『澄んだ瞳』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
自由で
羨ましい
と
木を見て森を見ず
の
君の言葉
こんな
がんじ絡めな
私を
鳥かごの中の私を
裸になった本当の私を
貴方は知らない
理想の人生から
道外れた君は
勝手に形作った
理想の私を
幻想の中の私を
存在しない私を
愛している
「鳥かご」
目の前にある、美しく愛らしい顔。
そんなはずがない。だってその最期に、実際に見た君の顔は……あんなにも、無惨だった、のに。
君の頬に手を伸ばす。確かにこの手に触れたそれは、しかしどこか陶器のように滑やかで、その目は翠玉がはまっているようにすら見えた。
自作小説『有り得た(かもしれない)話』より
【澄んだ瞳】
澄んだ瞳であなたは私を見つめた。
あなたの瞳に私が映った。
ねえ、その目に私はどう見えてる?
澄みきった瞳に問いかける。
あなたはもう、そこにはいない。
遺されたこの瞳に、いつまでも問いかける。
いつまでも、いつまでも。
澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめられたら、泣きたくなった。
大事にしまっておいて、時々取り出しては、光の下で眺めたくなるビー玉みたいに透き通った瞳。
自分の言ったことが、普通じゃないなんて、ちっとも疑ってない。
だったらこっちが間違ってるって、その方が全然マシだった。
そんなんで成り立ってる世界ってなんだよ。
言っても伝わらないの分かってる。でも、しょうもないひとり言くらい、言わせて。
ノスタルジックを感じたくて
少し大げさに
ラムネ瓶を傾ける
カロン、と
ビー玉がなく
その主張に
昔飼ってた
猫の瞳を思う
宇宙の果に繋がっていそうな
澄んだ瞳は
いつだって泣きたい僕に
静かに寄り添ってくれた
にゃーん…
カロン…
[ラムネ瓶のビー玉と猫]
「澄んだ瞳」
みゃーと鳴いたにゃんこ。
ご飯くださいって見上げる瞳は、純粋だな。
かわいい。
本能で生きる小さな命。
保護した小さな子は、
お腹をすかせ無心に鳴いている。
澄みきった瞳は、生きるために
見上げる。
ここはきっと夢ん中や。こんなん現実なわけが無い。
どこまでも果てがない、だだっ広い空間。色は見渡す限り白。そこにポツンと「人は」自分1人。
「人は」言うたんには訳がある。人やないもんが同じ空間にいてるから。
大きい眼がこっち見てくる。直径1mくらいの眼球が1つ、宙にプカリと浮いてる。瞳がこっち向いてるから、わたしはこの眼に見られてる、そう判断した。
これはたぶん、人の眼。瞳の色は緑。カラコンってわけやなさそうやから、たぶん外国人。瞼もないから情報は以上。でも何や少し見覚えがある気がする。
さて、どうしたもんか。
眼の後ろがどななってるんか気になって見てみようとしたけど、眼の方もこっちの動きが気になるみたいで、ずっとこっちを見てくる。どんなに走っても走っても、結局、見つめ合ったまんま。
しゃあないから、諦めて寝ることにした。走りまくって疲れたし、もうこれ以上、何もすることないんやもん。
眼に声を掛ける。「疲れたし、わたし寝るわ。アンタのその瞳、めっちゃキレイな。オヤスミ。」
おはようさん。おばあちゃんに声掛けられて目が覚めた。ほら、やっぱり夢やん。
どないしたん、それ。って、おばあちゃんが笑いながら言う方を見たら、布が被せられた箱。その時気付いた。そうや、あの眼、この子やん。
布を取って改めて対面する。キレイな緑の瞳。「ゴメン。わたしが布なんか被せたから、気になって夢ん中まで見に来たんやんな。もうこんなことせえへんから。ほんまゴメン。」「やっぱりアンタのその瞳、めっちゃキレイな。」
おばあちゃんが後ろで、朝ごはんにしよか、言いながらカーテンを開けた。
緑の瞳がこっちに向いてキラリと光った気がした。
―――Bisque doll
#27【澄んだ瞳】
彼女の澄んだ瞳がわたしを捉えていた。
黒髪に黒い瞳、似合っていない薄いだけのメイク。耳や手、首元に装飾は一切ない。ダサいようにも見えるシンプルな服。
わたしはこんな子に負けた。いや、こんな子だからわたしに勝てたのかもしれない。
大学生になってすぐ茶色に染めた髪、カラコンは必須だし、ナチュラルに見せるためのメイクも毎朝一時間以上かけて作っている。アクセサリーもファッションも流行は逃さないし、SNSに乗せればいいねは三桁に昇る。
こんなわたしだから、こんな子に負けたんだ。
わたしが一生懸命気を引こうとした彼の心を、彼女は無意識のうちに射止めてしまった。
神様がもしこの世にいるのなら、わたしは弓を引いて殺してしまおうと思う。
だって、ずるい。こんなに努力したわたしが、素のままで生活するだけの彼女に負けるなんて。
「こんなこと思うから、負けたんだろうなあ。」
わたしの言葉に彼女は首を傾げた。
全然可愛くないし、様になっていないのに、彼女が彼を射止めた理由が分かってしまうような気がする。
澄んだ瞳
妹は言う、お兄ちゃんね赤いのだして動かなくなっちゃったの。
母は泣いていた、弟からは臓器が飛び出していた。
妹の瞳を見ると、好奇心にあふれていた。
妹は、弟の臓器を手に持ちまるでおもちゃのように遊び始めた。
それをみた母は妹を悪魔の子、そう呼んだ。
これが、後にこの村に伝わる伝説。
澄んだ瞳をもつ悪魔の子。
澄んだ瞳
その人は黒い羽を持っていた。
黒々と艶やかに光るその羽は見る者を魅了する。しかし、同時に忌み嫌われていた。
「天使なのに、羽が黒いだなんて……」
「あんなの堕天使と同じじゃないの」
そんな言葉が投げかけられる中、その人はまるでその言葉たちが聞こえていないかのように構わず歩き続ける。
教会に辿り着くと、その人は他の者と同じように神に祈りを捧げた。誰よりも長く、祈り続け、やっと目を開ける。
まぶたに隠されていた澄んだ瞳からは、涙が一筋こぼれ落ち、そのまま羽へと落ちていった。
涙が落ちたその何センチにも満たないくらいの丸が、一瞬だけ白く輝く。元の羽の色はとても美しいのに、まるで色が侵食していくかのように、黒へと戻っていく。
ああ、たとえ羽が黒くても、その人はたしかに天使なのだと改めて思った。それと同時に、羽が黒いから、と見た目で判断してしまう愚かな自分のことを恥じたのだった。
澄んだ瞳
ある子はゲームの前で
またある子は絵の前で
私は君の前で
君は何の前で
その澄んだ瞳を
するのだろう
「この子は、さっき死んだこのお兄ちゃん。妹が死んだことにも気づかずに死んでいくのは可哀想だから、せめて死体は見せてあげましょうか」
5歳児とは思えないような残酷なセリフを吐いて、弟は死にかけの兄を妹の死体に近づけた。なんてことはない、花壇の縁に列を作っていた蟻のことだ。兄と妹と言うのは弟が決めた妄想である。幼さ故に善悪の区別がつかず、キラキラとした笑顔で蟻を潰している。
「ねぇ、蟻さんが可哀想だからやめてあげなよ」
当時7つだった僕は、道徳の授業で命の大切さやらを学んだばかりであった。兄として、弟の誤った行為は正さねばならぬと正義感に燃えていた。ただし、その顔を見るまでは。
「にぃにもやる? 楽しいですよ」
振り返った弟は、あまりに澄んだ瞳をしていた。僕は本能的にその瞳に騙されると感じて、急いで目をそらし「や、やらない」と情けなく呟いた。
弟は、成長した今も時々、その目を見せる。
「澄んだ瞳」
去年の夏の終わりのことです。
お祭りで2コ上の先輩に中学時代ぶりに会えて、お話させていただきました。
もう憧れの先輩で、綺麗で聡明で、部活のこと、丁寧に教えてくれた恩もあるし、本当に完璧な人なんです。
会話のはじめの方は緊張もあって目も合わせられないでいたんですけど、勇気をだして目線を向けてみようとしてちらって目を向けたんです。
偶然にもそのときちょうど先輩もこちらに視線を向けてくれていて、ぱっと目が合いました。
その刹那、時計の針が止まりました。このときばかりは喩えが、本当でした。
一拍間を置いてすぐに胸の鼓動が激しくなりました。それは立っていることすら苦しいほどに心を熱くさせました。お酒を知らないわたしですが、酩酊とはきっとこのことを言い表すのだと思います。
中学時代よりも大人びていて、でも子供のように朗らかに笑う先輩。不意をつかれました。
その瞳の綺麗なことは、わたしの未熟な語彙では言い表しようがないです。もはや銀河でした。映された情景のそのひとつにわたしの姿があることが何より嬉しい。
あの立姿あの笑顔あの声色。わたしの心を、もう移ろいかけている夏の季節の中に閉じ込めてしまうほどにそれは叙情的でありました。
お祭りの雰囲気も相まって、どこか刺激的で、その場へ心身ともに溶けてしまいそうでした。いや、もう半分くらいは溶けていました。陶酔しきっていました。
きっと先輩への感情は憧憬だとか恋情だとかはっきり言いきれるものではなくて、だからこそこうも惹かれてしまうのかもしれません。
先輩は今年から東京の大学生になりました。でも、お祭りのときには戻ってきてくれるそうです。
また会えると思うと、それだけで毎日が嬉しいです。
澄んだ瞳に当てられて、気がつくと私の右手にはスカイミラージュが握られていた。
「おじちゃん、ありがとう!!」
姪っ子はビー玉みたいな小さい瞳をキラキラさせて、私の元へ抱き付かんとばかりに駆け寄ると、そのままスカイミラージュを奪い取り去っていった。
姪っ子はたぶんこの後母親にこっぴどく説教され、代金を返しに来ることになるのだろうが、もはや私にはそんなことどうでも良かった。
あの子はスカイミラージュだけではなく、私からとんでもないものを奪ってしまった。
それは、わたしの心だ。
<澄んだ瞳>
そのキラキラしてる純粋な瞳が
苦手だった
自分の醜さを見せつけられてる気がして
でも本当はそんな君に憧れていたんだ
澄んだ瞳をもつあの子に私はどう映っているのだろうか。
私のこと見透かされそうで、無邪気に指摘されそうで、“メガネ“をかけている大人と話すよりも緊張する。
私も澄んだ瞳を持ち続けたかった。
いつも自分を取り繕うことしか考えない私が嫌い。
「澄んだ瞳」
あなたの瞳に映されて
私の心は丸裸
悲しい気持ちの奥底に
揺らぐ炎は怒りに満ちてる
あなたの瞳に映されて
ただ怒りを募らせている
あなたはただ澄んだ瞳で
鏡のように私を見せた
それだけで涙が溢れる
私は惨めだ
醜い
悲しい
弱く震えて
何もできない
私を映さないで
どうせ何もできないなら
ただ
私を晒さないで
澄んだ瞳に映る私は
恥ずかしくて
ただ小さく丸くなって消えていくんだ
澄んだ瞳
あの、すべてを見透かしているような、濁りのない澄んだ瞳が嫌いだ。まるでぼくのすべてをみているとでも言いたげな美しい瞳。目が合うたびにその瞳が恐ろしく、同時に惹かれていった。
でも、ぼくときみじゃ住む世界が違う。いつその宝石のような瞳が見られなくなるかも分からない。ぼくは教室の隅でぺらぺらと興味もない本をめくるような人間。きみは、自然と人が集まるような選ばれた人間。あはは、ぼくは何を期待していたんだろう。君の瞳が綺麗だ、なんて伝えられるわけないのに。
放課後、いつものように雑用を押し付けてきた一軍様はカラオケに行くらしい。ぼくは教室をきれいにする。まあ、特にやることもないし別にいいんだけどね。さて、といつものように掃除用具を取りに行こうとした。そこには、きみがいた。普段うつむいているせいか気づくのが少し遅れた。あ、いつもより君の瞳が近くにある。夕日が反射してすべてをひきつけてしまうような吸い込まれるような澄んだ瞳。
分かってる。話しかけちゃいけない。いや、話しかける勇気なんてない。ぼくは、ただの、臆病もののモブですから。
「掃除、頑張ってるんだね」
きみが話しかけてきた。おそらく、ぼくに。
「きれい好きなんだね。毎日掃除してくれてるから、お礼を言いたくて」
好きで掃除やってるわけじゃない。ただ、暇だったから。なんて言ったら失望されそうで俯くことしかできなかった。
「あのさ、私も手伝っていい?」
反射的に顔を上げてしまった。きみと目が合う。ああ、やっぱり
「やっぱりあなたの目ってきれいだね」
きみが言う。ぼくがきみにいいたかったこと。きみがぼくに。あれ、逆じゃないか
「…きみの瞳のほうがきれいだと、ぼくは思う。」
あ、しまった。さらっと口からこぼれてしまった。また、顔をきみから背ける。なんて返されるだろう。気持ち悪いと言われるだろうか。嫌だな。なんであんなことを。一人でどんどんと陰気な気分になっていた。
それでも長いこと返事が返ってこないからおそるおそる顔をあげてみた。顔を赤らめて可愛らしいりんごのように頬を染めているきみがいた。
なにそれ。その顔は。そんな、そんな反応はまるで
澄んだ瞳。
カラコンしてるんじゃ
ないかってくらい
茶色い瞳。
私と同じくらいの
目の悪さなのも
かわいいと
思える。
あの瞳で
見られたら
嬉しくて
ドキドキする。
彼女の瞳に花火が映る。
澄んだ瞳にキラキラと光る。
一瞬の静寂のあと、ドッドッドッと音が来る。
どうにかこの音を誤魔化してくれ、爆発。