若者は、大真面目に、真実を見定めると言った。
それを聞いたとき、女は豪快に笑ったのだ。
生きるために、何をすべきか。何を大切にするのか。大切なものを守るために、何を切り捨てるのか。人の数だけ答えがあり、人の数だけ不正解がある。ある人にとっての真実も、ある人にとっては偽りと嘘になる。女はそれを知っている。
だが、若者はそれができると、成すべきだと、女を正面から見つめ返す。それが女には好ましくも思える。かつて女も、信じる道をまっすぐにまっさらなまま歩く未来を思い描いたのだから。
たとえ、若者と自らの道は、今きっぱりと分かたれたのだとしても。
『澄んだ瞳』
7/31/2024, 4:39:46 AM