彼女の澄んだ瞳がわたしを捉えていた。
黒髪に黒い瞳、似合っていない薄いだけのメイク。耳や手、首元に装飾は一切ない。ダサいようにも見えるシンプルな服。
わたしはこんな子に負けた。いや、こんな子だからわたしに勝てたのかもしれない。
大学生になってすぐ茶色に染めた髪、カラコンは必須だし、ナチュラルに見せるためのメイクも毎朝一時間以上かけて作っている。アクセサリーもファッションも流行は逃さないし、SNSに乗せればいいねは三桁に昇る。
こんなわたしだから、こんな子に負けたんだ。
わたしが一生懸命気を引こうとした彼の心を、彼女は無意識のうちに射止めてしまった。
神様がもしこの世にいるのなら、わたしは弓を引いて殺してしまおうと思う。
だって、ずるい。こんなに努力したわたしが、素のままで生活するだけの彼女に負けるなんて。
「こんなこと思うから、負けたんだろうなあ。」
わたしの言葉に彼女は首を傾げた。
全然可愛くないし、様になっていないのに、彼女が彼を射止めた理由が分かってしまうような気がする。
7/30/2023, 2:27:07 PM