理解して理解してって理解して理解しろ理解して。
わかってなんでなんで分かれ分かってちょうだい。
理解して理解して分かって分かって。
ちょっとゆがんだハサミ、ねえお前とのつながり真っ二つ切れない。
どうせ求められてないことも知ってるどうせ浸っててほしいんだろ。どうせいつまでもお前は僕と“一緒”だと思いたいんだ。なら理解して理解して理解して理解しろ分かってちょうだい。
縋るな縋るな縋るな縋らないで縋るな。足を引っ張るなお前は邪魔だ。いつまでもいつまでもいつまでもヘドロの中で溺れておけ。救済なんてしないしないしないしない知るかよ。お前が俺を助けてくれるわけじゃないなら逆も然り。助けない縋るな縋るな縋るくらいならもっと溺れて他所のやつに目をつけろ僕に構わないでちょうだいね。
掴んだ足首ドロ汚れ、タトゥーはとれないよ。
取れなくたっていい今その手を切り落とせるならどうでもいい。お前もお前もお前も知らねぇ赤の他人が同じだと思うな!!
同じだと
同じ
同じ
お前も
「俺とお前は違う人間だから」
おんなじじゃないか、一緒が良かった、それは僕
お前は違う。お前じゃない。お前は縋るな。
僕が求めてるのは僕自身だ。
お前は違う。
僕は僕に振り向いてほしい。
いかないでいかないでいかないで行くないかないで。僕、僕に手を握ってほしい、僕の手を切り落とさないで。はやく僕のもとへ、僕。
そっと、そっと。
優しさに触れた記憶がない奴でも、人並みに優しくなれたりするのだろうか。人との心の繋がりが分からない奴でも、人と繋がろうとさえ思えばできるだろうか。
そっと、そっと。
誰かに声を掛けることができるだろうか。口から出任せではなく「ありのままのあなたでいいんだよ」と言ってしまっていいのだろうか。
そっと。
「いつからか忘れていた」わけではなく最初から知らずに来てしまった。
今更、そっと。
今更だとこぼしておいて「今更だからこそ」と思ってしまった。僕は変わってしまえたのだろうか。
平常心目指しててんびん座
雲の上ふわふわ sosのぽっぽっぽ
おとぎ話与太話
唇真っ赤になって皮ベリベリ
お釈迦様脳内お散歩中
お陀仏になる脳みそ食べちゃって
餌付けされてるの嘔吐いちゃって
どこかの世界 sos 星のかけらから発信中
訪れない音ズレないノイズになっちゃうな
コロコロワイヤレスイヤホン
繋いでいてね心臓も
導線どうせ絡め潰しちゃう
愛も時間もお金もキリキリ有限
無制限プラン天使の輪っかは電池切れ
真っ逆さま不眠不休デリュージョン
両の手びちょびちょ sosのぷぷぷのぷ
ペルセポネ
秋が進み木々たちは黄葉を身に着け始める。秋の葉を噛む想像をすると甘酸っぱい味が口の中に広がった。
あのザクロの味を思い出した。そしてあの美しい髪をも思い出してしまった。
ザクロ四粒分の月日、縛られたままだ。
連日同じ夢を見ている。
手を取り合いながら二人、海中に浮かんでいる。ここは薄暗く何もない。弾けて消えゆくあぶくが私たちを包んでいるだけ。
何もない、しかし全てがここにあった。
ここが私の全てだと思った。
突然あなたに強く腕を引かれ、向かい合う。とん、と軽く肩を押され体が沈む。沈んだ際に生まれた微かな風が私の黒く長い髪をふわりと押し上げ、あぶくが私たちを撫で包んだ。
光が降り注いでいる。あなたの長く美しいブロンドの髪は揺らぎ広がってゆく。降り注ぐ光と長い髪が光輪となり、微笑む様は女神の如く、ステンドグラスの前に佇む石膏と瓜二つ。あなたの瞳はどこまでも慈しみに溢れ透き通っていた。
熱心に祈りを捧げる誰かの気持ちを今しがた理解した。
瞠目する。 何に?
辺りを漂う己の髪が徐々に上昇してゆく。掴もうと手を伸ばしてみるも髪は指先をすり抜け揺れ笑う。引き千切ってしまおうと漸く掴んだ時、手の甲にそっとあなたの手が重ねられた。あなたは私の髪を手ごと掬い上げながら、光を含んだ美しいその目を細め、囁いた。私の名を。
見開く。息が苦しい。
海中ではなくベッドにいて、髪は枕に広がっていた。幸福の中を漂い、嘯くあなたを描き出し、飽きもせず底冷えするような朝をまた迎えた。
まばたきをしてぼと、と枕に涙が染みる。
彼女は、そんなことしない、彼女は、あんなこと言わない、彼女は、ちがう。
都合の悪い夢を見ている。
手洗い場の鏡に映る己の顔が酷く醜い。血の気が引いた青白い頬、震えるかさついた唇に、どこまでも黒い瞳。
――――あなたの髪、すごく綺麗。艶があって、透き通っていて、さらさら、揺れて……とても素敵ね。……そうだったの、生まれつきなのね。ああ、よく見たらあなたの瞳、綺麗なブラウン……美しいわ、とっても。
ああ、嫌だ、昔あなたに掛けた言葉を思い出してしまった。何が綺麗だ、何が美しいだ、何が。
勢い良く水を出し手のひらに溜めては顔に押し付ける。果てに溺れ死にたくなった。冷水で顔を洗っても気分は晴れない。髪を纏めることもせず水を浴びたせいで顔に、首に、纏わり付いた髪の感触が気持ち悪い。袖をまくっていなかったために布が手首に巻き付いてくる。
ぎょろりと見上げた鏡に映る重い黒髪。
――――バカみたいだ。
ハサミに手を伸ばす。切り刻んでしまいたくなった。
お揃いになりたかったのか、憧れたのか、それとも願掛けだったろうか。どちらが言い出したか始まりが何だったかは曖昧で、今更こじつける理由もない。ただ髪を伸ばしていたという事実があるだけだ。
これは失恋ではない。断じて違う。
ザクロを持ったあなたを迎え入れてしまったあの秋の夜。開いた窓に射し込んだ眩い月光が部屋を照らし、机に置かれたザクロを微かに照らしていた。吹き込む秋風にさらわれた髪を、あなたに捕らえられたあの時。噛み締めた四粒のザクロの味を、掬い上げられた髪を、綺麗だと囁かれたこの髪を、震える手に重ねられたあなたの手の感触を、名を呼ぶその声を、月の映ったブラウンの瞳を、瞠目する私が映ったその瞳を、愚かな私を、全て――――あれは、幻だった。
あれは、私が作り上げた虚構。
不都合な微睡みを知ってしまった。不都合な幸福を知ってしまった。その何もかもを断ち切って、あれは幻だと脳にメスを入れて、悪夢に魘される日々ともさようなら。
私に愛を囁くあなたなど。
付け焼き刃を握りしめてしまえ。
ざく、ざく。
できるならこのまま排水口に流してしまいたい。あの秋の夜のあなたの指も、目も、声も切り刻んで、零れる涙も切り刻んで。
ざく。
思い出してしまった。醒めてしまいたい。
ざく。
どうか、彼女の目が、喉が、腫れてしまいませんように。どうか彼女の身体がやつれてしまいませんように。どうか彼女の美しい髪が傷んでしまいませんように。どうか、二度とまやかしを囁くな。
ざく、ザク。
口にしてしまった。
全部、全部、悪い夢よ。
こんなにも醜い髪を褒める彼女なんて。
人々が言う「幸せ」など切り刻みたい。
幸せなんて不幸そのものよ。
――――ざく、ざく。
秋が終わる頃、髪を切った。
初出:2024/11/15
加筆修正:2025/01/05
センスが良いな、と思っている人は、かわいいイラストが描けて、色彩センスがあって、服装もお洒落だし持ち物もお洒落。構図を取るのも上手いから写真を撮るのも上手だし、写真の加工もできる。機械をいじるのも上手だからパソコンの設定とかゲーム機をつなぐとかスマホの扱いも上手。手先が器用で羊毛フェルトで可愛いくまさんを作っていたし、イヤリングもハンドメイドできる。料理やお菓子づくりもできて、美味しいし、見た目もきれいだし、盛り付けやラッピングまでお洒落。
素敵な人だなって思う。
僕はなんにもできない。
かわいいイラストは描けないし、かといってかっこいい絵画を描けるわけでもない。色彩センスもあんまりなくてファッションセンスもない。服装の組み合わせが下手だし、持ち物もごちゃごちゃしてる。写真を撮るのも編集するのも苦手。そもそも機械系に弱い。ケーブルが1本でもよく分かっていないのに2本になった途端さっぱりだ。手先が器用じゃないから羊毛フェルトでくまさんを作ろうとしてカチコチのピーナッツが出来上がった。イヤリングなんて作れたもんじゃない。料理をすると辺りをビチョビチョにするし、りんごを綺麗に切ることもできなほど包丁の扱いは下手だし、お菓子を作ると硬くて味も見た目も微妙なものができあがる。ラッピングもぐちゃぐちゃ。
でもね、なんにも気にしてない。「こうやったらできるはずでしょ」「どうやってるの?変なふうにしてない?説明書ちゃんと見てる?」「本とか読んでる?」「それはこうしたらいいんだよ」ってアドバイスされて、余計悩んだし苦しんだ。どうして人の言う通りにできないんだろう、どうして人よりできないんだろうって。でもね、僕、上達したいなんてこれっぽっちも思ってないからなんだと思う。僕自身が心から上手くなりたいと思ってないんだと思う。下手なままでもいいかなって思ってるんだって、気づいた。上手くなれたらそれはそれで嬉しいけど、下手なら下手なままでもいい。
だって絵が描けなくても、色彩センスがなくても、ファッションセンスがなくても、機械に弱くても、手先が器用じゃなくても、料理やお菓子づくりが下手でも、ラッピングができなくても、僕、日の出をぼーっと眺められるだけで幸せだから。それだけで十分だから、できないことは、できないなりにやればいいと思うんだ。
上達しなくたって上手くできなくたって全然気にしてない。そう言うと「本当は気にしてるけどできないからそう言って逃げてるだけだろ」って言われるけど、本当に気にしてない。
可愛く描けなくてもお絵描きはできるし「あはは、何この変な絵〜」って自分で笑えるし、バランスが悪くてもそれもまた一興ってやつだと思う。色彩センスがなくても「う〜ん変!」って思いながら、でもこれが僕らしさなんだって思える。機械に弱くて設定ができなくても一生懸命ちょっとずつ説明見ながら、何度失敗しても頑張れば、そのうちできるよ。2日かかったっていい、出来なかったら、それはもう仕方がない!だって僕、下手なんだもんなぁって思えばいい。それで、また困惑しながら頑張ればいい。いっぱい調べたら誰か親切な人が教えてくれてるから、そこに辿り着ければそのうちできるよ。できなかったら、ヘルプセンターに問い合わせ。できない人がいるから、そのためのヘルプセンターじゃないか。有り難く助けてもらう。手先が器用じゃなくても、へんてこなものが出来上がっても「これが僕クオリティ!」で終わっちゃう。だって、楽しいから!不器用で、完成したものが下手と呼ばれるようなものでも、僕は、作業してる時にすごく楽しいと思ってる。結果が悪くても、それも僕らしさ。野菜を洗って辺りを水浸しにしても拭けばいいだけだし、パスタがベチャベチャになっても「新しい味わいだな」と思いながらそのまま食べればいいだけ。りんごを綺麗に切れなくても、切れはするから、そのまま食べちゃえばいいだけ。お菓子の見た目が悪くても「へへ、ガタガタ〜」って思うのは思うけど、だからって気にしない、胃に入れば同じだ。多少硬くても噛みごたえがあるって思えばそれで済むし、パサパサでも「う〜んパサパサ!」って思いながらジュースと一緒に食べちゃえばいい。ラッピングがぐちゃぐちゃになっても、ラッピングするのが楽しいから、それで満足。
僕は僕で、素敵な人。
僕、なんにも困ってない。困ってるけど、困ってない。人より鈍くさくて工程が3つ4つ5つって増えても、やればいいだけ。やるのが嫌でも、僕、どうしようもないほど不器用だから、器用になるのを目指すより、増えた作業を一つ一つこなす方が早く済む。上手じゃなくても、完璧じゃなくても、下手でも、下手なりにやればそれで良し。
僕、ベランダから日の出を見られるだけで幸せだから、人より劣っていても別にいいんだ。日の出を見られて幸せと、自分が人より劣ってることが、どう繋がるのか僕自身も分からないけど、日の出が見られるだけで幸せだから、なんでもいいんだ〜。今日の日の出も綺麗だった、明日の日の出も楽しみ。僕、とっても幸せ。