「見て、見て!キレイだね〜
キラキラしてるねぇ あそこにきっと秘密基地があるんだよね!」
「それでさぁ、そこから妖精が出てくるんだよね〜」
年の頃は4、5歳といったところだろうか…
仲の良い兄妹なのだろう
脱いだ靴はきっちりと揃えて座席のシートに上がり、窓の外を二人で楽しそうに眺めている
時折母親と思しき隣に座る女性を振り返り、ニコニコと笑いかけている
何がそんなにキレいなのかと二人の指差す先を目で追ってみたが、見慣れたいつもの風景が流れているだけだった
それにしても、この子らの瞳の何て美しいこと!
黒目がちのその澄んだ瞳にはキラキラと光が宿り、曇りの一点も見られない
こんな澄んだ瞳だからこそ見える、彼らだけの特別な世界がそこにはあるのだろう
私にだって、こんな澄んだ瞳の頃があったはずだ
いったいいつ頃からその瞳にポツポツと濁点が付き始めたのだろう…
見えているものを見えないと言い、見えていないものを見えると頷き、
見たいものに目を背け、見たくないもでも厭々見なくてはならない大人の事情
そんな風に瞳に映るものに誠実でいられなくなるにつれ、心の眼にもキレイ!が映らなくなってしまったのかも知れない
二人の子供の澄んだ瞳が夏の陽にやけに眩しかった
『澄んだ瞳』
7/31/2024, 4:17:49 AM