ももく

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10/16/2024, 12:05:40 PM

 穏やかな日差しの午後、庭のガゼボでひとり本を開く。
 それは、ずっと前からの習慣。
 いえ、どちらかと言うと、願掛けなのかもしれない。
 ここで待ち続けていれば、いつの日か、ここに現れるだろうという、願掛け。
 人生にひとつくらい、どうにもならないことを、ばかみたいに信じ続けてもいいんじゃない。


『やわらかな光』

10/4/2024, 9:42:31 AM

 ここ自体には不満はあれど、あの場所を出たことには、後悔はしていない。
 ひとつだけ、心残りがあるとすれば、まだ小さい孫にお別れを言わずじまいだったことだ。
 いつか。遠い日のいつか。
 また孫に会えたら、あのときのことを詫びようと思う。
 今ごろは、そうさな、この人間くらいの年頃になってるころだろうな。


『巡り会えたら』

9/23/2024, 9:31:29 AM

 誰かに呼ばれている気がして、歩きだしてみた。
 ここがどういう所なのかも、どこまで広がっているのかも、何一つわからない。
 耳を澄ますと、かすかに水の音が聞こえてくる。
 それは草すら生えていない砂まみれのこの世界で、確かに生命が息づいている証拠だった。
 とても澄んだ、どこまでもきれいな水。
 この世界の生命は、自らの命を燃やし、代々この水を守ってきているのだろうか。
 自分たちがどれほど小さな存在なのか、見につまされる。
 この世に生まれてはいけないものなどないのだ。
 その意味が、それぞれによって違うだけで。


『声が聞こえる』

9/15/2024, 8:44:18 AM

 あの子とおれは、一心同体となっちまった。
 あの子がおれをあわれんだからなんだろうが、何でだろうな。おれを助けることにあの子の利点はなかったはずだ。同情されたからとて、あの子がおれにそこまでする必要はなかったはずなんだ。
 そのせいで、おれは囚われ、簡単には死ねなくなっちまったわけだ。
 そしてそれは、あの子にとっても同じこと。
 はたから見たら、面倒くさい関係だ。
 仕方ないから、しばらくの間はあの子に協力してやる。
 俺にかけられた呪いが解けるか、おれの命が燃え尽きるまで。



『命が燃え尽きるまで』

9/5/2024, 6:34:35 AM

 毎日、楽しいけれど、どこか何か足りないような気がしていた。
 それは、この年の子どもにはまったく似つかわしくないこと⸺つまり、わたしは可愛くない子どもだったのかもしれないと今では思う。

 しかしあの時あの場所で、わたしは何かに吸い寄せられ、そこへ向かったのだ。
 何かに呼ばれた、という感覚のほうが正しいのかもしれない。
 そこが水が流れる場所だというのは、少しオーバーサイズの靴がさらわれてから気がついた。
 お母さんに怒られる!
 幼いわたしは我にかえって、流れる靴を拾おうとした。

 ずっと忘れていたこと。
 ⸺思い出したこと。


『きらめき』

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