よあけ。

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:澄んだ瞳

君は多くの光を瞳孔に集め、キラキラした景色を見ているんだろうか。

彼女は日傘を後ろに倒して上機嫌にはしゃいで笑っている。地面には柔らかい草が広がり、色とりどりの花が花弁を広げ、彼女と共に笑っているかのように小風を受けて首を揺らしていた。第一ボタンまで留られた真っ白なブラウスが春の日差しを浴びて閃き、ふんわり広がる青いスカートが大きく揺れて、後ろで結ばれたリボンが風に乗って見え隠れしている。服すら陽気で朗らかであった。

彼女は笑っている。濁りを知らない透き通った美しい目、澄んだ瞳で。その目で君はこの景色を、この世界を見ているのか。そんなに楽しく見えているのか。

――君の目は美しい。美しくて、いっそ醜い。

ハードダーツを手に取る。無意識だった。金属の先端を瞳目掛けて思い切り振りかぶる。想像より硬い感触、滲み出す血、どこまでも刺さっていくダーツ、笑顔の君。

潰した。醜い嫌悪の対象だからその目を潰した。どこまでも澄んだ汚れを知らない脳内お花畑のイカれたクソ女の目を潰してやった!!!!

ダーツが刺さったぐちゃぐちゃの写真、所々凹んだ床、傷だらけで血が出ている己の手の甲を見て清々しさと苛立ちと憎しみと喜びが入り交じる。取り敢えず手が痛かったから絆創膏を探した。

昔撮った写真はもうデジタルには残っていない。プリントして飾ってある分で最後だ。傷をつけてしまえば二度と彼女を見ることができなくなってしまうということ。これでまた一枚消費した。徐々に部屋から君が消えていく。これでいい、これでやっと満足できる。

ぐちゃぐちゃで血の付いたゴミを拾い上げてゴミ箱に投げ捨てた。

7/31/2024, 3:31:29 AM