澄んだ瞳
その人は黒い羽を持っていた。
黒々と艶やかに光るその羽は見る者を魅了する。しかし、同時に忌み嫌われていた。
「天使なのに、羽が黒いだなんて……」
「あんなの堕天使と同じじゃないの」
そんな言葉が投げかけられる中、その人はまるでその言葉たちが聞こえていないかのように構わず歩き続ける。
教会に辿り着くと、その人は他の者と同じように神に祈りを捧げた。誰よりも長く、祈り続け、やっと目を開ける。
まぶたに隠されていた澄んだ瞳からは、涙が一筋こぼれ落ち、そのまま羽へと落ちていった。
涙が落ちたその何センチにも満たないくらいの丸が、一瞬だけ白く輝く。元の羽の色はとても美しいのに、まるで色が侵食していくかのように、黒へと戻っていく。
ああ、たとえ羽が黒くても、その人はたしかに天使なのだと改めて思った。それと同時に、羽が黒いから、と見た目で判断してしまう愚かな自分のことを恥じたのだった。
7/30/2023, 2:23:55 PM