『澄んだ瞳』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『澄んだ瞳』
あなたの瞳を見た瞬間思ったの。こんな人だって、幸せを手にするのは。
とても澄んだきれいな目で、素直で夢に溢れたようなキラキラした目。
あなたは次の目標に向かって頑張っているらしい。でもそう簡単ではない。
でもね、大丈夫だよ。努力家で優しいあなたならどんなことでもできるから。離れたところで応援してるね。
・澄んだ瞳
まったく知らない分野の本を読んでいるときは、好奇心に満ちて邪念のない、澄んだ瞳になれる気がする。小さな子どものような澄んだ瞳で、疑いなく吸収していく。
平日休みの日に二度寝しまくり、寝坊しても焦らなくていい、誰にも咎められない幸せ。二度寝だって物は考え様、いやいやこれは瞑想なんだと言い聞かせれば、何となく「やっば。私、いまめっちゃ整ってるやん」感を味わえる。いま流行りの丁寧な暮らしとやらには程遠いが、おかげで頭すっきり、目もぱっちり。素がズボラ気質の私には何ちゃって気分を感じるくらいが丁度いい。
怒涛の一週間にプラスして、昨日夕方から参加したボランティア。老体に鞭打ったせいか何にもする気が起きない。朝兼昼のご飯は冷凍食品様々、チンして揃う所要時間10分足らずの簡単飯でお腹も心も満たされた。
その、澄んだ瞳が欲しい
美しいものだけを見て、尊いものだけを映すその瞳が。
お前は何事にも美しさを見出す。
その瞳。お前が見てきた美しく、尊いものと比べても、お前の瞳には遠く及ばない。
醜い俺にも、お前は美しさを見出してくれるのだろうか?
きっとそうだろう。
お前はいつも、そうだから。
俺は、お前の瞳を、俺だけのものにしたい。
俺だけを、見つめて欲しい。
その、澄んだ瞳が欲しいのだ。
生来の性分というべきか、習性というべきか…
俺は、光を反射したり表面が鏡面のようにつるつるとした物が好きだ。
その中でも万華鏡とビー玉が特に好きで、よく集めたものだった。
最初こそよく眺めていたものだったが、最近は眺めることも滅多になくなってしまった。
その理由の一つは家族が増えたからだが、もう一つにして最大の理由は、間違いなく俺の膝にうつ伏せになって羽繕い待ちをしている此奴のせいだろう。
純白の大きな翼に幅広の細い光輪、おまけに鮮烈な蒼の瞳…
その瞳はまるで穢れを知らぬように深く、美しく澄んでいる。
…いや、穢れは幾度となく見てきたのだが。
それこそ、数度は絶望に心を病んだことさえあって、その際には大概苦労したものだった。
だが、それでも此奴は持ち直し、強くなった。
この瞳が恐ろしいほど深く澄んでいるのは、生まれてから今までの千数百年の間に見てきた全てを受け入れ、赦し、乗り越えてきたが故のものなのだろう。
蒼く深く澄んだ2つの瞳は今日も、全てを赦し、癒してきた此奴の懐の深さを静かに物語っている。
『澄んだ瞳』
目は前にしかついていない。
見たいものをその瞳に映すために。
向き合うために。目を背けないために。
行き詰まったら別の方を向けばいい。
そこに前も後ろも、右も左もないのだ。
私が見る先に、あなたがいて欲しい。
あなたが見つめる先に、私がいて欲しい。
濁りなく、澱みない私の気持ちよ。
どうか綺麗なままで。美しいままで。
どうか、あなたに、届いて欲しい。
窓の外、どこかの木で鳴いている蝉の声だけが部屋の中に響く。外は記録的猛暑日らしいが、クーラーの効いた室内じゃそんなのは関係ない。
虐められ不登校になって二ヶ月目。俺は風呂やトイレ以外部屋からも基本出ない程度の引きこもりになってた。何をするでもなく、ただなんとなく1日を過ごす。
両親は仕事。俺はベットに横になったままゲームするだけ。
ゲーム音と蝉の声だけが部屋の中に鳴り響く。
どのくらいそうしていたか、中途半端に開いていた扉が小さく動いた。細い隙間から部屋の中に入ってきた小さい黒い影。暫くうろうろした後にベッドの前で静かに座った。
ゲームを中断し真っ黒な来客に目を向ける。
「どうした? 餌は母さんにもらったろ。」
にゃーん、とひと鳴きしてベッドへ飛び乗ってきた。
一昨年辺りから飼い始めた黒猫。俺はそんなに遊んでやった訳でもないし、餌だって基本母さんがあげて今日みたいな留守番のときだけ昼分は俺があげてるぐらい。なのになぜか、こいつは俺によく懐いている。
飛び乗ってきた黒猫は俺の周りをぐるっと歩き回った後、再びベットの下に戻った。部屋の外に出るでもその場で眠るでもなくただ座っている。
再び、にゃーんと何かを訴える。黒い体によく映える黄色の瞳でじっと俺を見つめて。
「……わかったから、そんな目で見ないでくれ。」
ゲーム機をベッドにおいて立ち上がれば、ついて来いとでも言いたげに猫は部屋の外へ出て行った。外からまた鳴き声がする。
母さんたちのいる前じゃ鳴かないくせに、俺にだけはやたら話しかけて来る。
澄んだ黄色い瞳に連れられて、数日ぶりにリビングに入る。どこからか引きずり出してきた猫じゃらしで遊んで、撫でてやって、一緒に昼寝して。気がつけば夕方。
俺の姿を見て、帰ってきた母親が嬉しそうに笑っていた。
#7『澄んだ瞳』
彼に見つめられるとなんでも話してしまいそう。
澄んだ瞳をして…で私の嘘を見抜かれているよう。
私は目を逸らす。
けど、彼から感じる視線。
胸がドキドキしてやまないの。
彼のことは何も知らないけど…。
私は恋の熱で溶けてしまいそう…。
でもね、話せないことだってあるの。
今は顔が火照って口が開かないだけだけど。
ごめんね。澄んだ瞳のあなた。
:澄んだ瞳
君は多くの光を瞳孔に集め、キラキラした景色を見ているんだろうか。
彼女は日傘を後ろに倒して上機嫌にはしゃいで笑っている。地面には柔らかい草が広がり、色とりどりの花が花弁を広げ、彼女と共に笑っているかのように小風を受けて首を揺らしていた。第一ボタンまで留られた真っ白なブラウスが春の日差しを浴びて閃き、ふんわり広がる青いスカートが大きく揺れて、後ろで結ばれたリボンが風に乗って見え隠れしている。服すら陽気で朗らかであった。
彼女は笑っている。濁りを知らない透き通った美しい目、澄んだ瞳で。その目で君はこの景色を、この世界を見ているのか。そんなに楽しく見えているのか。
――君の目は美しい。美しくて、いっそ醜い。
ハードダーツを手に取る。無意識だった。金属の先端を瞳目掛けて思い切り振りかぶる。想像より硬い感触、滲み出す血、どこまでも刺さっていくダーツ、笑顔の君。
潰した。醜い嫌悪の対象だからその目を潰した。どこまでも澄んだ汚れを知らない脳内お花畑のイカれたクソ女の目を潰してやった!!!!
ダーツが刺さったぐちゃぐちゃの写真、所々凹んだ床、傷だらけで血が出ている己の手の甲を見て清々しさと苛立ちと憎しみと喜びが入り交じる。取り敢えず手が痛かったから絆創膏を探した。
昔撮った写真はもうデジタルには残っていない。プリントして飾ってある分で最後だ。傷をつけてしまえば二度と彼女を見ることができなくなってしまうということ。これでまた一枚消費した。徐々に部屋から君が消えていく。これでいい、これでやっと満足できる。
ぐちゃぐちゃで血の付いたゴミを拾い上げてゴミ箱に投げ捨てた。
澄んだ瞳でこちらを見ないで
おれにはお前の存在が、眩しすぎる
信じないでくれ、愛さないでくれ
こんなおれなんて見つめたら
無垢な瞳が、汚されてしまうから
「澄んだ瞳」
純粋
透き通った
無垢
まっすぐな
濁りのない
天真爛漫な
ざっとこんなイメージだろうか。
そこから考えると
赤ちゃんや子供が「澄んだ瞳」を持った人と多くの人が思うだろう。
確かに大人になると、嫌なことや醜いことも学ぶ。
たくさんの情報や経験を積むから。
でも。
時として、子供は予想できない行動をする。
加減なく叩いたり、周囲を気にしなかったり。
そんなとき、「澄んだ瞳」とは思えなかったりする。
ではロボットなら。
機械ならではの透明感もある。
余分なこともしないだろう。
むしろ、ロボットの方が「澄んだ瞳」を持っているのかもしれない。
澄んだ瞳
こんなにイメージがたくさん出てくると、
考えれば考えるほどわからくなる。
澄んだ瞳
澄んだ
瞳
赤ん坊の澄んだ瞳はやがて濁りゆく
それを知ってか知らずか人々は赤子をこの世に送り出す
自分なら混沌とした世界でもその子の目を輝かせられると根拠のない自信に満ちているか
それともこの世の濁りを当たり前として疑問すら抱かないほど鈍いか
はたまた罪悪感に己の欲望が勝り決定権のない魂を巻き込むのか
いずれにせよ身勝手なものだ
#澄んだ瞳
アイス買いに行ったんだよね、コンビニまで。
死ぬほど暑かったからさ。
いつも行くコンビニはアパートから5分くらい。
けど品揃えがビミョーなんだわ、あそこ。
だから駅前のコンビニまで頑張った。
そっちは歩いて10分くらい。
チョコミントが食べたかったんだよ。
みんな湿布だのハミガキ粉だのバカにするけど、わかってないな。あのスーッとするのがいいんだって。
自動ドアを出た途端、後悔した。
ダメだ。
暑すぎる。
鍋に放り込まれるタラバガニってこんな気分なのかも。
アイス噛りながら帰ろうと思ってたんだけど、そんな呑気なことやってらんない暑さ。
ビニール剥いた途端みるみる溶けてくアイス。
垂れないように必死で舐めてるうちに、気づいたら、見慣れない路地を歩いてた。
あれ、と思った。
曲がる角まちがえたのかな、って。
住宅街のど真ん中。
ちょっと懐かしい感じのする道だった。
白茶けたブロック塀とか、色褪せたポスターとかから、なんとなくレトロな感じがしたのかもしれない。
チリン、チリン。
どこかで風鈴の音がした。
路地の先からだ。
屋台がひとつ出てる。
屋台と言ってもリヤカーに赤い色褪せたパラソルをさしてあるだけ。
リヤカーの荷台には大きな盥がひとつ。
氷水を張って、青いラムネ瓶がたくさん冷えてる。
ビー玉がぎっしり詰まった瓶もある。
下が膨らんでる、でっかいフラスコみたいな瓶。
ディスプレイ用?
無人販売に毛が生えた程度の屋台だ。小洒落た演出をするようにも見えない。
飲み終わったビー玉を回収してるのか?
ビー玉は色とりどりで、黒っぽいものが多い。あと白。グリーンやブルーもある。強い陽射しにキラキラ光っている。
チリン、チリン。
さっきから鳴ってる風鈴はパラソルの先で揺れてた。
カラン。
盥の中で氷が溶けて、ラムネ瓶が軽くぶつかる。
無性に喉が渇いてきた。
リヤカーの横には、折り畳み椅子をひろげて麦わら帽子のおっさんが1人座っている。
食堂の隅に置き忘れられたような黄ばんだ新聞を読んでいる。
「それ、1本ください」
ラムネ瓶を指して声をかけると、麦わら帽子のおっさんは新聞から顔を上げずに、盥の前を叩いた。
A4の紙が貼ってある。
『✕✕✕✕』
うーむ。読めない。
水滴でペンがにじんだのか、元々達筆すぎるのか。
まあ、どんなにボッタクリでもラムネ1本。タカが知れてるだろ。
500円までなら出してもいいと思ってた。
チョコミントアイスはとっくに棒きれになってる。
とにかく喉が渇いていた。
ポケットへ手を伸ばして、しまった、と気づいた。
スマホしか持ってない。
ダメ元で決済アプリの画面を見せたが、おっさんはチラッと画面を睨んで、面倒くさそうに盥に貼った紙を叩いた。
「買うのか?」と、盥の中からちょっとラムネ瓶を持ち上げて見せてくる。
そりゃ、飲みたいけどさ。
あいにく現金は置いてきてしまった。
仕方ないから、大丈夫です、と首をふった。
諦めて、帰ろうとした時だった。
カラン。
盥の中でラムネ瓶が傾いた。
ディスプレイ用の瓶の中で、ビー玉がコロコロ転がった。
その時、やっと気づいた。
そのビー玉、俺を見てたんだ。
そう。
「見てた」。
ビー玉じゃなかったんだ、瓶の中身。
目玉だった。
人間の。
カラフルだと思ってたのは虹彩で、白い部分は白目だった。
ゾッとした。
全部違う人間の目玉だって、なぜかわかった。
色も大きさもバラバラだから?
この瓶いっぱいにするのに何十人必要なんだろ、持ち主はどうなったんだろって、無意識に考えるのが止まらない。
もう、軽くパニック。
目をそらしたい。けど動けない。
体が凍りついて、金縛りみたいになってた。
だって、わかっちゃったんだわ。
コイツら全員、このラムネ買ったんだって。
瓶の中には青っぽい水が詰まっている。
ぎゅうぎゅうに浮かんだ大量の目玉。
やけに潤いのある虹彩と、少し血走った白目で、じっと俺を見つめてくる。
明らかに、俺に焦点を合わせてた。
目玉ぜんぶが。
「ヒッ」と叫んで、飛びのいてた。
情けない声だったけど、ようやく動けてほっとしてた。
ものすごい突風が路地を吹きぬけて、思わず目をとじた。
目をあけると、見慣れた路地に立っていた。
ラムネの屋台も、麦わら帽子のおっさんも、どこにも見あたらない。
蝉がジージー鳴いている。
むこうの大通りを車が走っている音がする。
あの紙、何て書いてあったんだろうな。
あの時うなずいていたら、どうなってたんだろ。
瓶の中から苦しそうに見上げてた目玉を思い出して、まぶたがチリチリした。
灼けつくように暑いのに、背筋の悪寒が止まらなかった。
この汚い世界。
君にはどう映るんだろう?
その澄んだ瞳は、僕と同じものを見ているのか。
……僕には想像もつかないものが見えているのか。
【澄んだ瞳】
澄んだ瞳
都会から少し外れた街で、赤子が一人、泣いている。
誰も、彼を助けやしない。
飢えかけた彼は、必死に泣く。
ポツポツと、雨が降ってきた。
たとえ、橋の下の河川敷で雨宿りしたとしても、
体は冷える。
だが、しだいに、彼は泣き止む。
真っ直ぐな優しい眼差しを向けられ、
人の温もりを知って。
二人の瞳は、甚く澄んでいた。
君の瞳はブルートパーズ
本当に碧いわけではないけれど
夏の空のような無垢の色を思い起こさせる
まるで貴方は少年のままのようだ
私はその前で居心地悪く 大人のふりをする
背伸びをしていなければいけない気持ちになる
私は瞼の裏に少女を隠して
今 貴方に対峙する
お題:澄んだ瞳
《澄んだ瞳》
僕は多くの人達の中、教会の席に座っている。結婚式に招待されたのだ。
象牙色で統一された礼拝堂の天井には、採光も兼ねた色鮮やかなステンドグラス。
乾燥地帯の多い我が国では特に恵みとされている雨。ステンドグラスの色は、恵みの雨の後に顔を出す太陽からの穏やかな光による虹を象徴している。
荘厳な教会の中は行き過ぎない程度に白い花やリボンが飾られ、静かな中にも明るい空気に包まれていた。
入場した新郎新婦は白地に赤と黒を取り入れた帝国の伝統的な衣装を身にまとい、花婿は太陽を表す金のカフスやタイピンを着け、花嫁は同じく頭上に金のティアラを戴いていた。
儀式も半ばを過ぎ。
壇上で生涯の固い誓いを立てた花嫁と花婿は、向かい合い相手をじっと見つめる。
互いを映すその瞳は、その誓いを表すかのような一点の曇りもない澄んだ眼差し。
花嫁の目から一つ零れた涙は、ステンドグラスを通した色鮮やかな太陽の光を受けて真珠のように輝いた。
そして儀式は終わり、新郎新婦は参列者達から浴びるような祝福の拍手を受けた。
晴れやかな笑顔で祝福を受ける二人の想いは、その瞳と外の青空のように最高に澄み切った物なのだろう。
その美しさに自らの心も澄み渡るようだと、僕も心からの祝福を拍手に乗せた。
いつかきっと、僕もこうして誓いを立てる日が来るのだろう。
それは生涯破られる事の無いよう、強く心に刻んで努めていきたい。
澄んだ瞳
生きのいい魚の見分け方かな?魚の鮮度は目を見ればわかる。死んだ目をした魚は鮮度が悪いってのは有名な話だからな。
しかし瞳の話はお題としては難しい。別の話にするか。
昨日夏が暑いのは湿度と直射日光のせい、みたいなことを書いたけど逆にいえばそのどちらかが欠ければ涼しいという話になる。ある時と比べればの話になるけど。
なので今日は直射日光がなかったから涼しく感じた。外の気温とエアコンをつけてない室内の気温が体感同じくらいだったから今日は三十度くらいか。
なんだかすごい時代になったものだ。直射日光がなければ三十度が涼しく感じるんだからな。もう頭がおかしくなるくらい暑くなってるなこの地球は。
そういえばしつどとおんどって漢字だと同じになるんだな。気付かなくてずっとごっちゃになってたかも。
暑いのはしつどと直射日光、なんだけどおんどと直射日光とも読めたのか。まぁどうでもいいか。
「澄んだ瞳」
幼い頃の純粋で素直な思考も綺麗な物を映す澄んだ瞳も大人になれば全て消えてしまった。純粋で素直な思考は出来なくなり、忖度と相手の顔色を伺いながら毎日を過ごしているし澄んでいたであろう瞳はすっかり濁り、醜いものしか映さなくなってしまった。公園のベンチに座り、一人ため息をこぼす。重苦しいそれは蝉の鳴き声と少年少女らの足音によってかき消された。
自分にもあんな頃があった。真夏だというのに朝から友達と外でひたすら駆け回ってはしゃいで服や靴を汚しては母親に怒られた日々。今ではもう周りの視線ばかりが気になり、そんなことは出来なくなってしまった。
あの頃に、戻りたい。
「3月14日付近に『安らかな瞳』があったわ」
当時も相当四苦八苦したわな。某所在住物書きは過去を思い出し、遠くを見た。
「去年も今年同様、サッパリイメージ湧かなくてさ。そもそも『安らかな瞳』って、『澄んだ瞳』ってどんな瞳よって。鏡見て再現しようとしてさ。
バチクソなアホ面で無事轟沈したわな」
どうせ今回も爆笑して敗北して崩れるぜ。
物書きはカードミラーを手繰り、『澄んだ瞳』を再現しようとして、案の定轟沈した。
ところで、人間の目というのは加齢とともに多少は濁っていく。よくよく澄んでいる瞳というのは、健康的な目の指標にもなりそうである。
ただ昨今、若年層の目の不調も増加の一途を辿っていると聞く。「澄んだ瞳」の維持が求められる。
――――――
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益ゆたかなお餅を売ったり、お母さん狐が店長をしているお茶っ葉屋さんの看板子狐をしたりして、絶賛修行中。
キラキラくりくり、まんまるお目々の澄んだ瞳で、現代の人間を、人間の社会で行きていく化け物を、あるいは幽霊だの何だの■■■だのを、見てきました。
今回は「澄んだ瞳」と題しまして、
コンコン子狐がその目で見てきたエピソードを、
2個ほど、ちょっとだけ、ご紹介しましょう。
まず1個目。
あるときコンコン子狐は、子狐のおうちの稲荷神社でアジサイの花が満開を迎える頃、
神社の参拝者さんがおばあちゃん狐、もとい巫女さんから冷たいお茶とみたらし団子を受け取って、ひと息ついているのを見つけました。
「最近、どうにもツイてないんですよ」
美しい瞳の若い巫女さん(に化けた優しいおばあちゃん狐)に、参拝者さん、言いました。
「ワケ分からないところで仕事をミスるし、この前なんか、危なくアパートの鍵を閉め忘れた」
かといって俺、落ち込んでるワケでもないし。誰かにパワハラ食らってるワケでもないし。
ホントにワケ分からなくて。
参拝者さんは少し、うわのそら。ぽわぽわした心で言いました。どうも、誰かにご執心のようでした。しかもその「誰か」とは、実は両思いだったのでした。
巫女さん、ハッキリ言いました。
「多分あなたが告白すれば全部解決しますよ」
どんがらがっしゃん。参拝者さんがマンガやアニメよろしく腰抜かすのを、コンコン子狐は澄んだ瞳で、一部始終、全部、見ておりました。
そして2個目。
あるときコンコン子狐は、子狐のおうちの稲荷神社でひらひら裏の葉見せる葛の花が見頃を迎える頃、
子狐の餅売り修行のお得意様が、お得意様の親友と一緒に、神社特製の冷やし甘酒とこしあん団子でひと息ついているのを見つけました。
「だからお前、今日は在宅にしておけと、あれほど散々言っただろう」
鋭く力強い瞳の親友さんが、優しく誠実な瞳のお得意様に、言いました。
「ただでさえ暑さに弱いくせに。酷暑手前のこんな日に、仕事優先して無理しやがって」
今日は部屋でこのまま休め。事情は俺が話しておく。親友さんはそう言いながら、甘酒をぐいっと飲み干して、おかわりを注文しに行きました。
「きょうは、仕方がなかったんだ」
雪国出身のお得意様、どうやら暑さで数十分前まで溶けていたらしく、弱々しい声で反論しました。
「あさから会議があるから、そうじと、かんようしょくぶつの整理と、コーヒーの、ほじゅうと……」
ぽわぽわぽわ。 あれ。それから私は、何をしていたっけ。いつこの親友に助けられたのだっけ。
お得意様の上司と他の上司と、他店の偉い人と、ともかく重役ばっかりの会議の部屋を、整えていた話をぽつりぽつり。お得意様、言い訳として言いました。
つまり真面目なのです。要は真面目なのです。
親友さん、お得意様にハッキリ言いました。
「その真面目を自分の体調管理にも使え」
甘酒4杯目。お買い上げありがとうございます。
コンコン子狐は澄んだ瞳で、商売繁盛、冷やし甘酒とお団子が売れるのを見ておりました。
「澄んだ瞳」と題しまして、子狐が見た人間と人間のおはなしでした。
子狐は人間の他にも、アレやらコレやら、不思議な不思議な物だの者だのを見ておるのですが、
それのおはなしは、また今度、またいつか。
おしまい、おしまい。