『涙の理由』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
午後の穏やかな日差しが、眠気を誘う。
閉じそうになる瞼を、微睡む意識を繋ぎ止めるため、頭を振った。
それでも、少し経てばまた瞼は重く、微睡んで。
仕方がないと、読んでいた本を閉じた。
これはもう、少し眠ってしまった方が良いだろう。
欠伸をひとつして、伸びをする。
本を手に立ち上がると、丁度良く兄が帰宅したみたいだった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
いつものように挨拶を交わせば、穏やかに笑んで挨拶を返してくれる。
しかし、その笑みはこちらを認識して、訝しげなものへと変わった。
「泣いていたの?」
側に寄り、目尻を拭われる。
さっき欠伸をした時だろう。その指先についた滴に、またかと苦笑し首を振る。
「本、読んでたら暖かくなって、眠くなってきちゃった」
「夜更かしするからだろう」
「そんな事ないと思うけどなあ。ちゃんと日付が変わる前にはベッドに入ってるよ」
兄はいつもこうだ。
心配性で、過保護。
昔から少しでも泣けば、すぐに側にきて心配し、泣く原因を取り除こうとする。
まるで、泣く事を恐れているみたいだった。
その心配が、いつからか息苦しくなる時があり、以前よりも兄が苦手になってしまっていた。
だから進学を機に、兄から離れようと一人暮らしを選択したはずなのに。
何故か一緒に暮らす事になってしまった理由は、未だによく分からない。
「でも、最近夜中に起きているじゃあないか。眠れないの?」
気づかれていたのか。
どうしようかと、表情には出さずに悩む。
正直に嫌な夢を見ると言う気にはならなかった。
眠れるようにとあれこれ世話を焼かれるのも嫌だし、言って夢の内容を詳しく聞かれるのも嫌だ。
「早く寝過ぎちゃってるのかも。もう少し起きていようかな」
「そんな訳ないだろう。途中で目が覚めるというなら、悪い夢でも見ているのかな」
「どうだろう。よく覚えてないから分かんないや」
相変わらず、兄は鋭い。
曖昧に笑って誤魔化すが、おそらくそれすらも分かっているのだろう。
小さく息を吐く。兄から少しだけ視線を逸らして。
「兄さんがいつまで経っても独り身だから、それが心配なのかもね」
嘘でも、本当でもない答えを呟いて、自室へと戻った。
目はすっかり冴えてしまっていた。
今日もまた、同じ夢を見る。
暗い部屋。
その奥に積み上がる、たくさんの同じ顔をした人形達。
目の前の、無表情の兄。
「なぜ」
冷たい指先が、目尻をなぞる。
「なぜ、泣く」
指先を濡らす涙は、止まる事はなく。
声もなく、表情ひとつ変えずにただ涙を流す。
もう、これしか出来ないからだ。
声もなく、四肢の自由もない自分には、もうこれだけしか意思を伝える術がない。
「また失敗か」
無機質な声音。
涙で濡れた手が首を掴み、そのまま引きずられていく。
部屋の奥。さらに深い暗がりに積み上がる人形の数が、また一つ増えた。
いつまで繰り返すのだろうか。
すでに兄の目的は達せられたはずだ。
彼女を取り戻すために、代価品として元のこの身を燃やしたのは兄だろうに。
何故、今更。
燃え滓を集めた所で、元には戻る事など決してない。
記憶をかき集めた所で、それが命になる事などあるはずがない。
分かっているだろうに。どうして認めようとしないのか。
兄の去った部屋。
静寂の中、涙を流す。
悲しいのか、苦しいのか。今はもう、その理由は擦り切れ思い出す事はない。
積み重なる、たくさんの失敗作の自分達が、声もなく泣いている。
部屋を濡らす涙は嵩を増し、それはいつしか部屋を沈めていく。
悲しみも、苦しみも、寂しさも。身も心もすべてを涙は鎮め解かしていく。
願わくは、兄がこの部屋を忘れ、二度と戻る事がないように。
苦海に永く沈む事のないように。
無意味と知りながらも、思わずにはいられなかった。
目が覚めた。
まだ空は暗く、朝は遠い。
溢れ落ちる涙を拭い、息を吐いた。
いつからか見るようになった夢。
最初は、逃げ出した。部屋から出る事は出来たが、それだけだった。
次は、歩く事が出来ず、床を這いながら逃げようと足掻いた。小さな舌打ちと共に視界が暗転した。
何度も繰り返す夢。夢だと笑い飛ばす事は、もう出来なくなっていた。
体を起こそうとして、止める。
顔を洗いに行きたいが、兄に気づかれる訳にはいかない。それよりはと、体を起こす事なくもう一度目を閉じた。
こんこんと、扉を叩く音。
「大丈夫?」
「寝てるんだから、起こさないでよ」
かちゃりと、扉が開く音がして、兄が入ってくる。
「まだ入っていいよって、言ってないよ」
「ごめんね」
軽い謝罪に、いつもそうだと愚痴を溢す。
戻る気配のない兄に、体を起こして何、と要件を尋ねた。
「目が覚めたみたいだから。ほら、タオルを持ってきたから、目を冷やして。腫れてしまうよ」
準備の良すぎる兄に思う所はあれど、素直に渡されたタオルを目に当てる。
冷えたタオルの心地良さを堪能していれば、兄の静かな声が鼓膜を揺すった。
「どんな夢を見た?」
忘れた、と言葉にするのは簡単だ。
けれどそれを、兄が許してはくれないのだろうと、そう思った。
「兄さんがいつまでもお婿に行かないで、ずっと部屋に籠もってお人形遊びをしている夢」
何それ、と困惑を含んだ声。
それに、正夢にはしないでね、と呟いた。
20241011 『涙の理由』
涙の理由
涙の理由
嬉しいから
涙の理由
悲しいから
涙の理由
悔しいから
涙の理由は
人それぞれ
涙を言い訳にしないなら
涙は美しい
涙の理由より和泉兄弟
(二次創作物)
夕飯の支度をしているとリビングでテレビを見ている陸と一織の会話が耳に届いてくる。
「一織ってなんだかんだ優しいよね」
「なんだかんだってなんですか」
「この間だってさ――」
そんな会話を聞きながら三月は少し昔に思いを馳せた。
☆☆☆
あれは三月がまだ小学六年生だった頃――
その日、三月は委員会のため、二年生の一織と一緒に帰ることが出来なかった。起きてきた一織にそのことを伝えると、寂しそうな顔で首を縦に動かしたのを今も覚えている。
「ただいま!母さん!一織〜!」
玄関を開けて明るい声を出した三月に反し、母は少し困った顔をしてリビングから顔を出した。
「おかえり、三月……。その、一織が、ね」
「一織?」
頭の中で首を傾げながら三月はランドセルを置くと辺りを見回す。するとカーテンの隅で丸くなっている小さな背中が目に止まった。耳を澄ますと小さく泣き声が届く。
「帰って来てからずっとこの調子で。なにを聞いても答えたくないのか、首を横に振るばかりなの」
「そっか。母さん。俺が聞いてみる」
店に戻った母を見送った後、一織の背中にそっと手を当て声をかける。
「一織。母さん心配してたぞ。何があったか兄ちゃんにも話せないか?」
すると一織はむくりと体を起こして、真っ赤にした目で三月を見つめた。
「いおりが口に出しても、兄さんは泣きませんか?」
「うん?俺が、泣く?」
もう一度、涙の理由を問いかければ、一織は目に溢れた涙を一筋頬に流して訥々と話し出した。
どうやら帰り道で三月のクラスメイトが話す三月の悪口を聞いてしまったらしい。自分の兄はそんなんじゃないと否定しようとしたものの、【六年生】という圧に負け何も言えなかったと。その事が悔しくてずっと涙が止まらないと。
(ああ……)
三月は心の中で声を漏らす。この子の涙はこんなにも優しいのか。
「一織」
三月は腕をのばして一織の身体を抱き締めた。一織の温かさに堪えきれなかった一筋の涙が頬を伝った。
「……ありがとう」
☆☆☆
「三月もこの時の一織、優しいと思うよね!?」
くるりと振り注ぐ陸の声によって三月は現在へと戻ってくる。
「ちょっ、兄さんを巻き込まないでください」
ガタッと慌てて立ち上がり陸の向けるスマホ画面を見えないように奮闘する一織。
「そうだな……。一織は小さい時から変わらず優しいぞ」
耳まで赤くした顔を逸らす一織を三月は目を細めて口元を緩めた。
雑踏の中…
視界に飛び込んできたのは
好きだったけど
昔 別れてしまった
元カレの姿……
傍らには 満面の笑みの
奥さまと赤ちゃん…
良かった…
幸せになれたんだね…
あれ…?
何でだろう…
涙が
止まらない……
#涙の理由 703
『涙の理由』
冷房が切られた、生暖かい風に包まれる夏の放課後、私は教室で机に顔を沈めていた。この汗は誰にも見られたくなかった。
しかし、私のその願いは叶いそうにもない。
なぜなら、前の椅子に座って私の様子を伺っている奴が既に居るからである。しかも、1番会いたくない人。神様ってやつは本当に意地悪である。
寝てるふりをして誤魔化してどうにか教室から出てもらおうと企てたが、かれこれ30分ぐらいは経っているような気がする。空もオレンジにきっと変化しているだろう。
仕方がないから、顔をあげた。奴は私の目が腫れていることには気づかなかったみたい。
でも、また少し泣きそうになった。私のことを見てくれないこと。
※二次創作
※bl
「おい……なんで泣いてんだよ?」
「え」
指摘されて初めて気づいた。
悲しいわけでも、ましてや特別嬉しいわけでもない。何処かが痛むとかでもなければ、苦しいわけでもない。
「あれ? ほんとだ。なんでだろ……?」
だってオレは今、五年も一緒に過ごす恋人と同じベッドで寝ていただけだ。
泣く理由をいくつか並べたが、強いて言うなら、嬉し泣きだろう。嬉しいかと問われれば、そりゃ嬉しいに決まっている。こうして当たり前のように恋人と穏やかな時間を過ごせているのだから。
なんて言ったって、オレのかわいい恋人さんはそりゃもう酷い事件体質で、呪われてるんじゃねえかって思うくらい頻繁に殺人だの強盗だのと事件に遭遇する。全くどうなってんだ。
だからこうして、珍しく重なった休日にたくさんイチャついて、平和に過ごせているのは割と奇跡だ。それはもう泣きそうなくらいに。
でも、だからと言って、本当に涙を流すほど感動しているわけじゃない。
「意味わかんね……グスッ……なんだろ、」
「泣くなよ……調子狂う」
するりと頬を恋人の手の甲が撫ぜていく。目尻から零れていく涙をひとつ、またひとつと優しく掬っていく。
泣いている理由はオレも分からない。悲しいわけじゃないし、涙が出るくらいに嬉しいわけでもないのに、意味のわからない涙がずっと止まらない。
ただ、なんというか。
こうやって二人で向かい合いながら、平和な時間を過ごしているこの状況が、以前にもあったような気がして。
「わりぃ……へへっ」
「変な面」
泣くか笑うかどっちかにしろよ、と呆れ笑いをこぼしつつ、それでも心配しているのだろう、彼の眉は八の字に下がっている。
「なんか、こういうの前にもあった気がする」
「はぁ? おめーがわけも分からず泣き出すことがか?」
「いや、そうじゃなくて……なんか、こういう状況が前にも、というか、それよりもずっと昔に……」
ああ、そうか。この感情は……
「懐かしい……感じ?」
「はぁ? 懐かしい?」
すると、彼は途端に怪訝な顔をして、数年前の記憶を探っているのかうんうんと唸っている。オレの心配はどうしたんだよオイ。
でも、オレの心配をするよりかはこうして思考している方が彼に似合っているし、何だか安心もする。
それに、この懐かしさの原因はきっと、彼が遡っている記憶の中にはない。オレにだってよく分からないが、彼と過ごしてきた中で、今と似たような状況は確かにたくさんあったけれど、そうじゃなく、もっと昔。彼と出会う前に、こんな風にふたりで過ごしていた気がする。
なんて、リアリストの彼に言ったら笑われてしまうだろうか。
――きっと全ては、この頬を流れる涙だけが知っている
「涙の理由」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
とまあ、改めて日常を送ることになったボク達だが、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?
ボク達を開発した父の声が聞こえたから目覚めたと言っていたけれども、父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。
一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
─────────────────────────────
「おとーしゃーん!だっこー!」
「ちょ……もう……しんど……!」
「ほら、もー!お父さんを困らせちゃいけないよ!」「むー!」
「おとーしゃん」「なに……ハァ……ハァ……。」
「なんでえんえん、なの?」「え?あ、泣いてる?」
「さすが大人。えんえんだけで分かるんだね。」
「そうだね。大人でも涙が出る時だってあるのさ。例えば、自分の知らないところで子ども達が苦しんでいたことを知った時。それから、こうやって彼らと無事に会って話が出来ている時。」
「かなちくなくてもえんえんなのー?」「そうだよ。嬉しい時に出る涙は『嬉し涙』っていうのさ。」「へー!うれちくてもうれちーえんえんなんだねー!」「うれちーえんえんだよ!」
「おとーしゃん。」「ん?」「おとーしゃん、ボクのおなまえよんだでちょ?」「ん?一緒にいる時はたくさん名前を呼んだね。今でもすごくいい思い出だよ。」
「ちーがーうー!」「ん??」「ごみばこの ときー!」「?」
「ゴミ箱……?」
「あっ、ボクが説明するよ。お父さん……亡くなったあと、⬜︎⬜︎がいたアーカイブ管理室に行ったの?」「……。」
「もしかして、覚えていない?」「……。」
思い出そうとしているのか、それとも何も覚えていないのか、父親は黙りこくっている。
「お父さん……?」
「……心あたりがひとつだけある。」
「私は死んですぐに、自分がどうなっているのかも分からぬまま、宇宙管理機構本部を彷徨っていた。そのうちアーカイブ管理室に着いて、⬜︎⬜︎を見に行ったんだ。」
「その時、私はおそらく⬜︎⬜︎を呼んでいた。お父さんが来たよ、目を覚ましておくれ、と呼びかけた。」
「……。」
「おとーしゃんがボクのおなまえよんだのー!ボク、うれちかったよー!またいぱーいだっこーって!ごはんたべるのーって!」
「でもねー。おとーしゃん、きてくれないだったのー。」
「ずーっとかなちくて、いぱーいわすれちゃって、えんえんだったのー。ひとりぼっち、やーなのー。」
「⬜︎⬜︎、ごめん……、ごめんな……。」
「ごめんなしゃいもうきーたの。だからごめんなしゃいちなくていーとおもう。」「そっか。」「んー。」
「ごめんなしゃいよりもだっこがうれちいの!」
「そうだね。だっこしようね。」
「んーん。」「?」「こんどは⬛︎⬛︎ちゃんのばん。」
「ふえ、あ、ボク?」「お父さん、そろそろ腕が大変じゃない?無理しなくていいからさ!」「いや、今しか出来ないだろうから、無理してでもやるよ!」「え、えぇ?!」
「ほーら、抱っこだー!」「へへ、もうそんな歳じゃないよー!」「あれ、⬛︎⬛︎のほうが軽い」「質量を調節しているからね。」「喜び方分かりにくいな!」
「へへっ!」「ふふっ!」「うれちーなのー!」
父の目には涙が浮かんでいた気がする。
この涙の理由は、何だろう?
最近、あいつは涙もろくなった。
本人曰く『歳のせい』らしいが、俺は知っている。
出てきただけだろう?泣き虫なあの頃のお前が。
俺たちが不甲斐ないせいで、心の奥底に閉じ込めることしか出来なかったあの子が、ようやっと安心して出てこれるようになっただけ。それまで何年かかったのだろう。
「あかんなぁ…」
あかんくなんかないよ。今まで我慢した分泣けばいい。
もう俺たちはその涙を拭ってやれるから。
らしくない、なんて言って止めようしないで。
俺はそれが一番お前らしいことを誰よりも分かっているから。
やから、泣いて。
その分笑わしたるから。
「涙の理由」
私はあなたが好きでした。
告白しました。
振られました。
喜んだ。
あら。
なぜあなたが泣いているの?
【#95】
涙の理由を聞かないで
君と離れる時までは
時空を超えてまた会える?
何度も何度もまた会える?
涙に理由なんて無いのよ
ただ勝手に流れてくるだけ
貴方の事を思うと
何故か涙が流れるの
きっと会いたくても会えないから・・・
寂しいとかじゃないの
でもどうしてか流れるの
貴方に会えた時も
何故か流れてくるの
不思議ね
「涙の理由」
人に嫌われたくない人と話したい、でも傷つけるのも傷つけるのももういやだ、だから人が嫌いだと自分に嘘をつく。自分を責めればらくだから、そんな大嫌いな自分がやるせない、涙なんてでないけど
「涙の理由」って聞くと
やっぱり部活思い出すかも。
自分ができないことが悔しくて涙が出てくる。
あなたが泣いてる理由が分からないって言われるけど、
自分だって分からんわ。
自然となんか涙が落ちてくるんだもん。
✳涙の理由
「ああ、どうしていつもこうなの!」
手元のまな板には、玉ねぎの微塵切り。
カレーに使う食材で、欠かせないものである。
そして玉ねぎを切ったが最後、止まらない涙と格闘しながら切っていかなければならない。
カレーの難所である。
「あと、少し!あと少しなのよぉぉーー!」
ボロボロと涙を流し、手を止めずに包丁で微塵切りにしていく。
しっかり切り終わると、ふうっと一息。
さあ、これで難所は終わった!と思いつつ鍋に玉ねぎを入れていく。
他の野菜もさっさと切り終えるとコンロに火をつけ炒め始める。
ジュウッという焼ける音に立ち込める野菜の蒸気。
その蒸気が再び自身を襲う。
「いやーーーーー!!目がああああーーー!」
叫びながら炒めお肉もぶち込み、軽く焼色がついたら水とルーを入れていく。
そして、サッ!と封印するように蓋をして、ようやく一安心した。
暫く煮込んで出来たカレーはとても美味しく出来たのであった。
涙の理由
大事にしていた簪が折れてしまった日
頭から水をかけられた日
崖から落ちて大怪我をした日
ナイフで刺された日
海に放り出された日
仲間と別れた日
嵐の中に投げ出された日
高熱で死にかけた日
仲のいい知り合いが死んだ日
君がいなくなった日
どんな時も泣かなかったけれど、私が泣くのだとしたらきっと。涙の理由は君たちとの思い出。
そして作者の涙の理由は最近書く時間が取れてないこと……絶対前回の2テーマ今度書くから!
涙の理由
. (後ほど書きます…!!!滞納がエグい…;゚∇゚)
涙の理由……このお題を見たときに、私はパッと物語が思い浮かんだ。それは、墓地の前で泣く男と死んでしまった女。泣くシチュエーションなんて限られてる。それに理由を付けるのであればもっと少ない。
そして、私がパッと思い付くということは他の書き手も思いついている、と考えるのがひねくれ者の私である。ひねくれ者であるが故に物語もひねくれさせねばなるまい。誰も思いつかぬような物語を──
◇◆◇
例えばこんな話はどうだろうか?
男は生活していた。朝起きてご飯を食べスーツに着替え会社に行き少し残業をして家に帰り夕飯を食べ風呂に入り寝る。
普通を体現したかのような男だ。私から見ればつまらない人生だと思うが彼はそれに満足して日々暮らしていた。安定のレール。そこを進んでいれば小さな幸せと小さな不幸しか起こらない。それを知りつつも男は存在していた。
ある日のことだ。男がクビになった。……クビでも、会社が倒産したでも理由は何でもいい。とりあえず男は無職となった。しかし男は前を向いて働いていたときの貯金とアルバイトで次の職を探す。
が、肝心の職が見つからない。アルバイト生活の期間とストレスは増えていくのに貯金と安心は少しずつ、少しずつと減っていった。
限界が近かった頃に同級生と町中でたまたま出会う。その相手には家族がいた。父となった同級生に美人とは言えないが幸せそうに笑う母。その間に父と母両方と手を繋いで歩く子供。
『幸せ』という人を死に至らしめる万力の力で男の心は簡単に折れてしまった。
そして男は最後に首を吊る用のロープを買っていた。目からは涙がこぼれる。理由は分からない。
理想と現実が違っていたから? 違う。
独身だから? 違う。
会社が倒産したから? 違う。
考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えた。
どれくらい? 分からない。目は落ちくぼみ、喉は渇き、肌はボロボロになり、痩せ衰え、それでも考え、死に一歩、また一歩と近づく。
そして、死の一歩手前で気がついた。
いつも安定のレールを用意されてきたことに。
「俺は人生を生きてなかったんだな」と。
涙に理由をつけることはしないけど
あえて言うなら彼女は
自分が可哀想で
泣くんだね
お題『涙の理由』
今まで自分のためにしか泣いたことなんてなかった。
小さい時は、自分の思い通りにならなかったり、欲しいものを買ってもらえなかったり、うまく自分が言いたいことが伝えられなくて涙に訴えていた。
自分がいじめられた時も泣くばかりでなにもできなかった。
中学になって、部活に入って、部活を引退する先輩がいて、引退するのは先輩なのになんで同級生が泣くんだろうって不思議に思った。
私は、自分に対する思い入れは強いくせ、他人に対する思い入れは薄い。そんな事実を目の当たりにした。
同級生から「あんたって冷たいよね」って言われたことがあって、でも泣けないものは泣けないんだから仕方ないじゃないかなんて思っていた。
それが最近、自分のことじゃないのに涙が出る機会が増えてきた。物語で家族を大切にする心情に触れるとなぜか涙が出てくるし、ある商業BL漫画を読んで攻めが精神的に救われる様を読んで涙が出てきたりすることがあった。
正直、大人になった今は、大事な友人が害された時に怒りこそすれ、泣くことはないけど、物語で泣けるようになったということはそのあたりはちゃんと『人間』になれたと思っていいんじゃないかと思っている。自分のなかではね。
私が涙を流すのは、
泣けないあなたの分も泣いてあげているから。