少女にその素養はなかった。この世界において、魔術は生まれつき使えない者は一生使えないのである。
悔しくて泣く少女の頭をなでながら、この子が魔術を使えなくてもいいと思った。
その代わり少女は、どこからか剣を拾ってきて毎日それで素振りをするようになった。
「あぶないからやめなさい」
と言っても、少女は「やだ!」と言って言う事を聞かなかった。
少女が成長していくごとに視界がさらにぼやけていく。いよいよ目が見えなくなるか。そろそろ潮時かな。
そう思っていた矢先、外が騒がしくなった。この時に限って、少女は家にいない。ある年になってから、魔女の真似をして長く伸ばしていた髪をうなじが見えるほどに切り落として趣味で着せてたワンピースではなく、動きやすい服装でいるようになり、一人でどこかに出かけることが多くなった。「どこへ?」と聞くと毎回「内緒」と言われる。何度聞いても同じだったのであきらめた。
幸い、少女は家にいない。魔女は、手探りで壁に立てかけてあった杖を探して手に取る。
杖をきつく握りしめ、索敵を始める。周りに敵は一体、二体……否、それどころではなかった。
外から「魔女がいるぞー!」と声が聞こえてくる。
少女が帰ってくる前にどうにかしなければ。
魔女は、扉を勢いよく開け放って外へ出た。瞬間、周りを取り囲んでいた者達が一斉に弓矢を放つ。魔女は杖を地面に突き立てて半円状のバリアを展開した。
だが、その隙をぬって一人の男がナイフ片手に魔女にせまる。とっさに対処が出来なかった。杖に熱を伝わらせてどうにか敵を弾き返すことが出来たが、刺された腹が痛みで熱かった。
周りにすでに気配を感じるのに、視界がぼやけてうまく対処できそうにない。
これで終わりか。その時、魔女の目の前に迫っていた男の断末魔の叫びが聞こえてきた。と、同時に目の前に迫る影。
「助けに来たよ、おかあさん」
いつもの聞き慣れた少女の声だ。ぼやけた視界ではあるけど、生まれたばかりの頃と同じように澄んだ空色の瞳が光みたいに見える。そんな娘が今、剣を手にして魔女を守るように目の前に立っている。
「貴方が来なくても私は大丈夫よ」
「大丈夫じゃないじゃん。おかあさん、もうあまり目が見えてないんでしょ? 私が来たからには絶対に守る。私がおかあさんの目になるから!」
どうしてだろう。小さかった娘の背中はこんなにもたのもしかっただろうか。あんなに欲しかった目の主が今、自分の目になると言ってくれている。
魔女は、使い物にならなくなりつつある目からすこし涙をこぼした。
「見て、見て!キレイだね〜
キラキラしてるねぇ あそこにきっと秘密基地があるんだよね!」
「それでさぁ、そこから妖精が出てくるんだよね〜」
年の頃は4、5歳といったところだろうか…
仲の良い兄妹なのだろう
脱いだ靴はきっちりと揃えて座席のシートに上がり、窓の外を二人で楽しそうに眺めている
時折母親と思しき隣に座る女性を振り返り、ニコニコと笑いかけている
何がそんなにキレいなのかと二人の指差す先を目で追ってみたが、見慣れたいつもの風景が流れているだけだった
それにしても、この子らの瞳の何て美しいこと!
黒目がちのその澄んだ瞳にはキラキラと光が宿り、曇りの一点も見られない
こんな澄んだ瞳だからこそ見える、彼らだけの特別な世界がそこにはあるのだろう
私にだって、こんな澄んだ瞳の頃があったはずだ
いったいいつ頃からその瞳にポツポツと濁点が付き始めたのだろう…
見えているものを見えないと言い、見えていないものを見えると頷き、
見たいものに目を背け、見たくないもでも厭々見なくてはならない大人の事情
そんな風に瞳に映るものに誠実でいられなくなるにつれ、心の眼にもキレイ!が映らなくなってしまったのかも知れない
二人の子供の澄んだ瞳が夏の陽にやけに眩しかった
『澄んだ瞳』
Innocent、という単語は実際英語圏の方からすると「無邪気」「無知」という印象であるらしい。
純粋であるという事は無条件に礼賛されるべきものでもないんだな、と感慨深い気持ちになった事を覚えている。
知れば知るほど、何事も複雑な多面性を持っていることがわかるように、一面しか知らない事は純粋と言えはしても素晴らしいとは言い難い。
今は情報が溢れている世界で、どんな面からの意見もたんまり集められる。
この中から何を拾い上げ、どう判断するか。
何を『澄んだ』ものとするのか。
そこにこそ、まさに自分の、あなたの人間性が
匂いたつように現れるのだろう、と思う。
お題・澄んだ瞳